ソードアート・オンライン ~少女のために~   作:*天邪鬼*

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今年最後の投稿です !


22話 圏内殺人事件・前編

   第4層ロービア

 

「…………」

 

「和人様、そんな所で寝てたら落ちますよ」

 

「んー?大丈夫、命綱はあるから」

 

アイが窓から身を乗り出して屋根を見上げている。

お昼過ぎ、俺は今ホームとしてNPCに借りてる家の屋根で寝ていた。

屋根の上は人目を気にせずゆっくり寝れる俺の特等席。

しかも、今日は最高の気象設定だ。

日差しは強すぎずでも弱すぎない。

風も程よく吹いていて気温も最適。

 

「攻略はどうするんですか?」

 

アイも窓から屋根に登って来た。

 

「今日は最高の気象設定だぞ、こんな日に迷宮区に潜るなんて勿体ない。それに、たまには休みも必要だろ?」

 

俺は伸びをしながらまた寝始める。

アイは少し考えてから俺の横に寝っ転がる。

 

「気持ちいいです」

 

「だろ?」

 

俺達はそのまま眠りに付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方にメールの着信音で俺は起きた。

また、アルゴからか?

っと思ったのだが差出人には”アスナ”っと書かれていた。

メールを読むと、

 

『今から第57層の”マーテン”に来てくれない?』

 

正直言ってめんどくさい。

横ではアイがまだ寝てるので起こすのも可哀想なのでお断りすることにした。

しかし、

 

『めんどくさいからって断るのは無し。ある事件の解決に協力して欲しいの』

 

何故断る事が分かったのか分からないが大分真剣な事で呼び出したんだろう。

俺はアイの頬っぺたを突っついて起こす。

 

「アイ~、出掛けるから起きてくれ~」

 

「はむっ」

 

「…………」

 

アイが突っついてた俺の指を手に取り甘噛みしてきた。

アイの目はまだ完全に起きてない様で半分しか開いていない。

 

「………は!!私のケーキ!!」

 

アイが起き上がり周りを見渡す。

俺の指を甘噛みしてた事は覚えていないらしい。

てか、ケーキを食べようとしてたのかよ。

 

「今からマーテンに行くぞ」

 

「マーテンですか、何でですか?」

 

「アスナからメールが届いたんだよ、何か事件の解決に協力して欲しいってさ」

 

俺は甘噛みの件を黙っておきながらアスナからのメールの内容を伝えた。

 

「成る程、では行きますか」

 

アイは立ち上がり伸びをする。

俺もそれに合わせて伸びをする。

そして、屋根から飛び出す。

俺達は屋根を越え時に綱渡りをし忍者の様に転移門に向かった。

勿論、フードは着用している。

俺ってどんな味何だろう?

俺は自分の指を見て思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   第57層マーテン

 

「ごめんね、急に呼び出しちゃって」

 

アスナが両手を合わせて謝ってくる。

第57層マーテンのとあるレストランに俺とアイはいた。

レストランには他にもプレイヤーが来ていて俺を見ている。

気にしない!! 気にしない!!

 

「いいよ、どうせ暇だったし」

 

「それで、事件の内容は?」

 

アイが言うとアスナは真剣な顔つきで話を始めた。

 

「キリト君は街でPKが出来ると思う?」

 

PK、プレイヤーキル。

このデスゲームで最もしてはいけない殺人の事。

SAOにいるプレイヤーの数は限られているのに、プレイヤーを殺すことがある種の快感だと言うプレイヤーが現れたのだ。

しかし、HPが減るのは基本的にフィールドだけでPKもフィールドで起きる事が多い。

街ではHPが減らないので街でのPKの仕方は限られてくる。

 

「出来るだろ、寝てる間に指を操作されて完全決着モードでデュエルとか」

 

ここ最近増えてる手口の睡眠PK。

爆睡しているプレイヤーを見つけて指を勝手に操作してデュエルの完全決着モードを選択されるのだ。

後は、寝てるプレイヤーを攻撃、プレイヤーも流石に起きるがその時には遅くHPが全損して死に至る。

 

「事件ってのはPKをした奴を探すのか?」

 

流れからしてそうなんだろうけど俺は一応確認する。

 

「それもあるけど、この事件変なのよ」

 

「「変?」」

 

俺とアイは首を傾げた。

言っちゃ悪いけど、PKの犯人探しは珍しい事では無いはずだ。

 

「私も睡眠PKだと思ったんだけどデュエルの決着のアイコンが無いの」

 

「決着のアイコンが無い?」

 

「ちょっと来て」

 

アスナは席を立ち店を出ていく。

俺とアイも急いで後を追った。

何か面倒な事に巻き込まれてる気がするぞ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスナの話だとカインズと言う男性がこの建物からロープで吊るされ腹に剣が刺さった状態で死んでいったらしい。

カインズは殺される前にヨルコと言う女性とご飯を食べていたので睡眠PKの線は無し。

となればカインズが完全決着モードのデュエルを行った線が1番有力だが決着のアイコンが無かったのでその線も無し。

 

「で、この剣がカインズさんのHPを全て削ったのよ」

 

アスナがその剣を俺に渡してくる。

剣には茨の様な刺があり刺さったら抜けにくくなっている。

まるでプレイヤーのHPをジワジワと削っていく為の剣だ。

 

「この剣に何かあるのか?」

 

「これからそれを調べに行く所よ」

 

アスナは剣を俺から受け取りメニューにしまう。

ここで1つ疑問が生じる。

 

「私達は何で呼ばれたんですか?」

 

俺より先にアイがアスナに聞いた。

アスナは今や”閃光”と呼ばれるくらいのトッププレイヤーで最強ギルドの血盟騎士団の副団長。

俺達なんかより、頼りになる人達が大勢いるはずだ。

こんなコミュ障の男の子と小さい女の子に話すよりギルドに話をした方が早期解決に繋がるだろう。

 

「キリト君って頭いいじゃん!アイちゃんも凄く物知りだしね。ギルドの人達より頼りになるよ!」

 

アスナは笑いながらアイを撫でる。

アイはムスッとした顔になる。

 

「いや~、俺はビーターだし閃光様と一緒にいたら俺がPKされちゃいそうなので俺はこの件についてはパスって事で…………」

 

本当は人に会いたくないだけなんだけどな。

アスナと一旦別れてから独自でこの事件を裏から調査をするつもりだ。

 

「何言ってるの、キリト君にはアイちゃんがいるし大丈夫でしょ!!」

 

俺はアイを見てみる。

アイはドヤ顔で俺を見ていた。

腹立つなその顔!!

 

「ほら、行くよ!”黒の剣士”さんと”従者”さん!!」

 

アスナは転移門に歩いていく。

俺は従者ことアイと数秒見つめ合ってから、仕方なくこの事件を表から調査する事にした。

やっぱり、面倒な事になった…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   第50層”アルゲード”

 

「グリムロック作”ギルティソーン”…………でも、この剣には何も仕掛けはないぜ?」

 

「そうですか」

 

第50層のアルゲードに店を構えているこの雑貨屋の店主はエギルさんと言うらしい。

”安く仕入れて安く提供”っと看板に書いて合ったけど本当かどうかは怪しい店だ。

アフリカ系アメリカ人で流暢な日本語を喋るスキンヘッドのエギルさんは気前がよいので悪い店では無いのは確かだが。

俺とアスナはエギルさんの雑貨屋の2階にいた。

 

「圏内の街での殺人、面倒な事件だな」

 

エギルさんは剣をアスナに渡すと頭を掻いた。

そして、俺の方を見てくる。

 

「で、黒の剣士が何で協力してんだ?」

 

「は、はい!その、アスナから協力してくれっとメールが届いたので自分達は協力する事になったしだいです………」

 

久しぶりに初対面の人と話すので、俺は部屋の隅で体を丸くしていた。

筋肉マッチョのたくましい男性のエギルさんは口調は穏やかでもコミュ障の俺が話すのは厳しすぎる相手なのだ。

 

「俺嫌われてる?そんなに怖い顔してるか?」

 

エギルさんが落ち込みながらアスナに聞いている。

 

「してませんよ、それにキリト君がこうなってる理由は別にありますから」

 

アスナがエギルさんを励ましている。

俺が部屋の隅で丸くなっている理由、それはアイが側に居ないことだった。

調査が長引くと思ったアイは家に戻り糸付きピックや食料、寝間着などを取りに行ったのだ。

俺も着いていこうとしたのだがアイにこれもリハビリだと言う事で取り残された。

最初は不安しか無かったけど、アスナがいるから大丈夫っと思って残ったのだが、いざ1人になると周りの視線の量が凄かった。

閃光のアスナと2人で歩いてたらこうなるよなっと反省しながらビクビクして何とかエギルさんの店までこれた。

これで多くの視線ともおさらばだと思ってたのに筋肉の壁が俺を待っていた。

俺の心はその時に折れてしまった。

 

「そうなのか………まさか、ビーターとか黒の剣士って呼ばれてるからふてぶてしい奴だと思ってたのにイメージと全然違うな」

 

エギルさんがまじまじと俺を見てくる。

俺は両手でフードを引っ張り顔を更に隠す。

 

「エギルさん、キリト君が怖がってます」

 

「ああ、すまない。え~、キリト?俺はエギルだ。ここで店を開いてる。よろしくな」

 

エギルさんは部屋の隅にいる俺に対して手を上げて挨拶をする。

俺はチラッと見て手を上げる。

 

「よろしく………」

 

挨拶は大事!

怖いけど慣れるしかない!!

 

「アイちゃんにはこの場所をメールで伝えたからもう少しで来るから我慢してね」

 

アスナの言葉で少しだけ元気になった。

さらに、ドアを叩く音がした。

 

「誰だ?」

 

「従者ですよ」

 

アスナはドアを開けて従者を出迎える。

 

「あ、どうもアイと申します」

 

アイがエギルさんにいつも通りの挨拶をする。

 

「しっかりした、嬢ちゃんだな」

 

エギルさんは驚きもせず率直に思ったことを言った。

 

「あれがキリト様ですか?」

 

「うん、最初は何とか大丈夫だったんだけどエギルさんに会ったとたんにこうなっちゃった」

 

アスナは苦笑いをしてアイに説明する。

アイは溜め息をして俺に近づいて来た。

 

「キリト様大丈夫ですかっ!?」

 

俺は思わずアイに抱き寄せてしまった。

アスナは、やっぱりねっと言い。

エギルさんは、どうゆうことっと思っているのか呆然と俺を見ていた。

 

「怖かった~!!」

 

俺は半分泣いてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   第57層マーテン

 

「ヨルコさん、グリムロックって人に心当たりはありませんか?」

 

「グリムロックは昔私とカインズが所属していたギルドのメンバーです」

 

翌日の早朝、俺、アイ、アスナはカインズさんが殺される少し前まで行動していたヨルコって言う女性に話を聞いていた。

 

「実はカインズさんに刺さっていた剣、製作者はグリムロックさんなんです」

 

「え!?」

 

ヨルコさんは目を見開き両手を口に当て驚いている。

俺にとっては不自然なほどに………

 

「何か気付いたんですか?」

 

「気付いたのではなくて、思い出したんです」

 

ヨルコさんは自分が所属していたギルド”黄金林檎”の解散の原因である出来事を話してくれた。

モンスターからドロップしたレアアイテムを売却か活用するかを多数決で決め、5対3で売却になったこと。

売却に行ったグリセルダさんっと言う女性が殺された事。

反対したのは、ヨルコさん、カインズさん、シュミットさんの3人だって事。

グリムロックさんはグリセルダさんの旦那さんだって事。

必要以上に話してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達は次にシュミットさんに来てもらい話を聞く事になった。

話からすると、この圏内殺人事件の容疑者はグリムロックさんでグリムロックさんはグリセルダさんを殺したのは指輪の売却に反対したカインズさん、ヨルコさん、シュミットさんの誰か、もしくは全員だと思っているのでその復讐をし始めた、っと言う事になる。

もしそうなら、この殺人は続く可能性があるので2階だて宿の2階で話を聞く。

 

「何で今さらカインズが殺されるんだよ!!そうか!アイツがグリセルダを殺したのか!?だから復讐としてグリムロックはカインズを殺したのか!!いや、グリムロックは指輪を活用する方を選んだ俺やお前も殺すつもりなのか!?」

 

シュミットさんが1人用の椅子で頭を抱えて嘆く。

俺とアイにアスナはドアの前で様子をうかがっている。

急な話なので話はヨルコさんにしてもらったのだ。

 

「グリムロックさんに剣を作らせた他のメンバーかもしれない、もしかしたらグリセルダさん自身かも知れないわね」

 

「「「「!!」」」」

 

ヨルコさんの思いがけない話にシュミットさんを含めた全員が肩を振るわす。

 

「私、昨日の夜ずっと考えてた。圏内で人を殺すなんて幽霊でなければ不可能だわ。結局の所グリセルダさんを殺したのはメンバー全員なのよ!!あの時、指輪をどうするか投票しないでグリセルダさんの指示に従っとくべきだったんだわ!!」

 

物静かなヨルコさんがここまで感情をあらわにして俺達はまた驚く。

そして、ヨルコさんは窓の淵に腰掛ける。

 

「ただ1人、グリムロックさんだけがグリセルダさんに任せるって言った。グリムロックさんには私達全員に復讐してグリセルダさんの仇を討つ権利があるんだわ」

 

ヨルコさんは段々と落ち着いていった。

やっぱり、何か不自然なんだよなこの人の行動。

 

「何だよ今さら………お前は良いのかよ!!こんな訳の分からない事で殺されても!!」

 

シュミットさんはヨルコさんの話を真に受けてしい慌ただしく立ち上がる。

 

「落ち着いてください、殺されるって決まった訳じゃありませんしあなたは今生きています」

 

アイがシュミットさんに言い聞かせて宥める。

しかし、

 

ドスッ

 

何かが物に刺さった音が響いた。

すると、ヨルコさんが窓から落ちそうになる。

その時、ヨルコさんの背中にギルティソーンと同じ様に刺の返しが付いたナイフが刺さってるのが見えた。

俺は手を伸ばしてヨルコさんを助けようとするが遅かった。

ヨルコさんは窓から落ちてポリゴンの破片となった。

 

「ヨルコさん!!」

 

 




凄い!! まさかランキングに入れるとは思っていませんでした ! !
これも皆様のお陰です!!

それでは感想と評価お願いします!!

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