「――ぉぃ―――ち―――――おい、祐一、起きぬか」
「ふが?」
如何やら机に突っ伏して寝ていたらしい。
グッと伸びをして起きる。
そして俺を起こそうと声をかけてくれた主に顔を向け、
「美少女がいる」
「ワシは男じゃぞ、まだ寝ぼけておるのか」
違った秀吉だった。
男のくせに相変わらず美少女な奴だ。
周りを見ると、結構な数の生徒が集まっていた。
かなり寝てたようだな。
「随分早く来ておったようじゃな。ワシもかなり早く来たはずなんじゃが、既にお主が居って驚いたぞ」
「今までずっと運動部を梯子してたからな、朝早く起きるのはクセになってんだよ」
「今年も何処かの部に顔を出すのかの?」
「あー・・・どうだろうな。ま、練習相手くらいは頼まれればやるつもりだが」
この学校の奴らじゃ、どの部でも相手にならないのは去年分かっちまったしな。
あんま自主的に参加する意欲が無い。
「暇なら、演劇部の練習に付き合ってくれんかの?」
「おう、いいぜ」
どうせ暇だしな。
「うぃーっす」
「おう、雄二」
ガラの悪い奴が寄ってきた。
「お前も同じクラスか」
「まぁな」
雄二は俺の机を見て「お?」と、乗せている水筒に気が付いた。
「茶貰っていいか、走って来たから喉乾いてよ」
「いいけどよ、別に遅刻するような時間帯でもねぇのに何で走って来たんだ?」
「何でも良いだろ」
どうせ霧島だろ。
雄二は俺の水筒でお茶を入れ、コップ部分に入れたお茶をグビッと飲み干し――――――
「――――――ブッフゥッ!?」
吐き出した。
「おいおい、何やってんだよ――――――」
「雄二よ、汚いぞ」
「――――――溢しやがって、勿体ないだろ」
「そっちなのか・・・・・・」
折角やったのに吐きやがって。
雄二はゴホゴホと咽ながら、水筒を俺に突きつける。
「おま、何だコレ!?」
「何って、どう見ても水筒だろ。ボケたか?」
「中身の話だッ‼」
「・・・・・・麦茶しか入っていない筈だが?」
「げほっ・・・ホントに麦茶か? なんか変な味がしたぞ」
「変な味?」
んな事ねぇハズだが。
俺は雄二から水筒を受け取り、コップに注ぐ。
「・・・・・・祐一よ、お主麦茶と言ったが、コレは本当に麦茶なのかのう?」
「麦茶だが?」
「しかし、麦茶の割りには妙に黄色くて白い泡が立っておるのじゃが・・・・・・」
「うん。だから(泡)麦茶だ」
「「ビールじゃねぇ(ではない)かッ‼」」
雄二と秀吉のツッコミがシンクロした。
「ビールなんて麦茶も同然だろ」
「水筒に酒なんて淹れんなよ!?」
「相変わらず酒好きじゃのう・・・・・・」
えー、何でこんなに不評なんだ。
キンキンに冷やして水筒内でそのままの温度で保温してるから、冷たいままの筈なのに。
「解せぬ」
「解せぬはお主の価値観じゃな」
「あー、クッソ。口直しに何か飲んでくるわ」
如何にも2人の口には合わなかったようだ。
「じゃあ今度は清酒にするか」
「「そもそも酒を持って(くるでない)くるな!」」
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