ソードアート・オンライン ~少女のために~   作:*天邪鬼*

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ユウキは死なせない!!絶対に!!
SAO最終回を見て心に決めた事です……


18話 ボス戦

「___っと、この様な出来事があって私は今、和人様の前にいます」

 

「な、なるほど……」

 

ここは俺とアルゴが拠点としている家。

今俺は突然現れたアイにどうやって来たかを説明してもらっていた。

一緒にいたアスナには何も言わないで、と言っておいたけどあれは変態を見る目だった……

 

「和人様はこれからどうするんですか?」

 

「明日、1層のボス戦があるんだ。それに出るつもりだけど……まさか?」

 

「はい、私も出ます」

 

アイは腰に両手を当て言い張る。

 

「ダメだ!そもそも、アイはレベルが低いだろ?」

 

アイの話ではログインしたのは昼前、それからずっと俺を探していたらしい。

なら、レベル上げも全くしてないも同然だ。

 

「茅場さんから天才と言われた和人様とあろう者が何か勘違いしていませんか?」

 

「勘違い?」

 

アイは俺を小馬鹿にする様に笑う。

天才って褒めているのか馬鹿にしてるのかわからん。

多分、馬鹿にしているんどろうけど。

 

「確かに私はログインしてからずっと和人様を探していました。しかし、街と街の間はモンスターが沢山いました。街の移動にもレベル上げは必須なので和人様を探しながらもモンスターを倒して来たので、レベルは今や5です」

 

1日で5レベになるのは凄いがそれでもボス戦となると少し不安だ。

 

「ダメだ、アイを危険な事に巻き込みたくない」

 

俺は首を振る。

しかし、

 

「嫌です!私は和人様と一緒に行きます!これは決定事項です!」

 

アイは自分の顔を俺の顔にぐいっと近づけて頬を膨らましている。

今まで声だけのアイだったので体がある今、アイが何を思い何を考えているかが体の動きでわかるようになった。

てか、顔が近い!え?何でいい匂いがするの!?

 

「お~ス、キー坊あーちゃんとは上手く話せた……カ……」

 

「ア、アルゴ……」

 

扉が開きニヤニヤ顔だったアルゴの顔が少しずつ引きつってくる。

アルゴの目には美少女とキス寸前の俺がうつっているだろう。

そして、何も言わずに扉を閉めていった。

 

「せめて、何か言ってくれ!!!」

 

俺が、俺が何をしたって言うんだ……

 

 

 

「へ~、この子キリト君の親戚なんだ!可愛い子だね!」

 

「か、じゃなくて、キリト様。これは何ですか?」

 

あの後、アルゴの誤解を解きメールでアスナの誤解も解いた。

アルゴは現実でアイと会った事があるのですんなりとわかってくれた。

しかし、アスナにはアイがAIということは黙っておく。

理由は偏見。

アスナがそんな人だとは思ってないが一応って事だ。

アルゴもその辺はわかってくれている。

 

「ア、アスナ?アイが困ってる……」

 

結局、駄々をこねるアイをボス戦に連れてくことになり、ボス戦の集合場所に一足早くいたアスナにアイを紹介した。

するとアスナがアイに抱きつきほっぺすりすりをしている。

この攻撃にアイは麻痺しているのだ。

ほっぺすりすりの麻痺効果はポケモンだけじゃないとわかった瞬間だった。

 

「キリト様、あの人怖いです」

 

アスナから解放されたアイは俺の後ろに回り込んでアスナを睨む。

 

「キリト君の身近な人って人見知り激しい人が多いの?」

 

「いや、別に多いって訳じゃないけど……」

 

アスナにはアイは俺の親戚と伝えている。

小さい頃から遊んでいたら何故か様を付けるようになったとも言っておいた。

自分でもギリギリの設定だと思うけどなんとかなるさ!!

 

「このパーティーは3人になったのかい?」

 

後ろを見るとディアベルがパーティーの再確認をしていた。

ディアベルはボス戦の司令塔、全てのパーティーの事を知っておく必要がある。

 

「突然の参加をお許しください、私はアイと申します」

 

アイはディアベルの前で深々と頭を下げて謝りながら自己紹介をする。

こんなに小さい子の大人びた行動にディアベルも頭を下げて、いえいえっと言っている。

 

「キリト君だったかな?彼女は何歳なのかな?」

 

「あ、え~っと……」

 

マズイ、やはり来たかこの質問。

ただでさえナーブギアの対象年齢を大きく下回っている様に見えるアイ。

しかも、アイの年齢は2歳。

外見と言葉使いそして行動、全てが年齢と当てはまらない。

だって、AIなんだもん……

 

「女性の年齢を聞くのはどうかと思いますよ?」

 

アイがジト目でディアベルを見ていた。

これまた外見では想像出来ない言葉をアイが言ったのでディアベルは目を丸くした後、失礼しましたっと言い違うパーティーの確認をしに行った。

 

「しっかりした子だね」

 

アスナが横でアイを見ながら何故か目を輝かせている。

 

「知識量も半端ないぞ、現実では太宰治の本とかを読んでたからな」

 

これは本当の話。

ある時、アイを呼んだのに返事がなかった時があった、どうしたのかと思いパソコンの画面を見てみると太宰治の人間失格が勝手に購入されていたのだ。

なんだこれ?っと思った時、アイが申し訳なさそうに私が勝手に購入してしまいましたっと自白。

どうやら、呼んでも返事をしなかったのは怒られると思ったらしい。

何故買ったんだ?って聞くと読みたかったからっと言った。

これからは買う時にちゃんと俺の許可を取る事を条件に俺はアイを許した。

その後、度々アイから本が欲しいとお願いされるようになったが、ほとんどが昔の人の本で女子が読むような本は1冊もなかった。

 

「アイちゃんを信頼しているんだね」

 

アスナが横で今度は俺の方を見て笑っていた。

 

「何でそう思うんだ?」

 

「だって、キリト君さ、話すときの口調が変わってるよ。何て言うか、自然になったって感じ」

 

「あ……」

 

自分でも今きずいた。

アイが来てから対人恐怖症を全然意識せずに人と話せている。

 

「そっちの方が私は好きだよ」

 

「好っ!?」

 

「ち、違うよ!!別にそっちの好きじゃなくて友達としてって事!!」

 

俺とアスナは2人であたふたしてしまう。

ですよね!アスナには素顔を見せてないからね!

俺の顔を見たらもっと男らしい方がいいって言って俺なんか相手にされないし!

そもそも、俺の好きな人は……

 

「キリト様」

 

アイがじ~っと俺を見ている。

 

「何?」

 

「浮気はダメですよ」

 

アイは俺にだけ聞こえる声で少し怒った声で言った。

俺もアイにだけ聞こえる声で、

 

「わかってる」

 

っとだけ、言っておいた。

アイはそれで満足したのか何も言わなかった。

アイには、ユウキと会うには少し時間が必要だっと昨日言っておいた、色々言われるとおもっていたが、私は和人様に従いますっと宣言されて何故か恥ずかしくなってしまった。

 

「では、全てのパーティーが揃ったのでボス部屋の向かう!!」

 

「「「「お~!!!!」」」」

 

ディアベルが叫ぶと周りも気合いを入れて叫ぶ。

俺達は、第1層のボス部屋に歩き出した。

 

 

 

 

「準備はいいか?」

 

ボス部屋に着くとディアベルはさっきとは逆に静かに皆に確認する。

皆も返事はせず頷くだけ。

これからボス戦だと嫌でもわかる不思議な雰囲気だ。

 

「よし、行くぞ!」

 

ディアベルがボス部屋の大きな扉を開ける。

扉が開くと大勢のプレイヤーがボス部屋に崩れ込む。

俺とアイとアスナもそれに合わせて中に入る。

入る瞬間、右斜め前にユウキがいた。

俺はユウキの背中を見て身が引き締まる。

 

「絶対に死なせない」

 

俺は小さくユウキに向けて言った。

心なしかユウキが頷く様な仕草をしたのは気のせいだったと思う。

 

 

ディアベルを中心に陣形を作る。

俺達は右側でボスの取り巻きの”センチネル”を倒す役だ。

ボスの”インファング・ザ・コボルド・ロード”への攻撃はディアベルなどのメンバーが多くレベルも高いパーティーが担当している。

 

「グワァァァァァァ!!!!」

 

人ではない雄叫びが聞こえると部屋の奥が明るくなりインファングザコボルドロードが姿を現す。

豚のような牛のような体に盾と斧を持って俺達プレイヤーを威嚇する。

インファングザコボルドロードは飛び上がりプレイヤーの少し前に着地した。

すると、インファングザコボルドロードの周りに取り巻きのセンチネルが次々と現れる。

 

「突撃~!!!」

 

「「「「お~~~!!!」」」」

 

ディアベルの掛け声と共にプレイヤー全員がインファングザコボルドロードとセンチネルに向けて走り出す。

第1層のボス戦が始まった。

 

 

 

「アスナ!スイッチ!」

 

「うん!」

 

俺がセンチネルの攻撃を”スラント”で弾き、その隙にアスナがセンチネルに向けて”リニアー”を一閃。

戦闘中にアスナがスイッチを知らないというアクシデントが合ったがアイのサポートもありなんとかなった。

 

「綺麗ですね」

 

アイが短剣を構えながらアスナのリニアーを見ていた。

リニアー、単なる一発の突きだがアスナのリニアーは速度が異常で手元が霞んで見える。

 

「ああ、」

 

ソードスキルの光がただでさえ美人のアスナをさらに引き立たせている。

 

「キリト君!アイちゃん!次行くよ!!」

 

「よし!」

 

「はい!」

 

俺達は新しいセンチネルに向かって攻撃を開始する。

 

 

 

数分後、ボスのHPが一段となった。

 

「よし!一旦退くんだ!!」

 

ディアベルがボス担当のパーティーに指示を出す。

しかし、ここでまた空気を読まない奴が出てくる。

 

「何いってんのや!!ここは一気に総攻撃やろ!!」

 

キバオウだ。

キバオウはディアベルの指示を無視して1人でインファングザコボルドロードに突っ込んでいく。

 

「キバオウさん!!」

 

ディアベルはキバオウを止めようとするがキバオウは全く聞いていない。

 

「LAはわいのもんや!!」

 

キバオウはボスのLAを狙っていたのだ。

 

「キリト様、ボスは曲刀に持ち替えるんですよね?」

 

キバオウのアホな行動を視界の隅で捕らえながら数匹目のセンチネルを倒した時だ。

アイが目を細めてインファングザコボルドロードも見ていた。

 

「βテストの時はな」

 

「なら、変です」

 

「アイちゃん?変って何が?」

 

周りを警戒しながもアイの話を俺とアスナは聞く。

 

「刀身が長すぎます。あれはまるで………」

 

「マズイ!!」

 

アイが最後まで言わずともわかった。

今まではセンチネルに気を取られていて気にしていなかったがインファングザコボルドロードの腰に着いている武器は明らかに曲刀ではなく……

 

「野太刀だ!!」

 

俺は叫んだが意味が無かった。

インファングザコボルドロードは最初に持っていた盾と斧を後ろに放り投げてすかさず野太刀を抜刀する。

 

「ブァァァァァ!!」

 

インファングザコボルドロードはキバオウに刀のソードスキル”浮舟”を発動する。

浮舟は下から相手を空中に打ち上げる様に振り上げる下段技。

浮舟自体に威力はあんまり無いが空中に放り出された相手を次のソードスキルで滅多打ちにするための繋ぎ技だ。

 

「なっ!!」

 

そんな事知るはずの無いキバオウは浮舟が直撃し空中に舞う。

 

「ブァァァァァァ!!」

 

インファングザコボルドロードは空中で回避行動が出来ないキバオウに新たな刀ソードスキル”羅刹”の構えをする。

羅刹は刀ソードスキルの中でも威力の高いソードスキル、今の浮舟が直撃した状態のキバオウが羅刹をもろに受けたら確実にHPが全損してしまうだろう。

 

「この!!」

 

「キリト君!?」

 

「アスナ様!センチネルが!!」

 

俺はボスに走り出した瞬間、センチネルがリポップし俺止めようとしたアスナの行く手を阻む。

アスナは悔しそうにセンチネルと向き合う。

 

「とどけ!」

 

俺は今にも羅刹の一太刀目をキバオウに当てようとしているインファングザコボルドロードを目指し全力でジャンプをする。

しかし、当然届かない、がジャンプの最高点の所でソードスキル”ソニックリープ”を発動させる。

ソニックリープは発動中凄まじい速さで体を前進させて相手を斬る相手の不意を突く技。

空中で発動すれば自分が向いてる方向に体が動くので今の俺の状況の様に少しの間だけ飛翔する事も可能だ。

 

「は!」

 

どうにか間に合い、羅刹の一太刀目にソニックリープを当てて羅刹自体を相殺しようとする。

体に当てるだけでは羅刹は止まらないと思ったからだ。

しかし、思わぬ事が起きる。

 

「がっ!!」

 

ソニックリープが羅刹の威力に負けたのだ。

羅刹はソニックリープを押し返し俺ごと弾き飛ばす。

俺はアイとアスナがいる元の場所に吹き飛ばされる。

 

「きゃ!」

 

「キリト様!?」

 

かなりの距離を空中から飛ばされ俺はアイとアスナが戦っているセンチネルに激突する。

激突の衝撃でセンチネルは消滅したが、俺のHPがレッドゾーンに入っていた。

 

「キリト君!ポーションを!!」

 

アスナが駆け寄って抱き起こしてくれる。

その時、被っていたフードが落ちた。

 

「へ?」

 

アスナが場違いな間抜けな声を出す。

 

「お、女の子みたい……」

 

それよりもポーションを……

俺は意識を失った。

 

 

 

 

目を開けるとアイが倒れている俺を覗いていた。

 

「体は大丈夫ですか?」

 

アイが心配そうに聞いてくる。

蒼い瞳が少しだけ潤んでるのがわかる。

 

「何とかな、そうだ!キバオウは!?」

 

俺は起き上がりアイに聞く。

 

「キリト君が突っ込んだ時に出来た隙にディアベルさんがキバオウさんをキャッチしたのよ。今は体制を立て直しているところよ」

 

後ろにはインファングザコボルドロードを見ているアスナがいた。

 

「死人は出てないんだな?」

 

「ええ、キリト君のお陰でね」

 

良かった、俺が気絶している間に死人は出てない。つまり、ユウキは生きている。

 

「にしても、キリト君……」

 

「な、なんだ?」

 

アスナが言いずらそうにモジモジしている。

頭の上に?が出てくるみたいに俺は首をかしげる。

 

「か、かわいい顔だね」

 

「え?……あ!!」

 

顔と言われ顔に手を当てる。

そこで、フードを被ってないのにきずき、顔が赤くなってしまう。

俺は急いでフードを被り治した。

幸い、ユウキは俺がいる逆のボス部屋の右側にいるはずなので顔は見られていないはずだ。

 

「どうしてフードを被るのよ?」

 

「人見知り何だってば!あと、少し事情が……」

 

最後はゴニョゴニョと声が細くなってしまった。

アスナは、そっか、っと深くは追及してこなかった。

 

「このボス戦もあと少しだから私達の番はもうないかな」

 

話を変えアスナがインファングザコボルドロードのHPを指差しながら言った。

見ると残り一段のHPはレッドゾーンに入っていた。

 

「皆下がれ!俺が行く!!」

 

は?

ディアベルは皆を下がらせて自分が前に出た。

ここはボス担当の全プレイヤーでソードスキルを使ってごり押しじゃないのか?

HPは後僅か、ソードスキルを三発入れれば十分倒せる。

 

「何で?」

 

アイも同じ疑問を抱き、戸惑っている。

ディアベルはソードスキルを発動させようとしていた。

その時、一瞬だがディアベルは後ろで待機しているキバオウを見た。

俺はそれを見逃さなかった。

同様にアイもわかったようだ。

 

「グァァァァァァ!!!」

 

しかし、その一瞬でインファングザコボルドロードはディアベルの脚めがけて刀を振るう。

攻撃は見事ディアベルの脚に当たってしまいディアベルは転んでしまう。

ディアベルの後ろにいたプレイヤー達が急いでディアベル目指して駆け出す。

だが、遅かった。

ディアベルは浮舟からの羅刹のコンボを受けて俺と同じようにこちらに吹っ飛んできた。

左側のセンチネルを担当していたプレイヤー達が駆け寄る。

勿論、俺やアイ、アスナも駆け寄る。

 

「キバオウさんと同じで欲が出てしまったよ……」

 

プレイヤーの一人がポーションを飲ませようとするがディアベルが自ら拒む。

 

「すまない……ボスを……倒してくれ……」

 

ディアベルは数人のプレイヤーに囲まれながらポリゴンとなり消えていった。

現実とは全く違う死。

あまりにも呆気なくディアベルはSAO及び現実世界から消えてしまった。

 

「うああああ!!!」

 

声がした方を見るとインファングザコボルドロードが次の獲物を決め襲いかかろうとしていた。

 

「アイ、お前は付いて来てくれるか?」

 

「当たり前です。私はずっと和人様に付いていきます」

 

俺の問いかけにアイは笑顔で答えてくれた。

 

「……ありがとう」

 

俺はアイの頭に手を乗っけて撫でる。

アイは目を瞑り嬉しそうにした。

そして、撫でるのを止めると俺はインファングザコボルドロードを見つめる。

 

「行くぞ!」

 

「はい!」

 

俺とアイはは同時に走り出す。

SAOで体を動かす際、ナーブギアが首の後ろで脳の信号をキャッチしてその情報がSAOに反映される。

なら、脳の信号が速ければ速いほどSAOでの動きが強化されるんじゃないか?っと俺は思ったのだ。

ボス戦の少し前に試したがその通りだった。

とにかく、自分は速い、自分は高く跳べる、っと思う事がコツだった。

それによって、ソードスキル程ではないが確実にスピードやジャンプ力が上がったのだ。

アイは真のAI、演算機能は並みのパソコンよりは遥かに上だ。

そして俺、一応にも天才に天才と言われたんだ、自信を持ち自分は天才と思い込む。

 

「ふっ!」

 

俺はインファングザコボルドロードの前で急ブレーキしプレイヤーを攻撃しようと右上から繰り出されるインファングザコボルドロードの通常攻撃をアニールブレードで受け止める。

次にアイが跳び上がりインファングザコボルドロードの受け止められた右腕の上に乗って顔までダッシュ。

刀を持っていない左手がアイを掴もうとするが更に腕の上で跳び上がる。

 

「せ~りゃっ!!」

 

アイは器用に前宙をし前宙の遠心力を使い短剣のソードスキル”アーマーピアス”をインファングザコボルドロードの脳天に炸裂させる。

アイはそのまま、更に深く脳天に短剣を刺しこみインファングザコボルドロードから離れない。

インファングザコボルドロードはアイを振り払おうと頭を振るがアイは短剣にしがみついて離れない。

少しずつインファングザコボルドロードのHPが減っていく。

 

「ハアアアアア!!!」

 

すかさず、俺はインファングザコボルドロードの太った腹を片手剣のソードスキル”バーチカルアーク”で斬る。

一撃目は通常のバーチカル、その後剣を返して一撃目より深く下から斬り上げる。

 

「ギャアアアアア!!」

 

インファングザコボルドロードのHPは全て無くなり通常のモンスターより派手にポリゴンとなり消滅した。

 

「よっと」

 

アイが上から落ちてきたので両手で受け止める。

 

「あ、ありがとうございます」

 

アイは顔を真っ赤にしてお礼を言った。

お姫様だっこってそんなに照れるものなのか?

 

「キリト君とアイちゃん凄い!」

 

「ありがと、これで何とか第1層クリアだ」

 

「キ、キリト様……助けて下さい……」

 

アスナが興奮してアイを抱き締めている。

アイは手を伸ばして俺に助けを求めている。

 

「ねえ!!」

 

振り向くとよく知った顔の少女が難しい顔をしながら俺達を見ていた。

 

「間違ってたら悪いんだけど……しかして____」

 

「何や今の!!!???」

 

しかし、少女の話を差し置いて、奴がまた空気を読まない。

だけど、少し助かったとも思ってしまう。

 

「何って何がですか?」

 

アイが逆に聞き返す。

 

「あのスピードは異常や!何かのスキルやろ!わいらビギナーが知らんスキルを使ってんのや、あんたとそのちっこいのはβテスターやろ!そのスキルがあればディアベルはんも死なずに済んだし、わいもあんなことにならなかったはずや!!」

 

「ちょっとあなたね!!」

 

アスナがキバオウを睨んで反論しようとする。

 

「他にもいるんやろ!こん中にβテスターが!」

 

何てバカな奴だ。

このままだとせっかく第1層をクリアしたのに雰囲気を悪くする。

このままではプレイヤー内に亀裂が入りお互いを信じなくなって次のボス戦に影響が出る。

 

「キリト様……」

 

アイが俺の腕を掴んでくる。

俺はアイを見るとアイは視線であの少女を見るようにっと言っていた。

見るとさっき少女はキバオウを睨んでも反論もしていなかった。

何も言わずにただ、俺を見ていた。

バレたか……

 

「アイ、お前は俺に付いて来てくれるんだよな?」

 

「はい、何があっても。私は和人様と一緒です」

 

その言葉に安心した俺はまず深呼吸をする。

そして、顔を見せないようにしながら少女の元に行き少女の耳元で、

 

「ごめん、もう少し待っていてくれ……」

 

そのまま、俺はアイと一緒にキバオウの前に行く。

 

「俺達をただのβテスターと同じにするな」

 

「なんやと!」

 

俺は叫ぶのではなく普通に喋る。

 

「俺はβテスト時代に誰も行った事がない層まで行った。その時のクエストでスキルじゃないがあのスピードを出すためのコツを教わったのさ。他にも色々知ってるぜ?情報屋なんて必要無いぐらいにな」

 

緊張で手が震えてしまう。

が、アイが手を握って震えを止めてくれた。

 

「なんやそれ、βテスターどころじゃないやん!チートやチーターや!!」

 

「そうだ、そうだ!」

 

「チーターめ!」

 

キバオウの後ろで喚くプレイヤー達。

SAOは皆で協力するゲームだぞ、俺一人な分けないだろ。

しかし、ハッタリは成功した。

皆が俺に悪意を向ける。

その中に変なことを言う奴がいた。

 

「βテスターでチーター、だからビーターだ!!」

 

ビーターっと言った瞬間周りもビーター、ビーターいい始めた。

 

「良い呼び方だなビーター。そうさ、俺はビーター。これからはβテスターごときと同じにするなよな」

 

最後に俺はキバオウを小馬鹿にするような目で見た後、第2層に続く階段に向かう。

 

「ボクは待ってるから……」

 

少女とすれ違う時、少女は呟く。

俺はそのまま、階段を登る。

 

「キリト君!」

 

階段の途中でアスナが俺を呼び止める。

 

「別にキリト君が悪者にならなくてもいいじゃない」

 

「いいんだよ、これで俺に話し掛けるプレイヤーも減るだろうしな」

 

後でアルゴに謝らないとな。

俺と一緒にいたらアルゴの商売に影響がでるしアルゴと行動するのもここまでかな。

 

「キリト君の味方がいないじゃない!」

 

「私がいます。私は常にキリト様の味方です」

 

アイが自分の右手を自分の胸に当てて微笑む。

 

「って事で俺は大丈夫、心配してくれてありがとな」

 

俺はまた、階段を登り始める。

 

「私も味方だからね!」

 

俺は右腕を上げて答える。

 

「強くならなきゃな……」

 

俺は自分自身に言った。

 

「頑張って下さい、私がサポートしますよ、パパ……」

 

「……」

 

「……」

 

無言の時間が続く。

途中から螺旋階段となり俺達はぐるぐる回りながら歩いて登る。

石造りの螺旋階段を登りきり、視界が晴れると俺はアイを見つめる。

 

「……パパって何だ?」

 

「……」

 

「……」

 

「あ~もう!!何で最後までスルーしてくれないんですか!!どうせスルーするなら最後までちゃんとスルーしてくださいよ!!」

 

「スルーしてたわけじゃない!!驚きすぎて頭がフリーズしてたんだよ!! 」

 

「何ですかそれ!?このヤドン ! ! 」

 

「何でだよ!?」

 

緑の牧草に覆われた多層構造のテーブルマウンテンが連なる見事な風景をを全く見ずに口喧嘩をする俺達だった。

 

 

 

口喧嘩もそろそろ疲れてきた時だった。

 

「…………パパって嫌ですか?」

 

アイが口喧嘩に負けてうつむき、本音を呟いた。

俺は驚いたがアイの頭に右手を乗せて、ボス戦の時の様に撫でる。

 

「……嫌なわけないだろ」

 

俺も本音で答える。

アイは撫でている俺の手の上に自分の両手を乗せた。

そして、アイは顔を上げて顔を紅くしながらも笑った。

 

 

かわいいな…………




ソードスキルはホロウフラグメントのソードスキルを多く採用しているので原作やアニメと違う所が多々ありますがご了承ください。
戦闘描写もうまく書けてるか不安しかないです……
優しいアドバイス待ってます!!
それでは、評価と感想お願いします!!!

ちなみにヤドンはポケモンです。

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