ギルティクラウン~The Devil's Hearts~   作:すぱーだ

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DMC5のグリフォンに私泣いた。



あと誰かこのクソ初心者のモンハン
手伝ってください(泣き)






#41-②攻防〜deadlin〜

 

歌姫の歌声と共に空と世界は毒々しさを薄れ、色を取り戻していく。ウイルスは浄化され結晶で覆われていた街から氷でも解けるかの様に結晶が消滅する。

 

だが、まだ危機が去った訳ではない。

綾瀬のシュタイナーは空の弾倉を捨て、新しく弾倉を再装填する。

 

『…このままじゃ、弾が尽きる!』

 

本来なら一刻も早く離脱すべき状況なのだが、あいにくリーダーは戦場の中心にとどまっている。

一人でも多くの敵を処理し、食い止めるのが自分たちの役目だ。

 

もう何体目かも分からない悪魔を撃ち殺すも、その矢先に次から次へと悪魔は湧いてくる。無限に復活するゾンビでも相手にしている気分になる。

悪魔単体なら火力も低いものばかりだが、かと言って無視できるものでもない。何より複数体で連携し襲って来る。

さらに超常的な能力も持っているとなれば、下手な爆弾よりよっぽど脅威だ。

 

『いたぞ!』

 

数体のゴーチェが迫って来るのを見て、綾瀬は舌打ちをする。

 

『ーーくっ…!またか…』

 

綾瀬はシュタイナーを操り、一斉に襲い掛かる銃弾を掻い潜り建物の影へ身を隠す。

そこにゴーチェ達が銃弾をばら撒く。

建物の壁に身を隠していた綾瀬はしまったと思った。

逃げ込んだ場所は誰の目で見ても明らかな袋小路だったのだ。

 

『逃げ場はない。大人しく投降しろ!』

隊長らしき一体のゴーチェが一歩前へ出て言う。

 

(出てきたら撃つ気でいるくせに…!)

 

今まで散々見てきた光景だ。綾瀬はいよいよ腹をくくるべきかと思い、トリガーに指を掛けた。

 

ゴーチェの前に悪魔達が横に並び、ジリジリ距離を詰めて居るのが分かる。銃弾を避けながら奴らを相手する事など到底不可能な話だ。

シュタイナーが鹵獲されれば、自分が操縦していた場所もすぐ割り出されるだろう。いかに機械の天才がいても、エンドレイブのコネクトを隠す事など出来ない。

機体が破壊されれば、隠れる事はおろか逃げる事すら困難となるのは明らかだ。

 

『バカ集…。死んだら化けて出てやる』

 

あの少年への悪態を吐く。

初めて会った時は頼りない男だと思った。

だが葬儀社の入団試験で、良い様に翻弄されてからは気にくわない男に変わった。

何度喧嘩しただろう。

 

涯もいのりもあんなの何処が好きなのだろうと思って居たのに。

 

(…なんで今、涯よりもあいつの事を考えてるんだか…)

 

だが不愉快ではない。

出会って半年にも満たない短い期間だというのに、他の仲間に負けないくらい心の中に入り込まれていたのかもしれない。

 

(涯…ごめんなさい。今だけ私はーーー

 

綾瀬の感情を誰よりも強く感じとるシュタイナーが、銃を強く握り締め、もう片方の腕からダガーを突き出す。

出し惜しみは無しだ。機体後部のハッチを開きミサイルも起動準備に入る。

 

 

ーーあなた以外の人のために戦います。ーー

 

 

 

「ーーHey(ヘイ)

 

場違いな程の軽い声が聞こえた。

声の方を見る。そこに真紅のロングコートに顔にぼろ切れを包帯の様に巻いた異様な男が立っていた。

 

『ーーなに、あんたは?』

 

「おっと、これは失礼お嬢ちゃん。無作法な挨拶をしちまったな」

 

男はこれまた軽い調子で言う。

 

『は?』

 

綾瀬は眉をひそめた。男の態度からではない。

一瞬背を見せた男の背中に身の丈程はある銀色の剣が見えたからだ。しかし、それを抜きにしても男からは巨大な存在感を感じた。

 

「そんなナリだからな。女性(レディ)とは気付かなかったよ」

 

包帯ごしでも分かるくらい、ヘラヘラ笑いながらそんな事を言う。

綾瀬はさっきまでの緊張と覚悟をぶった切られた気がして、イライラしながら男を睨む。

 

「ーーそう睨むなって。ちと、確認したいんだがな」

 

『確認?』

 

「嬢ちゃんは“ 葬儀社 ”とやらの仲間か?」

 

その言葉を聞いた途端、綾瀬は男の頭に銃を突き付けた。

しかし、うさぎの巣穴程はある銃口を目の前に突き付けられても、男は驚くそぶりすら見せない。

 

「……その態度は肯定って取っていいか?安心しな俺はお前達を助けに来たんだ」

 

『ーー敵じゃないって言うの?』

 

「だから、こんな兄貴の真似事までしてんだよ。

相手は政治家だからな、悪魔共が寄って来るならまだしも流石に指名手配されたいとは思わねぇよ」

 

男は顔に巻かれたボロ布に親指を指しながら、やれやれと首を振った。

『…あんた何者なの?なぜ私たちを助けるの?』

 

「おっと。お喋りはここまでだ」

 

男は腰から二丁の銃を抜き、掌でクルクル回すと肩越しに背後へ発砲した。

弾は男の背後に飛びかかった悪魔の脳天に直撃し、頭部が弾け飛んだ悪魔は地面へ崩れ落ちた。そのまま男は空中へ飛び上がると、続け様に弾丸をぶち込む。

 

空中で何度も身体をひねりながらコマの様に回転し続け、近付く悪魔を軒並み銃弾の嵐に巻き込む。

 

「イヤァホオオオォォォ!!」

 

男は興奮気味に雄叫びを上げている。

銃弾の雨をくぐり抜けた悪魔が着地した男に飛び掛った。

 

すると男は自分の肩へ手を回し、剣の柄を掴むと一気に目の前の悪魔を切り払った。

他の悪魔も男は次々に斬り伏せ撃ち抜いていく。

 

『ーーウソでしょ…?』

 

自分達を散々苦しめていた悪魔の屍がどんどん積み上がっていく。

しかも男からは疲れをまるで感じない。人間離れした動きをした男は、口笛を吹く様な余裕さえ見せている。

 

男の蹴りで飛ばされたその場にいる最後の悪魔が脳天を打ち抜かれた所で、呆然と見ていたゴーチェのかなしばりがようやく解かれた。

『う…撃てぇぇ!!』

 

「やれやれ。鉄くずばっかが相手たぁ芸がねぇな。

まっ、生身の人間を何人も相手するよかマシか…」

 

その号令で他のゴーチェもようやく悪魔達が全滅したという事実を受け止め、銃口を向け一斉に弾丸を男へ掃射した。

 

 

 

ーー “Keep still(じっとしてな).”ーー

 

 

 

男が笑みを浮かべながら呪文の様に呟いた。その瞬間、男の姿はその場から唐突に消失した。

 

『ーーえ?』

 

それだけではない、男が消えたのならそれで何もない地面を弾丸がえぐるはずだが、それも無い。

 

(不発?)

 

一瞬そう思ったがマズルフラッシュは確かに見てる。

 

『なっ!?』

『バカな、いつの間に!?』

 

ゴーチェ達が声を上げる。

そちらを見ると、目の前で消えた男が隊長らしきゴーチェの肩に悠々と腰掛けていた。

 

「どうした?モーニングコールはおしまいか?」

 

そう言いながら男が手の平を開くと、バラバラと綾瀬の手首ほどはある弾丸が地面に落ちた。

 

『ーーーっ!!』

 

紛れもなくそれはゴーチェが放った弾丸だ。

信じられない。

もしこれがあの男の手によって“一瞬の内に掴み取られた”物だとしたら明らかに人知を超えた超人ぶりだ。

いや、どんな身体能力だとしても、飛んでくる数十発の銃弾をあの一瞬で、しかも素手で掴むなどという芸当が出来るはずがない。

 

ーーそれこそ、時を止めでもしない限り。ーー

 

『ーーくっ!!』

 

ゴーチェは腕に収納されたダガーで男を切り裂こうとし、ーー

 

『ーーあ。あガアアアァァァ!!?』

 

そこで初めて腕が切り落とされている事に気付いた。

仲間もその事に気付き、何が起きたか分からず呆然としている。

 

「今頃気付いたのか?ニブイ奴だ」

 

『ーーキサーー』

 

男に攻撃しようとした別のゴーチェも、一瞬で頭を切り落とされる。

腕を斬り落とされたゴーチェも接続を切断したのか、とうに動かなくなっていた。

 

その時、綾瀬の真横の壁が ボコンッ と大きな音を立てて崩れ落ちた。

 

『みィィィィつけたアァァァ!!!』

 

その穴からゴーチェが怒り狂った雄叫びを上げながら、地面に着地した男に突進する。

その声には聞き覚えがあった。

 

『“ ダリル・ヤン ”!?』

 

しかしダリルはシュタイナーには眼もくれず、綾瀬の真横を素通りした。相当怒り狂ってるのは誰の目から見ても明らかだ。

 

「またテメェか。まだやられ足りねぇのか?」

 

『ダマレェ!!あんなマグレでいい気になるな!!

今度こそグチャグチャにすり潰してやる!!』

 

どうやら男とダリルは一度交戦している様だった。

その結果はダリルの態度を見れば考えるまでもない。

 

「俺が言えた義理じゃねぇが、ひでぇ言葉使いだ。

ママと絵本でも読んだらどうだ?」

 

『ーーっシネ!!』

 

その一言がダリルの逆鱗に触れた。

しかし男はゴーチェの巨腕をヒョイッと小さな動作で躱す。

時速80キロ程の速度はくだらない速度で繰り出される巨腕のラッシュを、男はなんでも無いかのように躱す。

……というか、アクビしているのが見えた気がした。

 

『クソックソクソクソッ、クソォッ!!』

ゴーチェの背部ハッチが開き、大量の小型誘導弾が全弾男を捉える。

しかし、再び男の姿が消失した。

 

『なっ!ーーギャアアア!!』

 

目標を見失ったミサイルは男の背後にいたゴーチェ達に命中し、爆炎が上がる。

 

『どこだ!?』

 

仲間を撃った事など気に留めず、ダリルは男の姿を探す。

 

『グッ!』

 

瞬間、ダリルは頭部に凄まじい鈍痛を感じ思わず呻いた。

男がゴーチェの頭をリンゴでも潰すかの様に踏み付けたからだ。

 

「頭から血ぃ抜いて出直して来い」

 

『この、ミイラ野郎!!』

 

男は捕まえようとするゴーチェの腕を跳んで避け、男は空高く舞い上がると、急降下しながら二丁拳銃をクロスに構え、銃弾をマシンガンの様に撃ちまくる。

銃弾はキレイに頭頂部に命中し、同じ場所に他の銃弾が次々と降り注いだ。

 

『〜〜〜ーーっ〜〜づーー!!!!!』

 

ダリルはもはや声すら出せず、痙攣する様に銃弾を迎え入れた。

降り注ぐ銃弾はドリルの様に頭から胴体へゴーチェの中を掘り進み、最終的には真下のコンクリートを砕いた。

 

男が着地するが、ゴーチェは彫像の様に直立し動く気配が無い。

とっくに切断されたのだろう。ダリルの呻き声も聞こえない。

 

「終わったぞ。お嬢ちゃん」

 

『ーーーーーー』

 

絶句。

圧倒的で一方的な殺戮。

目の前で起きた一連の出来事に到底理解が及ばない。

 

「ーーでっ?なんだったか、俺が嬢ちゃん達を味方する理由だったか?」

 

『えっ…あ』

 

「1つは俺が普段、悪魔共を片付ける仕事をしてるからだ」

 

戦いのせいで緩んだのか、巻かれた布切れから男の顔が露わになっていた。

まず最初に目に入るのが絹の様な銀髪だ。

整った顔の西洋人で自信に満ちた笑みを浮かべている。

 

この特徴は集からさんざん聞いていた。

 

『まさか…あんたが?』

 

「………」

 

綾瀬の考えた事を察した男は、ニィと笑みを深めた。

「もう1つは…ウチのバカが迷惑かけたみたいだからな。ほんのお礼だ」

 

これで貸し借り無しだと告げて、男は背を向けた。

 

「待っーー」

 

綾瀬が声を上げた時には、男は冗談みたいな高さえ跳び上がり、すでに建物の向こう側へと去って行った。

巨大な獣が喰い散らかした後の様な惨状に綾瀬はポツンと残された。

 

『…あれが、集の師匠…』

 

 

 

 

たしか名前は…、

 

 

ーー“ダンテ”ーー。

 

 

 

 

*****************

 

 

 

 

血の味がした。

鉄臭い匂いが口の中を蹂躙する。

その不快感を口から追い出すため、集は口に溜まっていた血をプッと吐き出した。

そこでようやく自分が地面に転がっている事に気付いた。

 

「みんなは…?」

 

瓦礫が散らばる地面からズキズキ痛む身体を起こす。

特に頭が酷く痛んだ。頭に触れると、ドロと生温かい液体に触れる。

出血している。深いが今すぐどうこうなるものでもないだろう。

集は友人達を探すため周りを見渡す。

クラクラと歪む視界と瓦礫と炎があちこちに散乱する中、上下逆に横転した車を見つけた。

ここまで乗って来た車だ。

 

「ーーみんな!ーーづぁ」

 

駆け出そうとして脚が抉れるような激痛に、再び地面に倒れた。

いや、文字通り抉れていた。それだけではない、足首の辺りから白い骨が覗いている。

 

「ーーくそっ!!」

足首からおびただしい量の血を流しながら、集は這うように進む。

少し動くだけで吐きたくなる様な激痛が襲う。

 

だが止まっては居られない。

一刻も早くみんなの安否を確かめなくては。

 

その時、瓦礫がガラガラと崩れ落ちた。

 

「!!」

 

そこに一体の悪魔が集を睥睨していた。

ボロボロの衣服を纏い、ほぼ骨だけの顔と身体、そして巨大な鎌。

まさしく死神と形容するに相応しい外観の悪魔だった。

 

思い出した。

空港の敷地へ入った瞬間、自分達が乗っていた車はこの悪魔達の襲撃にあい、反撃する間も無く横転させられたのだ。

 

周りのあちこちで動くものの気配を感じる。

『ゴアァ!!』

 

「ぐっ!」

 

集は死神ーー“ヘルプライド”ーーに骨だけとは思えない怪力で掴み上げられると、思い切り投げ飛ばされた。

 

「ーーうっーーばがっ!?」

 

投げ飛ばされた集は背中から車に激突し、地面へ倒れ込む。

背中に強い衝撃を受けた集は咳き込みながら、集は改めて周囲を見渡す。

 

大鎌を持った似た様相の悪魔が次から次へと、迫って来ていた。

だが、不幸中の幸い。

投げ飛ばされた先は集が目指そうとしていた、車だった。

 

「……ハレ!谷尋!…みんな!」

 

「……俺達は大丈夫だ」

 

谷尋が答えた。

車内をよく見ると、ひゅ〜ねるの下部から巨大なクッションが全員を包み込んでいた。

ヴォイドを出した影響か谷尋以外は気を失っている様だ。

 

「…よかった…」

 

「そっちは…よく無さそうだな」

 

「まぁね…。ハレ、起きて!」

 

「…ん?」

 

「ごめん、今すぐ君の力を借りたい。

ツグミ!」

 

『アイアイ…。ーー全く機械づかいが荒いんだから…』

 

ひび割れ、歪んだボディを動かし、ひゅ〜ねる はこちらを見る。

集は祭からヴォイドを取り出し、折れた足に巻く。

 

『ガアアァァ!!』

 

「ーーぃっ!?」

 

間の悪い事くまだ出血も止まっていない状況でヘルが鎌を集目掛けて振り下ろす。

 

「コイツらは僕が引きつける!

その間に安全な場所へ逃げてくれ!」

集はいくらかマシになった足で躱しながら、声を張り上げる。

 

「ーーはぁアアッ!!」

 

ほんの一瞬、魔力を解放して悪魔に飛び蹴りをくらわせる。

顔面にもろに受けた悪魔は、他の悪魔を巻き込みながら吹き飛んでいった。

 

集はほぼ完治した足から包帯を外すと、祭に戻す。

そして、谷尋へ目を移す。

「集……」

 

名前を呼ばれ、集は谷尋へ伸ばしていた右手を止めた。

 

「…裏切って悪かった…」

 

「………」

 

一瞬、右手の光がロウソクの火の様に僅かに揺らめく。

「ーー僕も…潤君を救えなかった…」

 

「……生き残れ。

それで帰って来い!」

 

集の肩を痛いくらい強く掴み、谷尋は叫ぶ。

「………」

 

集はその言葉にただ頷いて応えた。

握った銀色の光を、背後から飛び掛かって来た数体の悪魔へふり返り様に薙ぎ払った。

 

光は凄まじい衝撃波を生み、悪魔を軒並み跳ね返した。

そして収束し、鋏の形を形成する。

 

「……………」

 

悪魔の群れを一瞥する。

ヘルシリーズと呼ばれる、僅かに特徴や能力が異なる同一族の死神達。

そしてその背後で一回り体も鎌も大きい、青白い眼と漆黒の衣に身を包んだ死神の長“ ヘルヴァンガード ”。

 

「ーーー復帰戦だ!」

 

長に手に持った巨鋏を突き付け、集は高らかに叫ぶ。

 

「付き合って貰うぞ!

ーーー死神ども!!」

 

 

 

 




前半はダンテさんによる。
集団イジメ()

後半は集の集団イジメ()

いい対比になったと自分では思ってます。



ちなみに、ダンテのゴーチェとダリル戦。
あえて区別つけづらい様に表現しましたが、
最初の瞬間移動が『クイックシルバー』で、ダリル戦の瞬間移動は『トリックスター』です。

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