とある病院の、とある病室の、とあるベットの上。
「木綿季さ~ん、起きてくださ~い」
「むぅ~、あと五分だけ~」
女性看護師が耳元で優しく木綿季を起こそうとしていた。
「起きないと、8時半のご飯のデザート抜きですよ~、私が食べちゃうぞ~」
「私のゼリーに手を出すな~~!!!」
ゴンッ
木綿季と女性看護師、お互いのおでこがぶつかり合い、二人は倒れた。
ちなみに、この二人が同じ理由で倒れたのは3回目。
あの事故から数日が経過した。
和人はまだ目を覚まさない。
命に別条はないのは本当の用で、何回か和人が眠っている病室に行った。
でも、和人はやっぱり眠っていた。
そして、ボクは現在病院の中庭で散歩中。
よく晴れた昼間、猫がベンチで気持ち良さそうに寝ている。
とても平和な光景だな~。
ホントに平和、
平和、
へ………
「ひ~!ま~!だ~~~!!」
平和は良いけど何にもない!
朝起こされて、ご飯食べて、点滴変えて、あとは大体自由時間。
時々、女性看護師さんが来るけど何にもない。
面会時間の2時から8時の間も来るのは、和人の親と妹だけ、友達が来ない!!
………ボクって友達いないの?
いや、確かにいつも和人といたけど、ボク運動好きだし駆けっこではいっつも1位だったし、それなりに女子男子関係なくお喋りもしてたよ!?
あ~、全力で走りたい。
倉橋先生には駄目って言われてるけど、物凄く走りたい。
「うが~~!!」
どうしようもないこの気持ちを、ボクは大空へと解き放った。
ごめんね猫ちゃん起しちゃって……。
ケホッ
「叫びすぎた…」
イガイガする喉を押さえてボクは病室に戻った。
病室には倉橋先生がいた。
「あ、倉橋先生」
「こんにちは、木綿季くん。さっきの叫び声は君かい?」
聞こえてたんですね。
中庭から少し離れたこの病室で聞こえてたのか………
入院中の皆さんごめんなさい。
心の中で謝罪をして、本題に入る。
「どうしてここに?」
ボクの傷はほとんど治っている。
倉橋先生が来るときは点滴の数を減らす時ぐらいだし。
ボクが疑問に思ってると、
「いや、ただ暇なもんでね。木綿季君の体調はどうかと思ってね」
医者にも暇があるんだね。
まぁ、さっき叫んだ時は喉がイガイガしたけど大丈夫。
体調は良くも悪くもなく普通。
「さっき、叫んで喉がイガイガしたけどもう治りました。体調も普通です。」
ボクはありのまま答えた。
すると、倉橋先生は難しい顔をした。
「本当に、叫んだから?」
何言ってるんだろう?ボクそう言ったよね?
「そうですけど………先生は心配性ですね」
ボクは倉橋先生を安心させるため笑顔で言った。
「そうか、なら良かった。いや~僕の心配性も治さないと」
その言葉に、安心したのか倉橋先生も笑顔で答えた。
「心配性を治す薬を買いましょう!!」
「薬局に行ってみるよ」
笑顔で先生は病室を後にした。
「全く、ボクは元気だって」
そう呟いてボクはベットに座った。
だけど、何故だろう?
倉橋先生の難しい顔をボクは今日一日寝るまでずっと、頭から離れなかった。
ケホッ
次回はユウキがついに・・・
評価と感想お願いします!!
それではまた次回!
過去編が長いですね・・・