Justice前章:Labyrinth 嶺編   作:斬刄

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8話VSデントロ二世

正輝が逃げていくのを気付かずに、そのまま敵は嶺達に突っ込んでいく。大槍は高圧電流のようなものが込められ、嶺を殺さんと襲いかかってる。しかし、

 

「な、何にぃっ⁉︎避けられただとぉ⁉︎」

 

嶺にはその単調な攻撃は容易に避けることは造作もない。デントロはちゃんと嶺を見ていたはずなのに、既に背後を取られている。嶺はめんどくさそうな顔で危機感のないデントロをじっと見ていた。

 

「すごいっ…」

 

戦闘を眺めていたなのは達は、嶺の素早い動きに追いつけてなかった。敵が槍を向けたまま突っ込んでいるところを、高速なスライドターンで後ろを取り、いつでも攻撃出来るように伺っている。嶺は攻撃可能な秒数を頭で数えつつ、動きを把握していた。

「おいなんだその顔はっ!テメェら…デントロ二世のこの俺様を舐めた覚悟は出来てるか?」

「二世でも姿はそのまんまだしどう見ても弱そーな気がする…」

 

敵のデンドロは槍を振り回し、ロケット砲を何度も発射しても嶺には全然当たらない。嶺以外にも近くにいたなのはとユーノは無駄に発射している砲撃が当たらないように防いでおり、アトリが回復魔法と補助魔法で支援している。

(ん、大体分かった)

 

対して嶺はただその槍と大砲を最初に避けることに集中し、敵の行動をだいたい理解した後、避けながら地道にダメージを与えていくヒット&アウェイの戦法を取っているだけ。

(槍を防いでも絶対感電する効果あるでしょ…なんか、イライラする)

「オラオラ〜ぁ‼いつまでも逃げてんじゃねぇぞ‼︎‼︎」

「雑魚の癖に雑魚の癖に雑魚の癖に雑魚の癖に雑魚の癖に雑魚の癖に雑魚の癖に…」

 

翻弄されていることも知らずに攻撃を何回か食らっても疲労を知らずに、まだ立ち上がっている。このまま続けても絶対攻撃は当たらないまま、朽ち果てるだろうと嶺は考えていた。いっそ断首して敵を倒すことも可能だが、なのは達のこともあるためにあえてそれはやらない。

 

(面倒だし、敵がやばい兵器を使う前にさっさと潰すかな…それなら全設定変更発ど…ん?)

「無駄だ!俺の状態は固定なのだから奪われることも、ましてや消えることもないっ‼︎

俺を弱くしようとしてたのが仇とな」

 

すぐに嶺はデントロが言っていた通りのまま固有スキルが効かないことを理解する。火事場の馬鹿力(本領発揮)が出せないのならば十分与えたダメージの上にトドメの連撃を刺す。喋っていることに集中してるなら、その隙だらけな懐を狙って潰そうと

「削七連!」

 

自慢げに話きる前に潰した。こんな男に時間をかけてられるほど、嶺は全く優しくない。

戦う以上、いくら和解や自分語りをしたところで殺るか殺されるかなのだからこんな敵に聞く耳を持ったところで無駄だった。

 

 

「…さて。逃げた弟をしばきに「まだ俺様は死んじゃいねぇ‼」は?」

「最強はこの程度で死なねーよ‼」

 

今度は自分が強いと勘違いしてる発言に、嶺は哀れな目どころか、その惨めな敵にドン引きしていた。敵が立ち上がると、炎を纏った指輪に箱を打ち付けて何かを放出する。

箱から飛び出したのは電を纏った大量の蜂だった。

「うっわぁ…ないわー」

「嶺さん、本音が漏れてますっ⁉︎」

中々倒されない上にしつこいから、嶺自身も思っているはずなのに言葉にして声を出してしまった。すぐさま嶺は動くが、

(まぁいいや。もう一度殺せ、あれ…?)

「それによぉ…まんまと引っかかりやがったなこいつ!」

その瞬間に身体中が痺れてた。無理に動こうとしたら、痺れが悪化してしまいその場に止まってしまう。

「ハーッハッハッハ‼俺の鎧には攻撃すると追尾式の電撃が走るんだよ。これを食らったら一定時間動けないぜ‼」

(一つ撤回することがあった…唯の雑魚じゃなくて、うざい雑魚だった)

 

戦っている状況で話す余裕があるのに、敵は攻撃も防御にも加工してきている。確かに見るからに弱そうな敵で甘くみていた部分もあるが、その部分も含めてうざい雑魚と評した。

 

「うらぁっ!」

「嶺さん‼︎」

(protection)

 

身動きの取れない嶺を、今度はなのはとユーノが前に出て、防御魔法をとる。が、出てきた蜂と猪はデントロを支援し、数の暴力でなのは達の張った防御魔法は今にもヒビが入って壊れそうになっていた。

 

「すぐに治しますっ…!リプシュビ‼︎」

「ん、ありがと。なのはとユーノだけじゃ守りきれないからもう一度私が前に出て」

 

アトリが嶺の麻痺を回復させ、すぐに動けるようになった。このままなのは達の加勢しようとしていたが、気になることがあった。

 

(ん、あれ?そういえばハセヲって、何処かに行ったの?)

「このデントロ二世様は鎧を改造し、他の匣兵器を使えるようにしたのだ。それだけでなく死ぬ気の炎も初代の倍だか…」

 

デントロの真後ろからバイクが近づいているが、雷撃の音が激しすぎて何も聞こえていない。そして言い切る前に、

「あぢぃぃぃぃ‼」

「あーゴメン。遅れてた…」

バイクに衝突され、頭にあったモヒカンがバイクのタイヤで焼けてしまった。ハセヲは遅れて出てきたため、デントロ(このバカ)に姿を見られてないから嶺達が戦っている間に不意打ちを狙った。

 

「俺の頭から離れろぉ!」

「うぉあっ…⁉︎」

 

蜂に指示を送ってハセヲを襲っているが、バイクは解除することで消え、持っていた大剣で防御する。デントロの頭がハゲとなり、焼け焦げた部分はあるが、雷撃から出ている光のおかげでキラキラと輝いて見える。

 

「あははは‼御免!もー無理‼」

「駄目です…プッっ…人の顔を見て笑っては…」

「もう皆殺しだ‼何もかも消してやる‼」

 

今度は槍ではなく雷のビーム砲を所構わず撃ち続けた。完全に笑われた敵は頭に血がのぼって、当たればそれでいいという感覚で周囲構わず破壊し尽くしている。

 

「ふぇぇぇぇ!」

「なのは!」

「…そろそろおふざけは、終わりかな」

 

このままだと嶺だけではなくなのは達とハセヲ達も、敵の暴走に巻き込まれてしまう。被害が甚大になる前に確実に殺そうと、ゆっくり近く。

「おい、嶺!近づき過ぎたらお前まで!」

「開放」

〈change 2nd form〉

「お前だけは絶てぇぶっ殺す‼︎今度は確実になぁ‼︎‼︎」

 

嶺は普通の私服からフォームチェンジしたことで、本来生前に着ていた戦闘服へと切り替わっていく。大鎌を手に持ち、引きずるように移動している。

デントロは匣をまた取り出し、一匹の猪を出現させた。敵はそれに乗り、全部の蜂に指示を出した。

共に嶺に向かって突進していく。

周囲に囲まれ、もはや逃げ場が無い。

 

「これで終わりだ‼死ねぇ‼︎‼︎」

「嶺さん!危ない‼」

 

ーーーー少し、本気を出そっか

 

 

鮮血の闇の大鎌祭り(ブラッディ・ダーク・デスサイズ・パーティ)

「⁉︎がはっ‼︎」

 

 

持っていた大鎌が二つに分裂し、軽々と振う。蜂、猪、転生者ことデントロも鎌鼬のように斬り刻まれている。切り傷から血飛沫が噴出し、出現させた生物兵器は匣に戻ってゆく。

 

「最強であるこの俺が負けるだと⁉死にたくない…まだ俺は死にたくないぃぃぃぃぃ‼」

「一つ言っていい?自己主張して周りを最期まで見ない人は早死しやすいんだって」

(見えなかった…けど全てを刈り取れるわけ…まさか‼)

 

嶺の身体は無傷のまま、纏っている電撃を浴びされたわけでもない。その大鎌から微かに何重もの衝撃波が分裂するかのように飛ばしている。その衝撃波は嶺本人の鎌だけではなく、発動の時点で敵と味方、物の影にも複数出現していた。

 

分裂した大鎌を振るうことによって、周囲にはあるとあらゆる場所に鎌鼬のようなものが出現している。飛ばされた波は一つから二つに分裂し、嶺を守るかのように飛んでいく。雷撃も、生物の一つ一つが全て刈り取られている。なのは達でも分からないほどの、目では追いつけない速さで、デントロは切り刻まれていた。

 

「だ、だったらぁ…」

 

切り傷まみれのデントロは嶺のことを全く敵わないと標的を変え、目線をアトリの方に向いたが、前にはハセヲがいるため道連れにできない。残る標的を、弱々しいなのはとフェレットに向けられた。

「なら…そこの小娘だけでもぉぉぉ「はい、これでお終い」」

 

敵が最後の力を振り絞ってなのはを大槍で突き刺そうとする前に、彼の身体は崩れていく。なのはを道連れにしようとしていたが、嶺がもう一撃頚動脈を斬りつけたことで、斬りつけた部分から血が噴水のように放出した。

 

そのまま敵は出血多量によって倒れた。

戦いは、呆気なく終わった。

 

 

*****

 

デンドロ二世という転生者の遺体と血液、武装品などが全て、黒い霧となって消え去っていく。

(…証拠の抹消って感じかな。あ、なんか敵の武器が落ちてるなら使えるかもしれないし、拾おっと)

 

唯一残っていたのが匣兵器だけとなり、そのまま地面に残っていた。嶺がそれを拾って、興味を持ちつつよく見て確かめようとする。敵の後処理についてどうするのかを神からは何も聞かれてなかったとはいえ、死体を見ても平気な嶺の冷静に判断して動いている。

「お、おいっ…」

「ん?二人ともどうしたの?」

 

ハセヲ達二人もそんな嶺を見たことがなく、動揺している。ハセヲ達もやむなしとは言え黙って殺されるわけにもいかないまま武器を構えていた。アトリは自衛とサポートとして杖を持ち、ハセヲは敵を倒す為に双剣を取り出す。その時に二人はその敵を倒すことは考えていたが、倒すということがまさか人を殺すということに繋がるとは思ってもない。

その汚れ仕事を嶺一人で成し遂げた。

 

「つっ…悪い」

「その、ごめんなさい…嶺さん」

「ん?二人共何を謝ってるの?」

 

敵とはいえ人を殺した嶺を責めることをせず、謝る。もし嶺がいなかったら少なくともハセヲが代わりに前線に出ている。殺らなければ殺られるという状況で、嶺を責めることはできなかった。

 

が、二人よりもかなり動揺しているのはなのは達は何か言いたげそうな顔をしている。協力者の彼女が、人を助ける為に殺したことに思考回路が追いついていない。なのはは嶺のことを優しいお姉さんだと思っていたが、実際は目の前の異常な光景に恐ろしくて怯えることなくそのままマイペースに動いている。

彼女達二人にとっては理解不能だった。

 

「どう、してっ…」

「ん?どうしてって?」

「どうして平気なんですか…⁉︎なんでその人を…」

震えたままの口が開き、嶺に話しかけた。少なくとも彼女は人同士のドロドロで醜く醜悪な争いを理解していない。

なのはの目には毒だった。

魔法という人を殺すも殺さないも自由に設定できる理想的な力を持っているが故に、実際フェイトのような同じ子供でも戦って、ぶつかり合うことができる。しかし、魔法も使い方次第では凶器へと変貌しすることもあれば、別の兵器で相手の息の根を止めることもできる。たとえ一般人であっても包丁やナイフ、縄、釘バット、拳銃等を手に持ち、それを人に向けて使えばどうなるか。

 

その脅威性を理解するのはまだ浅はかで、あまりに幼すぎた。

 

「だって…だって殺す以外の方法も!あの人を倒した後に、ユーノ君のような拘束魔法を使って動けなくすればまだ」

「…なのはは優しいね。でもさっきのを見てたけど、優しさだけでどうにかなる相手だったかな?そもそもの話、あいつを拘束できる技量がこっちにある?絶対に殺さないと見逃してたら間違いなく隙をついて私達を狙ってたし、最悪無関係な人達にまで危害加えたかもしれない」

 

人を殺す事は余りにも容易いが、生きて捕らえることは大変難しい。逃げて被害を出せばより悪化し、守るべき街は火の海となっていただろう。

 

「警察?あんな馬鹿でも殺戮兵器を複数持ってるんだから、軍事兵器を用いても止められるかどうかなんて分からないよね?もし私が彼を生かして殺さなかったら、もっとややこしい事態になっていたし、そのせいでもっと多くの被害者が出てたかもしれない。

 

大体魔法の存在だけでも私達だけじゃなくて、無関係な人までそのことを知ってしまったら…どう収拾つけるわけ?まさか見てしまったならその人の記憶を抹消するとかじゃないよね?

まぁその時は場合によるけどさ」

 

状況によってはその人を捕まえて、さっきの場面を見なかったことにする為に記憶消去は否定しない。そうしなければ、他の人が知ったが故に襲われる可能性もあるからだ。

知らなくてもいいことはある。

 

「ならさ…こう思ったことはある?もしジュエルシードが人の手に渡って暴走したらどうなるのか考えたこと。そして止める為にはその人ごと魔法で消しとばさないといけない事態になったら…考えたことはあった?

だってそうだよね。いくら非殺傷設定があるからといって、ジュエルシードに取り込まれた人間の命を救うことはできても、必ず攻撃を受ければ当然肉体又は精神的な部分にダメージが出る。

 

人の命を救うことはできても、取り返しのつかない後遺症が残ればその人の人生の殆どは天国から地獄に叩き落とされたも同然だよね?」

 

なのは達は、集めているジュエルシードによる接触がたまたま【人間】でなかっただけ運が良かった。そうでなければ、ジュエルシードに取り憑かれた人を助けようと、なのはもフェイトも必死になりつつ二人共良心を痛むことになっている。

 

人に取り憑かれた元凶をどうやって引き剥がし、被害者を無事なまま取り除けば良いかと自問自答しているかもしれない。まるで人間に付着した爆弾処理か、命の危機に瀕している人を助ける為に手術するかのように神経がすり減っていく。

そんな重労働をいくらなのは達が優秀とはいえ、人一人を救うにしても長時間も集中力と体力がもつわけがない。

少しでも誤ったとしたら人の命を奪い、彼女らにとってトラウマになっていたかもしれない。

 

その手で救えないまま、結局殺めることになるのだから。救いという行為そのものに恐怖を抱いてしまう。

 

「でも、弟の正輝がその最悪な事態になる前に何とかして解決した。ユーノのお手伝いだって、もし被害者の関係者にバレるようなことがあれば…下手をしたら関わっているなのはまで連帯責任として問われることになるかもしれない。それに、これも本来のお仕事だから…貴方の家族に前に言ったはずだよね。

なのはを守ってくださいって?」

「でもこんなのっ…⁉︎」

「巻き込まれて協力しているなのはが死ぬような事態を避け、私達が全力で守る。あいつは私とハセヲだけじゃなくて、狼狽えているなのはまで標的にして襲っていた。

 

もし、守ってなかったら…今度はなのはが死んでたかもしれないんだよ?」

 

死ぬということに悪寒がしたが、それでもなのはは反論する。自分が殺されないために、殺すしかない方法をとるなんて無理な話だった。

 

「死ぬって…そんな言い方!」

「結果的になのはと、その家族…海鳴市の人達を守った。ああいった敵まで生かせるほどの余裕があるなら…それこそ、その手段を考えて考えて考え抜かないと…中途半端にやってたら、その分が自分に返ってくるよ」

 

もしなのはが、あの男をちゃんと拘束魔法で厳重に無力化させることが出来るのならば話は別だった。殺す必要もなければ、こうして悩むことすらも馬鹿らしくなる。

 

が、現実はそう簡単にはいかない。

もしなのはが相手を無傷の状態なまま無力化させる技量を持っているなら、さっきの戦いは嶺がやるよりもなのは達が先にどうにかしなければならない。

 

彼女達は、力不足だったのも認めるしかなかった。

 

 

「私は…」

「でも…なのはは小学生の年頃だから、あまり深く考え込み過ぎてもいけないと思うかな。

なのはにはなのは自身のやり方があるし、私には私自身のやり方があるからね。

でもこれだけは理解しないとダメだよ。

 

 

 

もし今後とも魔法で誰かを助けたいのなら覚えた方がいいよ。人を救うにしても、まずご都合的な非殺傷設定を抜きにして戦うっていうことはね。そういうことなんだよ」

「つっ…!」

 

魔法という武器を手にすることが、どういうことなのか。なのはが遊び半分で手伝ってるわけでもなく、ユーノのお手伝いもそうだが、周りの人を守る為にやりたいというのは側から見ていた嶺と、なのはに頼んだユーノも分かっている。ジュエルシードを集めるのに一生懸命に戦術や魔法のことを努力しつつ勉強し、魔力の素質があっても戦う方法までこなしている。困っているのを助けたいという個性もなのはらしいと嶺は思っていた。

 

だが、こういった覚悟を決めるということについては話が別。いくら純粋な気持ちで努力しても、才能であっても、独学で戦いを学んでも。

 

その事件が自分も含めて他の人の生死に関わった場面に直面すれば、いずれは選択を迫られる。

一人を救って、十を捨てるか。

十を救って、一人を捨てるか。

両方救うという選択肢もあるが、そうする為の頭脳や技量が今の段階では持ち合わせてなどない。

なのはに問うのは余りにも幼すぎる。

 

(なのはには難しすぎるかな)

「子供の些細な喧嘩だったら先生とか親とかに叱られたりするレベルだから可愛いものだけど…こればっかりは命のやり取りだからね。それに、なのははまだ小学三年生で、自分の納得できるやり方をすぐに出して欲しいっていうのは凄く卑怯だからもうこれ以上は言わないよ。

そもそもこの問いに正解なんてないし、もし迫られることになったら気をつけてねって話なだけだから」

 

こうしてデンドロとの戦いは終わった。なのはとユーノの方は、嶺の話を聞いて半分納得していたがもう半分は悩んでいた。そこから先に足を踏み外そうとすれば、なのはは道を違えてしまう。

だからなのはは、このまま立ち止まってしまった。

「そんなの…分から、ないよ…」

「なのは…」

まだ小学生なのに化け物に襲われ、痛くて辛い思いをするのに戦いに出向いた。そんな屈強な心はあっても、嶺の問いに返答することが恐ろしくてできない。

そんななのはに助言したのが、ハセヲ達だった。

 

「…急にその答えを出さなくてもいいんじゃねーのかよ。分からないままでも」

「ハセヲさん」

「嶺さんを責める事はできないです…私達だって何もできなかったんですから」

ハセヲ達の変身が解除され、元のリアル姿になっている。二人の武器はしまい、なのはの頭を千鳥が撫でている。

 

嶺の行動には、ハセヲ達もまた苦い顔をしている。

 

「…今のお前のしたいことって、ユーノの手伝いもそうだけど、人助けもしたいって気持ちなんだろ?なら今は、それでいいと思う。

人を殺す殺さない云々よりも」

「でも、それだけじゃまた嶺さんに…」

「それこそ俺たちだって支援する事ぐらいしか出来なかったんだからな」

 

なのはもハセヲ達もやれるだけのことをやるしかできなかった。さっさと覚悟決めろというわけではなく、ハセヲ達からなのはには自分のやりたい事に一生懸命にやった方良いんじゃないのかと教える。

「俺達までまさか嶺が直接殺すとは…思ってなかったからな」

「うん、ありがと…」

デントロという敵の出現も唐突で、前半はふざけてる部分もあったが嶺以外のみんなは最終的にその敵をどう対処するのか、そういった気持ちの整理がまだついていなかった。

 

前線で戦っている嶺が一体どんな方法で敵を倒すのかを。

 

「よし、それじゃハセヲ。バイクの方ちょっと後ろに乗っていい?アトリはなのはと一緒に家に避難してねー」

「まさか…お前…」

「え?逃げた弟には、仕返しをするに決まってるじゃん」

 

表情は笑みを浮かべているが、ハセヲとなのは達側から嶺を見たら笑っているようで笑っていなかった。

 

笑顔のまま、彼女は少し怒っていた。




【ちょっとした後書き】

これまでなのは達がジュエルシード関連で接触した敵は木や猫、鳥などのものに接触して、化け物のような姿に変貌しています。逆に人はその被害に巻き込まれて、それをなのはとユーノで助けていました。

でも仮にもし、自分の家族や友達、学校の知り合い等の海鳴市に住む人達、人間が直接巻き込まれて化け物へと変貌し、その人の暴走を止めざる終えない状況になってしまったら…果たしてなのははジュエルシードを回収する為に引き金を引くことが出来たのか、ということとなっています。
(最悪ジュエルシードを地球にばら撒いたこととで、その住人が複数も化け物に変貌してしまうかもしれないし、それを時空管理局とやらが入ってきて、その化け物を駆除するように実行したら一体どうなってたことか。
【例えば、仮面ライダー鎧武のように初瀬亮二がインベスという化け物になって、呉島貴虎が駆除しようとしたところを葛葉紘汰が助けたりといったような展開にもなっていたかもしれない。】

砲撃しようとする最中に、その化け物の被害者側の家族が『やめて下さいっ!あれは、私の娘なんです!』とかになりかねないです。

しかも、もし管理外である地球の政府や軍とかにもバレたら本当にややこしいことになることを考え、早急に問題が起きる前に早急にジュエルシードを回収しなかった時空管理局も大概)

正輝の方は問題が深刻になる前に早期に片付けようとするため、無印におけるジュエルシードの被害は原作よりも少ないです。フェイトの家族のこともほぼ解決済みで、嶺にどう終わらせたのかも報告しています。

ユーノ君も…魔法に関する事を教えて、なのはに素質があったとはいえ少女相手に爆弾処理みたいなことをさせるんじゃない。

プリヤの方はイリヤが戦うことを恐れて辞表を出しても、凛は引き止めたりしなかったし。なのはにだって、たとえ戦える心を持っても命の危機に晒されたらフェイトどころじゃなくなってたかもしれない。始まりに関しては、なのはを巻き込まざる負なかった状況かもしれないけど…後々将来でも深く関わらせたりする事になった場合、魔法のことは必ず家族にも知る権利がある。当然、ずっとなのはに命に関わることをさせたのだから反対する。

だってどんなに才能溢れてる人でも、心が弱いままぶっつけ本番、特に手術とかの生命に関わることをさせるなら…強烈なトラウマが植え付けられかねないじゃないですか。
ユーノからは、なのは本人がどうしてもやりたい事であっても『引き際』が必要だった。
フェイトを救い、友達になりたいのは良い。闇の書事件解決後に、ユーノはなのはと真剣な話をして『今後は家族のことも考えて魔法から手を引くか、或いは死にかけそうになってもそれでもやりたいんだと魔法を抱くか。将来の事もあるのだから、何も知らされてない家族に全て打ち明けてから考えて欲しい。
命の危険に晒される事もあるからね』ということを問う必要があった。

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