Justice前章:Labyrinth 嶺編   作:斬刄

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12話アイテム改造と、テレビ

三人が転移して船に到着すると目の前には長方形の扉、その側には工具セットと一冊の本がある。背後には転移用としてカオスゲートが設置されていた。

 

(あ、カオスゲートだ)

「今後はこれを操作して行くのか」

「探索は荷物を自分の部屋とかに置いてからだよー。

まず地図通りに自分の部屋に行こうね」

「この本…取扱の説明書ですね」

 

工具セットの近くにあった本は、カオスゲートを操作して転移する為のやり方として置いたものだ。かつてハセヲ達が使っていたものと仕様が違っており、転移にも様々なものが説明書に記載されている。

 

扉を開け、リビングに向かうと如何にも二、三人暮らし出来るような広さになっている。

まだ人数も少ない為に船内は狭く、最低限のものしか置かれてない。

 

 

それぞれが荷物を自分の部屋に入る、部屋の中は写真通りのものが用意されていた。

 

「…ふーん」

(部屋はこうなってるんだ。やっぱりリーダー部屋だから二人より広くて、家具も多い)

 

どの場所も綺麗になっている。リビングだけではなく、個室にもちゃんとした風呂場とトイレがある。

 

生活するだけなら何とかなるが、この船はサービスとして保証しているのは生命ライン(酸素、水、電気、ガス)なだけで、それ以外の調達しなくてはならないものもある。生きていく中で、任務をこなして報酬を得ることも最低条件の一つだ。

 

「?嶺さんどうしたんですか、立ったままで」

「うーんとね、まず整理整頓(魔改造)をしようかな〜って」

「やっぱりそう思いますよね!チムチムの縫いぐるみは可愛かったですけど、やっぱり物寂しさがあります‼︎」

「物寂しさもそうだけど、後々物も増えていくことになると思うよ。船のことなら船の広さとか、どれぐらい物を置けるとか…三人とはいえ、使えるスペースが狭いなら何処まで改装できるかも聞かないといけないね」

 

千草と嶺の二人で、色々と話している。

荷物を持っていったにしても、なのは達のいる世界だと限りある時間がある以上買い物して持ち帰る量にも流石に限度がある。

 

衣服は仕方ないが、部屋の模様替えやオシャレといった趣のものは流石に沢山用意していない。

 

「うーん…白いだけの壁も殺風景ですよね」

「まーそうだねー。用意してるなら飾り付けとかはハセヲと一緒に考えてもいいよ。私はいっぱいあるし….規約とか管理とかで、船内でもやる事と覚える事が多いからね」

(ん…?)

千草は共感しているが、それを見聞きしていた亮は何故か二人の会話が成り立っていることに違和感だった。

 

少なくとも嶺は、縫いぐるみに目線が向けていない。

 

「でも…換気が窓じゃなく、空調機じゃないとダメだなんて」

「外に何があるかも遮断されてるけど、間違いなく船から出たら危険な場所だと思うよ」

「やっぱり、そうですよね…でも、自給自足以外の色々設備を用意してくれたおかげで、最低限の生活はちゃんと出来そうですね」

(…二人の会話は合ってるのに、言ってる意味合いが全く違ってるってどういうことだよ)

 

「あの…洗濯が出来ても服を乾かすのはどうするんですか?」

「臭い消しの為の消臭剤とかあるから部屋干しも可能だけど、どうしても日干ししたいならエリアワールドで干すことも可能だってさ。

 

使えるとしたら草原だけど」

「え、エリアワールドで…⁉︎」

(…マジか)

 

エリアワールドは洞窟、神社、草原と三種類に分けられている。草原日光も照らされ、閉鎖空間である以上誰かがカオスゲートを弄って入らない限り下着類を覗かれることはない。その話が本当ならエリアワードの環境そのものも再現し、天候も影響することとなる。二人ともそんなやり方で有効活用出来ることにも驚いていた。

 

「じゃ、部屋以外に船の中を探検してみようか?便利な物か、或いはここで買わなくて済む物もありそう」

 

【???のところへ行ってみよう】

 

まず嶺とハセヲ、アトリの3人で、船内を探索する。が、各部屋ごとに向かう通路の横幅が1〜2人入るくらいの狭さになっている。

部屋は綺麗で、小さい小物以外は男女とも家具はシンプルなものが用意されている。

 

「規模はまぁ…察したけどね。狭さは後々解決するけど、日光とかは難しいな」

 

船の構造そのものが小型船なため、地図を見ても窮屈になる。一人暮らしできるような範囲でもなく、部屋の一つ一つが潜水艦程の狭苦しいというわけでもない。

現段階でリーダー及び仲間専用の部屋(ベッド、机、椅子、風呂、トイレ、エアコン、洗濯機)、倉庫室、調理室(電子レンジ)、リビング、転移装置室、空調管理室(個別以外のエアコンや部屋干し用等)を用意してる事は確認しているがそれでも物足りない感はある。

 

三人は地図を見ながら、???にたどり着くと

 

「久しぶりブヒ!」

「えーっと、デス★ランディ…だっけ?」

「な、なんで疑問形ブヒか…」

 

そこにいたのはかつてカナードというギルドでバイクの改造や提供していたグランディ族のデス★ランディだった。部屋はギルド寄りに似せており、真ん中にちょこんと立っている。

 

グランディ族というのはハセヲの『カナード』や、アトリの『月の樹』のような各ギルドに一匹存在している。中には嶺の過去の時に話していたメカ・グランディという特殊なものもいる。

 

その中でデス★ランディは、カナードに所属している。

 

「お前が、新しいリーダーブヒか?」

「え?リーダー?」

「携帯のプロフィールに記載されてるブヒよ」

 

嶺がリーダーとなり、副リーダーがハセヲとなっている。番号には6と載っており、自分の番号が分かるようになっている。

 

「…ハセヲはギルドマスターだったけど副管理者で、私についてはいつの間にか船と仲間の管理責任者(リーダー)って携帯に表示されているようだね」

 

デス★ランディは紙を取り出して船員の情報を読み取っているが、嶺の称号に関しては???となっている。こうして嶺本人が発言した事によって、船の管理責任者ということが自動的に表記された。

 

「あとハセヲ、カナードだとギルドマスターだけどこの船の副管理者に任命されているブヒ。

 

ありがたく思うブヒよ」

(やっぱこいつ相変わらずうぜぇ…)

 

カナードにいても、嶺の船にいても、腐ってもデス★ランディの性格はそのまま。

亮に上から目線な発言を言いつつも、本題に入る。

 

「で、ここは何をする場所なの?カナードじゃないなら、やる内容も全然違うよね」

「それを今から説明するブヒ。

オマエラ!船の管理にはそれなりの責任が伴う、その事を肝に銘じとくことブヒ!

その為の課題を与えるブヒ!」

「お前、珍しくまともなこと言ったな」

そう嶺が言うと、メールの着信音が鳴る。

メールには課題という件名が送られており、内容を確認すると

 

・荷物、資料の整理

・転移装置の読解

・船内の整備

 

と、上記の三つを課せられている。

 

「基本的な課題内容を熟知する事で、後が楽になるブヒ。

 

船内で過ごすこのと、家の中で過ごすとは大きく環境も変化するから、整えたりしなくちゃいけないとダメブヒよ。

それじゃあそこの3人、そこに座れブヒ」

 

 

そう注意するとグランディは部屋を暗くする。デス★ランディはスクリーンと、ステッキ棒を用意し、アニメーションを用いたルールを説明していく。

 

 

 

「転移装置は、いろんな世界に介入する事でエリアワードを手に入れることができる。任務じゃなくてもそこでお金と特有のアイテムを手に入れることが出来るブヒ。

 

今はまだtha world のアイテムしか取れないけど、他の世界に介入することでダンジョンの幅を広くし、様々なアイテムを手に入れることが出来る。

 

お金が足りない時でも、アイテムが足りない時もそこで現地調達できるからお得ブヒ!」

 

 

ゲームとは異なり、転移装置のカオスゲートに触れる事で端末が出現するという仕組みになっている。そこからエリアワードを入力し、擬似世界としてワールドに介入できる。

ただし、カオスゲートをいくら改造してもTHE worldやリアルの世界に向かうことはできない。

 

「任務の報酬で得たお金も、日用品等はこちらで購入できるブヒ。オイラは、ショップも担当しているからよほど特殊なものでない限りの物を用意できるけど、全般的なお金はこちらで担当になるブヒね。

 

 

船体の改装やスケールアップについては、達成毎に向上するから問題ないブヒ。ただし、改装の対象外による私用による特殊な施設の設置や、向上の為の資金もまた自給自足だから。転移装置にあったカオスゲートも弄る事は可能ブヒけど、超高額だから今の収入じゃ無理ブヒね。

 

 

とにかくオマエら、今のところ介入の任務はないからその間は自由ブヒ」

「えーと、それじゃあ…」

嶺は説明を聞いた後、スマートフォンをグランディに見せる。そこにはなのはの世界で活躍したことで、手に入れた額と経験値が記載されていた。

「楽園一人でこれぐらい稼いだんだけど、何処まで目安なの?」

「敵の強さ、危険度によるブヒ。何処にでもいるやられ役な感じの敵だと低いけど、それでも被害予想によっては高収入になるブヒ。

世界介入の難易度も、高ければ高いほどもらえる額が高くなるブヒ」

やられ役、通称モブのような弱さを持つ敵をいくら倒してもそんなに稼げない。とはいえデンドロのように敵が馬鹿でも街中に突然出現し、放置すれば周囲に被る被害が甚大のものもいる。

 

「それじゃあ、この85万円は安い方なの?」

「介入による解決と討伐をこなしているからそれを合わせているブヒ。

初めにしては普通よりちょっと上ブヒよ。介入しても平和なものもあれば、楽園だけの討伐もあるブヒ。

 

以上で説明は終了ブヒ。今は人数が少ないブヒし、任務もまだ簡単…しかーし!今後は任務を達成する度に難易度も高くなるし苦労する事も多いから、がむしゃらに働くブヒ‼︎」

 

生活面では神のサービスを無料で提供してくれているおかげとはいえ、それでもお金は間違いなくかかる。仲間達の食費もそうだが、介入や戦闘面における武器、アイテムの必要経費を考えなくてはならない。

 

「そう言えばお金ってどこで貰えるの?」

「嶺の部屋にATM機器があったから、プロフィールを提示すればお金の引き出しや、預けることもできるブヒ。

 

 

ただ、介入する世界毎に通貨や価値が異なるから船内用と介入に対応した賃金を準備しておくブヒよ?介入前にはATMもそれに対応して、自動的に進化するブヒ」

(…お金を引き出せるのは私の部屋だけか)

「…なんでお前、この船に関して詳しいんだよ?」

「オイラは嶺と同等の管理責任者でもある!そして、介入前に元々この船にいたのだから当然ブヒ!

 

あ、でもwハセヲには責任が重過ぎるから、精々中間管理職のようなお仕事がお似合いブヒかもしれないブヒwww」

「テメェ…」

「ダメですよ。ハセヲさんも私と嶺さんにとっては欠かせない人です」

ハセヲは嫌味を言うグランディに苛立ってはいるものの、アトリは擁護している。

 

それを嶺は眺めて、無言のまま黙って聞いていた。

(まぁあながち間違ってないかな。介入はともかく楽園の討伐なんで繰り返してやったら。

…うん、間違いなく二人の精神が病んで心も壊れちゃうかもしれない。

 

今のところは基本的に私が動くし、二人は船内の管理や支援してくれたら凄く助かるかな)

「とはいえ、介入前は住む場所も任務達成にも苦労したのだから、3人とも船に着くまでの間はお疲れブヒよ。

 

3日ほど休息を用意しているから、介入の連絡が着くまで身体を休めるブヒ!

何かあったらオイラか嶺に言うブヒよ」

 

*****

 

こうして、嶺達は3日間の休息を有意義に使っていた。

 

まず1日目に3人とも生活に慣れるようにする事と、前回説明した船体の機能確認。嶺は.hackのアイテムの回収のため、ハセヲ達二人と一緒にエリアワールド(草原、洞窟、神社)にいるモンスターの討伐へと向かう。

 

「準備できてるー?」

「あぁ、いけるぞ」

 

嶺だけではなくハセヲやアトリにも携帯が支給され、ボタン一つでネットキャラとリアルの姿を入れ替える事ができる。ゲームでの衣服は携帯で衣装を変える毎にいつも綺麗なままだが、リアルの服はそのまま汚れや臭いが残ってしまう。

この機能は元々なのはの世界に介入時に加え済みなため、使い続けた後に気づいた。

 

 

衣服類の洗濯と乾燥については、外による換気をどうしてもしたい場合のために、エリアワールドの最弱レベルの場所で乾かす事となる。

 

女子組は支援しか出来ない人はそのまま残り戦える人だけで敵を葬っていく。女子の洗濯物を片付けた後に男子組(現段階はハセヲしかいない)がやってきて、衣服を乾かすというやり方になる。

この時点で敵は全滅させているため、男子組が襲われることはない。

 

とはいえ、外の空気を据えても洗濯物の日干しをする機会は滅多にない。

特に女子は誰かに見られるって事もあるのだから、部屋干しになる。空調による換気は臭いと乾燥させる事もできるが、衣服についてある雑菌を取り除くことはできない。

外なら日光、部屋なら除菌用のスプレーの必要がある。

 

(the worldの弱いレベルじゃ初心者向けのアイテムしかないけど…一応取っておこうか)

 

エリアレベルの弱い場所のアイテムも、別世界の価値によっては貴重なものになる。このゲームの仕様である癒しの水、雨等の回復アイテム、属性に耐性を自由に付け替えできる装備品、装飾品もそのうちの一つである。

 

環境が豊富な世界もあれば、そうでない可能性もある。初任給のお金も既に分け、次の世界への準備を整えておいた。

 

2日目(昼)

亮と千草はエリアワールドに出ないまま船内に滞在し、嶺は企画書と収穫した札を持ってグランディの元へ向かう。

 

「嶺ブヒか。

ちゃんと課題は達成できてるブヒか?」

「まぁまぁだよ。で、今空いてる?

頼みたい事があるんだけど」

 

転移装置室では説明書を見ながらカオスゲートの設定をしていくと、倉庫、回復機能、転移後の能力向上という項目を見つけた。他にも様々な効果の機能が加われているが、小規模のものでも解放経費には150万になる。

 

当然、どの項目も最初の段階で購入できる金額ではない。

 

「え、ちょっ、この量をブヒか⁉︎」

「うん。そうだよ?それじゃあ今度はこっちの番ね…地雷式の呪符と改造施設って作れる?」

 

そう提案すると、グランディは困った顔をしていた。一人部屋並の小さい施設、呪符だけなら今ある金銭を考えても何も問題ないが、それでも初任給だけで今後の生活に支障が出るのではないのかと。

 

「んーでも、二つとも新規作成だから資金がかかるブ「はいこれ。まず呪符と素材用の物資、楽園討伐と事件解決の両方をこなしたからその報酬金の4割。これで作ること出来る?」…え?」

(よし、それが出来るなら話は早い。資金もちゃんと確認したけど、これで問題ないかな。

 

もし作成できたら、地雷式の呪符を大量生産させよう。

間違いなく今後に必要不可欠だし)

 

デス★ランディは驚いているが、大金の金額を見て管理の無さに怒った。生活維持を考えずに、そんな身勝手なことをやろうとしてることに。

 

「いやいや、受け取れないブヒ!最初で行ったように管理の責任が伴う以上二人の同意がないと」

「はいこれ」

 

しかし、ハセヲとアトリには既に、あらかじめ同意書にサインされている。

お金と生活費の問題も解決済、エリアワールドで経験値やお金も稼いでいたお陰でどうにかした。

単独行動し遠距離がない嶺が複数の敵に、ある時は先手を取るために、またある時は戦えない人のための手段の一つとして必要経費だった。

 

 

デスランディにツッコまれる前に、嶺は既に仲間にも準備し、もう用意周到過ぎて驚いているデス★ランディは心労で疲れそうになっている。

嶺がこんな準備をしてるとは思ってもみなかったのだから。

 

「…で、これで大丈夫だよね。ハセヲもアトリもいいよーってさ」

「突拍子にも程がある…ブヒ」

 

当然お金がかかる事も理解した上で、二人とも嶺の提案に賛成している。

ちょっと待っててとグランディが端末を操作し、嶺のお金から改造施設と呪符用の資金が引かれていく。

 

施設と呪符の準備にも約3時間くらいかかるため、完成の連絡も当分かかる。

 

「出来たブヒっ!」

 

改造施設、呪符の改造が解放されるようになった。このまま改造された呪符を作成する事で、呪符に付加させる事が出来る。

 

「よし、それじゃあ量産しようか」

「…え?」

 

こうして嶺は、まず呪符を主軸にした彼女のトンデモ魔改造が始まる。三重発動、地雷化、アイテム使用後における連続再使用と側から聞いたら悍ましいと恐怖を覚えるが、提案した嶺は恐ろしさに自覚もないまま作成していく。

 

 

*****

 

夕食時

 

今の嶺はグランディと連絡しながら、色々な改造で忙しくなっていた。

 

一方、千草と亮の二人は持って帰った荷物を部屋に置いて済ませると、キッチンにいる。千草は野菜炒めとシチューを作り、亮はご飯を炊きつつ、終えたら千草の手伝いをしていた。

 

「あいつ、まだ改造施設に篭ってるのか?」

「何やらアイテムの改造に手を加えていて」

(あいつ…俺達に話さずに何やってんだよ?)

 

亮は嶺の様子が気になり、改造室へと向かう。

 

「おい、嶺。もう夕食の時間だから早く来いって…」

 

嶺の姿はなく、側においてある故障したテレビが残ってあるだけ。

(アイツ、確か改造に疲れて部屋で居たはずだよな?何処行った?)

ずっと引きこもっていたのに、いつの間にかいなくなっている。亮は、もしかしたら改造中にトイレに行ったのかと一瞬考えたが

 

「亮さーん。ご飯ですよー」

「…分かった。今からそっちに行く」

 

ハセヲ達の知らぬ間に、寝落ちした嶺はテレビの中へ入っていく、嶺が船内で行方不明になったのは、夕食後になってから二人とも気づこととなる。

 

 

ーー幾ら何でも、遅すぎると

 

「あいつ、遅いな…」

「どうしたんでしょうか…」

どれだけ時間が経っても中々嶺が戻ってこない事にまさかこの狭い船内に迷子になっているのではないかと。

その時、亮の電話が鳴っていた。

「…は?グランディ?なんであいつが俺の電話番号を」

 

デス★ランディという表示を見ながらも溜息をついて電話を取り、耳に携帯を当てた時にグランディの怒声が響いた。

 

「ハァ…もしも『おいハセヲテメェゴルァァァッ‼︎』いきなりなんなんだよ.…あと声でかいから小さくしろ」

 

何やってるんだという感じの怒りと若干焦ったような声が混じっている。怒声だったために携帯の距離を離しつつ会話してる。少なくとも、嶺ではなく副隊長のハセヲに届いたのはランディの慌てている様子から嶺の身に何かしらの事故(トラブル)が発生している。しかも、

 

『れ、嶺がこの船にはいないブヒィィ‼︎‼︎消える前まではずっと改造室にいたけど知らないうちに突然消えるって…お前ら、嶺の側にいなかったブヒかぁ⁉︎』

「えっ…」

「…は?」

 

船にいたはずの嶺が消失した。

それを聞いた二人は、急いで嶺のいた改造室の手掛かりを探してはいるものの、決め手となるものがない。

製造用の機械、改造用の工具、机の上にある大量の魔改造された札、座布団の近くにはレトロのテレビがあるだけ。

 

(嶺のやつ…⁉︎一体何処に行った!)

 

こうして二人が焦っている間にも、物語は加速する。まだ休日は残っているのに、単独で介入するにも準備不足でまだ早すぎていた。

 

食事前ーー

 

敵の組織対策のために目標数の改造札を数えて待っていた嶺は、座ったまま眠りそうになる。

 

(これで50枚目…ねみぃ。zzz)

 

そのまま後ろにあったレトロテレビに倒れていく。目も閉じ、嶺は次の世界である【ペルソナ4】へとスヤスヤと眠ったまま落下するように介入していくのである。

 

(あれ浮遊感…?まぁいいや寝よう)

 

置かれてる現状に危機感が無いまま、テレビの中からと介入していった。持っている携帯の音も鳴っていたが、その時点で彼女は熟睡し、最終的に回線が切断された時点で連絡は取れなくなった。

 

千草と亮を連れて行かないまま、彼女一人でシャドウの住む迷宮へと。

 

 

 


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