シェイド達を討伐しているが、ジョゼの魔力で作られた幽霊はまた再生していく。
(キリが無いなー、ん?)
携帯が振動しており、隙を見てメールを確認する。
ーーー殺者の楽園が複数、迫っております
(あ、これフェアリーテイルの仲間に絶対任せちゃいけないやつだ)
殺者の楽園が遠くから迫っている。
もし街に潜入しているなら、帰った時点で連絡が入っている。
それがないのならばまだ街に入っておらず、そのままフェアリーテイルと敵ギルドの抗争に入ってくると予想する。
シェイド達を囮にさせ、自分達は守っているところを別方向から襲い、まず弱っているフェアリーテイルから囲んで潰そうと企んで動いているかもしれないと考えていた。
襲ってくるとしたら、遠くからの射出を目論む可能性があると。
「…ちょっと他にも増援がいるみたいだから、行ってくるよ」
「おう!頼んだ!
え…⁉︎増援⁉︎おいちょっと待」
まだ敵がやって来ることにマカオが驚き、止めようとした時には、既に彼からの了承を得たと同時に離脱した。
*****
楽園のリーダー、國鴎盖は至上の喜びに満ちていた。
仕掛けた時期は早かったがそれ以降は順調に、筋書き通りに物語が進んでいる。
(フェアリーテイルを潰し、ファントムロードも後でこちら側の配下にする…幽霊で体力が消耗している今が好機!)
全滅したフェアリーテイルを誘拐し、ファントムロードも対正義側の戦力にする。最初はファントムロードの好きにさせ、彼らをぶつけさせた。
ドラゴンスレイヤー、エレメント4、ギルドマスター。
この漁夫の利が成功すれば二つのギルドを手に入れ、この過剰戦力で今の正義側を潰す事も出来る。
情報には、この時期にラクサスは任務中戻ってくることはない。マカノフが復活する前に、ミストガンが危機を察知する前に決着をつければ問題はない。誰も邪魔をする人はおらず、順調通りに事が運んでいる。
ハルジオンから魔法で飛行しつつ、少し遠くの場所へ到達。フェアリーテイルを死守する彼らを上から狙い撃ち、ギルド潰しの後にファントムロードを籠絡するといった流れで動いていた。
ここまで都合良く上手くいったことに喜ぶ彼らにも、邪魔はあった。嶺という正義側の存在が終盤になって遅れてやってきたこと、何処を襲ってくるかも分かったことにも。
嶺は、敵の目的地で待っていた。
「…あ、敵発見。この辺りに来ると思ってた」
(たった一人で太刀打ちするつもりか。
正義側の連中もヤキがまわったな…それとも仲間が役立たずだった、か?)
敵は嶺を嘲笑った。楽園を止めに来たのがたったの一人、無策に突っ立っているだけ。
「よし…一気に囲んで潰」
が、もう一つ彼らに誤算があるとすれば、嶺の実力を軽んじたことだった。彼女が持つ札を取り出すと複数もの閃光を飛ばし、数人が吹き飛ばす。
「…え」
雑魚が何人束になって襲いかかっても、壁にすらならない。
魔法の多重攻撃で、何もできずに吹き飛ばされた。
(こ、この女の持っている札は危険だ。
あれを使わせる前に殺すしかないっ‼︎)
遠距離で挑むよりも、接近戦には弱いと判断する。
國鴎盖は部下に指示し、正面突破で特攻を仕向けるよう指示。
当然、札による魔法攻撃が炸裂するが、2.3人くらい避ければ問題はない。
『青銅創生魔法っ、防護魔砲球‼︎』
(手札が分からない以上、まずは様子見で)
だが、彼らは知らない。
彼女相手に接近戦を挑んだ方が、本当の意味で脅威である事に。
魔法の武器を手に持ったまま嶺の頭上に接近し、攻撃が可能な距離に入ろうとした瞬間、
(な、なにを…何をされ、た)
國鴎盖は、いつの間にか防御壁ごと胴体が切断されている。
接近戦を仕向けた数人も、切り刻まれて、倒れ伏せている。
既に嶺の手には既に大鎌を持っており、返り血が付着していた。
結局、彼らは彼女本来の強さを見抜ける事が出来ないまま殲滅された。
強い風が、灰となった遺体を空高く巻き上がっていく。
*****
「今度の相手は、ナツ達とはまた別の魔法だった…のかな?
武器も落ちてなかったし、まぁ報酬が特別高いし死んだ相手の能力について詮索するのは後でいいか」
殺者の楽園の討伐で、95万のお金を儲けた。
介入によって戦力増強とこの世界のフェアリーテイル壊滅の危険性が高かったことから、嶺に支払われる額も違い。
「ただい…あれ」
フェアリーテイルのみんなが喜んでる中、戻ってきた嶺は戦いが終わったことに唖然とする。
「「「やったー!ファントムに勝ったぞぉ‼︎」」」
みんな必死に守りきったことに感動している中、たった一人別のところで守っていた嶺だけが、いつの間にかファントムロードとの激戦が終わっていたるところをただじっと眺めているだけ。
近くにあった巨人は崩れ、頭上にいたシェイド達もいなくなっている。遠目ではナツ達もボロボロになりながらも生きていることを確認した。帰ったばかりで詳しい事情をよく知らない嶺にとっては、何の感動もできないままその歓喜な光景をただ眺めているだけだった。
(あれー…なんか終わってる)