ギルティクラウン~The Devil's Hearts~   作:すぱーだ

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DMC5楽しスギィ!

なんか4より戦いやすい気がするのは僕だけ?
vも楽しい。

みんなもやろ?


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#41-①攻防〜deadlin〜

空港へ向かう集を含めて、全員が沈痛な面持ちで大型車輌の座席に座っていた。

もっとも集は座席ではなく、トラブルがあった時のために車輌の屋根にある把手に捕まっていた。

みんなの表情が見えなくても、集は中の様子が容易に想像できた。

 

周囲は既に活性化したウイルスで凄惨な光景と化していた。

人々だけでなく建物にまでキャンサーの結晶が伸び、街を侵食している。

 

車内では大音量で『EGOIST』の曲を流し、ウイルスを抑えている。

いのり の歌がウイルスの活性化を抑えるという話に半信半疑だった亜里沙や花音もこれで信じざる得なかった。

しかし街を超え橋に差し掛かろうとしても、誰も一言も喋ろうとしない。

「…なぁ、集」

 

「なに、谷尋?」

 

その沈黙を破って谷尋が屋根の窓から集を見上げる。

 

「お前、花音のヴォイドは見たのか?」

 

「……そういえば確認してなかったかも」

 

話題に上がった当の花音は「えっ私!?」と言いたげな表情で、集と谷尋を交互に見る。

 

「……ちょっと委員長ごめんよ」

 

「やっ、ちょっと心の準備くらいーー」

 

少しパニックになりかけた花音を谷尋が優しく抑える。

自分に密着する谷尋を見て、顔を赤く染める花音に集は遠慮なく右手を差し込む。

 

もう吐き気や拒否反応は無い。

集が右手を引き抜くと銀の光は形を変える。

 

「…“ メガネ ”?」

 

レンズに耳に乗せるフレーム。

眼鏡と呼ぶには少々無骨だが、他に例える物が無かった。

 

「そういえば前にメガネの度が合わなくてなったと言ってたな…」

 

「関係あるのか?それ…」

 

「あははっ」

 

一連の出来事を見守っていた颯太が口を挟むと、祭からも笑いが漏れる。

少し和らいだ空気に安堵しながら、集は早速メガネのヴォイドを着ける。

 

その時、集の耳に懐かしく心地よい声が流れて来た。

 

「ーーいのり?いのりが歌ってる!」

 

「!」

「えっ!」

 

集の声に全員集を見上げる。

 

「曲止めろ!」

車内でかけていた曲を止めても、いのりの曲は全員の耳を打ち続ける。

いのりの歌は空全体に響き、優しく光を放つ。

 

先程までとはまさしく真逆の感覚を集だけでなく、そこにいる全員が感じていた。

 

「空が…歌ってるみたい…」

 

祭は誰に聞かせるでもなく呟いた。

 

「ーーっ?」

 

ふと、集が着けていたメガネのヴォイドに1つの光の点が付いた。

レンズの汚れなどでは無い。

 

「…もしかして委員長のヴォイドは『レーダー』?」

 

いのりの歌から集の意識を奪い取った光の点は、瞬きながら移動する。

 

「…目の前?」

 

しかし、レーダーの反応がある場所に何かがある様には見えない。

集がそう思うほんの一瞬、車の進行方向に黒い影が地面から飛び出して来た。

 

「っ!?」

 

反射的に集は後ろに背中に倒れながら飛んだ。

その瞬間、目の前で巨大な鋏がバチンッと噛み合う。

 

あと一歩反応が遅れていれば、首が胴体から切り飛ばされていただろう。

 

「うわっ!!」

 

だが、何も考えず大雑把な回避行動をとったツケがすぐに来た。

背後に飛んだ集は受け身も取れず車の屋根に叩き付けられ、そのまま車から転げ落ちそうになる。

集の視界には川のように流れるコンクリートが見える。

 

「ーー集ッ!!」

 

そこに叩き付けられる前に、谷尋が集の腕を掴んだ。

身体は落下をやめ、集は必死に車にしがみつく。

 

「ーーくっ!」

 

車によじ登りながら、背後を振り返る。

 

集の首を切り落とそうとした犯人はすぐに見つかった。

 

「ーー『シンシザーズ』っ!」

 

巨大な鋏を持ち、ボロボロの黒衣に身を包み、顔には不気味な仮面を着けている。気味の悪い声で笑いながら、悪霊の様に車の周りを飛んでいる。

 

「ーー谷ひっー!」

 

『集、前が塞がってる!!』

 

メガネのヴォイドを花音に戻し、谷尋のヴォイドで応戦しようと考えた集にツグミの絶叫が集の判断を遮った。

 

ツグミの言葉通り橋の中間辺りにコンクリートと鉄骨が組み合わさり、バリケードを築いていた。

 

「ーーくそっ!!」

 

さらに集はシンシザーズを目で追っている最中に、空中から更に別の悪魔が接近しているのが見えた。

 

山羊の頭と脚に人間の胴体、そして蝙蝠の翼。悪魔の代名詞として多く見られる姿をしている。

 

『ゴートリング』という数ある下級悪魔の中でも雷の攻撃に秀で、腕っ節も強い。下級悪魔といえど油断は禁物の相手だ。

 

2体のゴートリンクが上空から集たちに真っ直ぐ近付きつつあった。

集はやむを得ず敵の迎撃を諦めた。

 

「っーー亜里沙さん!!」

 

「お使いなさい!」

 

集の声に応え亜里沙は天井窓から身を乗り出す。集は亜里沙から盾のヴォイドを抜くと前方に展開する。

 

『スピード上げるよぉーー!』

 

「つかまって!!」

 

「マジかよぉ!!」

 

颯太の悲鳴はコンクリートが砕ける音で掻き消された。

バリケードと正面衝突した盾は見事に壁を粉砕して見せた。

 

だがこの隙を見逃す程、悪魔も甘くない。

 

『アハハハハハァア!!』

 

狂った様な笑い声を上げるシンシザーズに向き直った集に錆びた鋏が振り下ろされる。

 

「ーーこっの!息する間くらいくれよ!!」

 

思わず叫ぶ集は盾を操作し、目の前の悪魔にぶち当てた。

『ヒュ!?』

 

思わぬ反撃を食らったシザーズは大きく体勢を崩し、振り下ろされた鋏は車の屋根に突き刺さった。

車内から突然つき出した刃物に驚く声が聞こえる。

 

しかし集は眉をひそめた。

 

シンシザーズには物体をすり抜ける能力を持っている。

だからこそ地面には傷ひとつ付けず、橋の下から奇襲を仕掛けて来れたのだ。

 

(もしかして…これなら奴を捕まえられる?)

 

シザーズは盾を忌々しそうに睨みながら、車から距離を取ろうとする。

「逃すか!!」

 

叫んだ集は再び盾を操作する。

1つの巨大な円型だった盾は花弁の様に複数に分離すると、シザーズへ四方八方から襲い掛かった。

 

『ギュウッ!?』

 

シザーズは集の意のままに動く盾に挟み込まれる様に捕まり、ガッチリと固定された。

 

「……たしか、弱点はその仮面だったよね?」

 

言うが早く、集は暴れるシザーズを仮面からコンクリートの地面に叩き落とした。

 

『ギエエエエエエェェェェ!!』

 

コンクリートが仮面と接触すると、バリバリと音を立てて火花が散り地面に溝が出来る。集は屋根から鋏を引き抜くと、悲鳴を上げるシザーズに向き直る。

 

見れば、盾の隙間から僅かに仮面が見える。

振動のせいで盾がズレたのか、理由は分からないが遅かれ早かれシザーズは盾から逃れてしまう。

 

そして集も仮面が削り落ちるのを悠長に待つ気は無かった。

「後がつかえてるんだ…早めに終わらせてもらうよ!」

 

集は盾に飛び乗り、僅かに見える仮面へ全体重を乗せ、刃先を突き刺した。

しかし、鋏は仮面の表面で止められ火花を散らす。

(ーーーっ固い?!)

 

それでも力を緩めず、鋏の柄を握りしめる。

 

「はあああああああぁァァァア!!」

『ギャアアアァァァ!!?』

 

そして、シザーズの悲鳴が絶叫へ変わった瞬間、唐突に仮面が砕けた。

 

「ーーうっおおう?」

 

集は間抜けな声を出しながら、慌てて鋏を引っ込めた。

「集っ!大丈夫か!」

 

「さっきの一体は倒した。けどまだ…」

 

集が上空を見上げた時、無数の雷の矢が降り注ぐのが見えた。

 

「くそっ、もう追い付いたのか!」

 

盾を上空へ傘のように展開し、雷の矢を受ける。

しかし、雷の矢は止む気配がない。

 

「ーー反撃させない気か!」

 

降り注ぐ雷の矢は恐ろしい存在では無い。しかし、それを防ぐために集は視界を塞がれ相手の様子を確認出来ない。

相手がどれくらい近付いているかも分からないのだ。

 

(ーーまずい。このままじゃいずれ追い付かれる!)

 

上空まで行くのは難しく無い。

だが、相手は自由に空を飛べるのだ。中途半端に打って出ても迎撃されるのがオチだ。

なにか…なにかないか。相手の本格的な攻撃の前に、攻めに転じられる一手が。

 

打開策を見つけようと周囲に視線を走らせた集に、さらなる追い打ちが待っていた。

 

(ーートンネル…?まずい、これじゃ敵に待ち伏せしてくれと言ってるのも同じじゃないか!!)

 

「くっそぉ!もっと時間があれば!

ツグミ!」

 

『あいあい!』

 

「閃光弾ある!?照明弾でもなんでもいい。強い光が出るものをーー!」

 

『まさか、…それであの悪魔の目を眩ませようっての!?』

 

「ーーそのまさかだよ。時間がない、早く!!」

 

『……もー!

集はもうちょっと涯みたいにスマートな作戦立てられないの!?』

 

ぶいぶい文句を言いながら“ふゅ〜ねる”の側頭部のハッチから、フレアガンが射出された。

 

「悪いね…。

これが“師匠流”なんだよ!」

 

空中でそれをキャッチした集は、盾の向こう側にいる悪魔達を睨み付ける。

そして次の瞬間、足をバネの様に身体を高く打ち上げた。

誰かがまた自分の名前を呼んだ気がしたが、集はあえてその声を意識外へシャットアウトする。

 

今は目の前の敵だけに集中するのだ。

盾の影から飛び出した集を山羊頭の悪魔達は意外そうに、そして嘲けながら集に狙いを定めて雷の矢を過剰な程撃ち込んで来た。

 

「やっぱ、そうなるよねーっと!」

 

集はその矢を身体を捻り、屈み、ギリギリで躱していく。

ヴォイドエフェクトを蹴り、どんどん相手との距離を詰める。

 

だが、さすがに相手の機動力には到底追い付けない差がある。

集がどんなに必死になっても、この悪魔達に触れる事など出来ない。

 

「これで…どうだ!!」

 

十分近付けた時、集はフレアガンを取り出しすかさず引き金を引く。

赤い火の玉が勢いよく2体に向け飛んで行く。

 

『グルル…』

 

なんらかの攻撃と判断したのか、悪魔達はその火の玉に照準を移す。

しかし、玉は撃ち落とされる前に大きな光と音と共に弾けた。

 

『ーーグッ!?』

『ーーウゥ!?』

 

目を抑え悶えたりする程の閃光では無かったが、光は2体の視界を覆い動きを止めた。

 

『ーーギャッァ!!』

 

『!!』

 

悪魔は真横にいる仲間の悲鳴を聞き、そちらへ振り返った。

仲間の額には巨大な鋏が深々と突き刺さっていた。

シンシザーズの鋏を持っていた人間はこちらの視界を閃光で遮り、鋏を投げたのだ。

 

その事を理解した時には、すでに集は悪魔の額に突き刺さった鋏を掴んでいた。

 

『グゴオオォォ!!』

 

抉るように鋏を乱暴に引き抜いていた集に、咆哮を上げ無数の雷の矢を撃ち放つ。

集は仕留めた悪魔の翼を掴むと、思い切り引き上げ自分の位置と交換させた。

雷の矢は悪魔の身体に命中し爆散する。

 

「 ぜ やあぁぁぁ!!」

 

その煙の中から、集は鋏を振り上げ飛びかかった。

悪魔は胸の辺りに魔法陣の様なものを展開させていたが、集はそれごと身体を串刺した。

 

『ゴギューー』

 

悪魔は吐血し、身体から力が抜ける。

だが、すぐに眼光を光らせ集を睨み付ける。

 

「このっーまだ!」

「集!マズイぞ!!」

 

下の車から、谷尋の声が聞こえた。

しかし、谷尋が警告を発したのは今の自分の状況についてでは無い。

谷尋は目前まで迫っているトンネルの中を指差して叫んだ。

「ーー隔壁だ!!閉まってるんだ!」

 

「!!」

 

動揺した集の首をゴートリングはタイヤの様に太い腕で、へし折らんばかりの力で掴みかかる。

 

「ぐっ!?

ーーこの、おとなしく…して…ろ」

 

首を締め上げられ、意識が朦朧としながらも。

集は指を悪魔の片目に思い切り突き刺した。

 

『ギャアアアァァァ!!』

 

ぐしゃりと生温かい柔らかさが集の指に伝わり、不快感で顔を歪める。絶叫を上げながら悪魔は集を振り落とし、再び翼を広げ舞い上がった。

 

「うわ!」

自由落下を始めた集は、なにくそとヤケクソな気持ちで空中を蹴る。集が蹴った場所にヴォイドエフェクトが発生して、集の身体を落下から防ぐ。

そのまま次々と空中を蹴り、集は空中から車に向け全力で駆け出した。

 

谷尋の言う通り、前方には巨大な隔壁が行く手を阻んでいた。

 

「ツグミっ、車を止めないで!」

 

『あ……アイアイ!』

 

少し間があったが、ツグミも応じてくれた。

 

「颯太っ、車の外へ!

谷尋は颯太を支えてて!!」

 

「分かった」

 

「はっ?ーーマジかよ!!」

 

走りながら、後ろを確認する。

後ろをフラフラ飛ぶ ゴートリングは、もう集には追い付けそうにない。だが、みすみす逃す気もない様だ。

ゴートリンクは手を真っ直ぐ突き出し、魔法陣を展開させ何か呪文の様なものを唱えている。

刺し違えても自分達を仕留める気なのは、見て感じ取れた。

「颯太っ!そのままじっとして!

死にたく無かったら動くな!!」

 

車体の天井窓から後部座席の上に立っている谷尋と颯太にそう叫び、ありったけの力を両脚に込め天井めがけてロケットのように飛び込んだ。

 

「はぇ?」

 

集の怒号と挙動に颯太は一瞬、唖然とした。

トンネルの天井に頭をめり込ませる直前に、集は両手を天井につけると両手も両足も短く縮めた。かと思うと、今度は一気に伸ばし天井から下方へ飛び込んだ。その光景はまさしくバネの様だった。

 

「ーー行くぞ!」

 

「い…いや!ちょと待ーー」

 

あまりにもとんでもない方法で、自分達に追いついて来た集に面食らい、後ずさりしそうになった颯太だったが後ろで自分を抑えつける谷尋がそれをゆるさなかった。

 

「ーーあっふ」

 

集が颯太からカメラのヴォイドを引き抜く。その衝撃で二人は車内転がり落ちた。ヴォイドを引き抜いた集は車体の上をローリングで転がり、落下の衝撃を殺すとすぐさま隔壁に向けシャッターを切る。

 

ヴォイドの影響を受けた隔壁は、バシンッと電流が走ったかのように口を開けて集達を迎え入れようとする。

 

集達の乗る車が通過すると、まるで糸が切れたかのようにピシャリと閉じられた。

直後に凄まじい轟音と振動が隔壁の向こうから伝わって来た。

 

「……やっと一息つける…」

 

その衝撃もトンネルを揺らす事は出来ても倒壊させるには足りない様だ。

集は前方、後方と見渡してようやく一旦の事態の収束を悟り深く息をはいた。

 

集は改めて周囲の様子を見渡す。

ふとあちこちの残骸や破壊の痕跡がある事に気付いた。

 

「?」

 

そういえば、襲って来た悪魔が3体というのも少な過ぎた気がする。

それに兵士の姿が無いというのも気にかかる。橋の上のバリケードですら、兵士の姿はどこにも無かった。

戦いに夢中で気にして無かったが、あちこちに車やエンドレイブの残骸も見た気がする。

 

 

「………もしかして、これって…」

 

 

集の脳裏に不敵に笑うあの男の顔がよぎった。

 

 

 

 




本当もう少し書きたかったけど、
この後の切りのいい所がわりと先なので次に行きます。

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