ギルティクラウン~The Devil's Hearts~   作:すぱーだ

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この作品…、最初はダンテを序盤から出して無双させるつもりでした。
でもあまりにも中身が無く、集が何もしなかったのでボツにしました。
人によっては上手く書けるんだろうな…。

第8話、どうぞ





#08侵食~school mate~

 

 

気付けば、炎の中に立っていた。

 

最初は『ロストクリスマス』を思い出してるのかと思った。

しかし時々回想する記憶と比べると、妙に血生臭くよどんでいた。

何より、建っている建物は日本のものではないだけでは無く、時代さえ違う…。

 

ふいに背後で動くものを感じる…。

 

振り返ると…、青白く光る物が見える。

まるで黒真珠の中に星の欠片を閉じ込めたかのようだ。

多くの宝石を愛好する金持ちなどが喉から手が出るほど欲しいだろうと想像するのは難しくないほど神秘的で幻想的だ…。

 

しかし、それはその宝石が口の牙と爪から血を滴らせた、血に飢えた獣の目では無ければの話だ…。

 

その獣は現実に実在してるのが信じられないほど、悪夢めいた姿をしている。

口から血と共にヨダレを流し…、体の皮膚は黒く表面に産毛のような薄い毛で覆われている…。

そして獰猛に輝くふたつの目…。

 

そして同じ様な姿をした獣が、あとから何体も瓦礫の間から姿を現す。

 

奈落の底を覗き込む様な恐怖を感じて、逃げ出す…。

獣は後ろから阻む物を跡形も無く破壊しながら追いすがる、捕まれば生きたまま体を粉々にされる…。

 

その光景を想像し走る速度を上げる…、しかし恐怖と疲労で足が上手く持ち上がらない…。

それに対し獣は黒い風の様にあっと言う間に爪と牙の届く距離に来る。

獣は獲物を切り裂こうと爪を振り上げた。

 

同時に獣は跡形も無く弾け飛び、血のシミとなる。

 

後から来た獣達は、既に先程まで追っていた獲物を見ておらず獲物のすぐ背後を見ている。

 

獣の視線に連れられ背後を振り返る。

 

 

背後には、獣が虫ケラに見える程の巨大な存在感を放つ人影が立っていた。

 

人の形をしていたが、人では無いのはすぐに分かった。

それは生き物に見える様な巨大な剣を持ち、獣達の何倍も濃い殺気を放っていた。

 

にもかかわらず、なぜか凄まじい程の安堵感に覆われた。

 

獣達は人の形をしている何かに一斉に飛び掛かり、背後の人影は手に持つ生き物の様な大剣を振りかざすため、大剣を後ろに大きく引き…、音速を超える速さで振り抜いた。

 

そこで初めて、これは" 彼の血 "に刻まれた記憶なのだと分かった………。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「ーーちょっと、集!それどうしたの!? 」

 

一限目の休み時間に学校に着いた集を最初に迎えたのは、祭の叫び声だった。

 

「 いや、これは…その…ちょっと転んで…。」

 

祭が驚くのも無理はない。

今の集は左腕を吊るし、頭にも包帯を巻き、他の場所にもところどころ湿布や絆創膏に包まれている、全身ボロボロの状態なのだ。

ちなみに右脚にも包帯が巻かれている。

 

「 こっ…転んだって!集っ昨日は急に早退するとか連絡が…どこでなにがあったの !!? 」

 

祭は集が今まで見た事が無いくらい取り乱していた。

 

「 ちょっと祭、落ち着きなさいよ。」

 

祭の横にいたクラス委員長の、

草間 花音≪くさま かのん≫が祭をなだめる。

 

「 だってっ!花音ちゃん!集がっ! 」

 

祭はついには涙目になってしまった。

 

「 ああっハレ別に大した事ないし…。

この左腕も全然痛く無いし…。」

 

集は慌てて祭を慰める。

「 ほんと桜満君大丈夫なの?特に左腕…。」

 

花音が吊られた集の左腕を見て言う。

 

「 う…うん別に折れてるわけじゃないし…。」

 

折れてないのは本当だが、鉛玉が貫通したのだ。

 重症化してはいないとは言え、大丈夫なはずが無かった。

 

あの後、集は葬儀社の医療班に意識の無い状態で葬儀社の仮設アジトに連れて行かれ治療を受けた。

集が目覚めた後、自分の怪我の状況をメンバーの人が教えてくれた。

メンバーの人が言うには、集の体で一番重い怪我は一発銃弾を受けた左腕で、他はほぼ軽傷右脚も額も擦り傷程度だと言っていた。

 

実は右脚は二発の銃弾をまともに受け、額を確かに銃弾はかすったのは確かだが…気を失う瞬間、銃弾は自分の頭蓋骨を削ったのが分かった。

 ーーーとは……さすがに言えなかった。

 

メンバーから今まで通り生活出来るがしばらく左腕は激しく動かさないようにと言われた。

 

…あの時自分は" 動かないと "と強く思った。

 

その時体から溢れ出るチカラを感じ、目の前が六本木でダリルがあの親子に銃を向けたのを見た時以上に真っ赤に染まり………ーーー。

 

 

 

「桜満君?どうしちゃったの急に黙っちゃて…。」

 

口を閉ざした集に花音が声をかける。

 

「いや、なんでもないよ。それより颯太は?それにほとんどクラスに人がいないんだけど…? 」

 

集の言う通り、今教室には颯太を含めほとんどの生徒がおらず閑散としている。

集が首を傾げていると、ーー

 

「みんな興奮してるんだろ、特に颯太がな…」

 

事の成り行きを見守っていた谷尋が集に答えた。

 

「…興奮っ?なにかあったの? 」

 

「 それが今日の朝にね…ーー」

 

花音が集の疑問に答えようとしていると、廊下からザワザワと騒いだ声が聞こえて来た。

その中には颯太の声も紛れている。

 

「ーー噂をすれば…」

 

花音が騒ぎのする方を見る。

 

つられて集も教室の前のドアを見る。

ドアが開き雑踏が教室を埋め尽くす。

 

「 ……なっ 」

 

その騒ぎの中心となっている人物を見て…、集は思わず凍り付いていた。

 

『EGOIST』のヴォーカルにして葬儀社のメンバー…、

楪いのりがそこにはいた。

 

 

「 …んっ?おお!集来たか…ーってなんだその格好!! 」

 

集の姿を見た颯太が素っ頓狂な声を上げる。

 

「お前っ、昨日は一体なにがあったんだ!?」

 

集は颯太の言葉に反応出来ず、颯太の背後から目が離せ無かった。

 

「おお、こっちが気になるか、今朝転校してきたんだよ」

 

集の視線に気付いた颯太が言った。

 

「 誰だと思う?…なんとあの楪いのりさんがこのクラスに転校してきたんだ!」

 

いや見えてるから知ってるよ っというツッコミさえ集は出来ずに固まっていた…。

 

いのりが集達のもとに歩いて来る。

 

颯太の言葉を裏付けるかの様に、いのりは集達の通う学校の制服に身を包んでいた。

 

「 …うそ…でしょ…っ?」

 

集の口からようやく声が絞り出た。

 

「ホントだよ?」

 

集の言葉にいのりが首を傾げて言う。

 

集がまた固まっていると…、いのりが手に持った学校指定バッグを開きなにやらゴソゴソし始めた。

そして取り出した物を集に差し出す。

 

「…これ…返す…」

 

「…えっ?」

 

集がいのりから差し出された物を受け取ると…。

六本木でいのりに羽織らせたブレザーだった。

 

「…ああっ」

 

「 迷惑だった? 」

 

いのりは集が今着ている予備のブレザーを見ながら言う。

 

「いやいや、そんな事はないよ!」

 

集がなんとなく受け取ったブレザーを広げてみる…。

 

ふと、いのりに切られた右手の袖が目に止まった。

正直かなり不器用にだったが縫われていた。

 

目だけでチラリといのりの指を見ると、いのりの指の数箇所に絆創膏が巻かれていた。

 

「わざわざ直してくれたんだ…。ありがとう。」

 

集がそう言うと、いのりは絆創膏を隠す様な仕草で指を握る。

 

「…いいっ」

 

それからいのりは少し頬を染め、少しはにかんで微笑む。

そんないのりを見て集も少し微笑んだ。

 

「 ……おい集…」

 

珍しく黙っていた颯太が集に声をかける。

 

集が颯太に目を向ると、颯太は鬼の様な表情で集を睨んでいた。

 

「お前…、いのりさんと知り合いなの?」

 

「 えっ、いや…別にそういうわけじゃ……」

 

気が付くと教室中の視線が集に集まっていた。

 

「 いやっ、昨日さ…僕早退したでしょ?

そのいのり……さんがガラの悪い人達に絡まれてるのたまたま見ちゃって……それで…ーーー。」

 

「 シュウっ? 」

 

集がなんとか誤魔化そうとしていると、いのりから声を掛けられた。

集がいのりを見る……。

 

「 "いのり " って呼び捨てでいいよ?」

 

いのりがきょとんと首を傾げながら言う。

その瞬間、教室内が再び騒然となる。

 

「 どーいう事だ! いのりさんを呼び捨てし合う仲だとーー!? 」

 

颯太が集の胸倉を掴み激しく揺らす。

 

「集さっきその傷は転んだからって………っ!! 」

 

「あれは…、皆に余計な心配をかけない様にと…」

 

喧騒の中に祭までも参戦し出す。

 

「桜満君って、校条さんとじゃ無かったの?」

「付き合っては無かったはずだよ?」

「うそっ、あたし校条さん応援してたのに……。」

 

教室中は男子も女子も大騒ぎだった。

 

「 さあ吐けっ!いのりさんとはどういう関係だ!?言わなきゃこのまま締め殺すぞ!! 」

 

颯太は本当にやりかねない剣幕で集の胸倉を締め上げる。

っとそこにいのりの手が割り込んだ。

 

「…い…いのりさん? 」

 

颯太が突然動いたいのりに戸惑いの声を漏らす。

 

「…シュウは私を助けてくれた……。」

 

いのりの後ろで集が咳き込んでいると、いのりが喋り出した。

 

「 だから…今度は私が守る……。」

 

「うっ…。」

 

いのりの気迫に押され颯太が思わず後退りする。

 

「「「…………………。」」」

 

「「「おおおおおおおおおおお!!?」」」

 

教室は一瞬静まり返った後、大歓声に包まれた。

いのりの言葉に教室中の生徒のボルテージが急上昇した。

集がこの場をどう乗り越えようか悩んでいたところに…。

 

「 おいっ、みんないい加減にしろ。二人共困ってるだろ? 」

 

谷尋が周囲の生徒達と集といのりの間に入った。

 

「それともう予鈴なったぞ?準備しなくていいのか?」

 

その言葉に生徒達はしぶしぶと席に戻って行った。

 

「いや悪かったないのりさん、みんな悪気があるわけじゃないんだ。」

 

谷尋がいのりに振り返る。

 

「………? 」

 

いのりが谷尋の顔を不思議そうに眺める。

 

「…おっと、すまない俺は寒川谷尋っていうんだ」

 

いのりの視線に気付いた谷尋が言う。

 

「…っで、さっき集の胸倉掴んでたやつが魂館颯太…」

 

谷尋が颯太を指差しながら言う。

颯太は自分の席からいのりを未練がましくチラチラ盗み見ている。

 

「私は草間花音、クラス委員長よ」

 

「 えっと…私は、校条祭です」

 

谷尋に続いて花音と祭が自己紹介する。

祭はなぜかやたらいのりを警戒している。

 

「 ……あっ、あの楪さん!集とはどういう…ーー。」

 

祭がようやく声を絞り出しいのりに問いかけた時、授業開始のチャイムが学校中に響き渡った。

 

祭はそれで出鼻挫かれたようで黙ってしまった。

 

「 さっ、もう先生来るから座った座った。」

 

谷尋が手を叩いて話を打ち切る。

 

全員その言葉を合図に全員席に戻る。

祭は名残惜しそうに集といのりを見ながら席に戻る。

 

「 ………じゃあっ。」

 

「 えっ、う…うんまたね。」

 

いのりが集に短くあいさつして立ち去り、集もそれに短く返す。

教室のドアを音を立てて先生が入ってくる。

 

なんとなく集は少し離れた位置に座るいのりを見つめる。

いのりも集の方に目を向けた。

目が合う直前に集は目をそらす、なぜか集の顔は熱くなってていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

集は今、帰宅の途についている。

 

その後ろをいのりがピッタリついて来る…。

モノレールの中でも物凄い量の視線に晒されていた(特に祭は涙目になって二人を穴が空くほど見ていた。)集はクタクタになって自分の暮らすマンションに着いた。

 

「ーーあの…、いのりもう僕はもう大丈夫だからこの辺で……。」

 

見送る必要は無いと言いかけている集の横をいのりは素通りし、集の暮らすマンションへ入って行った。

 

「…はい…? 」

 

集は状況をよく飲み込めなかった。

 

「 …ちょっ…ちょっと!? 」

 

慌てていのりの後を追う。

集が自分の住む部屋の玄関の前に着くと、いのりが何食わぬ顔で集の部屋の玄関に指紋認証を行い、まるで自分の部屋へ入るかのように入って行った。

 

集が慌てて表札を確認する。

 

表札には確かに『桜満』の文字が入っている、集が部屋を間違えているわけでは無かった。

 

「いいっ…いのり!?ちょっと待って! 」

 

集が玄関先まで入り込んだいのりの腕を掴む。

 

「ひとつ目の質問…、いのりはどこに住むの? 」

 

いのりがキョトンとする。

 

「 …ここっ」

 

「 ………」

 

予想通りの回答に集の頭が痛くなる……。

 

「 …ふたつ目、どうしてうちの玄関を開けられるの? 」

 

「 ふゅーねるがやってくれた…。」

 

いのりの言葉に集が部屋の中に視線を送ると……。

見覚えのある白い物体が部屋の中で走り回っているのが見えた。

 

「……なるほど、ちなみに僕に拒否する権利は?」

 

「 シュウはいのりが邪魔……? 」

 

このような言われ方をされると集は弱い。

 

「…っや、邪魔っていうか…ああもう母さんになんて言おう。」

 

「ーー桜満 春夏(おうま はるか)、セフィラゲノミクス主任研究員、帰宅は週に一度程度、あと数日は帰る見込みがない。」

 

いのりが淡々と言う。

 

「……調査済みでしたか…」

 

集はテロリストうんねん関係無く葬儀社が少し怖くなった。

「と…取り敢えず何か食べたいのある?」

 

片手でも簡単なものは作れるから と集は言った。

 

「 おにぎり……」

 

「……えっ?」

 

予想の斜め上を行くいのりの返答に思わず集は訊き返した。

 

「 おにぎりっ」

 

どうやら集の聞き間違いではないようだった。

 

 

左手も全く動かせないわけでは無いのでおにぎりくらいなら難なく作る事が出来た。

いのりの荷物は集達が帰る前にとっくに入れてあった。

プライバシーのなにもあったもんじゃない。

比較的いのりの荷物は多くなく、重くも無かったため片手の集にも運ぶのにそこまで苦労しなかった。

 

集はおにぎりを小さく唇だけで食べているいのりを眺めた。

見れば見るほど美しい少女だと思った。

白い肌といいガラス玉のような鬼灯色の瞳といい…、

 

まるで人形のような……ーーー

 

 

 

パアンッ と集は自分の右頬を叩いた。

 

「 シュウっ?どうしたの…? 」

 

集の突然の行動にいのりが声をかける。

 

「 いや、なんでもないよ。」

 

言いながら集は今まで無い程、自己嫌悪に陥っていた。

 

( なにを考えてるんだ僕は……、ここまで彼女の" 人間らしい表情 "を散々見て来てるのに言うに事欠いて" 人形みたい "なんてどうして考えられるんだ……。)

 

妙に落ち着かなくなった集は取り敢えずテレビをつけた。

テレビでは丁度葬儀社の日本に向けての声明が話題になっており、リーダーの男…涯が全国指名手配にされた事が発表されていた……。

 

『ーー俺たちは抗う、この国を我が物顔で支配するGHQに……』

 

『ーー俺たちは戦う、俺たちを淘汰しようとするものと……。』

 

テレビに映っている涯がそんな宣言をしていた。

涯と一緒に映っているメンバーは覆面を被っているのに対して、涯は堂々とあの威圧感のある表情で中央に立っているのは涯なりの覚悟の証なのかもしれない…。

 

集は勝手にそう思った。

すると玄関のチャイムが鳴る音がした。

集がモニターで確認すると……、

 

「谷尋…っ?」

 

モニターに写る玄関には、集のクラスメイトである寒川谷尋が写っていた。

 

集は首を傾げながらも玄関を開けに行った。

 

「よっ!遅くに悪いな」

 

「こんばんは谷尋…。どうしたの? 」

 

谷尋が懐から出した物を集に差し出す。

 

「 これっお前にこの前話した映画…、貸してやろうと思ってな。」

 

集がサスペンスものの絵が入った映画のパッケージを受け取る。

 

「わざわざこれのために来てくれたの?」

 

「いや、お前の傷の具合が気になってな…。本当になんとも無いのか?」

 

谷尋が集の吊られた左腕を見ながら言う。

 

「まあ…、確かに左腕はあまり動かさないように言われたけど……。日常的な生活を送ってる分には問題ないってさ。」

 

「そうか…、ならいいんだ。」

 

谷尋が集に笑いかける。

 

「心配させ過ぎたかな?ありがとう谷尋 」

 

集が谷尋に諸々の礼をしていた時、ーー

 

「ーーシュウ、連絡が来た…。一緒に来て……。」

 

集は後ろから、ふゅーねるを抱えたいのりに声をかけられた。

「 …!?、おい集これはどういう…ーー」

 

「 やっ………、えっと、取り敢えずまた明日! 」

 

集は冴えたごまかし方が思い付かず、玄関に鍵を掛けてその場を後にする。

 

「何かあったらいつでも相談乗るからなー!」

 

後ろから谷尋が声を掛ける。

集はそれに手を振ってこたえた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

月がとても明るい夜空だった。

 

「ーー寒川谷尋は、集の友達?」

 

川の土手を歩く集の前を歩くいのりからそんな事をきかれた。

 

「うんっ…そうだけど…」

 

「 …そう…。」

 

「いのりは葬儀社の中とかにいないの?ーー友達」

 

きかれたいのりは歩きながら集を振り返り、逆に尋ね返して来た。

 

「 友達って、いないといけないもの…?」

 

訊かれて集は答えに窮する。

 

「 さあどうだろ…」

 

集は自然と自分の右手を見る。

 

その右手にかつて乗った…陽光を反射させるガラスで出来た小さい馬…。

そして、その日その時まで一緒に笑い合い、走り回った子供の体の一部だった物が自分の手に乗って……ーーー。

 

「 でも、失った時は胸が…心が痛いんだ。」

 

「 …心が痛い……? 」

 

川原にある公園に着いたいのりは、集に振り向き不思議そうに見つめる。

 しかし、集は既に違う人物に意識を向けていた。

 

「……とても全国指名手配されてる人物のする事に思えませんよ」

 

集が公園の一角を見ながら言う。

 

「ーー銃を持って走り回るだけでは世の中は変えられないからな……」

 

集の視線の先には、恙神涯本人が立っていた。

よく見ると涯の後ろには六本木でも見かけた大柄の男とあの猫ミミの少女の姿がある。

 

「ーー念のため訊きますけど…、彼女を僕のところに送ったのは僕の監視のためですか?」

 

集は涯を若干睨みながら言った。

 

「いや、我々も人手不足なんだ…。そんなまどろっこしいマネをするくらいならサッサと寝首を掻いてるよ」

 

涯は昨日と同じ、飄々と冗談か分からない態度で答える。

 

「ーー問題が発生した」

 

涯はその言葉と同時に、鋭く射抜くようなリーダーとしての顔になった。

 

「ーー君の学校に、昨日の作戦中の俺たちを目撃した生徒がいる。君はそいつを探し出すんだ」

 

集は涯の言ってる事がすぐには理解できなかった。

 

「 …えっ?」

 

「 君は昨日俺たちに言ったな?自分の今いる日常を壊したくない…、友人に被害を受けてほしくない…っと。

ならこの事案は最も君が嫌悪し、恐れる事態だ…。」

 

 

 

「ーーー君は、戦うしかない……」

 

 

 

 

涯の言葉は集の頭の中でいつまでも木霊した。

 

先程まで明るく照らしていた月にはいつの間にか厚い雲に覆われ…、集達に暗い影を落としていた。

 

 




次回もほぼ原作沿いの内容となります。

はやく本格的なクロスを書きたいなあ。

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