夕暮れ
「こりゃまた…派手にやられたもんじゃのぅ」
ファントムロードとのいざこざで、お互い建てていたギルドは崩されていた。嶺の方は、何が起きたかナツ達に聞かせてもらっている。ルーシーが令嬢であるのと、ファントムと仲が悪かったことも。
「あの…マスター」
「ん?お前も随分大変な目にあったのぅ…」
家のことでフェアリーテイルを巻き込み、仲間を傷つけ、巻き込ませてしまったことを深く悲しんでいた。
それでも
「そんな顔しないの、ルーちゃん!
みんなで力を合わせた大勝利なんだから」
「レヴィちゃん⁉︎」
「ギルドは壊れちまったけど、また立て直せばいいんだよ」
病院にレヴィ達が無事、復活していたことに驚いていた。ファントムがギルドを襲った時に、ルーシーを護衛していたリーダスも負傷しつつもミラ達と一緒にいる。
「心配かけてごめんね、ルーちゃん。
話は聞いたよ、誰もルーちゃんのせいだなんて思ってないんだよ」
「つーか、俺。役に立てなくてごめん」
ミラ達三人は気にする必要はないと励まし、リーダスは守ることができなかったのを謝っている。
「ルーシー。楽しいことも、悲しいことも、全てまでとはいかんが…ある程度は共有できる。
それがギルドじゃ。
一人の幸せは、みんなの幸せ。
一人の怒りは、みんなの怒り。
そして…一人の涙は、みんなの涙。
自責の念に駆られる必要はない
ルーシー、君にはみんなの心が届いているはずじゃ」
その言葉に、彼女は手で涙を拭う。
顔から溢れる涙が手で隠れて何も見えない。
「顔を上げなさい…君はフェアリーテイルの仲間なんだから」
「ううっ…あぁぁぁっ‼︎」
手で顔の涙を拭うを止めて、涙は頬から地面へと落ちていく。ルーシーは、ずっと堪えていて感情を声を上げて泣き叫んでいた。
みんなも、
(それにしても、ちとやり過ぎたかのぉ…こりゃ評議員も相当お怒りに…いや待て、下手したら禁固刑とか?)
「ぬわぁぁぁぁっ‼︎」
「ま、マスターっ⁉︎」
ギルドの抗争を盛大にやったことで、厳重な罰を与えられてしまうのではないかとマスターも処罰のことで泣いていた。
この後、評議員の軍隊であるルーンナイトが訪れ、フェアリーテイルのメンバー全員は事情聴取のために、軍の駐屯地にて毎日取り調べを受けることとなった。
ナツとハッピーは逃げようとするが、結局すぐに捕らえられ確保されている。嶺も同様に取り調べを受け、本当のことを伝えていた。
「えーと、帰ったら何故かギルドが半壊状態で、幽霊が更に壊そうとしてきたために仲間と共に護りました。
それに、自分のギルドを守るのは当たり前だと思います」
嶺の方は帰ってきたばかりで、質問もその後に何が起きたか(殺者の楽園については伏せている)を返答しただけだった。証拠として依頼の紙も見せ、日付から抗争前のことは全く知らないことも認められている。
フェアリーテイルに対する処分は追って後日下されるが、ファントムの襲撃によって状況証拠や目撃証言で罪が重くなるわけではない。
*****
ファントムとの戦いが終わって、一週間が経つ。
フェアリーテイルにも落ち着きを取り戻し、ギルドの復興を行なっている。マスターとミラの二人は潰された建物をまた再建し、新しく改築を考えていた。
再建の手伝い中に、その完成図をミラに見せてもらったが、
「こりゃまたなんとも…」
「なんか、よくわかんねぇ」
「おー、なんかすごーい(色んな意味で)」
「にしても下手クソだな。どこの馬鹿が書いたんだよ」
見せた絵は余りに稚拙過ぎて、結局何が作りたいのか分からない。
グレイはその絵を貶すが、描いた張本人は
「う、うぅっ…」
「み、ミラちゃんだったんだ…」
「あーあ、駄目だよグレイ。
そんな下手クソなんて言ったら傷つくよ」
「また泣かした」
「それがグレイです」
(というより、この絵を見ても変な風に改築するんじゃないかな…)
ミラだなんてこの場にいる誰もが思ってもない。嶺はこんな大雑把な絵で建物を改築できるのか、むしろ変なことになるのではないかと心の内では若干心配もしていた。
ーーーー昼休憩
各々が食べに行ったりしてる頃に、嶺の携帯が振動する。
「ん?なんだろ」
携帯には次の世界について連絡が来ている。
ポケットの携帯を取り出し、隠れつつ開いた。
ーーーーーーー
嶺さん
お疲れ様です。
これから向かう世界について連絡します。
転移には午後4時に向かうことになりますので、事前準備を忘れないでください。
また、前回と同様…別世界の介入時にこの世界妻も時間が経たないよう調整します。
神より
ーーーーーー
(そっか、ひとまず次の世界については、正輝も誘ってと。
ハセヲ達にも連絡しよっか、帰るの遅くなるよーって…あ、準備で思い出した。
住む場所、まだ何も用意していない)
携帯を確認したと同時に準備を考えないといけなかったが、別のことも思い出す。家がないことがバレたら、ナツだけじゃなくて他の仲間にも言われてしまうと。
(どうしよっかなー…住む場所。
昼からはその件で動こうか)
携帯をしまい、考え事をしながら昼飯用に購入したサンドイッチを食べていた。今後の予定は住む場所を決めて、ある程度の家具の準備になりそうだと思いつつ、手伝いを抜けようと考えていた。
「おーい!嶺も、俺達と一緒にルーシーの家に行こうぜ!」
「…あーごめん。私の方は行けないや」
「どうしてなんだ?」
食事中に、声をかけてきたナツとグレイは首を傾けていた。エルザだけはちゃんとした作業着の格好をしており、
「いや…仕事でお金も稼げだし。いい加減家用意しないと野宿したことバレたらギルドのみんなからは流石に怒られそうだなーって」
「あーっ⁉︎そう言えばそうだなったな‼︎」
「そうか、なら仕方ないな」
「じゃ、そういうわけだから私の家が決まったら教えるよ」
そう言ってフェアリーテイル内での作業場を抜ける。
早速嶺は大家へと向かい、
「えーと、一人暮らしで衣食住に困らない場所で」
「家賃はこのくらいになるけど」
「それで結構です」
ギルド内だけではなく殺者の楽園の仕事もしているため、少なくともルーシー以上の金額を稼いでおり、住む場所には困らなかった。ベッドや作業用の机と椅子といった家具についてはグランティに連絡し、この世界に適した物を用意しつつ配置する。
(グランディの注文機能って便利だなー)
「ん、これで一通り終わったかな。
ちょっと疲れたし寝よ」
ある程度の支度を終え、ベッドに昼寝する。
時間はもう2時過ぎ、家の自宅で神からの連絡があったことをすっかり忘れていた。
「あれ、もうこんな時…ん?んんんっ…?」
嶺が目を覚まし、携帯の時間表示を確認すると連絡のことを思い出す。
約束の時間が、もう2分までに来ていた。
(…あー、やば。事前に連絡があったの分かってたけどもうこんな時間か。
寝過ごしたし、急いで起き上がらないと)
そう思いつつ嶺は携帯をしまい、立ち上がって準備しようとするが、立ち上がった瞬間にヘタリアの世界へと転移するのだった。
しかも、嶺が転移した先は
(は?えっ、上空?嘘でしょ…)
「お、おちるぅぅぅぅぅっ⁉︎神様の馬鹿ぁぁぁぁっ!」
無人島の上空だった。