ユウキって15歳なんですよね?
「ありがとう和人君。報酬の3000万だが、君の銀行に明日あたりに振り込まれているはずだ」
「ほ、本当に3000万円ですか?」
「お兄ちゃん、茅場さんが嘘を言う訳無いでしょ」
『疑り深いですね』
「いや、だって……」
スグとアイが小声で俺に言ってくる。
何故小声かと言うと、
今、俺達はア―ガス本社の大きな会議室にいる。
茅場さんは俺達が座ってる所の正面、数メートルあるテーブルの先、まさに最高責任者が座る場所の様な所に座っている。
その、俺達と茅場さんの間にはすごい迫力の男性や女性が座っている。
何も言わず、こちらを見ているだけなのに緊張で背中から変な汗が出てしまう。
「我々が騙すと疑うのかね?」
その中で、1番の年長者であろう白髪交じりの男が俺をを睨んで言ってきた。
俺はその男の目を見て体が震えてしまった。
蛇に睨まれた蛙とはこの事、目を逸らせば殺される!!
てか、俺はそんなに他人と会話出来ないんだよ!!
話しかけないでくださいよ!!
俺は口では言えない事を心の中で言った。
「いえ、そうではなくて……」
「まあ、明日になればわかる事だ」
「はぁ……」
男は微笑を含ませながら視線を目の前に置かれているカーディナルシステムの資料に向けた。
よかった~、怒らせたんじゃないかと焦っちゃったよ。
「カーディナルシステムの説明と設定の仕方はこの資料に全部書かれている。
今から、このカーディナルシステムにソードアート・オンラインの設定をしていく、
以上で会議を終える、同時に設定を始めてくれ」
茅場さんが言うと返事も無しにあの迫力満点のア―ガス幹部らしき人達は小走りで会議室を出て行く。
皆、次にやるべき事をするための確認かブツブツと何か言っている。
「そ、それじゃ、俺たちもこの辺で失礼します……」
「お、お邪魔しました~……」
俺とスグはまだ抜けない緊張感から逃げるようにその場を後にしようとする。
「和人君、君は残ってくれ」
「え?」
突然、茅場さんが俺を引きとめた。
「じゃあ、お兄ちゃん!私、ロビーで待ってるからね!」
「あ、おい!」
くそ、スグの奴、自分だけ逃げたな!
「アイ、お前はいるよな?」
俺は携帯に居るはずのアイに呼び掛ける。
『・・・』
「・・・」
お前もか!なるほど、スグの携帯に逃げたな!
俺はこの大きな会議室の中茅場さんと2人になってしまった。
「緊張しないでくれ、渡したい物と少し話がしたいだけだ」
「渡したい物?」
「これだよ、中を見てくれ」
茅場さんは俺に床に置いてあった少し大きな箱をテーブルの上に置いた。
俺は何かと思い、扉から茅場さんの所まで行った。
「これは報酬ではない、私からの個人的なプレゼントだ」
「プレゼント?」
俺は箱を開け中を見た。
「茅場さん、これって……まさか?」
俺は中を見た瞬間、思わず茅場さんに質問してしまった。
「そう、
「なんで、これを俺に?」
ナ―ブギアは今、日本のゲーマーが大注目の夢のような機械、世界初のVRMMORPG
ソードアート・オンラインをプレイするための機会だ。
何と言ってもその魅力は、今まで何かのイベントでしか体験できなかったあの、仮想世界を家庭で体験できるということだ。
「βテストがあるのは知っているね?」
「はい、確か1000人限定の初回生産版の体験版みたいなですよね?」
「ソード・アートオンラインは予定ではあと1週間で完成する。完成したら即その応募で当選した1000人にβ版のソードアート・オンラインを体験、不具合などの最終調整が行われ、10月31日の13時丁度に正式なソードアート・オンラインが開始さる」
「それは知ってます。俺は何故ナ―ブギアを俺にと聞いているんです」
俺は茅場さんの目を見て言った。
確かに、茅場さんはプレゼントだといった。
それはとてもうれしい。
しかし、俺は茅場さんの目を見てると何か企んでいるんじゃないか?
そんな、気がしてならない。
「メディキュボイドを設計したのは私だ」
「な!!」
茅場さんがメディキュボイドを設計した?
何故、それを俺に言う?
茅場さんは知っているのか?
木綿季の事を?
俺は、俺は驚きと疑問が瞬時に訪れ、後ずさりしてしまった。
しかし、茅場さんは俺の目を見て言った。
「すまない、知るつもりは無かったんだが、まさか世界初のメディキュボイドの試験者が君の家族だったとは思わなくてね」
「何処から知っているんですか?」
俺は思わず長袖を着ているのに、火傷の痕が全体にある右腕を左手で掴んだ。
そして俺は茅場さんを見て、いや睨みながら聞いた。
「安心したまえ、私が知っているのは君の家族がメディキュボイドの試験者だと言う事だけだ。」
茅場さんは俺の右腕を少し見てからまた、俺の目を見て答える。
俺は睨むのをやめた。
「木綿季君だったかな?彼女はβテストには当選しなかったが彼女の状況から正式なソードアート・オンラインには参加してもいいと言う事だ。君には彼女をこの世界で守るナイトをしてもらおうかと思ってね」
「ナイトですか……そのために、仮想世界に慣れるために、強くなるために、ですか?」
守る、俺はあいつを守れなかった、だが、この仮想世界なら守れるのか?
木綿季にとって現実になるかもしれないこの世界なら。
「俺はナイトなんて柄じゃないですよ」
「確かにそうだね。受け取ってくれるかい?」
「ありがたく頂戴します」
「では、明日報酬と同時に君の家に届くように手配しよう。君、よろしく」
茅場さんは俺の後ろにいつの間にかいた女性秘書さんに頼んだ。
「君の仕事はこれで終わりだ、何かあればまた連絡してくれ。和人君本当に感謝するよ」
「いえ、こちらも色々お世話になってしまって」
俺はプログラムを1つ提供しただけ。
それだけなのに、ア―ガスは3000万円にナ―ブギアとβテストの参加許可。
感謝するのはこちらの方だ。
「それでは俺はこれで」
「和人君最後に何かソードアート・オンラインについて何か意見はあるかい?無ければそれでいいが」
意見か・・・このゲームは完璧に出来ている。
俺が口出しする所なんかほとんど無い。
「そうですね~……」
俺はつい、深く考えてしまう。
スグとアイを待たしてるし、無しでいいか。
・・・・・・あ、
「SAOってのはどうですか?」
「SAO?何がだい?」
「名前ですよ、ソードアート・オンライン、通称SAOって事です」
会議の中で秘かに思っていた。
ソードアート・オンラインって長すぎるだろ・・・
茅場さんは盲点だったのか、少し考え込んでいた。
「良い通称だ、そうだな、これからはSAOと呼ぶか」
「お気に召したようでなによりです、それでは茅場さんいつかまた」
こうして、俺は会議室を後にする。
「今日中にでも、木綿季君の居る病院に行きなさい」
「え?えっと、もちろんですけど……何でですか?」
茅場さんは微笑を含めた表情で答える。
「行けば分かる」
そう言って茅場さんは俺の横を通り過ぎて会議室を出て行った。
俺は何だったんだ?と思いながらどうせ行くしっと思い深く考えずスグとアイがいる、ロビーに向かった。
「お兄ちゃんだけずるくない?」
『スグ様、依頼を受けたのは和人様ですよ』
「だって~」
スグが頬をプックリと膨らまして、俺に視線を送る。
スグ達にナ―ブギアの事を話したのだ。
「そんな事言われても、仕方ないだろ」
俺はそんなスグの頭を少し乱暴に叩く。
「ちょっと、お兄ちゃん!背が縮んじゃう!」
「んなことで、縮む訳無いだろ、ほら、病院に着いたから静かにしましょ~」
『何で偉そうなんですか……』
俺達は久々の病院に来た。
木綿季の体調はどうかな~?
俺達は正面入り口から木綿季の病室に向かった。
「和人君久しぶりだね」
「倉橋先生、お久しぶりです」
「どうも」
木綿季の病室の前には倉橋先生がいた。
俺は頭を下げスグも続いて挨拶をする。
「話は聞いているかい?」
「いえ、ここに来いとしか……」
直に、茅場さんの事だとわかり、言われた事を伝える。
スグは何の事だかわかってない様子で首を傾げている。
「木綿季君の病気の事だよ」
「木綿季の病気って……まさか!?」
俺はガラスの向こう側の木綿季を見てから、最悪の事態を考えてしまった。
「え?何?何がまさか!?」
『茅場さんと何を話したんですか?』
スグとアイが質問してくるが、そんな事どうでもいい。
違うよな?違うよな?
「落ち着いて和人君。逆だよ逆、」
「逆?」
倉橋先生は笑いながら俺をなだめる。
逆?俺が考えた事の逆?
って事は生きる?いや、今も生きてるよ木綿季は。
「治るかもしれないんだ、AIDSが」
その言葉に俺もスグもアイも、皆が沈黙する。
「え?先生?AIDSが治る?本当ですか?」
「まだ、可能性だけどね、でも、可能性は高いよ」
スグがとぎれとぎれに聞いている。
俺はまだ理解できていなかった。
抑制だけしか出来ないAIDSが治る?
「とりあえず、説明するね」
「お、お願いします」
動揺を隠せない俺を見て倉橋先生は治療法を簡単に教えてくれた。
「まず、2014年の7月にアメリカのとある大学が実験段階だけど細胞からAIDSの原因であるHIVウイルスの完全駆逐に成功したんだ。
だが、これはあくまで実験段階、使用した細胞も培養した細胞で問題点はいくつもあったんだ、
例えば、時間。
この治療法はHIVに感染した免疫細胞のDNA配列からHIVが書き換えた部分を直接切り取るゲノム編集技術を使っている。DNA配列を切断するんだ、患者全員が同じじゃない。
だが、それから研究が進み今、時間はかかるもののその他の問題が何とか解決し人に治療出来るようになったんだ」
「すごい、そんな事が」
スグが目を丸くさせて言った。
同感だ、まさかそんな事が可能とは思ってもいなかった。
「まだ正式な治療法じゃないが世界にはもう治療を始めている患者もいるよ」
「その治療の時間は?」
「2年だね、でも、成功したら木綿季君の体からHIVウイルスは完全に消える」
「2年……」
『和人様?』
2年・・・とても長い時間だ。
けど、木綿季が元気になるのなら、いくらでも待ってやる。
仮想世界じゃなくて現実世界が木綿季の現実になるんだ。
「君たちの親にはもう知らせてあるよ。治療開始日と時刻はは和人君も、知っているあのゲームの開始と同じだよ」
あのゲーム、ソードアート・オンライン通称SAO。
そこから、2年で木綿季が治る。
「倉橋先生、木綿季をよろしくお願いします!!」
俺は深々と頭を下げた。
すると、視界が歪むのがわかった。
そして、一つまた一つと病院の綺麗な白い床に雫が落ちていく。
これが、自分の涙だとわかるのに少し時間がかかった。
「お、お願い…します…」
俺はもう1度倉橋先生に言った。
ちゃんと、言えてるか自分でもわからない。
「お兄ちゃん……」
スグも涙目になり俺を呼ぶ。
『・・・』
いつも、俺を馬鹿にするアイもこの時だけは何も言わなかった。
「絶対に成功するよ」
倉橋先生は俺の肩に手を置いて、優しく言ってくれた。
「う…あ…あ…」
俺はしばらくずっと、涙を流し続けていた。
涙を流したのはいつ以来だろうか・・・
10月31日の1時少し前
『それでは、いってらっしゃいませ。そして、モンスターに倒されて逝ってください』
「おい、βテスターの俺が簡単に死ぬはず無いだろ?」
相変わらず酷い事を言うな。
『木綿季様も同時にログインするはずです』
「今から2年か、俺は何をしてるかな?」
『どうせ、ニートですよ』
2年後、俺は16歳になっているはずだ。
木綿季は14歳か。
木綿季がいたら学校にも行くんだけどな~
てか、最近のアイの罵倒がエスカレートしてる気がする・・・
『和人様時間です』
俺が呆けているともうすぐ1時になるところだった。
「じゃ、行ってきます」
『ちゃんと、会話するんですよ』
「この世界だと平気なんだよ、仮想世界だからか?」
『体は全く違う場所にありますからね』
3・・・2・・・1、
「リンクスタート!!」
その言葉と共に俺は仮想世界に入った。
しかし、
俺はまだ、このゲームが楽しく冒険するVRMMORPGだと思っていた。
このゲームがデスゲームだとも知らずに。
自分がとんでもない事に協力していたとも知らずに。
木綿季を最悪な世界に迷いこませてしまったとも知らずに。
このゲームの名前は、
ソードアート・オンライン
はい、自分がこの小説を書こうと思った最大の理由!!
HIVウイルス完全駆逐ニュ~ス!!
いや~、自分将来医療系に進むと決めてるんですけど、色々調べてたらこの、ニュースが発表されましてね。
もう、発表された瞬間、研究が進めばユウキって死んでなくね?
っと思いました。
この、ニュースが詳しく知りたい人は検索すると出てきますので、読んでみて下さい。
そして、緊急告知。
テスト前なので約2週間ほど更新できなくなってしまいます。
テストを終えたら更新を開始しますので皆さまどうか気長に待ってて下さい。
これからも、ソードアート・オンライン~少女のために~を応援して下さい。
評価と感想待ってます!!