ギルティクラウン~The Devil's Hearts~   作:すぱーだ

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これから徐々に投稿ペースが落ちて行くと思います。
ご了承下さい。

第2話です。


#02起源~crossing~

 

廃墟の中は…痛いくらい沈黙に満ちていた。

集は憧れの少女が目の前にいることに言葉を失っていた。

このままではいけないと思った集は声をかけようと息つぎをしようとした時、彼女のかげから飛び出てきた物体が集に向け" ポン "という音と共にワイヤーを発射した。

 

「 !! 」

 

集は、足に絡みつこうとした、ワイヤーをすんでの所でかわした。

ワイヤーは、そのまま背後のボロボロの機器にぶつかった。

再び視線を前に戻すと、集に向かって"いのり"らしき少女が駆けて来ている所だった。

フラフラで今にも倒れそうな走りだったが、信じられない速度で集へ迫ってきた。

 

「ーーなっ !! 」

 

手負いにも関わらず、一瞬で集の目の前に接近した少女は、どこで拾ったのか・・・鋭利なガラス片を集に向け振り抜いてきた…。

喉、左胸、股間、目と的確に致命傷に突き立てて来る。

集はそれを紙一重で避け続ける。

この怪我で、この動きと速さ・・・さらに相手に致命傷を与えることも辞さない思い切りのよさと正確さ・・・。

(この子、どこかで訓練を受けてる…!)

 

この少女が、集の知っている"いのり"であるかはともかく、普通の少女では無い事は明らかだった。

 

ビッと少女の持つガラス片が、集の制服二の腕部分の袖を切り裂いた。

 

集の背中を冷たい汗が濡らした。

今のは、制服を破いただけで肌には届いていないが、気を抜けば一瞬で刺し殺されてしまう。

久方ぶりに感じる死の危険に、集の喉から水気が引きカラカラに乾く。

 

集は、少女のガラス片に意識を集中させた。

 

その時、気付いた。

ガラス片に血が滴っていることに。

 

考えてみれば当然だった、彼女は素手でガラス片を握っている、当然そんなことをすれば手の平は裂ける。

 

 「ーーやめーー」

 

彼女は集の言葉に耳を貸そうとしない。

彼女が、自分の身体も省みず、外敵と判断した自分を撃退しようとしている。

 

「やめろって!指が使い物にならなくなるぞ!!」

 

少女は、やはりその声に無視し、さらに激しくガラス片を突き付けて来た。

集が、それを先程の様に避けると、頬と制服にパラパラと血が滴り落ちて来た。

 

「もうっ知らないぞ!」

 

叫んだ集は、右手に握ったままだった弁当箱の入った風呂敷を、少女の持つガラス片に力任せに叩きつけた。

 

「 !! 」

 

予想外の反撃を受けた少女は、ガラス片を手落とした。

一瞬驚いた顔をした少女だったが、躊躇い無くそのまま集に体当たりをぶつけ集と共に倒れ込んだ。

 

「ーーっあ・・・ゲッホ!! 」

 

集は、少女への負担を減らすため、避けずにわざと体当たりを喰らい、そして同じように少女に衝撃が行かないよう、受身も取らなかった。

いくら少女が小柄でも、完璧な形で衝撃を受けてしまった集は思わず咳込んだ。

 

少女は顔を上げ、正面の机に置いてあったハサミを掴もうと手を伸ばし、その拍子に机の上にあるコンピューターのマウスに手が当たり、コンピューターが起動した。

 

少女は、手に握ったハサミを集に向け振り下ろした。

 

「…くっ! 」

 

集は、少女の手首を掴もうと伸ばそうとした。

・・・その時、

 

『.ーーーーーーー …‥。』

 

 

 

 

 

 

 

『EGOIST』の、曲が廃墟中に響き渡った。

少女は、突然聞こえて来た、自分の歌声に手が止まり、モニターへ視線を吸い寄せられた。

 

 「………」

 

集は、伸ばし掛けた手を止め少女の次の動きを待った。

 

「これ、あなたが…?」

 

ようやく少女が言葉を発した。

 

「 …そっ、そうだけど。」

 

「 ………」

 

っと思えば、また黙ってしまった。

この間がなんとも気まずく感じた集は、何か話題は無いかと探した。

 

「ここの街の山を、ちょっと行ったとこの風景…です。」

 

言葉の途中で、 少女の服がまだはだけている事に気付いた集は顔を赤らめ横を見やり、ごまかす様に続けた。

 

「まっ、まあ…まだ途中…なん…です…けど。」

 

「ーーきれい…」

 

初めて、見せる少女の穏やかな表情に、集は目を奪われていた。

( く~~~~きゅるるるる・・・ )

 

少女の腹から子犬の鳴き声のような、可愛らしい音が聞こえて来た。

 

少女の頬に朱が指す。

 

「えっと、食べる?」

集は手に持つ弁当を、少女の前に持ち上げた。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「これ、なに…?」

 

弁当から取り出したおにぎりを、少女は不思議そうに眺めながら言った。

 

「うえっ? 」

 

少女から飛び出した予想の斜め上を行く質問に、集は思わず変な声が出た。

そんな集の反応に、少女はキョトンとした表情で首を傾げた。

 

「なにって、おにぎりだけど…。」

集が答えると。

 

「おいしい?」

 

「うっ、うん…たぶん」

 

集が言い終わると、少女は小さい口におにぎりを運び、ついばんではもぐもぐと食べ始めた。

「おいしい…」

 

「ほんと?良かった。」

 

「ーーうん 」

 

あの後集はとりあえず救急セットがある階段の上に移動し、少女の手当てをする事にした。

っと言っても、背中などの大きな傷はあまり深くなかった上に、足下の白くて小さいロボットが綺麗に治療してあったため、集のやったことはガラスを握り裂けた手の平の治療だった。

とりあえず消毒し、薬を塗り込んだガーゼを傷口に貼り、その上から包帯を巻いた。

その後、食事にしようという事になり、集が少女に弁当を手渡し、今に至る。

 

「えと…いのりさんでいいんだよね。」

 

「うん 、楪いのり」

 

「『EGOIST』の?」

 

「 そう 。」

「・・・・。」

 

「・・・・。」

 

会話が続かない…。

集は正直言って、初対面の人と気さくに話しかけられる性格ではない。

少女の方もよく居るアイドルの様に、率先して前で歌おうとするタイプではなさそうだった。

ともあれこの少女が"いのり"であることは間違いなさそうだ。

 

「あの、…いのり…さん。」

 

「いのりでいい。」

 

そう言われた集は、思わず言葉が詰まった。

"いのり"を呼び捨て?

毎日ネットの噂を独占し、集自身も彼女の熱狂的なファン・・・。

確かにこの状況を、叶わない夢と思いながらも望んでいたのは確かだ。

生で見る彼女は見ればみるほど美しい。

まるでこの世に在る限りの美を詰め込んだ彫刻に命を吹き込んだ様だ。

 

この状況そのものに、背徳感を感じた集は思わず唾を飲んだ。

冷や汗が、額から流れて来た。

 

そんな集を、彼女が不思議そうに眺めている事に気付き、集は慌てて言い直した。

 

「わっ、分かったよ‥い…いのり‥。じゃあ話を続けるけど…、いのりはどうしてここに?」

 

「ふゅーねる。」

 

答える代わりに、白い丸くて小さいロボットを呼んだ。

「この子をガイに届けるの。」

 

「”がい “? 」

 

いのりは、それ以上語ろうとしない。

 

( どこか場所…?、それとも人の名前…? )

 

集が思い当たる場所を頭に思い浮かべようとした瞬間。

 

バンッ っと入り口の扉が乱暴に開けられる音が聞こえた。

驚いて目を向けると、白い装備で身を包みアサルトライフルを持った男達がガチャガチャと音を鳴らし入って来た。

 

( あの人達…、GHQの…。)

 

集が、状況を掴めずにいると。

隣にいたいのりが、手摺を飛び越え下に着地した。

 

少女が"ふゅーねる"と呼ぶロボットも、彼女の後を追おうとするが脚が壊れているのか、全く進めて無かった。

 

「……! 」

 

いのりが、二階に戻ろうとした瞬間。

その腕を何者かが掴んだ。

いのりの腕を掴んだ男は、先程入って来た兵隊とは違い白い装備の代わりに、白いコートで身を包んでいた。

 

「おっと 、テロリストめが 。webアーティストだかなんだか知らんが、アマチュアの歌うたい風情が膨れおって」

 

頭を剃り上げ、全面レンズのサングラスを掛けた男はいかにも不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 

いのりが、男の腕を振り払おうとした時、 走って来た兵隊に銃のグリップで殴られ、苦痛の声を上げ地面に崩れ落ちた。

見てられなくなった集は手摺を飛び越え一階に着地し、白いコートの男に声を掛けた。

「ちょっとすみません、あのその子っ怪我してるんですっ!だから出来れば…

『 乱暴せず、医者に見せてあげて下さい 』っと続けようとした集に、兵隊は銃を突き付けた。

歩みを止める集に白コートの男はいかにも見下した態度で話しかけた。

 

「この女は、犯罪者…テロリストだ。庇うなら君も同罪として浄化処分するぞ。」

 

男の言葉に集は驚かなかった、彼女の動きは迷いが無く完成されていた。

何処かで教わらなければあんな動きは出来ない。

何処かがテロリストならば、あの動きにも納得だ。

男の言葉は信憑性があると、集は考えた。

しかし、

 

「すみませんが、あなたの話は信じられません。」

 

「何…? 」

 

集の言葉に男は、眉をひそめた。

 

「どういう意味かね?この女がテロリストである証拠を見せろという意味かね?」

 

「それもありますが…‥、僕が一番気になるのは"あなた達が本当にGHQの兵隊なのかっ?"ということです。」

 

「なにっ、まさかとは思うが君は我々の方がテロリストだと言って居るのか?」

 

男の眉間にさらに皺がよる。

 

ここまで来たらこれで押し通すしかない。

集は無謀であることは百も承知で勝負に出る事にした。

 

「おいおい君はここの生徒だろう?

我々の姿を見たことが無い、などと言う事はあるまい。」

 

「服装ならいくらでも誤魔化しが効きます。僕が言っているのは見た人が確実に納得出来る物をと……」

 

男は集の言葉にくくくっと笑っていた。

 

「少年よ…。」

 

男は、笑いながら近付いてくる。

 

「はいっ」

 

答える集に、男は力任せに拳を叩き付けて来た。

 

ゴッ っという音と共に集は地に足が着いていない状態で空中で体が、一回転しながら数センチ飛び地面にうつ伏せで倒れ込んだ。

 

「…‥うっ」

 

あまりの衝撃に集は思わず声が漏れた。

 

「優しくしていれば付け上がりやがって。」

 

男はうつ伏せのままの集を踏み付け、腰のホルスターから拳銃を取り出し発砲した。

 

「だめっ! 」

 

火薬の炸裂音に混じり、いのりの叫びが集の耳に届いた。

銃弾は集の鼻先数センチの位置の床を穿ち煙を上げた。

 

「言ったはずだ、女を庇うなら浄化処分だと。脅しだと思ったのか?」

 

集は踏み付けられたまま男を睨み付けた。

それを見た男が楽しそうに笑い言った。

 

「ほう、ここまでされてまだそんな顔が出来るのか。なかなかの度胸をお持ちの様だ…。」

 

男は集の髪を掴み上げると、耳元で声を掛けた。

 

「いいだろ、浄化処分は勘弁してやろう…。お前に必要なのは処分よりも教育の様だ」

 

男は集を離すとホルスターに拳銃を戻し、兵隊の元へ戻って行った。

 

「ーー痛め付けてやれ 」

 

命じられた兵達は頷き合い、集の元へ行き腹を蹴り、頭を踏み、銃のグリップで殴りとやりたい放題だ。

 

嵐の様襲い掛かる痛みの雨に、集は何度も苦悶の声を上げた。

その奥に見える光景は、既に集に興味を失った白いコートの男と、いのりを連れて行く兵達、

そして・・・

 

「 だめ!! やめて! やめて!! 」

 

兵達に後ろ手に拘束され引き摺られながら叫び続ける、いのりの姿だった。

 

(バカだなぁ、自分の心配をすべきなのに…。)

 

集は、そう思った。

奴らに連れて行かれれば、彼女は今の自分よりひどい目に合わせられるのは火を見るよりも明らかだ。

だから、連れてかれる彼女は逃げる算段を立てるべきなのだ、こんな初めて会った名も知らぬ一般学生になど気に掛けている場合では無い…。

 

集は、そんな何処か冷めた目で見ていた。

 

しかし、いのりが口に布をかまされる様子が見えたのが最後そのまま建物から出たのを最後に見えなくなった。

 

集の目から涙が溢れる。

 

その涙は、痛みから来るものでは無かった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

集の身体の節々に痛みが走った。

兵隊達は、いのりがこの場所から連れ去られてから1分程、集に暴行を加え続けた後、満足したのかさっさと立ち去って行った。

 

「…………」

 

布をかまされ、平手打ちをされてもなお叫び続けた少女。

 

「 何をしているんだっ!! 僕はぁ‼︎ 」

 

こうなるのが嫌だったから今まで朝に特訓し、"彼ら"に渡された自主修行の数々もこなして居たのに。

自分はただ暴力に屈する事しか出来なかった。

集は奥歯を噛みしめ、拳を床に叩き付け膝を抱えた。

いつぶりか分からない悔し涙まで流れ始めた。

 

とんとん っと、背中の低い位置を叩くものがあった。

振り向き見下ろすといのりが"ふゅーねる"と呼んでいたあの小動物位の白いロボットだ。

 

「ごめんね、お前のご主人様連れてかれちゃったよ。」

 

そう言って"ふゅーねる"の頭部を撫でていると、

カシャンッと頭部が開いた。

 

「ーーえ っ ? 」

 

頭部の中にある物を取り出してみると、それは『シリンダー』だった。

見るからに頑丈な造りで、簡単には壊れない様になっているのが分かる。

 

「 これは…‥」

 

『シリンダー』を眺めていると、今度は"ふゅーねる"の上空にホログラムのマップが表示された。

よく見るとマップに一点、ランプが点滅している箇所があった。

 

「ここに行け…って事なんだろうな…」

 

集は呟くと、『シリンダー』を胸ポケットにしまい"ふゅーねる"を抱え建物を出ようとしたが、少し思い立ってズボンのポケットに入った端末を取り出し操作した。

端末は表面に少しヒビが入っていたが使うだけなら問題は無かった。

集は友人達に早退する旨のメッセージを送り、端末をしまうと目的地に向かって駆け出した。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ーーよりによって、ここか。」

 

地図に従い集が辿り着いた場所は、六本木だった。

正確には、元六本木である。

10年前の12月24日に発生した、

『ロストクリスマス事件 』

『アポカリプスウイルス』と呼ばれている感染すると身体が黒紫色の結晶になり最終的には砕け散り死亡する、恐ろしいウイルスが、ここ六本木で感染爆発を起こし、日本政府の重鎮を含めた多くの人が結晶となり砕け散った。

10年経っても今だ感染に苦しむ人々は多くおり、有効な治療法も発見されていない、まさに恐怖の感染ウイルスだ。

 

10年前まで、集も歩き回ったであろうこの街も今や瓦礫の山と化していた。

 

「 ・・・・・・っ」

 

集の頭がキリキリと痛む…‥、そう集も10年前この場所にいた…‥、多くの人々にとって忌まわしき場所、忌まわしき時間に集は立っていたのだ。

 

しかし、集は事件の事もそれ以前の事も思い出せない。

唯一思い出せるのは、血をぶちまけたように赤く燃え広がる炎の光景だ。

その他の事も事件以前の事も思い出せない。

 

誰か、大切な人を失ったはずなのに…、顔も、名前も、どのように過ごしたかさえ思い出せず。

どんなに思い出そうとしても、頭の中で『大切な人』という記憶の輪郭がいつまでも暴れ回るだけだった。

おそらく、『奴ら』の"毒"と、"血"のせいだろうと、"彼女"は言っていたが、魂ごと引き剥がされた記憶を戻す手段など存在しない。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

目的地が目前なこともあって、集は雑念を抑え辺りを見渡した。

着いた場所は廃墟だった。

特に変わったとこはない、しかし光点は確かにこの場所を示していた。

「ーーおいっ 」

 

集は、乱暴に声を掛けて来た人物に振り向いた。

 

これぞチンピラを絵に描いたようなチンピラだった。

「………… 」

 

集は、違うだろうなとは思いつつ、念のため聞いてみた。

 

「あなたが、ガイ?」

 

チンピラは、はあ?という変な物を見るような顔になった。

 

集は、ですよね っと思いつつ。

 

「いえ、違うならいいんですけど。何か用ですか?」

 

チンピラは唇に着いたピアスごと口端を持ち上げ、ニヤリとギトギトの笑みを浮かべた。

 

「俺らさあ、お金無くて困っててるんすよ、だもんでそれ売り飛ばしてお金にしちゃうんでー…‥」

 

気付けば、チンピラの仲間達なのだろう…、四、五人の男達が集の周りを取り囲んでいた。

 

「…‥よこせよ それ 。」

 

「悪いけど、売り物じゃあないんですよねー…」

 

集が言い終わるのを待たず、チンピラは集の腹部に向け拳を突き出して来た。

集は、それを軽く身体を半回転させ避けた。

 

集に目の前のチンピラが殴りかかったのを合図に、周りのチンピラ達も一斉に集に襲いかかった。

 

「なんだこいつ!!なんで当たらねえ!」

 

しかし、誰一人集に当てる事が出来なかった。

集は、ふうと溜め息を着くと、正面から顔面に殴りかかって来るチンピラのこぶしを軽く首を傾げて躱す。

すると、避けたこぶしは後方にいるチンピラの顔面に直撃した。

後方のチンピラは、 ぐえっ っという悲鳴を上げ、後ろにすっ飛んでいった。

 

「ごめん、かっちゃん!」などと叫ぶ前方のチンピラの腹に集は脚を鞭の様に叩き付けた。

 

前方で うげえっ などと叫ぶチンピラを横目に、集は周りで距離を取るチンピラ達に目を向けた。

集の見た目以上の実力にチンピラ達の目に焦りが見え始めた。

 

集だって、伊達に"彼ら"に五年間鍛えられて来たわけでは無い。

 

(この人達が百人集まっても、いのりには勝て無いだろうな。)

 

チンピラ達は、こぶしを出そうとする前兆と打つ場所が視線や動きの移りが遅い関係で良く見ていればまず避けられるし、体重の移動もデタラメなので、当たっても大して効かない。

対して、いのりの攻撃はこちらの動きを事前に予測し、一撃目を避けると、既に避けた位置を攻撃する体勢に入っていたため避けるのに非常に苦労する。

または避ける位置を誘導する技術を持っていたため非常によけ辛い。

もし、あの時彼女が本来の速さを存分に振るっていたら無事で済んだかちょっと集には自信が無い。

 

「ねえ、そろそろ諦めてくれる?」

 

息を切らす、チンピラ達を一瞥して集は言った。

 

「うるせえ!!クソガキ!!」

 

憤るチンピラ達に、集はもう少し手っ取り早く追い払おうと考え、もっと強く反撃に出る事にした。

 

殴りかかったチンピラのこぶしを、集は身を低く屈めて避けると"ふゅーねる"を地面に置きながら、チンピラの顎に向けアッパーを繰り出した。

ぎょべーっ とヒキガエルの様な悲鳴を上げ、チンピラは昏倒した。

集は、ふーっ と呼吸を整えると、チンピラ達にこぶしを向け、言った。

 

「悪いけど、今の僕の背中にはあの子と、あの子の背負ってる物全てが乗ってるんです。ーー簡単に渡せる程軽いものじゃあ無いんだよ !! 」

 

チンピラ達は、集の剣幕に気押され後ずさりし始めた。

 

 

「ーーそこまでだ」

 

集達の真上から声が聞こえて来た。

全員、上を仰ぎ見ようとし大量の照明が集達の目を焼いた。

 

「やあ、死人の諸君 」

 

威圧感はあるものの、何処か頼りがいの在ると思わずにはいられ無い声だった。

照明の光に、一人の長髪の男の姿が浮かび上がった。

 

「 あなたが…‥ガイ ? 」

 

長髪の男は、その質問を笑みで返した。

 

 

 

 

 

 

 

 




ぶっちゃけ今は涯が一番書くの面倒臭い。

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