Justice前章:Labyrinth 嶺編   作:斬刄

14 / 32
14話事情聴取

船に帰ると、デス★ランディと千草が転移装置の前で待っていた。

 

「やっと帰って来たかブヒっ!」

「ただいまーご飯何〜?」

「いやいや、ちょっと待つブヒ‼︎」

 

何も気づけなかった神は嶺に謝罪し、グランディは失態をした神と緊張感のない嶺に説教している。テレビの中から外に出た嶺をようやっと発見し、神の連絡で亮が迎えに行くこととなった。

 

「今後その世界に介入する前に、必ずメールを見ろブヒっ!

ちゃんと休息も取るように‼︎今回は事故みたいなものだったから仕方ないとして、次からは黙って介入するなブヒよ!」

『その…転移装置でも向かう事が可能でしたが…実はあのレトロテレビがポータルになってたそうで…』

「あーなるほどねー…」

 

嶺が転移装置を使わずに、介入できたことに納得する。神が気づかないまま、まさかテレビが転移装置となって起動したことで焦り、亮達に連絡するのも遅かった。

ご飯を食べた後、嶺は部屋に引きこもる。目が覚めても夢だと思っていたのに、実際に新たな世界に介入して事件を解決したことに気づいたから、シャドウとの戦闘で疲労している。

 

寝転んだまま、嶺はメールを確認する。

「あ、これか」

 

ーーーーーーーーー

 

 

・現代での能力は全部使用(回復用の消費アイテムは例外)は禁止されます。テレビの中は能力・アイテムが使用可能となります。

(ただし、現代世界で楽園が介入して来た場合もテレビの中と同様に能力・アイテムが使用可能です)

・戸籍は神が用意する為、その指示に従って動くこと。迂闊な発言はしないように。

 

 

ーーーーーー

 

なのは達のいる世界だと魔法で結界を張ったり、空中戦や索敵が必要になるが、ペルソナのような現代社会だと魔法といった架空の力の殆どが不可能である。ただし、特定の力が使える場所(テレビの中)では例外となる。

 

(今のところは回復アイテム系改造と、身体鍛えないといけないな。護身術程度の護衛は必要だし。トレーニングと、念の為にアイテムの強化をしておこうか)

 

既に戸籍とマンション、最低でも冷蔵庫とテレビ、エアコンの三つを用意してくれている。メールの内容を見ながら考えていると、携帯の充電器の予備と食材が無かったため、近くのショッピングモールに行く事にした。

 

「よし、ジュネスにでも行ってこよう!」

 

神が悠達と交流しやすくするよう、用意したマンションの近くにはジュネスがある。

学校に行くわけでも無いため、嶺は基本的に悠達と一緒に行動し、テレビの中の事件を解決することとなる。

 

せっかく貰った休みを有効活用しつつ、レベルを上げて武器と防具、アイテムを数多く集めていた。とはいえ3人でアイテムを保管するにも限度があるため、

 

「小さい規模だけど倉庫は出来たな。

拡張はお前に任せる」

「りょうかーい」

 

お金もある程度溜まったことで、今度は倉庫を解放する。今のところは乗船は千草と亮、嶺の3人だで倉庫の利用は自由扱いとしている。

「ちょっと頼みごとがあるんだけどさー」

「今度は何ブヒ?」

「介入する世界でアイテムが許せる範囲なら…改造って出来るー?」

規約上を理解した上で、嶺はランディに回復アイテムの魔改造を頼む。

「アイテムも出来るブヒ。でもブヒ!

ホント頼むから、お前一人でやるなブヒ‼︎

リーダー消失なんで聞かされて、心臓に悪いブヒよ‼︎」

「うっ…わかったよ」

 

今後は付き添いとして千草と亮の二人が隣で嶺の実現を見ることとなった。更にはGPS付きのものまで用意ミッションとして追加されることとなる。

「俺達の事を思ってくれてるとはいえ、何でもかんでも一人で行動するなよ」

「んー…ほとんど一人で行動することがあるけど、ちゃんと対処もできるよ」

「お前の対処も色々とおかしい所があるから最低でも俺を呼べ。制約がないなら尚更だ」

もう子供じゃないとはいえ、嶺の目を離したら何やらかすか分からないと前もって注意する。

とは言っても、

(一緒にいる間は、なるべく目を離さないようにしねーと…)

予想外な行動をして行く嶺の副リーダーである以上、事ある毎に亮の苦労が続く。

 

 

*****

 

悠と花村は学校帰りにジュネスへと向かっていた。雪子は学校を休み、千枝は用事があるからとさっさと帰宅。

ちょうど悠達が嶺のことを話していると、

 

「いやいや、そんなバッタリと会えるわけが…」

「この機種の充電器ってどれだろー」

 

悠達には、まさか嶺が外に出て買い物しているとは思ってもいない。対して嶺も、悠達がこの日にジュネスへ行くとは思っていない。

マヨナカテレビのことに関してはついさっきのことだから、疲れてジュネスに行くことはまずないと。

そのまま呑気に充電器を探している。

 

「「あ」」

 

悠が立ち止まり、買い物中の嶺を見つけた。

こんな所で会うとは思いもよらなかったとはいえ、すぐに嶺を見つけることができた。

 

「ん?」

 

嶺は声に気付いたのか此方を振り返る。3人とも動きが止まり、嶺に近づいて先日の事を話す。

 

「えーっと、私に色々と言いたいことがあるんだろうけど…買い物済ませてからでいい?」

 

こうして嶺は充電器を買うついでに、悠達に事情を説明することとなった。

このまま呆然といても進まない。急いでレジの方へ向かい、充電器を購入する。

「よし。充電器も買えたことだし、それじゃあテレビの中で話そっか」

「…ジュネスで話さないのかよ?ここのジュネスにも話せる場所はちゃんとあるだろ?」

 

陽介は場所を変えることに不審がる。ジュネスにも休憩場があるのだから、そこで話しても問題ないんじゃないのかと。

 

「それもそうだけど。私や悠達にも、テレビの中でないと話せないこともあるよね」

「あー確かに…」

「それもそうだな」

 

こうしてテレビの中へ、3人が入っていく。

テレビの中ではクマが呑気に立っていた。

 

「嶺ちゃん!それに先生達も!」

「あ、クマ」

 

クマはテレビの中に悠達が来てくれたことに喜んで近づく。

3人は円になるよう、床に座る。

 

「これで、ちゃんと話せれるだろ?」

「うん、そうだねー」

「なになに、3人でなんの話をしてるの?

あとみんなして何の用クマ?」

 

悠達が何しにテレビの中に入ったのかも、どうして嶺も来ているのかもクマは興味津々に話に割って入ろうとする。

「今、俺達ここで大事な話をしてるから後にしてくれ」

「うう、しょんぼり…」

「終わったらクマにも話すよ」

陽介に追い払われ、クマは悠達の話に入れないことに落ち込む。

悠がクマを慰めつつ、本題に入る。

 

「んで、何の話だっけ」

「…あんた、何者なんだ?」

「何者ってただの一般市民ですよ」

「いやいや、ただの一般人がシャドウを倒せるわけねーから!」

怪しいと疑っている陽介はすぐさまツッコム。キョトンとしている嶺は首を傾げて、普通の人だと断言している。

今度は悠が、嶺のことを質問をしていく。

「あの時、走り去ってたけど…保護者って?」

「保護者は保護者だよー。あ、もちろん親とかでは無くて私が良くも悪くも突拍子もない行動起こすから、そのストッパーって意味ね」

「ストッパーねぇ…」

まず一つ、疑問が解決する。親でないにしても、保護者ならば行方が分からない彼女を心配して連絡しようとするのはごく自然なことだ。

次の疑問は嶺自身のことを聞かれる。

「学生なのか?」

「学生と言えば学生かなー?ちゃんとやってる(鍛錬と魔改造をだけど)よー」

曖昧な答えでも、悠達を納得させるには十分許容できる返答だった。それでも深入りしてくる相手だったら、詰んでいる。

 

「それじゃあ、どこに住んでるんだ?」

「このジュネス近くのマンションに住んでるよー」

「…なんだか、あんまり答えが答えじゃねーんだけど」

「?なってるよね?」

 

嶺と陽介が、悠に顔を向ける。しかし、判断の基準を悠に委ねた時点で、この話し合い自体が早めに勝負がつくとは二人とも思いもしない。

 

「なってるな」

「悠までもかよ‥」

 

その後も淡々と悠達に説明していく。その度に鳴上が納得したようにうなづき、花村が近くで頭を抱える。なんでシャドウを倒せるほどの運動神経が優れているのかも鍛えた(レベル上げ)からと、テレビの中で怪物に襲われるかもしれなかったに恐怖しなかったのかも少なくともあの城の怪物はナイフで対処できるだったからと即答。

怪物の恐怖云々は、ホラーゲームで鍛えた(嘘)と。

正しい答えかどうかも、曖昧なまま悠は納得していく。

そして、悠の判断は

 

「うん。至って普通だ」

「マジかよ…悠が言うんならしゃーねーな」

「良かったー、納得してくれて」

 

陽介は嶺に質問するのを諦める。こうして悠達の協力者として認められることとなった。

 

「でも大丈夫なのかよ?いくら身体能力がアレでも、シャドウだって進む毎に強くなってるだろ」

「その時は悠達に任せる」

「ありがとう、助かるよ」

(それはこっちの仕事でもあるからねー)

「話は終わったクマ?」

「あぁ、終わったよ。ここで話をしよってことだったから」

二人とも嶺のことを納得し、今後とも協力することが決定したが、それでも何か足りないものがあった。

「でもでも、ちょっと気になってたんだけど」

「気になる?何が気になるんだよ?」

「雪子ちゃんの時は、たまたま霧が少なくてシャドウがちゃんと見えてたけど。もし霧が濃くなってたら嶺ちゃんは何も見えないし、先生達と逸れちゃうかもしれないクマ」

(え、それじゃあ霧が薄かったから悠達と一緒にいても問題なかったわけ。

うわー危なかったー)

「そういえばそうだな」

「というわけで、嶺ちゃんにはこれをプレゼントするクマ!」

「ありが…うん?」

クマは悠達のようなメガネを嶺に何かを差し出す。が、渡されたのは城の時に雪子や千枝に付けていた鼻メガネを貰った。

「え、えぇ…?」

「おいクマ、嶺が反応に困ってんじゃねーか」

嶺は困りつつ、付けてる時と付けてない時で比較すると、本当に霧で見えなかったものが見えるようになる。

「あーうん。霧が消えてるし、外見気にせずにこれ付けるだけでも戦いやすいよ。

あと悠達と逸れることもないし」

「おー良かったクマ!これなら」

「いやいや良くねーよ!

むしろ俺達が戦いづらいわ‼︎」

「しょうがないクマねー」

クマは嶺に渡したメガネを交換し、今度は嶺専用のものをメガネを渡す。

デザインは黒とオレンジにしている。

「悪くないね」

「それじゃあ連絡先を教えてくれないか?協力する時に必要だと思うから」

「良いよ。あれ、そう言えば二人は?」

「天城はあの件で家にいて、里中は早帰り。

二人には俺達から話しとく」

「ん、ありがと〜」

何も考えてない嶺はそのまま二人に電話番号と、メールアドレスを交換する。その後日、船に帰った嶺は亮に簡単に交換するな、と叱られたのは言うまでもない。

「いやー。任務上必要なのかなと思って」

「相手を選べ、相手を…」

 

*****

 

こうして嶺は充電器の購入、悠達の会話を終えてやるべき事をやった。

マンションへの道のりは10分くらい歩くだけでジュネスが近くにため、ある程度の食材を買い揃えることができた。介入の間でも船にいたっきりの亮達にも食材を入れていかなくてはならない。二人も嶺がいない間は地道にレベルを上げているが、その分嶺は日用品と食べ物を買いに行っている。

 

マンションの室内には回復アイテムが散乱しており、部屋を整理するのも多少時間がかかった。家にいる時は改造が出来ないが、使用可能のアイテムでどれぐらい効力があるのかを試している。

 

「今後はマヨナカテレビを見るようにして、か」

 

雨の日の深夜にテレビをつけているとマヨナカテレビになる。それに映った人は、今でもその中に攫われている。雪子のがいい例だが、その時嶺もよく知らずに介入した為に雪子のマヨナカテレビも実際に見ておらず、テレビの中に入ったという実感が湧かない。

(どんなのかなー)

悠達の言う通りにテレビをつける。

そこに映っていたのは

 

『あぁん、暑い。暑いよぉぉ~』

「無理」ブチッ

 

逃げたくなるようBGMと喘ぎ声が流れていく。声と顔は完二だが、彼本人が間違いなく発言しないような言葉ばかりを発している。

姿の方も褌だけしかつけずに、嶺は死んだ魚のような目をしていた。

 

これが彼の抱えてる悩みであったとしても、嶺はもうこれ以上見るのは無理だと確信してすぐにテレビの電源を消した。これが雪子の方もあるならばもう数秒くらいは多少なりとも見れたかもしれないが、今回ばかりは映った時点でもう無理だと頭の中で判断し、テレビの電源を消す。

因みに視聴後に悠から連絡されると

 

『み、見たか』

「…映って声聞いた時点で直ぐにテレビ消した」

『わ、分かった。ありがとう』

 

報告するだけし、悠もこれ以上何も言うことなく電話を切る。

そのままベッドに眠る。

 

「よし、もう寝る」

 

しかし、悪夢は終わらない。マヨナカテレビで見たアレが、今度は夢に出てきた。今度は分身しており、変なポーズを取って踊っている。

 

嶺はいつの間にか持っていたハリセンを取り出す。

(仕方ない、モグラ叩きだ)

 

*****

 

次の朝

 

「うげっ…全然眠れなかった。ホラーとは別の意味で狂気を感じた…」

 

夢ではハリセンで叩かれても消えず、ドMみたいに叩かれて喜んでいる。救いだったのが叩かれると消えることだけで、消しても増えていくループにいい加減夢から覚めたいと憂鬱になりながら黙々とハリセンで叩いていた。

 

目から覚めて解放されても、あの時の悪寒が残ったまま。

まだあの城の中にいた時の方が幾分もマシだと一回思っていたが、雪子の影と同じようにお姫様のような理想像を考えていたってことになるから首を振って拒否する。

 

(城の方がまだマ…いやいやナイナイ。羊が一匹とかのマシな夢が見たかった)

「あ、メールだ」

マヨナカテレビを見た後、電話してきた悠に今度はメールで呼ばれている。彼らが探していた巽完二という男の人が消え、悠達の調べがついたらジュネスに合流してほしいとのこと。

「もしもーし」

『あ、嶺さん。次の日テレビの中に入るから、同行してもらってもいいか?』

「うん、いいよー」

『ほとんど目星がついたら、こっちから呼ぶ。

それまでは待ってほしい』

「ん、了解」

 

嶺はその頼みをすんなりと承諾する。こうして悠達に呼ばれるまでは、一応助ける相手がどんな人物なのか、巽完二という男を調べている。

 

(如何にも、不良って姿だね)

 

ニュースには不良組と乱闘している記載している。こんな人が、マヨナカテレビではおかしな動きをしている。またあの夢の事を思い出すのが嫌なため、触れないままノーコメントではあった。

 

(まぁうん、色々あるよね…いろいろと)

 

雪子の影みたいだとそうまとめた。

完二に関しては、調べただけで実際に会って話したことがまずない。この世界に入ってから話したのが、質問してきた悠達とクマのみなのだから。

今の嶺にはそうまとめるしかできない。

なのに、

 

(…なんで悪寒がするんだろう。

この世界のカレンダーには5月頃なのに異様に寒いんだけど)

 

似ているけど違う、そう理解しようとしても次の救出のことを考えていると何かしら嫌な予感がしていた。

悪夢の続きを見せられるような、そんな悪寒が。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。