Justice前章:Labyrinth 嶺編   作:斬刄

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おとぎ話を辿って その1 {FAIRY TAIL}
16話愉快な三人と一匹、そして迷子


嶺が船に帰ると、これまで来た連絡をまとめつつ亮達に知らせる。報酬も物語通りなために10万くらいでこれまでより低めだが、それよりも一番肝心な問題が残っている。

 

亮も千草の二人が頭を悩ませているが、今回の原因は嶺ではなく、メール連絡で来た制約に対してのことだ。

 

「…どういうことだ、これは」

『どういうことと言われても…決まりでして』

「えー…決まりって」

 

そもそも嶺にそんなコミュニケーションを取れるほど会話が上手いわけじゃないのだから、連れて行く以前の問題だった。

今のところ、神も困りながら渋々と答えていた。

 

「これってさ、他の正義側も?」

『そうなりますね』

(他もこうなるのかー)

 

嶺だけではない。弟の正輝もまた、主人公達を連れて行かなければならない時が来る。嶺の方が一番早く来ていると神が言っている以上、正輝の方はまた後から連絡でくることとなる。

 

「…にしては、随分唐突ですね」

『神によって制約は遅い場合もあります。

一番最初がこちら側だったってだけです。

こればかりは変えられようがありません』

 

この重要なメールの指示に正義側のリーダーは従い、特定の人物(主人公)を船に勧誘しなければならないのは分かった。だが断った場合に、その世界を殺者の楽園の所有物と記されているが、どう所有物にしていくのか具体的な事が全く分からない。

 

「…仮にもし、無理に断ればどうなる?」

『そのメールの通り、言ってきた世界は一瞬にして楽園の所有物となります。

 

その世界に住む人々の兵士化、特有の能力の保持…言うまでもなく敵側の戦力は飛躍的に増大します。

世界そのものが敵の陣地である以上…介入することはもうないかもしれませんが、仲間を勧誘しない上に敵の手札が増える分過酷な戦いになることは覚悟しなければいけません。

 

当然…主要人物と関わってきた人達も正義側を敵として判断し、襲いかかります』

(え、なにそれ怖い)

 

その世界の住人、或いは主要キャラが一斉に正義側の敵となり、殺者の楽園達に能力を奉仕することとなる。

 

もし規約を無視し、かつ規約上の主人公達に会うために世界に介入すればどうなるのか。

ある意味国際指名手配犯扱いとして、その世界に滞在する限り、あらゆる方向から正義側を暗殺しようと襲ってくるなんてことも。

 

「…なぁ、いくつか質問したいんだけどいいか?」

『何でしょう?』

「俺たちを敵と判断させるのっていうのはどうやってやるんだよ?

 

嶺は主人公っつー重要人物とその仲間に出会ったんだから、まずそのままの状態にするんだったらそいつらは嶺のことを敵として判断できない。

逆に嶺の味方になる可能性だってある。

 

嶺に関わった奴がいるなら、世界中の全員が完全に敵になるとは限らないはずだ」

亮が手を上げて、質問した。嶺が介入したペルソナの世界で例えるなら、悠達のことを指している。

 

『と、言いますと?』

「…嶺が連れて行かないって選択をしたら、その世界は、住んでいる人達はどう影響するんだって聞いている」

 

侵略者のように各国を襲撃し、植民地のように支配していくのか。或いは毒ガス兵器等の大量殺戮兵器とかで無理矢理その世界に住む人達を力で黙らせ、言うことをきかすのか。

 

『い、言えません。組織の所有物、つまりは敵の配下になるってだけで…方法に関して口外することは厳禁扱いされています』

 

神は質問に答えることはできなかった。何かありそうだなと、神が答えれる範囲で亮はまた質問をする。

 

「なら質問を変える…仮に所有物になったとして…その世界の住民を今度は敵組織に配属させて、俺達を襲うってこともあり得るのか?」

『いや、それもちょっと…』

(…あ、これ間違いなく背後に誰かいるな)

 

所有物となった世界で無関係な人を勧誘し、楽園として正義側と戦わせるなんてことも可能なのかというものだが、これも答えられない。制約違反後に所有物にされた今後の質問をしても、神は殆どが答えられず、言えない事情がある事が分かった。

 

「あーうん…もういいよ、亮。これいくら聞いても、答えは出ないと思うから。

 

 

どうなるかっていうのは口では言わないけど神はその方法を知ってるって捉えていいんだよね?」

『ご想像にお任せします…ううっ』

(もし亮の質問がその通りになったと仮定するなら…洗脳辺りか、記憶の改竄かな。でも世界中ってことは大規模な方法じゃないと人の意思を操作するのって無理だよね?

 

それが可能なのってさ、全知全能の神なら出来きそうだよね。

わー…神々達の目論見とか絶対あるじゃん)

 

嶺も規約の裏にいるドス黒い何かを感じた。

主人公達を連れていく理由もなければ、そうしなければ楽園に支配されると記載されてるだけ。

 

規約の真相も黙秘され、知る権利がない。

全部が全部神様が正義側の味方になるとは言い切れないが、救って欲しいと頼んでおいて神は厳しい制約を出しながら、後のことは人任せにさせている。

 

「とにかく、今は大丈夫なんだよね?」

『はい。勧誘は次の世界に介入し、解決してからとなります』

「にしたってこれ…どう説得どうすんだよ。

嶺、お前は何か考えてんのかよ?」

 

 

各主人公達に説得をするにしても、その世界が近日侵略者達に脅かされうになるからすぐに配属して下さいなんて言われたところで、言われた側の方は何を言っているんだコイツと返されてしまうだけだ。

 

「うーん、うーん、うんーっ…

 

よし、後で考えよ」

「いや待てお前、かなり重要なことだろうが後回しにするな」

「えー、こればっかりはいくら考えたって何も思いつかないよ」

 

能天気な嶺は考えることを後回しにするが、亮が帰ろうとする嶺を引き止める。結局規約のことは進展することなく、嶺の言う通りに介入した後に考えることとなってしまった。

 

*****

 

次なる世界の介入前

 

 

嶺の携帯を亮が持ち、事前準備の確認を念入りにする。

 

(GPS機能よし、今でも嶺とは一緒にいるから船内で行方不明になることもない。

可能な限りは用意出来た。

これであいつが迷子になることは、よっぽどのことが起こらない限りないな!)

「えーっと…?亮さん?」

 

亮が手元にある嶺専用のチェック表を見つつ、嶺が何処かに行かないように見張っている。

千草からしたら、嶺の過保護になっている。

 

「よし。嶺、準備は出来てるか」

「問題ないよー。じゃあ行ってくるねー」

 

転移装置が起動し、嶺は世界の介入へと向かう。しかし、GPS機能が働いておらず、結局また嶺が何処にいるのか分からなくなった。

 

「おいおい、マジかよ…」

「えぇ…こんなのってありなのかブヒ」

(嶺さん、どうかご無事で!)

これだけ確認しても、嶺はまた行方不明となる。亮はまた頭を抱え、見ていたデス★ランディも呆然としている。

千草は、いつも一人だけで介入している嶺の帰還を祈るしかできなかった。

 

*****

 

船から世界の介入に無事到着したものの、携帯で確認すると亮と同じ反応だった。

 

「えー…嘘でしょ」

 

携帯の画面には圏外となっており、歩きながらこの場所を把握しなければならない。

今度は森の中で迷子になってしまった。

 

 

「あのーすみませ…あっ」

「あぁん?」

 

何も考え無しに人がいると声をかけたが、ガラの悪い男だった。彼の腰には曲刀と拳銃のような武器を持っており、同じ格好をした人がぞろぞろと嶺を囲むように集まってくる。

 

(げ、やべ。声かける相手間違えた)

 

知らない人に声をかけるなと言う言葉があるが、この森の中で長居しつつ道に迷うよりも誰かに助けてもらった方が手っ取り早いと。

 

「何しに来たのかなぁ、こんなところにお嬢ちゃん一人で…」

「山登りしてたんなら、運が悪かったなぁ?」

 

山賊達は武器を用意し、目の前にいる女をどうしてやろうかと汚い笑い顔で迫りつつある。

 

「やっちまえ!相手は女だ!待ってるもん奪って、身ぐるみ剥がせてやろうぜ!」

(なんか…凄っごいありきたりな台詞吐いてるなー)

 

山賊は嶺に飛びかかってくるが、嶺は呪符で周囲を突風と落下する大岩で吹き飛ばす。この時点で嶺は威吹、怒塊といった二つの呪符を同時使用できるようになっていた。

 

「な、なんだこいつ!強いぞ⁉︎」

「怯んでんじゃねぇ!」

 

改造式の呪符は一枚で三回分なため、山賊は長引く突風に飛ばされ、大岩のせいで近づくことすらままならない。更に、

 

「た、大変です!フェアリーテイルの連中がすぐそこにっ‼︎」

「な、なんだとぉ⁉︎」

「?フェアリーテイル?」

 

フェアリーテイルとやらに挟み撃ちにされ、彼らは弱腰になって逃げようとしている。

遠くから二人の男が、叫び声が聞こえていた。

 

「火竜の鉄拳‼︎」

「アイスメイク…ランスっ!」

 

遠くでは炎を吐き出す男と、半裸で氷を操る男が暴れている。氷の槍が飛んでゆき、赤燃えている拳で山賊を殴っていた。

 

「金牛宮の扉、タウロス‼︎」

「モォゥゥゥッ‼︎」

 

金髪の女子は、鍵でタウロスと呼ばれる牛人を召喚して斧を振り回す。山賊は攻撃を防ぐも力負けし、召喚士を狙えば良いかとひっそりと隠れつつ狙っている。

 

「ルーシー、危ない!」

「今だ…ゴホぉ⁉︎」

 

羽のついた猫、ハッピーがルーシィに言うにしても裏に回って狙っていることに気づいたタウロスは片方の拳で吹き飛ばした。

 

「ありがと、タウロス!」

「あんたとあんたのナイスバディは、俺が守る!」

 

彼らは大暴れし、山賊は減っていく。あれだけ狭かった森は、木々が破壊されたことで広い空間が出来上がっている。

 

「あれー…これ手伝わなくとも勝手に終わりそうだなー」

「おーい、こいつが山賊の長なんだってさ。

奪った分まで持ってたし、もう帰ろうぜ」

 

安全に遠くから見ていた山賊の長もグレイに倒され、気絶したまま炎の子に持ち上げられてしまう。

 

「あ、そうだった。アンタ、あの山賊達に襲われたけど大丈夫だったか?」

「大丈夫だよー」

「にしても、こんなところに女一人で来るなんて危険だぞ」

 

炎の子が嶺に近づき、心配する。大丈夫だと嶺は返事したが、半裸の男がこの森が危険だってことに首をかしげた。

 

「?この場所が危険ってどう言うこと?」

「この山に山賊が住んでいることを知らないのか?そいつらが山から降りて、村の物資を奪おうとしているから、その依頼で俺達が来たんだ」

「なるほどー、通りで襲われたんだ」

 

転移された先は、山の木々だった。GPSも繋がらなければ、当然亮達と連絡も取れない。

その場所の近くに山賊が住んでいたことから危険だと、山近くにある村の人は近づかないようにしている。介入したばかりの嶺は、そんなことを知る由もなかった。

 

「それじゃあ…なんでこの山にいたんだよ」

「あーそれは…まず村まで案内してくれますか?

この山でずっと迷っていたんで。

着いてから私のことを話します」

「あぁいいぜ。俺はナツ!でそこにいるのがグレイ、ルーシィ。今さっき俺の肩に引っ付いてるのがハッピーな」

 

グレイは嶺が危ない山にいることに怪しく思いつつも、事情を話すということでひとまず納得する。討伐場所が山の森だからと、建物等の損壊で報酬が減ることがないと嬉し泣きするルーシィとハッピー。

ナツは嶺を不審に思わず、いい奴だと握手しようとする。

 

そんな、フェアリーテイルの彼らに山から降りつつ村に行きたいと道案内を頼んだ。

 

「よろしくな!」

「ん、よろしく」

 

これが、ナツ達と嶺の出会いであった。

 

 


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