ソードアート・オンライン ~少女のために~   作:*天邪鬼*

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ハッピーバースデイ自分!!


21話 花

「ユウキ~、朝ですよ!」

 

「もう少し寝る~……」

 

シウネーがボクを起こそうと体を揺らすけどボクは駄々をこねてベットにしがみつく。

ここはボク達スリーピングナイツがホームとしている場所、第47層”フローリア”

フロア全体がお花畑でとても美しい街。

前まではもう少し下の層の宿をホームとしてたんだけど、お金が貯ったからこの街に皆で暮らす為の家を買った。

つまり、ギルドホームだね。

違う街がいいって男子のギルドメンバー、ジュンとテッチとタルケンに言われたけど問答無用で買っちゃた!!

男の子より女の子の方が強いんだよ。

 

「攻略を進めに行きますよ」

 

「う~、分かったよ」

 

ボクは嫌々起き上がって戦闘服に着替える。

肩とか所々素肌が見えているこの服は”ナイトリークローク”

STR・VIT・DEX・AGIに+25の補正。

攻撃力+50防御力+180。

毒、麻痺、出血のデバフにも耐性があるこの47層ボスのLA。

ちょっと恥ずかしいけど性能が凄く良いので愛用している。

可愛い服だしね!

 

「ユウキ!早く行くよ!!」

 

男らしい女性のノリが部屋のドアを乱暴に開ける。

ノリの後ろにはジュン、テッチ、タルケンが待っている。

 

「よし!!それじゃ、攻略に出発だ~!!」

 

「「「「「お~!!」」」」」

 

 

 

 

  最前線転移門前

 

「頼むよ!!頼むよ誰か!!」

 

「騒がしいですね、何かあったんでしょうか?」

 

最前線の転移門前に着くと中年のおじさんが泣き叫んでいた。

ボクはおじさんに声を掛けようとしてみる。

 

「おいおい、私は面倒な事はごめんだよ」

 

ノリが呆れ顔でボクの腕を掴んできた。

 

「大丈夫!もしもの時はボク1人でやるから!」

 

ノリは諦めたのか、ため息をつきながら腕を離してくれた。

シウネーは、やっぱりって感じの苦笑いをしていた。

 

「おじさんどうしたの?」

 

ボクはへたり込んでいるおじさんの前でしゃがむ。

 

「あんた!聞いてくれるのか!?」

 

「おわぁ!!ちょ、ちょっとおじさん!!」

 

おじさんがボクにしがみ付いてきた。

ボクはおじさんの顔に両手を当てて押しのける。

ハラスメント防止コードで黒鉄宮牢獄エリアに強制転移させちゃうぞ!!

 

「ユウキから離れろ!!」

 

ジュンがおじさんに体当たりしてボクから離してくれた。

お~、おじさんが吹っ飛んでいく~

 

「大丈夫かユウキ?」

 

「うん!大丈夫だよありがとね!」

 

あのままだったら本当に強制転移させちゃうところだったよ……

 

「おい、おっさん!!あんた何がしたいんだ!?」

 

ジュンが吹っ飛ばされたおじさんの前に行き両手を腰に当ててすごんでいる。

ジュンが怒るなんて珍しいね。

 

「す、すまねー………あんた攻略組だよな?頼みがあるんだ」

 

おじさんは自分達がオレンジギルドのタイタンズハンドに襲われた事を話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね、付き合わせちゃって」

 

「別にいいよ、俺も突っ込んじゃったし」

 

ボクは今、ジュンと2人で第35層の迷いの森に来ていた。

他のメンバーは攻略に行っている。

ここに来た理由はもちろんタイタンズハンドのメンバーを牢獄送りにするため。

依頼人のおじいさんの情報によると、この層にタイタンズハンドのリーダーがいると言うのだ。

 

「でも、今ある情報ってロザリアって名前の赤髪の女ってだけだろ?」

 

「地道に探すしかないね」

 

「だよな………」

 

ジュンには悪い事したし帰ったらご飯でも奢ってあげようかな?

すると、

 

「ゴルルル!」

 

「ピナ!ピナ!ピナ~!!」

 

女の子の叫ぶ声が聞こえた。

ボクとジュンは声がした方に走り出した。

走った先には女の子のプレイヤーがゴリラのモンスター三匹に襲われていた。

 

「ジュン!!」

 

「ああ!!」

 

ボクは片手剣ソードスキル”ホリゾンタル”でゴリラの後ろから右薙ぎして三匹全てにに攻撃を当てる。

少なくなったHPにジュンが三連撃の両手剣ソードスキル”スコッピード”で残りのHPを削り取る。

 

「大丈夫?」

 

ボクは泣いている女の子に出来るだけ優しく声を掛けた。

ジュンは周りを警戒してくれてる。

 

「ピナ……私を1人にしないでよ……」

 

女の子が地面に落ちている一つの羽を両手で拾い上げて羽を抱き締めた。

 

「それは?」

 

「ピナです……私の大事な……」

 

「ビーストテイマー……ねえ知ってる?第47層の思い出の丘って言う所にテイムモンスターを生き返らせる花のアイテムがあるんだ。一緒に行かない?」

 

「おい!ユウキ!俺達は………」

 

ボクはジュンに笑ってみせた。

ジュンが言いたいのは分かるけど、どうしてもボクはこの子を助けたいって思った。

 

「え?でもご迷惑じゃ?」

 

「大切な友達を生き返らせなきゃね」

 

ボクは女の子にも笑ってみせた。

 

「私、レベルが低いですし……」

 

「余ってる装備があるんだ。余り物だけど最前線のドロップ品だから性能は確かだよ!」

 

ボクはついでにウィンクをしてみた。

 

「何でそこまで?」

 

女の子が不思議そうに聞いてきた。

 

「私も大切な物が無くなった時のその気持ち少し分かるんだ……」

 

和人が目を覚ましてくれなかった時、とても心細かった。

そんな時は誰かと一緒にいるのが一番良い。

 

「わ、私シリカっていいます!よろしくお願いします!!」

 

シリカちゃんは涙を拭き何かを決心したような顔立ちになった。

ジュンは肩を落としていた。

 

「よろしく!ボクはユウキって言うんだ!!彼はジュン!」

 

「どうも、よろしく!」

 

うん!何事も諦めが肝心だよね、ジュン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   第35層 ミーシェ

 

「シリカちゃん発見!!随分遅かったね。今度パーティー組もうよ、好きな所連れてってあげるよ!」

 

シリカちゃんがホームとしているミーシェに着くと、どっぷりと太ってる人とガリガリに痩せてる人がシリカちゃんをナンパしに来た。

誘い方が危ない人みたい………

 

「お誘いは嬉しいですけど、しばらくこの人達とパーティ―組むことになったので」

 

シリカちゃんがボクとジュンを紹介する。

すると、ナンパ二人組がジュンを睨んだ。

次にボクを睨………え?目が輝いてる?

 

「さ、行こ?」

 

ボクは逃げるようにシリカちゃんの手を握り歩きだした。

ジュンはナンパ2人組に一睨みしてからついてきた。

 

「シリカちゃんは人気者なんだな」

 

ジュンが笑いながらシリカちゃんに言った。

 

「いえ、マスコット代わりにされてるだけですよ………それに、ユウキさんの方が可愛いですし………」

 

「ボ、ボクが可愛い!?」

 

そ、そんな訳無い!!

でも、やっぱり可愛いって言われると嬉しいよね。

ボクは赤くした顔を両手でぺチぺチする。

 

「あら~?シリカじゃない。森から出られたのね!あれ?あのトカゲは?あ!もしかして!?」

 

「ピナは死にました………でも、絶対に生き返らせます!!」

 

「へ~、なら思い出の丘に行くんだ?でもあんたのレベルで行けるの?」

 

何このおばさん?

嫌な感じでボク嫌いだな。

しかも、ボクとジュンを無視してるし。

 

「行けるさ、そんなに高い難易度じゃない」

 

ジュンがシリカちゃんの前に出て不敵に笑う。

おばさんは急に不機嫌な顔になる。

けど、すぐに馬鹿にするように口を開いた。

 

「何?あんたもその子にたらしこまれたの?見た所ガギだしあんまり強く無さそうだけど?」

 

ボクやっぱりこのおばさん嫌い。

人を見かけで決めたら駄目なのにね。

例えば女顔だけどカッコイイとか。

コミュ障だけど頭良いとか。

あれ?どっちも和人じゃん!!

 

「行こうぜ」

 

ボクとシリカちゃんはジュンについて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何であんな事言うのかな?」

 

シリカちゃんおすすめのチーズケーキがある店に来ていた。

 

「MMOで人格が変わるプレイヤーは多いからな」

 

ジュンがチーズケーキを頬張りながら言っている。

 

「そう言えばあのおばさんって誰なの?」

 

ボクもチーズケーキを食べながらあの嫌なおばさんの事を聞く。

 

「あの人はロザリアさんです」

 

「っ!!ゴホッゴホッ!!」

 

あ、あのおばさんがタイタンズハンドのリーダー!?

ボクは驚きでむせてしまった。

小物感凄かったのに………

 

「大丈夫ですか!?」

 

「大丈夫だよ!それより明日の確認するから部屋に行こうよ!」

 

「そうだな!!」

 

「あ、そうですね!」

 

ジュンも合わせてくれたお陰でバレずに済んだ。

それよりも、凄い偶然。

確かに赤髪でロザリアって名前の女。

間違いなさそうだね。

ボクはジュンに確認の視線を送る。

ジュンは頷いて肯定する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   第47層フローリア

 

「ここがボク達がホームとしている場所でもあるフローリアだよ!!」

 

「わぁ!!すごく綺麗な所ですね!!」

 

シリカちゃんがお花畑を見てはしゃいでいる。

スリーピングナイツの全メンバーで来たかったんだけど攻略もあるし1人だけシリカちゃんが仲間外れみたいだったからやめておいた。

 

「あ、でも………私って邪魔者ですね?」

 

「何でだ?」

 

シリカちゃんが顔を赤くして指をツンツンしている。

 

「カップルが多いのでお二人の邪魔になるかと………」

 

お二人?

ボクはジュンを見てからシリカちゃんを見る。

でも、シリカちゃんがお二人って言ったんだからシリカちゃんとジュンの事じゃない。

ボクとシリカちゃんの事でもない。

ボクはそんな趣味はないし。

って事は………ボクとジュンの事!?

 

「ち、違うよ!!ボクとジュンはそんなんじゃないからね!!」

 

「そ、そうだぞ!!別に俺はユウキの事が好きじゃ………」

 

「え?恋人じゃないんですか!?私てっきり付き合ってるんだと………」

 

シリカちゃんが驚いている。

最後は申し訳無さそうに声をすぼめる。

 

「さ、急いで花を取りに行こうよ!!」

 

ボクは思い出の丘に向かって走り出した。

 

「待って下さいよ~!!」

 

「おい!ユウキ!?そんなに急ぐな!!」

 

だって恥ずかしいんだもん。

恋人、好きな人。

ボクの王子様はいつまでボクを待たせるのかな?

ね、和人!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?シリカちゃんってボクと同い年!?」

 

「え?ユウキさんってボクと同い年!?」

 

「何してんだお前ら…………」

 

思い出の丘を進んでる時、何となく何歳か聞いてみたんだ。

どうしよう年下だと思っていた。

ってジュンは気付いてたの!?

 

「私ユウキさんを年上だとわぁぁ~!!」

 

「シリカちゃん!?」

 

シリカちゃんの足元から触手が付いた食虫植物型モンスターが現れてシリカちゃんを触手で持ち上げた。

 

「きゃ~!!ジュンさんは見ないで下さい~!!」

 

「分かってるよ!!」

 

ジュンが吊るされてるシリカちゃんから目を背ける為に後ろを向く。

少し見たね………

 

「シリカちゃん!!頭の上を攻撃したら一発で倒せるよ!!」

 

「そんな事言われても気持ち悪いです~!!」

 

分かるよシリカちゃん………そのモンスター生理的に無理だよね。

ボクは少し手助けとして触手の一本を片手剣ソードスキル”スラント”で断ち切る。

 

「いい加減にしろ~!!」

 

シリカちゃんが短剣ソードスキル”ラピッド・バイド”の一撃目で残り一つの触手も斬り、二撃目で脳天を突き刺す。

 

「見ました?」

 

シリカちゃんが自分のスカートを押さえて恥ずかしそうにしている。

だから、ボクは正直に教えてあげる。

 

「ジュンが少し見てたよ」

 

「おい!!ユウキ!!」

 

シリカちゃんが短剣をジュンに向かって振り回し始めた。

本当の事だからボクは悪くないもんね!!

 

思い出の丘、頂上では1つの小さな祭壇があった。

 

「あそこにあるはずだよ」

 

ボクは祭壇を指差す。

 

「あそこに”プネウマの花”が!! 」

 

シリカちゃんが祭壇に走り出した。

でも、祭壇には何もなかった。

 

「無い?」

 

「違うよ、ほら」

 

すると、祭壇から一輪の白い花が咲いた。

シリカちゃんがその花、プネウマの花の茎の部分を手に取る。

 

「これでピナが生き返るんですね!」

 

「そうだ、でも、ここじゃ危ないから宿に戻ってからにしようぜ」

 

シリカちゃんは嬉しそうにゲットしたプネウマの花をメニューにしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道でもシリカちゃんはウキウキしていた。

大切な友達が生き返るんだから当たり前だよね。

出来ればボクも喜びたいけどまだ終わりじゃないんだよね~これが。

 

「何で隠れているのかな?お・ば・さ・ん?」

 

川を渡るための橋の上でボクは嫌味たっぷり含んだ声で木の後に隠れているおばさんに言った。

 

「口の悪い小娘ね~。私はおばさんじゃないわよ」

 

「ロザリアさん?何で?」

 

木の後からは先が十字になっている槍を持ったロザリアが出てきた。

メイクバッチリだからおばさんじゃなくてもおばさんに見えるよ!! 

その点、ボクはノーメイクでお肌ピチピチの元気な10代!!

 

「その様子だとプネウマの花をゲット出来たのね。それじゃ、その花渡してくれないかしら?」

 

「流石、オレンジギルド、タイタンズハンドのリーダーロザリア。要求がストレート」

 

ジュンが一歩前に出てロザリアの正体を暴く。

 

「シルバーフラグスの元リーダーの依頼でお前を牢獄に送る!」

 

「元?」

 

シリカちゃんがまだ状況を把握してないのでボクが説明して上げる。

 

「少し前にねシルバーフラグスってギルドがオレンジギルドのタイタンズハンド襲われたんだ。僕達はそのリーダー、ロザリアって名前のプレイヤーを探してたんだよ。囮みたいにしちゃってごめんね」

 

「ロザリアさんがオレンジギルドのリーダー…………」

 

「あと、一応これ持ってて」

 

驚いているシリカちゃんにボクは転移結晶を渡す。

 

「は!あんたやっぱりガキね。この人数に勝てると思ってるの?」

 

ロザリアが指をパチンっと鳴らすと木の後から続々とカーソルがオレンジのプレイヤーが現れる。

 

「あんなに沢山!!ユウキさん!!ジュンさんが危険です!!」

 

シリカちゃんがボクの腕を掴んで引っ張る。

 

「大丈夫、ボク達は攻略組だよ?」

 

「でも!!」

 

シリカちゃんが心配そうにジュンを見ている。

そのジュンはメニューから回廊結晶を取り出す。

 

「大人しく牢獄に入れ!!」

 

「入る訳無いでしょ。ほら!さっさと身ぐるみ剥いじゃいな!! 」

 

ロザリアの一喝と共に数多のオレンジプレイヤーがジュンに向かって走り出した。

 

「おりゃ~!!」

 

ジュンは走ってくるオレンジプレイヤー集団の中心に両手剣ソードスキル”テンペスト”で突っ込む。

両手剣の突き技であるこの技でオレンジプレイヤー集団はボーリングのピンの如く空中に散らばった。

 

「おい!!こいつスリーピングナイツのジュンじゃないか!?」

 

川に落ちたプレイヤーがずぶ濡れになりながらジュンに指を向ける。

 

「は~?こんな場所に攻略組のスリーピングナイツのメンバーがいるはずないだろ?」

 

ロザリアが少し焦りながら否定している。

残念ながら攻略組ですよ~!!

いや~、スリーピングナイツがここまで有名になるなんて嬉しいね!!

 

「間違いねーよ、ロザリアさん!!その後ろにいるあの女!スリーピングナイツのリーダー”深縹(こきはなだ)の舞姫”だ!! 」

 

ジュンに吹っ飛ばされたオレンジプレイヤーの一人がボクを指差して叫んでいる。

深縹(こきはなだ)の舞姫、ボクのナイトリークロークの色とボクが踊るように戦う事から付けられたボクの二つ名。

他にも”閃光”や”黒の剣士”って呼ばれてる人もがいる。

呼ばれる方は嬉しいけど恥ずかしいんだよね。

 

「ボクの事知ってるんだ!!」

 

それでも有名人になったみたいで嬉しいね!!

 

「なら、ボクに敵わないのも分かってるよね?早く牢獄に行きなよ」

 

ボクが言うとジュンが回廊結晶を使い牢獄へと続く門を作った。

諦めたオレンジプレイヤー集団はトボトボと門の中に入っていく。

しかし、ロザリアだけが1人残った。

 

「嫌だって言ったらどうなうんだい?」

 

「このナイフで麻痺状態にしてから放り込む」

 

ボクは腰に下げていた小さなサバイバルナイフをロザリアに見せ付ける。

 

「私はグリーンだよ?私を攻撃すればあんたはオレンジになっちまうよ!!」

 

ロザリアは急に元気になって勝ち誇る。

嫌な感じだけどロザリアが言ってる事は正しいんだよね。

グリーンのプレイヤーがグリーンのプレイヤーのHPを少しでも減らしたら、攻撃したプレイヤーは犯罪者扱いされてカーソルがオレンジになっちゃう。

街には入れないし他にも色々面倒な事があるしグリーンに戻る為のクエストには時間が掛かる。

そうすると、スリーピングナイツのメンバーに迷惑が掛かっちゃう。

どうしようかな?

 

「私は捕まらないよ!!」

 

「待て!!」

 

ロザリアが腰のポーチから転移結晶を取り出して天高く持ち上げる。

こうなったらオレンジになるのを覚悟で攻撃するしか…………

ジュンも走り出していた。

やるしかない!!間に合え!!

 

「転移!!アルゲー……なっ!!」

 

ロザリアの持っていた転移結晶がピックによって弾かれた。

しかも、転移結晶だけを当てたからHPは減ってない。

 

「誰だ!!」

 

ロザリアがピックが飛んできた少し後ろの木の上を見る。

だけど、誰もいない。

 

「何が起きたんですか?」

 

シリカちゃんがロザリアに向かってダッシュ寸前だったボクの袖を軽く引っ張ってくる。

 

「誰かがピックを投げておばさんの転移を止めたんだよ、隠蔽スキルで隠れてるけどね」

 

ボクは索敵スキルで隠れているプレイヤーを見つけようとするけど反応しない。

ボクの索敵スキルは確かに低いけから見破れない時もある。

けど、恐らくボク達と同じ攻略組のプレイヤー。

索敵スキルが一番高いタルケンを連れてくるんだったよ…………

 

「くっ!!」

 

今度は別の場所からピックが飛んでくる。

でも、当たらない。

攻略組だと思ったけど違うのかな?

とりあえずボクとジュンにシリカちゃんは様子を見る事にする。

 

「この卑怯者が!!姿を現しなよ!!」

 

ロザリアの周りにピックが5本ほど刺さった所でロザリアが槍を地面に突き刺して堂々と叫ぶ。

勿論、出てくるとは思ってなかったボク達は驚いた。

回廊結晶で作った門の前にフードを被ったプレイヤーが隠蔽スキルを解除して出てきたのだ。

 

「やっと出てきたわね、卑怯者さん?」

 

ロザリアはこいつなら勝てると思ったのかフードのプレイヤーに槍を構える。

イラついているからオレンジになる事なんて気にしてないんだ。

でも、勝てる訳無い。

多分、あのフードのプレイヤーは…………

 

「これは牢獄行きだよな?」

 

「え?ああ、そうだ!」

 

フードのプレイヤーがジュンに向けて聞いてくる。

ジュンも慌てて返事をする。

 

「私を攻撃したらオレンジになるよ!!」

 

「俺は1日や2日オレンジになっても支障は無い」

 

フードのプレイヤーが淡々と答える。

ロザリアは悔しげに舌打ちをして逃げる方向を確認し始めた。

バレバレすぎるって、それにどうするかは分からないけど彼からは逃げられないよ。

 

「逃がすかよ!」

 

フードのプレイヤーが右手をおもいっきり引っ張る。

すると、ロザリアの体が何かに縛られた様になりその場に倒れこむ。

 

「な、何で動かない!!」

 

ロザリアにも自分に起きた現象が分からないらしい。

しかし、目を凝らして見るとロザリアの体に何か巻き付いてるのが分かる。

 

「糸?」

 

ジュンもロザリアをよーく見て言った。

ボクにも同じ物が見えた。

フードのプレイヤーは自分以外に糸にも隠蔽スキルを使い隠してたのだ。

そして、ピックで罠がある所までロザリアを誘導したのだ。

いや、よ~く見るとピックにも糸があって見えない糸の結界を作って、ロザリアがボク達の所にボク達はロザリアの所に行けないようになっている。

 

「HPが減らなきゃオレンジにはならない」

 

フードのプレイヤーが両手で糸を引っ張りロザリアをそのまま門の中に放り込む。

 

「門閉めていいぞ」

 

「…………あ、ああ!」

 

ジュンは急いで門を閉じる。

フードのプレイヤーは軽く右手を引っ張る動作をする。

すると、地面に刺さっていたピックがフードのプレイヤーの手に帰って行く。

フードのプレイヤーはそのまま転移結晶で転移しようとした。

 

「糸ってよく思い付いたな!!何かお礼をさせてくれ!!」

 

ジュンがフードのプレイヤーの所に駆け寄る。

 

「こっちも依頼だったから必要ない。多分同じ依頼人だと思うし。それに、糸はいつも使ってる。言っとくけど糸スキルなんて無いからな」

 

「スゲーな!! でも、俺達も助かったしやっぱりお礼しないと、な!ユウキ!!」

 

ジュンが振り向いてボクを見る。

フードのプレイヤーもこっちを見てきた。

そして、何故かジュンとボクを交互に見る。

何か勘違いされてない?

 

「なら…………」

 

「お、何かあるか?何でも言ってくれ!」

 

ジュンが自分の胸を拳で叩く。

何でもって太っ腹だね。

フードのプレイヤーはジュンの耳元でボソボソと何かを言った。

小さい声だし距離もあるのでボクやシリカちゃんには何を言ったか分からなかった。

でも、ジュンは目を丸くして言葉を失っている。

 

「じゃ、俺はこれで」

 

フードのプレイヤーは転移結晶で何処かに転移していった。

ジュンに何を言ったんだろう?

 

「ジュンさん、何を言われたんでしょうか?」

 

「気になるね」

 

ボクとシリカちゃんはジュンの所まで行った。

ジュンはまだポカンとしている。

しかし、突然、

 

「ユウキ!あのフードのプレイヤーとどんな関係なんだ!?」

 

「わぅ!わぅ!わぅ!!」

 

ジュンがボクの肩を力強く振りまくる。

首がもげる~!!

 

「ジュンさん!ユウキさんが困ってます!」

 

シリカちゃんが止めてくれたお陰でボクは首がもげずに済んだ。

ボクは首を擦りながらジュンに聞いた。

 

「で、何を言われたの?」

 

「何って、

 

   ”ユウキに手を出すな、絶対だぞ”

 

って威嚇するように言われたんだよ!! 」

 

「手を出すな?」

 

シリカちゃんがボクを見てくる。

ジュンは何か必死な様子だ。

 

「………卑怯者」

 

ボクは俯きながら呟いた。

きっと、ボクの顔は真っ赤になってると思う。

 

「ユウキさん?」

 

シリカちゃんが不思議そうにしている。

 

「シリカちゃんは今すぐにでもピナを生き返したいよね?そうだよね?うん、そうだね!よし!帰ろう!!」

 

ボクは速足で歩き出した。

 

「え?ちょっとユウキさん!!手を出すなってもしかして!!」

 

「まだ違う!! 」

 

ボクは速足から走るに切り替えた。

真っ赤な顔を見られたくない!!

 

「ユウキ!!今、まだって言ったよな!?」

 

「何も聞こえない~!!」

 

和人のバカ~!!しっかり正面向かって言いなよ!!卑怯者!!

こんなの反則だよ………

その後、ピナが生き返ってもシリカちゃんとジュンからは(特にジュンから)変な視線を向けられ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   第4層ロービア

 

「和人様、依頼はどうでした?」

 

「威嚇してきた」

 

「はい?何言ってるんですか?質問の意味分かってますか?頭大丈夫ですか?」

 

「分かってる。依頼も成功して威嚇も成功した」

 

「……誰を威嚇したんですか?」

 

「秘密」

 




今日誕生日の自分です!!
なので、誕生日プレゼントに評価と感想お願いします!!!!

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