Justice前章:Labyrinth 嶺編   作:斬刄

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4話事情

「まずは、すずか達を助けてくれてありがとう」

「自分のできることを私達が行っただけです」

 

嶺達はすずかの家にいた。そこにはすずかの家族はもちろん、現場にいた嶺、ハセヲ、ユーノ、アリサと彼女の執事、そしてなのはの家族も集まって総勢13人が集まって話し合っている。

 

アリサとすずかの二人を攫った犯人達を倒して助けてくれたり、機体を相手に戦えることができた嶺達が何者なのかや、なのはが着ていた格好と魔法…二人の拉致から暴走した人形までの過程で起こった事が、余りにも非現実的であり、知らないことが多すぎていた。

 

「それで、貴方達はどこまで知っているの?」

「では、今回のことで私の知っている限りのことを話します。質問はその後でいいですか?」

 

まず先に、なのはの姉である忍が嶺に話をかけた。助けに向かう前にどうしてこんなことなっていたのかを整理する為に、嶺達が詳しく話す。

 

「構わないわ」

「ああ」

 

なのはの兄も恭介も同意する。家族全員の視線が嶺達に向けられ、嶺はこれまでのことを話す。

 

「では、ことの始まりは私達が黒い車ですずかとアリサの二人が無理矢理さらわれる所を目撃しました。幸い、その車は港に向かっていることが分かりましたから、そのまま追いかけてあの場所に着きました。私達で見張りの人達を気絶させて中に入り、二人を救助し主犯を倒したところで悪あがきとばかりに巨大人形を投入しました。

 

その間の主犯の誘拐の動機はすずかが知っているそうなのでそちらにお聞きください。その人形が暴走する前に主犯を気絶した後に拘束して、すずか達を守りながら戦闘をすることになりました。動力が魔力である以上、破壊すればこの町一帯が消滅する程の危険物だったので苦戦した所を、一匹と一人が登場、協力して少女が封印することで沈静化しました。

 

その後、貴方達が来て現在の通りです」

 

嶺がさっきまでの状況説明を終えると、忍はすずか達の方に顔を向けた。

どの道吸血鬼のことについてはみんなに隠しきれなくなっている。

なのははそれを知って驚いていたものの、

 

「…すずか、何かあったのか話しなさい」

「主犯が私達を拐った理由が…私が吸血鬼だから…アリサちゃんはそれに巻き込まれただけなの。連れてこられた時にその二人に助けられて…」

 

すずかとアリサ達の方は友達であるなのはが、自分たちの知らない間にも危険なことに関わっていたとは知らずに驚いている。嶺とハセヲがその港に向かい、助けようとしてくれたことと、武器を持って巨大な人形を守りながら相手にしていたことだった。

 

「ごめんなさい…でも、アリサちゃんが私が吸血鬼でも親友だって言ってくれて嬉しかった。もし、知られたらみんなに嫌われるんじゃないかって」

「なのははどうなのよ?すずかのこと」

「うん…驚いたけど。でも、私もアリサちゃんと同じようにやっぱりすずかちゃんも友達だよ」

 

アリサ達を守っていた嶺達にも忍は聞いてくる。吸血鬼だと知ってもなお、それでも守っていた二人は少なくともすずかに対する嫌悪感は感じられていない。

 

「貴方達はすずかのことをどう思っているの?」

「別に拒絶はしませんよ。どちらかと言えば私達の方もイリーガルなわけですし」

「?どういうことだ?」

 

言葉通り、嶺達はすずかのことを拒絶はしていないと言っていたが恭介は嶺達の方もイリーガルだという言葉に疑問に感じた。

 

「それは後ほどに説明します。今はまだ重要ってわけじゃないから後に回します」

 

嶺達の正体を明かすことよりも、まず先に現場の状況を優先することとなった。二人の正体を知ろうとする前に大事な事がまだ知られていない。

 

 

「分かったわ…じゃあ次に、なのは達と共闘したっていうけどどういうことですか?」

「えっと…それは」

「あれって一体何なのよ?いきなり変な格好して、空中に浮いてたり…赤いビー玉の付いた杖でピンク色のビームを撃ったりして」

 

その部分についてはなのはがよく知っている。ジュエルシードで暴走していた人形での戦いを言わなくてはならない。空を飛んでいたことも、魔法少女の格好をしていたことも言及される。

アリサもすずかもこのことは知らないため、みんなの視線がなのはに向けられている。

 

「ううっ…」

 

見られているなのはは、縮こまってしまった。

 

「それは、僕の方からも説明します」

「フェレットが喋った⁉︎」

 

フェレットことユーノ・スクライアは事の始まりを説明していった。

 

ユーノの乗っていた時空船が襲撃を受け、保管していたジュエルシードがこの地球に落ちてしまったこと。ユーノがこの地上に降りて、ジュエルシードを封印しようとしていたが、一人だけではどうにもならなかった。巻き込まれた理由は怪我をしてフェレットの姿になっていたユーノをなのはが拾ったことがきっかけであり、そして魔法というものに関わりを持ってしまったことだった。襲われていたところをユーノが持っていたレイジングハートというデバイスのおかげで守ることができたことと、ここからなのは黙って見過ごせない性格から協力して動くこととなっていったのだ。家族にはユーノのことは飼いたいとのことからずっと家族には誤魔化し続けていた。

それからというもののなのはは積極的にユーノと一緒にジュエルシードの発生源に向かい、レイジングハートという魔法で変身しつつさっきの化け物と戦って封印をすることとなる。ユーノの頼みとしてなのはに20個のジュエルシードを集めていた。ジュエルシードが一つでも暴走をすれば、この世界を滅ぼしかねないと。

 

なのは達は家族と友達に隠しながら、外出しつつ一生懸命に空を飛び、ユーノと共にジュエルシードを集めていたのだから、今となっては隠していたことが家族やアリサとすずかの親友にも明るみになった以上、もう隠しようもない。

事実を知った家族が黙っているわけがなかった。

 

「貴様…そのせいでなのはを危険なことに巻き込んだのか‼︎」

「…申し訳ありません」

「ユーノ君は悪くないの…私がこれを手に取ったから」

 

なのはが巻き込まれた理由も言っているため、なのはとユーノはこうして二人して叱られている。なのはがユーノの持っていたレイジングハートを手にして、魔法少女として変身してしまった。

 

「だから今まで放課後に早く帰ってたり、学校休んでいたこともあったの?」

「うん。二人にも何も言わなくてごめんね…アリサちゃん。すずかちゃん」

 

ここにいた親と兄、姉達は娘達がこんな危険なことに巻き込まれるとは思ってもおらず、静まり返っていた。

誘拐事件がきっかけでまた新たに魔法、ジュエルシード、喋るフェレット、そういった類は無関係な人達にとっては唯の架空の話なだけだと考えていたが、こうして実際に目にし、もう既に関わっている。

 

「お母さんにお父さん。今まで黙ってて本当にごめんなさい…でも、私!それでもユーノ君の手伝いをどうしてもやりたかったの‼︎」

「なのは…だが」

「そんなの駄目に決まっているだろう!最悪、死ぬかもしれなかったんだぞっ‼︎」

恭介の言う通り、いくらユーノがなのはのことをフォローしていたとはいえ、状況が悪ければ化け物に殺されてしまうかもしれなかった。兎にも角にも、危険な目に合って欲しくないというのがなのはの家族としての本心だった。

 

 

だが、疑問はなのは達だけではない。

なのは達三人を守ってくれていた嶺達の方にも質問した。

 

「嶺とハセヲ、だったね…共闘したって言っていたな。ユーノの方もあるが君達にだって疑問がある。なのははまだしも、君達二人はすずか達を守っていたとはいえ…武器を所持していたのは何故なんだ?」

 

嶺達はすずか達を武器を守って戦ってはいたものの、そもそも普通の一般人が武器なんてものを用意できるわけがない。

 

「確かに貴方の言う通り武器は持っていましたが、私達はそれを使って誰一人殺してはいません」

「因みに、あそこでのびてた連中は全部素手でどうにかしたからな。あのロボットについては使わざる負えなかったけど」

 

嶺とハセヲの言うとおり、主犯やその部下達は全員殺すことなくボコボコにされて倒れている。誰一人殺めることなく、解決した。しかも、嶺達が武器を使ったのは人形戦相手だけ。

 

「さっき言った通り、私達もまたイリーガルだと言いました。武器を持っていた理由は、私達が次元漂流者だからです」

「漂流者?」

「私達は別世界から、この世界に降り立ちました」

 

隣で嶺のことを心配して見ていたハセヲが小言で話しかける。本当は転生して、この世界に辿り着いたことを隠している。しかし、本当のことを言うよりも、ユーノと同じように別世界から来たと言った。

(そんなんであいつらが納得してくれるのか?)

(転生とか言っても余計に混乱するだろうし、別世界から流れてここにたどり着いたって言っておいたほうが筋が通るよ)

「漂流者なら…それじゃあ僕からも君達に質問したい事がいくつかあるけど良いかな?君達はなんで魔力の存在を知っていたんですか?貴方達が放った光線は、確かに魔力だった。それとも、元々貴方達がいた世界に魔法が存在しているということなのでしょうか?」

 

今度はユーノが嶺に振り向いて質問した。ハセヲが使っていた光属性の魔法、レイザスを出しているのが何よりの証拠だ。漂流者という言葉にユーノが食いつき、二人が何者なのかを聞こうとしている。

 

「私達にはちょっとした家系として魔力を札に込めて、力を発動するものがあるからそれかなと。武器だと私達は常備、そういったものを持つようにされていたので」

「つまり君達も、ユーノ君と同じように別の世界から来た人達ってことなのか?」

「はい、そういうことになります」

 

嶺が持っていた呪札を見せ、ユーノに手渡した。札には何かの文字が記されており、解読するにも嶺とハセヲにしかできないものだった。武器を持っていたことについても、そういう世界だというならば納得のいく説明だった。

多少は誤魔化しをしており、怪しいものではないことを見せている。

 

こうしてなのは達と嶺達の素性を明かし、聞いていた他のみんなは困惑している。なのはの家族は娘が危険な目にあっていることも知らず、魔法ということにまで触れている。

母親の桃子が、真剣な顔をしてなのはに聞いた。

 

「なのは…それが本当にしたいことなのね?」

「母さん⁉︎そんなの「ただし、二人だけじゃどうにもならないこともあるでしょう…だから」」

 

士郎と桃子の二人はなのは達から嶺達に顔を向ける。

そして、

 

「君達二人に私達から頼みたい事がある…なのは達と協力してジュエルシードを集めて欲しい。娘とユーノ君だけでは心細い」

「お願いします。なのはを守ってくれませんか?」

 

父母は嶺達二人にはなのはを守りきれる強さを持っていることを理解していた。その証拠に、アリサとすずかを誘拐犯から、ジュエルシードで動いていた人形から、ちゃんと守っていたのだから。だからこそなのはの手助けをして欲しいと頼んでいる。ユーノの言った通り、ジュエルシードは放置すれば暴走すれば危険を伴い、この街はおろかこの世界を破壊しかねない。ジュエルシードで出現した化け物をどうにかすることなんて、なのはとユーノを除いて家族の中には誰も適任者はいない。なのはの性格上、お人好しで困っている人を助けようとするからジュエルシードのことについては見過ごすわけがなかった。

 

「わかりました。そちらが約束をするもしないも私達はその子を危険に晒されるのを見過ごすわけにはいかないですし、ここまで関わった以上私とハセヲもジュエルシード集めを手伝うつもりでしたから。封印についてはデバイスを持っているなのはにしかできませんが、それ以外ならなんとかします。ただ、こちらからも頼みたいことがあります。私達はここに初めて来たばかりでこの海鳴市のことも知りませんし、勿論住む場所がありません。そこでなんですが、すずかの家に住ませてもらってもよろしいでしょうか?また狙われる可能性もありますし」

今回の件で別の誘拐犯が吸血鬼であるすずかが狙われてしまうとなると、今後またすずかの身が危ないことも考えると二人は必要だった。二人だけのところを狙われ、誘拐されてしまったのだから。

「私とアリサちゃんを助けてくれたから…お姉ちゃんもそれでいいよね?」

「うん、いいわ」

すずかはメイドのファリンや、ノエルにも顔を向けると、彼女達も忍と同じように賛成した。こうして話し合いが終わり、みんなは解散して家へと帰っていく。

 

「なのは!また明日!」

「うん!」

 

なのは達三人だけではなくこの時点で家族全員が魔法について知り、すずかの秘密もこうして明かされている。なのは達の事情も誘拐の件で周知され、なのは一人で抱えていたはずの問題をみんなでどうにかしていこうと考えてくれている。

 

(一時はどうなるかと思っていたけど…)

(うん、あの二人はアリサちゃんやすずかちゃんを助けてくれたから悪いようには見えなかったし。お母さん達にはバレちゃったけど、もうみんなには誤魔化す必要も無くなったかな…あっ!そうだった‼︎)

 

嶺とハセヲの二人はすずかの家に住ませてもらうこととなり、なのはの家族からは散らばったジュエルシードを集めのために戦える嶺達の役目としてなのはを何があっても守るようにと頼まれている。

 

なのはは帰ろうとしたが、まだ協力関係になっている嶺達の名前を知らなかった。

 

「私、高町なのは!友達を助けてくれて本当にありがとう‼︎遅くなったけど、貴方達の名前は?」

「岩谷嶺だよ。今後ともよろしくね」

「三崎 亮…戦ってる時はハセヲって呼べ」

 

ジュエルシード集めは、なのはとユーノだけではなく嶺とハセヲの二人が加わって四人で活動することとなった。

 

*****

夕方頃

 

とあるマンションには犬の耳をしている長髪の女アルフと、ツインテールの金髪と赤い瞳、黒い服をした少女フェイトがいる。フェイトが持っているデバイス、バルディッシュが机に置かれている。

二人はジュエルシードの散策をした帰りだった。

 

「ただいま〜」

「あ、おかえり」

買い物袋をぶら下げて帰ってきたのは一人の男性と、彼と背丈がほぼ同じくらいの金髪の女性の二人が上り込んだ。男は台所に向かい、食べ物を管理する。隣にある本を手にとって、魔力で投影した調理具を用意している。

 

セイバーの方は準備している彼を心配そうな目をして温かい目で彼を眺めていた。

 

「今日の朝みたいに…料理本を見ながらやっていると、あの時にみたいにまた焦げてしまいますから気をつけてください」

「分かってるから!最初はそんなことあったけど、もうそんなヘマしないからな‼︎」

 

それは岩谷嶺の弟こと、転生者の岩谷正輝とその付き添いであるセイバーがいる。彼らが持っているジュエルシードは正輝達と協力して6個になっていた。

 

1日前にフェイトのところに済ませてもらいジュエルシード集めに活動している。しかし、正輝の姉が正輝の知らない間におかしな方向へと進めていることをまだ知らない。

 

なぜなら、なのはの家族とアリサ達がこの時点で魔力やユーノは勿論、ジュエルシード事件のことなんて知る由がなく、正輝はまさか自分の姉が転生者として介入していることすら知らないのだから。


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