Justice前章:Labyrinth 嶺編   作:斬刄

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31話アカネリゾート

任務を終え、当たった旅行券を手にしつつフェアリーテイルへと帰って行く。

「ただいまー」

「おう、おかえり」

 

ナツ達は四人とも手に嶺と同じ券を所持しており、外出用の身支度をしている。

 

「あれ、その券」

「あぁこれ?ロキにもらったんだよ。

嶺は仕事してるかと思ってたけど」

「しかし、これでは嶺の分は無さそうだな」

(あっ…ふーん)

 

たまたま抽選で当たった旅行券を見て理解した。この時のために当選され、ナツ達も同じ券を手にしているということは呪いの島同様についた先でまた何かしら目論む連中と衝突するのではないかと。

心の中で察しがついた嶺は、アカネリゾートのチケットをナツ達に見せる。

「大丈夫だよー依頼先の町で抽選会やってたから、試しに引いたんだけどなんか当たった〜」

「まじか⁉嶺ってばスゲーな‼︎」

「うむ、これなら5人一緒に行けそうだ」

貰っても仕方のない旅行券を誰かに手渡すはずはずだったが、逆にナツ達と一緒に行こうという話になっている。

「え、ちょっと待って。

みんな今から支度して行くの?」

「あぁ。嶺も一緒に行くなら一旦家に戻ってから準備してこい」

(あ、ヤベ…準備どうしよう。

券をプレゼントしよって楽観的思考だったから、何も用意なんてしない)

その日、ナツ達と旅行へ向かう数分前は大忙しで準備することとなった。

 

*****

 

アカネリゾートに無事辿り着き、荷物をホテルに置いて海辺を楽しむ。

ルーシーとエルザのような露出の高いビキニではなく、花柄ワンピースを身につけて遊んでいる四人を眺めている。

 

「ようやく見つけた。あのー…君、何処かで見かけた顔だけど。

ちょっといいかな?」

「…は?え、何?」

 

海の家で働いていたバンダナのお兄さんが、ナツ達を眺めている嶺に声をかけた。嶺は見知らぬ人がいきなり背後から話をかけられてことで挙動不審になる。

 

「あ、いや、ナンパとかは結構です」

「いや、そんな身構えなくても…あー、どう証明すれば良いかな。

 

じゃあ、これなら分かるか?」

 

彼はキョロキョロと周囲を確認してから、嶺に近づきつつ、彼の顔から青い紋章が刻まれていく。嶺からは額と頬を注視し、紋章がハセヲ達と似たものかと黙ったまま長い間顔を見ていくと、声をかけた人が誰かが分かるように理解していくうちに嶺の警戒心が解けていく。

 

「あー…もしかしてクーン?」

「ハハハ…ようやっと気づいたか」

「こんな所で何やってたの?」

「バイトだよ。この環境に適応するの、かなり大変だったんだからな。俺も休憩時間を利用して、こうして話しておきたかったんだ」

 

彼は模様を戻し、誤解が解いた事で話を進めていく。しかし、

 

「それで、ハセヲ達はいるのか?」

「ハセヲとアトリの二人がいるよー。

実は船に」

「おい、そろそろ仕事に戻るぞ」

「アチャーっ…探すだけでもう小休憩が終わったのか。それじゃ、俺は仕事に戻る。

このホテルの部屋にいるからまた別の機会で」

 

長いこと探し回り、こうして嶺を見つける事はできても、タイミング悪く彼とゆっくりと話せる時間はなかった。

 

****

 

 

カジノやテーマパークのような場所で遊んでいる中、嶺はどうしようかと悩んでいる。

(あー、何もすることがない。

遊ぼうにも賭け事苦手だし。

ちょっと正義側の仕事でもするかー仲間とはバラバラだから何かあっても困るし)

「殺者の楽園を探索して、人混みに紛れている可能性もあるから」

『了解』

ナツとグレイは各々で遊び倒しており、エルザはルーシーと一緒にトランプで遊んでいる。嶺は影から分身を5体呼び出し、このカジノに殺者の楽園がいないか散策するよう指示する。

(ナツもハッピーがいるし、グレイと話そうかなと思ったけどもう一人見切らぬ女の人と一緒に話してるなー、なんか声かけづらいな。

かといって迷うのも嫌だし…あ、そうだ。

クーンはここで働いてるなら連絡できるんだっけ)

 

このカジノで知らない男性に声をかけられても嫌だからと、クーンにこの場所を回ろうと電話を用意するが、繋がらなかった。

「あ、仕事疲れて早めに寝るようにしてるんだった。ここ離れたら迷子になりそうだし、しょうがない。それならナツと一緒に…」

(ん?停電?)

 

銃声も爆発音が交互に鳴り響く。音はナツ、グレイのいた場所から聞こえ、すぐに駆けつける。カジノにたどり着くと遊んでいた人達も既にいなくなり、この場から逃げていった。

 

「嶺さん、無事だったんだ!」

「うん、さっきまでホテルの入り口にいたから。あの爆発音が聞こえて、私もすぐに駆けつけたんだけど一体何が起きたの?」

「それが…エルザの昔の仲間だって4人組が襲ってきて」

 

グレイが女と喋っていた場所は既に破壊されている。白目をむいていたグレイは壁に横たわり、ルーシーが振れると氷へと変わっていく。

「グレイ!そんなっ…⁉︎」

「身体まで氷になっちゃっ…ってルーシー、そんな変にやったら。「私が何とかしてあげ…ひぃぃぃっ⁉︎」あー言わんこっちゃない」

下手に触ったことで身体の一部が崩れたり、元に戻そうとしても変に戻してしまう。

慌て直そうとしているルーシーに、嶺も手伝おうと動く。

「安心して下さい」

「あんた!エレメント4の…」

「エレメント4?確か、ファントムレイブンのギルドにいたっていう。

それじゃ敵ってこと?」

(て事は報復?

それが目的なら敵ってことだよね?)

 

その時、二人の横から水が溢れ、グレイと話していた女の人が上半身でだけ現れる。フェアリーテイルを襲撃した敵ギルドだが、解散になっている事は嶺の耳にも届いている。

嶺はかつてのギルドを解散させられた恨みで仕返しをしてきたのではないかとルーシーと同様に、身構えていた。

「待て、ルーシー!嶺!

こいつはもう敵じゃねぇ」

グレイがそう答えると、嶺は手に持っていた武器をしまう。かつての敵であるジュビアがグレイの身を守っていた。

「そうです。グレイ様はジュビアの中にいました。

貴方ではなくジュビアの中です!」

「そうね…」

「あ、ハイ」

(そんな強調しなくても…とゆうより何でグレイに様つけてる?何があったし)

 

グレイのことを様付けしてる事に首を傾げるが、嶺の知らない間にファントムロードでの激突中に、彼に惹かれる部分があったからこそ彼女が強烈なアプローチをしている。

「まぁ、突然の暗闇だったからな…様子を見ようと思ったんたが」

「敵にバレないように、ジュビアがウォーターロックでグレイ様をお守りしたのです。

其方の方は?」

「あー、私の方とは初めましてだっけ。

嶺だよ〜」

 

ジュビアがルーシーの隣にいる嶺に指を刺し、嶺本人は挙手して紹介する。グレイ側は敵の攻撃を逃れる事が出来たが、守られたグレイは不服な態度だった。

「余計なことしやかって、逃しちまったじゃねえか」

「ガーンっ⁉︎」

「んー、でもそうでもないみたいだよ。

敵、複数いたみたいだし。

寧ろ隠れてて正解だったと思う」

「なっ…どういうことだよ」

停電のタイミングでナツ達は何も出来ないままエルザの昔の仲間に襲われた筋書きは敵側にとっても予測通りのことだ。

もし、ナツ達の殲滅が楽園の目的なら、エルザの昔の仲間達どころか無関係な人間まで利用する。

しかし、そうしなかったのは今の楽園側にとって都合が悪いから、敢えて様子見だけして何もしなかった。仮にナツ達の誰かが反撃を試みようとしたら、どうなっていた事か。

 

「微かだけど、隠れ見てる人がいるみたい。

少なくとも、エルザの昔の仲間達だけじゃなくて他にも潜んでいたかもしれないね」

「何だと…」

「兎にも角にも、無事で良かったよ」

『マスター、このカジノに侵入した四人組の他に客に紛れた敵と、船で待機していた敵勢力を確認しました』

分散させたシャドーは嶺の影へと集まっていき、受け取った情報が嶺の脳内に入っていく。

まず近くに敵の船舶があったことと、エルザに関係している四人組とは他に別動隊で動いている者達がいる。四人組の方の話を聞くと、少なくとも楽園達の存在は全く知らない様子だったとのこと。

 

(何々…隠れた人数は10人近く、か。敵の能力はファントム襲撃を機に使ってきた別系統の魔法使い…確か本を出現させたんだっけ?デンドロ二世とか指輪に炎を宿してた敵がいたのも確認済み。

 

もしグレイが反撃しようとしてたら袋叩きにするつもりだったのかな?あと、エルザの昔の仲間と一緒の船で隠居している正体不明の忍術使いが今回の敵組織のリーダー?

なんか、印を結んで木の分身を黙々と作ってるみたいだったけど。

うっわぁ…またこれ面倒くさいことになるぞー。

ホント気が遠くなりそー)

三人が話している中、嶺はシャドーから得た情報を確認していくうちに苦い顔をしている。

「それで、ナツ達はどうした?」

「ナツは分かんない…でも、ハッピーとエルザが」

「うぉおぉぉっ!何で野郎だ!」

瓦礫の山からナツが出てくる。彼の口からは煙を吐いており、ゼェゼェと息切れしながらも立ち上がる。

「ナツ、何があった!」

「普通口の中に弾なんかブチ込むか⁉︎痛ぇだろ!下手すりゃあ大怪我だろ!」

「いや普通の人間なら完全にアウトなんだけど」

「うん、私もルーシーと同じ。

弾を顔面に受けたら、死んじゃう」

「流石サラマンダー…」

「あんの四角野郎!逃すかコラーっ‼︎」

 

そう言って、ナツはカジノの外へと出て行く。海辺を走り、敵のいる場所へと向かっていった。

 

「追うぞ!あいつの鼻の良さは獣以上だ。

だから、ナツを辿ればエルザを攫った連中のところに辿り着くかも知れねぇ」

「しぃぃかぁぁあくぅぅぅぅ!」

(ん、あれ?あのーグレイ?匂いで敵を辿るのは良いけど…確かシャドーの知らせから船で来たんだよね。

 

乗り物酔いするナツに任せたりして大丈夫なのかな?)

「え、ちょっ、まっ」

個性を活かして敵を見つけるのは良くても、乗り物でここまで来たのなら、移動して探るのは無理なのではと嶺は発言しようとするが、

(いや、言わないでおこー…何で船で来たのが分かったんだって言われそうだし)

時すでに遅く、仮に言ったところで変に疑われる発言をするのもおかしな話だと思い、何も伝えなかった。この状況に沈黙は金として、嶺は黙ったままルーシー達と共にナツの後ろをついて行く。

 

*****

 

ーーー楽園の塔

 

その塔は、海上に聳え立っている。

塔の周囲には四足歩行で歩く化け物と、建物を守護する兵士達が侵入者・脱獄者がいないか徘徊している。

 

その頂上では、青い髪をした男と黒い長髪の男が何かを話し合っていた。

 

「ジェラール様。エルザの捕獲に成功したとの知らせが、こちらに向かっているようです。

 

しかし、なぜ今更あの裏切り者を?貴方ほどの魔力があれば始末するのは容易かったはずだ」

「それじゃダメだ。この世界は面白くない。

しかし、楽園の塔が完成した今、これ以上生かすのは面倒なことになる。

 

時は来たのだ」

 

続いて、ペレー帽子と軍服を着た男が、双眼鏡を片手に持って現れ出てくる。腰には、煌びやかな桜色に光る刀を所持していた。

「お前達も、協力関係の条件を理解していると思うが…間違っても横やりを入れるような事は」

「あぁ、分かっているさ。

我々の利害が一致している間はな?」

既に、正義側と敵対している彼らとの協力関係と手を結んでいた。

殺者の楽園の代表とその精鋭部隊が待ち構えている。

 

「俺の夢の為に生贄となれ、エルザ・スカーレット」

 

夢の為に笑っているはジェラールだけではなく、楽園の勢力も別動隊から正義側が一人のみという知らせに歓喜していた。

 


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