Justice前章:Labyrinth 嶺編   作:斬刄

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11話帰るべき船へ

なのはの家族からご飯を頂き、嶺達はすずかの家に帰っている。すずか達はジュエルシードの事件が解決したことと、嶺達となのは一家達で今後の大事な話をする事も知っている。なのはと話すはずが、特訓による見極めで帰りが遅くなる前ことを既に連絡しているからだ。

 

「ただいま。遅くなりました」

「お帰りなさい」

 

ノエルが3人を待っていた。嶺達が帰る時には既にすずかは寝ており、忍は帰りが遅くなるとのこと。

 

「まだ仕事で残ってるものってありますか?」

「…服はそのままで良いのでファリンと一緒に、皿洗いをお願いします」

「分かりました。千草はなのはの家で母親の手伝いをしてたし、先に部屋に戻っていいよ?」

 

すぐに嶺と亮の二人はファリンの手伝いに向かったが、後から来た千草にはすずか達からはまだ何も頼まれてない。

それでも見極めの間になのはの母親の手伝いをしていたため、今日は休ませるようにした。

 

*****

 

部屋に帰ると、嶺から二人にあることを話すよう集める。

 

「じゃ、亮との2人には介入前から最後までもう一度おさらいしよっか。

あと重要な連絡事項もあるよ」

「おさらい…ですか?」

「そう言えば、千草には簡単に説明するしかなかったな」

 

殺者の楽園のことや、正義側の事についてある程度知ってるのは亮と嶺だけで、最近きた千草からは何も知らされてない。

 

「一から掘り返していくね。まず神のことから話そうか」

「…俺を転移させたあいつか」

 

自らを神と称し、石像が浮いていたのを思い出す。嶺の知らない場所で神とハセヲがどんな会話をしていたかを聞く。本来説得のことは先に聞くべきではあったが、介入世界の事件解決を優先していたため神からはルールぐらいしか聞いていなかった。

 

「んー亮、どうやって説得させたの?」

「説得っつーより…殺者の楽園がいるせいで元の世界に戻れないから嶺と協力して戦ってほしいとは言われたぞ?」

(…あのー、それ説得なの?)

 

千草が転移された時のように、仲間を呼ぶかどうかの判断も神がやっている。千草のような事情も分からないまま転移される時も今後あるなら、他の仲間まで同じことをしそうだと嶺は考えている

 

(神には、仲間の転移方法を聞いたほうがいいね)

「…それじゃ、次に提示されたルールについてかな」

 

所属している正義側と敵対している殺者の楽園の大きく二陣営に分けられている。正義側は世界の運命(物語)を観た上で介入し、定められた悲しい運命を変えることも可能だが、その抑止として彼らは世界に住む主要人物を襲ったり、殺そうと仕掛けてくる。

「正輝のように他の正義側もいるけど、弟に関しては家族だからともかく、知らない人だったら何が起こるか分からないよね。

 

最悪、敵対するって可能性もある。

現状は私と正輝で二枠…後残り四枠の正義側が出てくるよ」

「…仲間チームだけど、仲間とは限らないって訳か」

「あと、分かってるよね…殺者の楽園を如何に倒すかも」

「「…」」

 

今後とも別世界に介入する毎にデンドロ二世のような敵組織(殺者の楽園)も出てくることを話し、二人とも黙ってしまった。

 

殺さなければ、倒すことはできない。

 

基本嶺がやるとは言っていたが、任せても任されても、どの道汚れ仕事の時点で罪悪感は残る。

 

「悪い嶺。ちょっと…千草と二人たけで考えさせてくれ」

「ん、分かったよ。基本私がやるし、もしそういうことが今後あるかもしれないってことだけだから、念の為に心構えはしておいてねってだけだよ」

 

二人ともその覚悟はまだ出来なかったが、知ると知らないでは大きな差がある。いずれやってくる脅威に、何が起きてもおかしくないってことを肝に命じ、二人とも心にとどめた。

 

「…でもよ、殺者の楽園ってこの世界だけじゃないんだろ?それはどうするんだよ?」

「今日、神から連絡事項があったよ。

介入用の船があるんでだってさ」

「え、船があるんですか⁉︎」

 

嶺は携帯を二人に見せて、詳細を見る。

親切に船の構造と地図が添付のデータで貼っており、転移には.hack.G.U.仕様のカオスゲートが使われることとなる。

 

更には船の内部を写真で撮り、分かりやすいようにしている。個別の部屋とリーダー(嶺)専用の部屋が用意されている。

 

(私の部屋ってこんな風になってるんだね)

 

共通しているのは三人とも窓のない部屋で暮らす事となり、ベッド、クローゼット、筆記用具、ノート、椅子と机にパソコンがある。

嶺とアトリには縫いぐるみのチムチムがあり、ハセヲにはバイク倉庫があった。

 

食料は自給自足だが、少なくとも就寝用のベッド、家電製品は無償。空調設備に水と電気、ガスといった生命ラインも神様から提供されていた。

 

人数に対応するための船の改装も可能で、特に嶺は武器とアイテムの改造ができるが、その場所の名前が????となっていた。

 

「どっかで見覚えがあるぞ、コイツ」

「ハセヲさんもそう思いますか…」

(どう見てもデス★ランディだよね)

タッチして詳細を見ると黒一色ではあったが、姿形からして3人とも察してしまった。明らかにグランディ族で、髪型もハセヲそっくりの時点で。

 

「…今さっき携帯の連絡で、5日後には船に帰るよう指示が送られている。

 

ファリンにはこっちで伝えておくから、ハセヲとアトリはここで思い残す事があれば早めにやっておいてね?」

「まぁお前と一緒にファリンを手伝う事になるけどな」

「あの…二人が一生懸命頑張ってるのに…私はどうすれば」

「千草には私からノエルとどんな仕事をさせるか聞いておくよ」

 

千草は首を傾げて嶺に聞く。

すずか一家からは何も言わされておらず、だからといって帰還まで別荘に滞在しても何もしてないからと彼女も困っていた。

もう一人広い別荘を手伝える人がいるなら、ノエルも助かる。

 

しかし、もう一つ引っかかる事があった。

 

「これで衣食住も、最低限の生命ラインの保証があるのはハッキリした…でも、いろんな世界に回るっつてもその世界特有の通貨ってのがあるだろ」

 

ハセヲ達のような現代世界では『現金』で支払っているが、このルールだとコロコロと世界を回っていくのだから当然お金の価値や通貨も変化していく。

 

「まずお金を得るためには…えーっとね、ミッションをクリアする事、敵組織である殺者の楽園を殺す事を変える事…以上の二つをこなす事」

 

定めた運命というのは、物語に起きた出来事を介入によって変えること。とはいえ、変えるだけの行動を促しても、その変化の誤差が今後の物語にどう影響を及ぼすのかは状況による。

 

物語が良い方向に向かう可能性もあれば、その逆も当然ある。

 

「でも!楽園を殺す以外でお金を稼せいで暮らせれるのなら「ちゃんと討伐しない限り、船に帰さないこともあるって書かれてるよ」そ、そんな…」

 

更にお金は稼げたとしても、殺者の楽園による討伐からは逃げられない。ちゃんと依頼通りに殺さなければ、船に帰すことも元の世界に帰ることできなくなる。

 

「注意書きに、その世界の任務にもよるってことも書かれてるから。殺者の楽園の討伐以外に調査も命じられるってさ。

 

それでも危険であることに変わりはないけど」

「…で、稼いだお金はどうなるんだよ」

「そのお金はまず神から私に分配されて、分け前もまた船の管理者である私が決めるんだってさ。でも、私だけの判断じゃ不平等だからみんなと相談するかな。

 

船だとショップがあるから、どの通貨でも使えるよ。介入と同時に通貨も自動的に変わるんだって」

 

介入世界に対応して、支給されるお金も変化される。

これでお金の問題も解決した。

 

「これで残る心配つったら…まずお前。絶対に介入時に道迷うそうなんだよな」

「ナ、ナンノコトデショウカー…」

「俺達のゲームじゃ親切にマップがあったけど、このリアルと同様にそれが無いからな?」

 

別世界の決まり事もそうだが、世界の知識を知って介入するものの場所を知らなくては迷子同然なのだ。今の端末でマップを表示してくれるわけでもなく、自力でどうにかするしか無い。

 

「でも、二人ともどうやってこの別荘に住んでるんですか?」

「子供を連れていこうとする悪い人達を退治して助けたら、なんかこの別荘に住ませてもらった。かな」

「同時に、危険なジュエルシード集めってのも兼ねてだけど」

アリサとすずかを助けて、なのはの集めようとしてるジュエルシードも回収していた。

住む場所もないまま、二人ともすずか家の召使になった。

 

「とにかく、この世界にいる間は…やる事を決めてやっておこうね。私もそうだけど二人ともまず余分に衣服類を購入すること。いつも亮と私の二人で買い物に行ってるけど、交代制で千草と亮、千草と私で行くことにするから。

 

なんかメール確認してたらお金はミッションクリア、デンドロ戦で報酬をもらえたし、取り敢えず二人にはお金渡すね。

ノエルから買い物用としてお金貰うけど、自分達用ので分けて持つようになるから。

 

 

当然服選びにも時間かかるから、基本ファリンのおつかいが優先だから余裕があった時に買いに行ってね。

大きいカバンとか、フライパンとか。

本棚とか運びきれないものは考えてないからやらなくていいよ。

時間がかかりそうなら、さっさと帰ること。

 

こんだけ日にちがあるなら間に合うと思うけど、必要だと思ったものは私にメールで連絡するから」

 

次の日

嶺はノエルに千草にも仕事に加わると伝え、どうするのかを教えて貰う。

 

「えーと千草。仕事は私とハセヲよりも少ないけど料理の用意と洗濯した衣服を干すこと、あと乾かした洗濯物の整理整頓をお願いってさ。

亮とファリンの仕事を共同でやるようにって。

 

あと、昨晩言ってた必要なものの買い物なら誰か一人抜けても大丈夫だから余裕がある時に行ってもいいってさ。

特に千草が行くことになるけど、荷物が重くなりそうだったら連絡して。

私か亮で行くからね。

 

仕事服は用意されてるから、早速着替えてね」

「はいっ、分かりましたっ‼︎」

「私の方は買い物を頼まれたから、ちょっと行ってくるね?」

嶺は買い元を頼まれて向かい、亮と千草が別荘に残る。今度はファリンが千草に仕事のことを教えているが、ハセヲの時と同様にまたドジを踏んでしまう。

 

それをフォローするかのようにハセヲが横から手助けした。

 

「あの、大丈夫ですか?」

「ううう…」

「あぁ、またか。いつもこんな感じだから、教えられる俺達もファリンの不注意を言ってあげるようにな」

 

 

こうして、嶺達は着実に拠点である船に帰るための準備をする。

 

 

*****

 

 

そして、船に帰る日

亮と千草がまず帰る準備をし、荷物をまとめていた。ここまで短い間だったが、またこの世界に介入するときはすずかの家とは今後もお世話になるだろう。

 

「もう帰っちゃうの?」

「うん。また機会があったら連絡して会いに行くね」

 

嶺は、短い間だけでもお世話になったなら土産の菓子を渡す。おっちょこちょいのファリンは、何もない場所でつまずいたりしていた。いつも彼女のフォローをファリンがやってたが、亮と嶺にしてもらっている。

 

「お前も達者でな」

「はい!三人が帰ってきた時には私も上達しますから!」

 

嶺は携帯を入力し、転移の準備をしよう入力するが、転移する前にすずかだけじゃなくもう二人やってきた。

 

「嶺さーん!」

「なのはちゃん!」

「あ、ゴメン。忘れてた」

「お前なぁ…」

帰ろうとしたところをなのはがユーノを連れ、すずかの家へ向かって走っている。落ち込んでた頃よりも、今では笑顔で手を振っていた。

嶺は転移ボタンを入力せず、なのはがやってくるまで待っている。

 

「だいぶ、スッキリした顔だね」

「うん!」

「もう、帰れるんですね」

 

 

昨晩、ユーノとなのはにも帰れるように言っており、電話でそのことを伝えたが買える準備に忙しかったから忘れていた。

 

「私自身の答えは…今出さなくて良いって決めたから。急がずにゆっくりと、歩いて向き合えばいいって」

「…そっか」

「あとね…フェイトちゃんにも会って話せたよ!」

「ん、良かったね」

 

なのはが抱えていた悩みも、吹っ切れていた。家族のこと、フェイトのこと、そして自分なりの答えに焦らず向き合う事にも。

 

「…すぐ帰れるかどうかは分かんないけど、機会があればまた会えるよ」

「また…寂しくなるけど。今は、本当の意味でさよならじゃなくて良かったかな」

「なのはもユーノも私がいない間は忙しいと思うけど…教えなくちゃいけないことが沢山あるから、お互い頑張ろうね」

 

なのはも快く頷き、転移ボタンを押して帰ろうとする。立っている場所が光り出し、嶺はすずか達となのは達に手を振った。

 

「それじゃ、またね」

「うん!また会おうねっ‼︎」

 

そう言って、嶺達は転移して去っていった。

介入した事件も早期に解決し、なのはとの無印の物語はこれにてひとまず終結した。

 

嶺達は自分達の拠点(船)へと3人は転移し、帰って行った。

 

今度は彼女らの放浪先は二人の少女が魔法で巡り合う出会い物語から、今度は高校生達によるテレビの都市伝説と真実に向かう物語へと。

 

 

そしてもう一つ

 

『あっれー。おかしいな…綺羅の指示で6thに探索用の機械虫を飛ばしたんだけどさ…』

 

1stこと久野が密かに正輝と嶺を見張るよう指示されていたが、嶺が無自覚に追跡用の機械を粉砕し、行方をくらましていた。これが後々無対策なまま久野も綺羅も酷い目にあい、嶺の逆鱗に触れたことで予想外な不意打ちと暴走になるとは思いも寄らずに。

 

【始動 クリア】

ーNEXT 渡るテレビは迷路と自己像幻視 その1

 


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