ギルティクラウン~The Devil's Hearts~   作:すぱーだ

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感想、評価ありがとうございます。

全話書けるか分からなかったけど、
行けるような気がして来ました!

頑張りますので今後ともよろしくお願いします。


#07適者~survival of the fittest~

グエンが腕から、血を吹き出し絶叫した。

『おおっ!』『わあっ』『うっそ…』

その時通信機を通じ様々な感嘆の声が上がった。

 

「 作戦開始 !! 」

 

それも、涯の号令が響き渡った時に一気に収まった。

 

「いのり、お前は引き続きその場で待機だ」

 

涯はいのりに命令した。

 

それと同時に空から轟音が響き何本ものミサイルが同じ方向に向け、一直線に飛んで行った。

 

「驚きましたね…、まさかあのような形で窮地を脱するとは…」

 

涯のすぐ後ろで四分儀が素直に感心する。

 

「ここまで予定を狂わされたんだ…、あれくらいやってもらわねば困る…。」

 

涯からは相変わらず厳しく評価下る。

 

「それに…ーー」

 

「…それに?」

 

言葉を切る涯を四分儀が訝しげに見る。

 

「…まだ奴自身の状況が全く変わっていない」

 

涯がそう言った時、通信機から…、

 

『・・・あっ !! 』

 

ツグミの声が上がった。

 

モニターには仰向けに倒れ、ダリルに銃口を向けられる集の姿があった。

 

 

モニターから銃声が響いた。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

顎をダリルに蹴り上げられた集は、そのまま瓦礫の上を数回転がった後に仰向けに倒れた。

 

「 何してくれちゃってんのお前!!病気になったらどうしてくれんだ !! 」

 

仰向けに倒れた集に…ダリルはゆっくり歩み寄り、

無造作に銃を向けた。

 

 

ドンッ、ドンッ !

 

二度銃声が上がった瞬間、集の右脚太もも二箇所に銃弾が撃ち込まれた。

 

「 …っう、ああ、ああアアア!! 」

 

二発の銃弾が脚に穴を開け、そこからドクドクと血が溢れ出た。

集は痛みに耐えきれず絶叫した。

 

「これぐらいで済みと思うなよ?

ぐちゃぐちゃにしてやるよ…。」

 

右脚を押さえ悶える集にダリルは冷たく言い放つ。

 

その時爆発音と飛行機のジェット音のようなものがダリルの耳に届いた。

 

ダリルが上を見上げると、上空を飛行機雲のようなものがいくつも伸びて居るのに気が付いた。

 

彼には、飛行機雲の正体がすぐに分かった。

 

「 っくそ!!テロリスト共め…っ!!」

 

ダリルは忌々しそうに呟く。

 

そして集を冷たく見下ろす。

 

「 そこで待ってろよウジ虫…。」

 

ダリルはどこかへ走って行った。

 

集は作戦が始まった事にすぐ気づくことができた。

 

立ち上がろうとしたが、足の痛みがそれを許さない…。

何度も足に力を込め、崩れ落ちるを繰り返す。

それもそのはず集の右脚を穿った弾丸は、足の筋肉や神経まで絶っているのだ。

本来は歩く事はおろか立ち上がる事さえ、一人では困難を極めた。

 

( 動け…。)

 

集はそれに気付かず、いや気付いていても彼には関係無かった。

 

集が爆発音のする方向をみると、飛んで来るミサイルを光の筋が撃ち落としていた。

 

おそらくあれが作戦説明の時に聞いたレーザーなのだろう。

 

『ーー全機攻撃を中止せよ ! 』

 

集合場所で涯の横にいた、四分儀という男のものらしき声が聞こえてきた。

 

『GHQアンチボディズ第三中隊長であるグエン少佐に勧告します、我々は葬儀社…人質を解放し降伏しなさい。

受け入れるなら命までは取りません』

 

四分儀の言葉にグエンが答える。

 

『 テロリスト共 、我々は絶対テロには屈しない。

貴様らが これ以上抵抗するならば…、地下に仕掛けた" ガス "を稼動させるぞ! 』

 

スピーカー越しでも、グエンが勝ち誇った顔でニヤけた顔を浮かべているのが分かる。

 

『葬儀社とは不吉な名だ…、君らにもリーダーがおろう?リーダーが…。』

 

 

「ーーリーダーは俺だ 」

 

涯の声が聞こえ…、GHQの兵隊達が声のした方向に一気に敵意を向けたのが分かった。

 

「 …正気…か…? 」

 

集は驚愕した。

彼は自分がこんな状況なのにも関わらず、予定の作戦通りに進めるつもりなのだ。

 

となればこのまま自分がなにもしなければ、涯は死ぬ…。

自分が勝手な行いをしたせいで…。

 

もしここで指揮官を失えば葬儀社は瓦解する。

そうなれば、どのくらいの人が死ぬか想像もつかない。

おそらくあの親子も、いのりも死ぬ…。

 

「……っ!!」

 

集は痛みを無視して立とうとしたが、いくら足に命令を飛ばしても足はほとんど動かない。

両手で地を掴みさらに力を込める。

同じく弾丸に穿たれた左手にビリビリとした痛みが脳に走る…。

 

( …ここで動かないと…変えられない…っ!)

 

世界は何一つ変化しない…。

何も守れない、自分も救ったはずのものでさえ…。

 

再び集の脳裏に、ある過去に起こった光景が浮かんだ。

 

血の海に座り込む自分自身…、その手の平には()()()()()()()()()()()()

 

墓石の前…、自分の後ろに立つ、

赤いレザーコートの男に自分は叫んだ。

 

" もう失いたく無い…、もっと強くなりたい! "

 

っと…ーー

 

 

ならば動かなくては…!

 

いのりの所へ行かなくては…!

 

集は脳の回路がはち切れんばかりの命令を、自分の足に送る。

涯とグエンの会話はもう集の耳には届かない…。

 

( …お願いだ…、ダンテ!もし本当にあんたの血が僕の中でチカラを与えてくれているのなら…! )

 

( 僕を救ってくれたのが…あんたの血なら…! )

 

いつも颯爽と現れては自分と人々を救ってみせた彼…。

いつも楽しそうに笑いながら" 悪魔 "と舞い、斬り裂いていた…

、 " 最強の悪魔狩人(デビルハンター)" 。

 

( お願いだから…僕に…、

僕にチカラを貸してくれ !! )

 

GHQは突然現れたテロリストの対処…、葬儀社は作戦を遂行する事にそれぞれ追われていた。

だから誰も気が付かなかった。

 

集の髪が一瞬、銀色に変わった事に…。

 

集を見つめる一台のカメラ以外は…。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

『いのり、お前は引き続きその場で待機』

 

涯の宣言と同時に飛び出そうとしたいのりを、再び涯の声が制止した。

 

( …なぜ…っ? )

 

いのりに困惑と混乱が襲いかかっていた。

 

この作戦に集は必要不可欠なはず…、涯がそれを分かっていないはずが無い。

 

( ……まさか…。)

 

涯は彼を見捨てるつもりでは無いのか…?

そして自分達に話さなかった作戦を遂行しようとしてるのではないか…。

 

壁の向こうから二発の銃声が轟いた。

いのりがそちらを振り返ると、足を押さえた集が絶叫していた。

 

( !!っ……シュウ!! )

 

いのりの手が震え始める…、心臓も激しく打ち出す。

震える手で、作戦前に集がいのりに羽織らせた集のブレザーを掴む。

寒そうだから…と、集はなぜか赤くなりながら言った。

 

ジェット音の後に爆音が辺りを震わすと、同時にダリルがどこかへ走り出す。

おそらく操縦士用の装置がある車両に向かったのだろう…。

 

今なら集を救える。いのりはそう思ったが…。

涯が動くなと言ったのだ…涯には何か秘策があるに違いない。

 

いのりはそう思いその場を動かなかった。

 

「ーーリーダーは俺だ 」

 

「…えっ?……何で? 」

 

涯が予定通りの行動に出た…。

集のチカラが無ければ作戦はうまくいかない…、間違い無く失敗する。

 

…いかなければ…!

 

いのりはそう思った。

待ってろ と言った涯の命令に背くことになるが…、集が動けないのなら自分が行くしかない。

いのりは立ち上がり、壁の向こう側に振り返った。

 

 

いのりの目の前に集が立っていた…。

 

「 …シュウ…。」

 

集は左手や体のあちこちから血が吹き出していて、立てているのが不思議だった。放っておけば数分もしないうちに絶命してもおかしくはないだろう。

 

「 ……ごめんっ…いのり……、待った…? 」

 

しかし集は息は切らしているものの、全く気にするそぶりも見せずに言った。

 

「 ……うんっ、行こ? 」

 

いのりはそんな集に短く答えた。

 

半壊の廃墟から、一際強い光が溢れた。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「世界は常に我々に選択を迫る」

 

GHQの兵隊達すべてに銃口を向けられても、涯はいつもと変わらず堂々とした口振りで話す。

 

「そして正解を選び続けた者のみが生き残る」

 

「"適者生存 " 、

それが世界の理だ 。」

 

「ーー俺達は " 淘汰 " される者に " 葬送の歌 " を送り続ける…」

 

 

「 ーー故に " 葬儀社 " 」

 

「 その名は俺達が常に "送る側" であること…、生き残り続ける存在であることを示す 。 」

 

涯の言葉に右手に包帯で手を吊ったグエンが睨みつける。

 

「ーー貴様達が盗み出した遺伝子兵器はどうした!?」

 

グエンの言葉に涯が薄く笑う…。

 

「そんな話…、初めて聞いたね 」

 

「 吐け !! 」

 

涯の言葉にグエンが激昂する。

グエンの怒鳴り声と同時に周囲のレーザー砲が、全て涯を狙う。

 

グエンが再び勝ち誇った笑みを浮かべる。

 

「 10数えるまで待つ!!

その間に答えねば貴様はハチの巣だ ! 」

 

カウントが始まっても、涯は余裕の笑みを浮かべていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「 はあああアアア!! 」

 

いのりの剣を、ダリルの入っている車両に集は斬りつけた。

車両の壁はあっさり砕け散り、操縦用の座席に座り頭にヘルメット型の装置を被ったダリルの姿があった。

 

集はいのりの剣から手を離し、右手をダリルに向け接近した。

 

集の右手がダリルの胸元に触れる瞬間、

ダリルと目が合った…。

 

「 おまえ ・・・・っ!!?」

 

ダリルが何か叫ぼうとした瞬間……、

 

集の右手が眩い閃光を放ちながら、ダリルの体内に沈み込んだ。

 

「 ぐあああっ !! 」

 

集が叫ぶダリルから結晶の塊を抜く、結晶が砕けると奇妙な物体が現れた。

銃にも見えるが銃口が無く、代わりにレンズの様なものが尖端に付き、銃身らしき物の周りに銀色の円盤の様な物が付いている。

 

涯はこれを "万華鏡" と呼んでいた。

 

集はこの " 万華鏡 " を持って、一目散に涯の下へ向かった。

 

レーザー砲に目を向けると銃口が光り輝き、今にも一斉発射が可能なのは明白だった。

 

「 6 ! 5 ! 4……ーー

 

集が十分な距離に近付くと、

 

「 時間だ !!」

 

涯に向け " 万華鏡 " の引き金を引いた。

 

その瞬間、レーザーは涯の前の見えない壁にぶつかり折れ曲がった…、

否 反射したのだ。

 

「 弾けろおおお !! 」

 

トドメに集は " 万華鏡 " を空間の全面に展開した。

反射されたレーザーは空中で再び反射され、GHQの部隊を悉く破壊した。

一瞬、集の耳にグエンの悲鳴が届いたが、すぐ他の物が破壊される音に掻き消された。

 

涯を見上げると涯は爆炎の上で、集を見下ろし笑いかけていた…。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「休んでて…止血する。」

 

集が瓦礫にもたれ掛かり、体を休めているといのりが話掛けてきた。

 

集はおとなしくお言葉に甘える事にした。

いのりの下へふゅーねるがすっ飛んで来て、頭部から救急箱を出したのを見て、集はちょっと笑ってしまった。

 

集がいのりに治療を受けていると、涯がやって来た。

 

「よくやったな 」

 

てっきり、飛び出した事を咎められると思っていた集は思わずポカンっとしてしまう。

 

「 ?、どうした。」

 

「いや、てっきり命令無視を叩くのかと思ってたので…」

 

集の言葉に涯はフンッと鼻を鳴らす。

 

「そうしようかと思っていたがな…、あそこまで予定のずれた作戦をああも見事に建て直されてはな…」

 

「どうせあなたには、作戦が失敗しそうになった時にも予備の作戦があったのでしょう ? 」

 

涯は集の言葉に、「当然だ」とでも言いたげに笑った。

 

「そう思うか?なら何故無理して作戦を遂行した…、その傷も決して浅くは無いだろう? 」

 

集は応急処置が終わった左手の調子を確かめた。

握ったりは出来るが、持ち上げようとすると鈍い痛みが走った。

 

「ーー別に、任された事を途中で放り出すのがイヤだっただけですよ…」

 

「そうか、桜満集…周りを見てみろ」

 

言われた集が周りを見渡す。

そこには数十人の人々、全員人質にされていた人達だった。

あの母親と子供が父親らしき人物と抱き合うのが見える…。

集はその様子を黙って見ていた。

 

ふと後ろで気配を感じ、集は振り向いた。

 

葬儀社のメンバーが瓦礫から現れ、涯の下に集まりつつあった。

涯は集に手を差し伸べ言った。

 

「 ーー来い、集

ーー俺達と共に 」

 

集はその手を黙って見つめた。

そして…、

 

 

 

 

「 その言葉は凄く嬉しいですし…、貴方が一緒ならとても頼もしいです」

 

集は、涯に深々と下げた。

 

「 だけど、ごめんなさい…」

 

「僕は貴方達とは、一緒に行けません」

 

「本当は今日は彼女を助けたら、それでやめるつもりでした…」

 

涯は そうか と呟くと、集の目を見て言った。

 

「恐縮だが…、参考までに理由を教えてくれないか? 」

 

「 色々ありますけど、僕には大事な友達がいるんです…」

集の頭に浮かぶのは、いつも学校で会う友人達…。

 

「 僕が貴方達の仲間になったら…、おそらく日々の生活に波風がたたずにはいられ無いでしょう…。」

 

「 ヘタをしたら…、彼らに危害が…。」

 

これは、いのりが拘束された時にも抱いた懸念…。

 

もちろん、集はいのりも気掛かりだった。

しかし今ある日常を手放せる程の度胸はなかった。

 

「 …だから…、一緒には行けません。」

 

集は申し訳なさそうに目を伏せた。

 

「頭を上げたまえ…」

 

涯の言葉に集は顔を上げる。

 

「ーー確かに残念だが…、恥ずべきことではない…。」

 

涯は集に微笑み掛けた。

 

「 …友人は大切にしたまえ…。」

 

「 …はい、…ほんと……ーーー。」

 

集も涯に微笑み返そうとした、瞬間ーー。

 

ガチャンッ と、

 

" 引き金を引く "音を集の耳は捉えた…。

 

集が音のした方向を目だけ動かし、視界に入れた。

 

涯の斜め背後の瓦礫の中から…、GHQの兵士が持っている銃を涯の方に向けている…。

 

 

「ーー涯っ!!! 」

 

集が叫び…涯を押し退け、涯を収める弾道に割って入る。

 

 

ーーーーー銃声っ、

瞬間、集の額に血が弾ける。

その血が涯の顔を、細かいまだら模様に染めた

集は衝撃で反転して涯の方に倒れ込む。

 

涯は集の体を受け止めると、素早く銃を抜き4メートルは離れた兵士の額を撃ち抜いた。

兵士は糸が切れたかのように、崩れ落ちる。

 

「 シュウ !! 」

 

いのりが集に駆け寄る。

「おい!何やってる早く救護班を呼べ!!」

周囲が騒然となる。

 葬儀社のメンバーが怒号と共に処置の準備を素早く行う。

涯は集を仰向けに寝かせようと、うつ伏せの集を少し持ち上げた時ーー、目に入った。

 

 集の額の抉られた深い傷から赤い煙のような光が漏れているのが。

そして、みるみる内に額の傷を塞がって行き、頭蓋骨を大きく削っていた傷は擦り傷程の浅い物となった。

 

涯は、一瞬我が目を疑った。

ヴォイドゲノムそのものにはこんなチカラは無い。

 

「集……、お前は一体…ーー」

 

涯の続きの言葉は、周りの喧騒といのりが集を呼び掛ける声で掻き消された。

 

 

先程の現象に気が付いたのは…、どうやら涯一人だけのようだった。

 

 




言い忘れてましたけど、

いのりルートにするつもりです。

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