ギルティクラウン~The Devil's Hearts~   作:すぱーだ

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風邪治ったと思ったら、インフルエンザになりました。

頭真っ白のボーとした状態で書いたので、全体的にクオリティ低いです。

ご了承ください


#19相剋~sham attack~

虚界はダムのコントロールルームで、モニター越しで茎道の話をボンヤリ聞いていた。

 

『後四時間でルーカサイトスリーは予定軌道に遷移が完了する……。それで" 檻 "の完成だ』

 

「んー、では残念ながら間に合わないでしょうね」

 

茎道は虚界の言葉に眉間にしわを寄せた。

 

『…なぜかね?』

 

「葬儀社の襲撃が二時間十七分後だからです」

 

『それは…君独自の情報網からかね?』

 

「いいえ、ただの勘…ないしは希望と言いましょうか」

 

『……今回は君の予感が外れる事を願うとしようか』

 

その言葉を最後に茎道は通信を切り、モニターは黒い画面に切り替わった。

 

「もしもし私です。" 発射コード "は先日のままにしておいてくださいね」

 

茎道との通信が切れた虚界は携帯を取り出すと通話先にそう短く告げると、写真のフォルダを開く。

 

「さあ早く来て、君の選択を見せてください!」

 

虚界は施設でいのりのヴォイドを引き抜いた時の写真を食い入る様に見つめた。

 

「そして見せてください。あの幻夢のような姿を……ハア…この気持ち……ハア…まるで初恋のようですよ集君……」

 

虚界は狂気と恍惚とした笑顔を浮かべ、彼が来るのを今か今かと待った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

少女は待った。

自分を命じる声を…自分の行動を選択する声を。

 

彼女は一度も命令に逆らわなかったし、疑いもしなかった。

そしてその声の正体を知りたいと思った事すらも無かった。

 

ただ命じられた事に従い、聞こえた声を信じるだけだった。

 

『そろそろだ…準備はいいな"χ≪カイ≫ "』

 

しばらくすると、少女が待っていた声が聞こえてきた。

 

「……」

 

少女は無言で腰のホルスターに刺さっている短剣を引き抜く。

 

やるべき事は分かっている。

 

敵を探し、ただ殺す。

 

なにも難しい事は無い。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

集といのりそして涯と研二の四人は、ダムから1キロも離れていない位置で様子を伺っていた。

 

『時間です』

 

インカムから四分儀の声がそう言い。

涯は三人に目配せをする。

 

「………」

 

集の頭の中は驚くほどクリアだった。

 

余計な雑音も思考も無く、かと言って緊張もしていない。

これは便利屋時代にも無かった感覚だった。

 

自分が涯を信頼している証なのかもしれないと集は涯の顔を見ながら思った。

 

「もう一度作戦を説明する。陽動部隊が敵を引きつけている間に、俺たち潜入部隊がコアルームに潜入。ルーカサイトを止める」

 

集は涯の言葉を聞きながらダムを見据える。

 

「……?」

 

その時、ダム周辺で動きがあるのが見えた。

 

「涯っ!なんだか様子がおかしい!」

 

集の言葉に涯は双眼鏡を覗き込んだ。

 

「また妙なのが出たな…」

 

ダムの内部から人間の身長より一回り大きな図体をした、大型の爬虫類の様なものが次々と外に踊り出ていた。

 

ただでさえ周囲から浮く存在感を放つシルエットだったが、そのトカゲが身に付ける盾と兜がさらに異質な雰囲気を振り撒いていた。

 

「…ツグミ あいつらの情報は分かるか?」

 

『だめ、どこのデータベースにも載って無いの』

 

「………」

 

一瞬集は悩んだ。

過去に何度かダム周辺を散策している奴らとは戦った事がある。

だから奴らの攻撃パターンや、弱点はほぼ頭に入っている。

この情報を伝えれば味方の被害は、かなり抑えられるだろう。

 

しかしそうなれば、未知の敵の正体をなぜ知っているのか という追求は、まず逃れられないだろう。

 

今後自分にどれほどの圧力がかかるか分からない。

 

「………涯、僕分かるよあいつらの事」

 

だがそれでも、集は彼らが情報を持ってなかったがためになすすべ無く殺されるところなど見たくなかった。

 

涯は背後の集の顔に振り向く。

 

「盾と兜を着けてる奴は" ブレイド "って言ってーー…」

 

対処出来るかうんねんの前に、知っているか知らないかの前には雲泥の差がある。

 

この情報だけで少しでも多くのメンバーが生き残れることを、集はひそかに願った。

 

 

 

 

「陽動部隊のお前たちはどんな状況に陥ろうとも、決して引くことを許さない。そして死ぬこともだ……」

 

集の説明を聞き終えた涯は陽動部隊に、そして集達に伝えた。

 

「この作戦は通過点にすぎない。葬儀社の真の勝利はさらに先にある。お前たちにはそれを見る資格がある…」

 

「………」

 

集といのりは無言でそんな涯の様子を見て。

研二は興味無さそうなのを隠そうともせず、その様子を見る。

 

「必ず生き残れ。 作戦開始 」

 

 

ーーーーーー

 

『少尉。十五分後に作戦開始だそうだ』

 

エンドレイヴに"搭乗"したダリルにローワン大尉はそう告げた。

ダリルは退院してばかりなので、ローワンとしてはかなり不安がよぎるがそんなことをダリルに伝えても、彼の機嫌を損ねるだけなのであえて言わない。

 

『絶対に許さない…僕のシュタイナーを…絶対に殺してやる。何十倍なん百倍にして借りを返した後で…、ぐちゃぐちゃにしてやる!』

 

そもそも、ここまで殺気に溢れたダリルと必要以上に言葉をかわすことそのものにかなり抵抗があった。

 

『ねえ大尉…、足元でさっきからチョロチョロしてる気色悪い奴らなんなの?』

 

ふとダリルから声がかけられローワンは慌てて返答する。

 

『ああ、新開発された生物兵器らしい…』

 

『ふうん、まっ 絶対に僕の邪魔だけにはならないようにしてよね…』

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

涯の号令と共に陽動部隊は一斉に動き出し、ダム周辺の森林のあちこちから爆音が鳴り響き、地面を揺らした。

 

集達 潜入部隊は涯の先導でその後ろから、いのり そして研二と、最後に集が一定の距離を保ちつつ進行を続けていた。

 

「……っ」

 

インカム越しに、そして遠方からメンバー達の悲鳴が聞こえる度に集は歯を強く食いしばった。

 

「ちょっと?助けに行こうなんて考えてないよね?」

 

前を走る研二が集にそう声をかけた。

 

「……まさか…、みんな僕達が無事潜入を成功させると信じて頑張ってるんだ……。ここで助けになんていったらみんなを裏切ることになる……」

 

彼らが自分達を信じている。

しかし、集が助けにはいれば、それは集自身が彼らを信じていないという意思表示に他ならない。

 

集はさらに強く歯を食いしばると、悲鳴と爆発音を振り払うように、さらに足に力を込めた。

 

バスッと木を断つ音が集の耳に響いた。

 

「!!」

 

集がいち早く音に気付き、走ったまま顔を横に向けると集達と並走する一体のブレイドの姿があった。

 

「ガイ!」

 

「っ!」

 

ブレイドに気が付いた いのり が涯に警告を発した。

 

集達はブレイドが飛ばした爪をジャンプとしゃがみで避ける。

 

怯み立ち止まるわけにはいかない。

 

「ほっ!」

 

研二がブレイドに応戦で銃を撃つ。

しかしそれも、ブレイドの手に持つ盾でいとも容易く防がれ、弾は盾の表面を擦り小さな火花を上げるだけだった。

 

「止まるな走れ!!」

 

叫ぶ涯の横でブレイドが地面へ潜る様子を、集ははっきり見た。

 

「下から来る!」

 

集が叫ぶと同時に、集の足元から大量の土埃を持ち上げてブレイドが飛び出した。

 

「くっ!」

 

爪を振り上げるブレイドを見た集は、慌てて自分の斜め上空にヴォイドエフェクトを展開させ爪を防ごうとする。

 

「ぐっ!?」

 

しかしブレイドの爪はあっさりヴォイドエフェクトを切り裂き、集の肩を浅く切った。

 

集は手に持ったサブマシンガンを、ブレイドの兜の隙間に押し当てた。

 

「デビルトリガー!!」

 

ほんの一瞬だけ集は悪魔の力を解放し、サブマシンガンの銃口に魔力を貯め放つ。

 

『ギイイッ』

 

集が施設でも使った"チャージショット"は眩い光を放ち、ブレイドの兜を容易く砕き下の頭を貫通した。

 

集はブレイドが怯んだ隙を見逃さず、弾が貫通した頭部と喉にサバイバルナイフを何度も突き立てた。

 

ブレイドは一言も発すること無く絶命し、地面へ崩れ落ちる。

しかし気を抜いてはいられない。

 

銃声を聞きつけて、さらに草木を切り分けながら追いすがるブレイド達のものと思われる音を集は捉えた。

 

集はナイフに着いたブレイドの血を振り飛ばした。

 

「急ごう!」

 

集達は銃身が歪んだ銃を捨てると、目的地に向けて再び全力疾走を始めた。

 

 

 

「こちらです」

 

森林を抜けた所に、大雲とその他数人のメンバーがダムへの侵入場所を確保して待っていた。

 

涯といのりはマンホールのような大きな侵入口に躊躇い無く飛び込んだ。

その後を研二が続き、集も飛び込もうとした時。

 

木の影から、メンバー達に向けて銃口を向けるアンチボディズの兵士の姿が見えた。

 

「危ない!!」

 

集は兵士の銃口の中にヴォイドエフェクトを展開させた。

 

「グア!?」

 

引き金を引いた兵士の弾は銃の中でデタラメに跳ね回り、兵士の脇腹を撃ち抜いた。

 

「ありがとうございます。さっ あなたはあなたの仕事を……」

 

大雲にそう告げられた集はうなづくと、縦穴の侵入口に飛び込んだ。

 

 

ーーーーーーーーー

 

「 敵襲ーー!!」

 

「葬儀社だ!!」

 

陽動部隊は警備の真っ只中に飛び込み、撹乱を続けていた。

 

『ああっ…これだよ これえ!!』

 

ダリルは突っ込んで来た葬儀社のトラックを蹴り飛ばし破壊させ、銃でタイヤを撃ち抜き横転させた。

 

ダリルの横目でブレイドが破損したトラックから葬儀社のメンバーを引きずり出しズタズタに引き裂いているのを尻目に、ダリルは高らかに笑い声を上げた。

 

『これこそ僕だ!これがダリル・ヤンだ!!』

 

エンドレイヴに乗る自分に抵抗する葬儀社を見て、ダリルは 哀れだと笑った。

ダリルの横でブレイド達も爪をミサイルの様に飛ばし、陽動部隊を追い詰めていく。

 

その時、ブレイドとダリルの周囲でたて続けに土煙が立ち上り、ブレイド達を撃ち抜いていく。

 

『!!』

 

『お楽しみの途中お邪魔するわよ!』

 

『……僕のシュタイナー……』

 

『アンタの子、乗り心地最高よ?まあもう私のだけどね…』

 

次の瞬間、ダリルはゴーチェとは思えないスピードで綾瀬のシュタイナーに接近した。

 

『なっ!早い』

 

『シュタイナー…!!僕のお!!』

 

ダリルは狂った様に叫びながら、シュタイナーの首を絞める。

 

『ううっぐう!』

 

シュタイナーはその感覚極めて忠実に綾瀬に伝え、そのせいで綾瀬は窒息しそうになる。

 

『返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ!!』

 

『まずい!このままじゃ綾ねえが!!』

 

シュタイナーの首をへし折る勢いで締め続けるゴーチェの鬼気迫る姿に、ツグミが声を上げる。

 

「背中がガラ空きなんだよ!」

 

アルゴがダリルのゴーチェにグレネードランチャーを撃ち込み、ゴーチェの背中が爆炎に包まれる。

 

ゴーチェの腕が緩んだ隙に綾瀬は、その腕を振りほどきゴーチェから距離をとる。

 

『ありがとうアルゴ助かったわ!』

 

『綾ねえ無理しないで!敵の戦力を分散させることが目的だから深追いする必要はないよ!!』

 

『…てっ、言われてもねえ…』

 

綾瀬の視線の先では、ダリルのゴーチェが早くも体勢を立て直し、再び綾瀬に追いすがる姿があった。

 

『向こうが追って来るんじゃ、どうしようもないわよ!!』

 

シュタイナーとゴーチェはお互いに銃口を向け合い、同時に引き金を引いた。

 

二体のエンドレイヴの銃弾は轟音を響かせ、周囲の木をなぎ払いながらお互いに飛来した。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「内部に潜入した。しばらく通信を切る。祈っててくれ…」

 

『りょーかい。早く帰ってきてね』

 

涯とツグミはそんな短い会話を済ませ、通話を切る。

 

集達はダムの最深部に向け、走り続けていた。

 

「………」

 

「集くうん。君化け物以外全然撃ってないね?」

 

「…君には、関係ないでしょ?」

 

「私語は慎め。コアはこの奥だ行くぞ」

 

涯がそう言った直後、集達の足元から立て続けに火花が走った。

 

「!!」

 

見ると通路の奥から、ブレイドを引き連れた兵士が走って来るのが見えた。

 

「………」

 

集は一際強く手に持つ銃のグリップを握る。

 

すると集の肩に優しく触れる手があった。

 

「…いのり?」

 

「シュウ…無理はだめ。涯 ここは私に……」

 

「……分かった。任せよう」

 

「っ!」

 

集は急激に自分を殴り着けたい衝動に駆られた。

 

安堵してしまったのだ。

いのりが代わりに罪を被ってくれることを。

自分の手を汚さずに済むことを。

 

「……いや…涯、僕がやるよ…」

 

「シュウ!?」

 

「へえー?」

 

いのりと涯が集の顔を見る。

研二は楽しそうに口笛を吹きながら、集をみる。

 

「僕が彼らを止める」

 

「………」

 

集は涯の返答を待たず、兵士とブレイド達の前に歩み出た。

 

「シュウ…」

 

「へえー。思ったより面白い奴じゃん…」

 

いのりは集の背中を不安そうに見つめることしか、出来なかった。

兵士とブレイド達は無防備で自分達に近付く少年を困惑したように見ていた。

 

「…家族とか、大切な人がいる人は…お願いだから逃げて下さい……」

 

それを聞いた兵士は滑稽とばかりに鼻で笑うと、集に向け一斉に銃弾を撃ち放った。

 

(そうだ…、今更逃げられるはずなかったんだ…)

 

集はすでに、過去に何度か人の命を自らの手で殺めている。

六本木でも集はあのグエンという男を含めた、数多の兵士を死に追いやった。

 

いやそもそももっと前から…。

集がダンテについて行くことを決めた、十年前のあの日からこうなるのが決まっていたのかもしれない。

 

ダンテだって他の人間を虐げる者には容赦が無かった。

とはいえ集の目の前で悪魔以外の命を奪うような真似はしなかった。

 

だがそれはダンテが他を圧倒するほどの実力があるからこそ出来る芸当だ。

 

ましてや集の今の立場はテロリストの一員。

 

(僕が目指したものは…。僕は‥‥一人でも多くのーー)

 

戦い続けようと誓った人間が、少女に‥いのりに罪を被ってもらおうなどとはあまりに虫のいい話だ。

もうあの悲劇を起こさないために、あの背中に追いつくために。

 

止まることは赦されない。

 

いのりが自分の代わりに泥を被るくらいなら、いくらでもその代わりになるべきだ。

 

集は兵士達を睨んだ。

 

集は緩やかに飛んで来る銃弾をヴォイドエフェクトを前面に展開して、弾き飛ばす。

 

「「「っ!!」」」

 

兵士の間で動揺がはしるのが見て取れた。

 

「今は……一番近くにいる人たちのために、チカラを使う…」

 

(…この選択だけは間違えてないよね…?……ダンテ……)

 

集は兵士の銃弾をエフェクトで弾きながら、兵士に発砲してけん制する。

 

「ぐあ!」「ぐお!」「があっ!」

 

火花の光でよく見えないが、兵士のうめき声は集の耳にも届いた。

「っ!!……ごめんなさい……」

 

「………」

 

集が無意識で呟いた蚊の鳴くような声量で発した声は、いのりの耳にはっきり届いた。

 

集は振りほどくように、一心不乱に引き金を引き続けた。

集が撃つたびに、エフェクトでまたたく火花が薄れる。

 

その隙間から、血を流し倒れる兵士の姿が見えた。

 

『ギイイ!!』

 

その瞬間ブレイドがけたたましい雄叫びを上げて、集に爪をミサイルのように飛ばした。

 

「!」

 

集はその爪を、兵士の銃弾同様にヴォイドエフェクトで止めようとした。

 

「いっ…ぎい!!?」

 

しかしブレイドの爪はあっさりエフェクトを貫通すると、集の身体に次々と突き刺さった。

 

「 シュウ!?」

 

「待ていのり、行くな!」

 

「いのり!大丈夫だから、涯と一緒にいて!!」

 

(どういうことだ…?)

 

いのりに叫びながら集は頭を回転させる。

 

(もしかして悪魔相手だと、ヴォイドのチカラが薄まるのか?)

 

そう考えれば、森林でブレイドが集のエフェクトをいとも簡単に切り裂いたのも頷ける。

 

(無効…じゃない。…効いてはいる…)

 

そうでなければ集の身体は、森林で真っ二つにされていただろうし、先ほどの爪も集の身体に何本も突き刺さっているのに致命傷にはなっていない。

 

弱冠だが、ブレイドの攻撃も防げている。

 

(だけどこのままじゃ…)

 

生き残りの兵士達もブレイドと共に集を打ち続ける。

集はエフェクトで弾を防ぎながら、ブレイドの爪を躱す。

 

「おい 集くん!」

 

研二に声を掛けられ、集は背後を振り向くと、足元に手榴弾が転がってきた。

 

「使いなよ」

 

「………」

 

集は手榴弾を拾い上げる。

 

そのまま真横に投げた。

研二の顔が不機嫌に歪むのが見える。

 

見縊るな。

僕はお前とは違う。ヘラヘラ笑って人を傷付けるお前とは違うんだ。

 

集は再び前方を睨む。

 

風前の灯火だった盾を何十枚も形成する。

 

集は中腰の姿勢に構え、兵士の手足を狙う。

 

「がっ!」

「ぐぅ!?」

 

『 ギ イイイイイィィぃ!!! 』

 

兵士がうずくまるのと同時に、

集の防壁をいつまでも破れない事に業を煮やしたのか、二体のブレイド達は爪ミサイルを止め。

 

牙と爪を剥き出しに、集に飛び掛かる。

 

「君らが来るのを待ってたたよ…」

 

その瞬間、ヴォイドエフェクトがブレイドの動きを封じ込めた。

しかしそれも一瞬。ブレイドが煩わしそうにもがくだけで、エフェクトはみるみる剥がれていく。

 

だが、それで十分。

 

集は銃をリロードすると、ブレイドの兜の隙間の眼に向けて発砲した。もう一体も同じ方法で弱点に向けて発砲する。

身悶えするブレイド達を尻目に、集は真横に捨てた手榴弾のピンを抜きブレイド達に放り投げた。

 

 

 

轟音と爆煙を背中に浴びながら、集はいのり達の潜んでる壁の真横へ滑り込んだ。

爆発の塵と煙に満ちた通路。

今なら他の兵士や悪魔達の目を盗んで進めるかもしれない。

 

「…シュウっ…!」

 

集は息を切らす自分に、心配そうに駆け寄るいのりの顔を見る。

 

「……いー」

 

『行こう』そう言いかけ気付いた。

 

「!!」

 

集の投げた手榴弾の爆煙の中に、何かが立っている。

 

集がそちらを振り向く。

 

「デビルトリガーっ!」

 

集の姿が一瞬にして銀髪の紅眼に変わる。

 

(今日二度目…いや三度目か、さっき一回使ったからもう一片も無駄には出来ない)

 

「シュウ!?」

 

「来るな!!」

 

「!!」

 

「どうした集っ!」

 

「おっ?おっ!なに?なにかあんの?」

 

煙が少しづつ晴れ、周囲の状況がはっきり見えるようになる。

 

「…っ」

 

煙が晴れる中に、例の二体のブレイドが負傷を負いながらも立ち上がっていた。

 

すんでのところで逃れたのだ。

 

集は自分の詰めの甘さに歯を食いしばって悔いた。

 

兵士の姿がない、退却したのだろう。

 

『ギ…ギギギ…』

 

ブレイドは悪魔でも軽傷では無い傷にもかかわらず、集に殺意を放ちつつ、ジリジリと距離をつめる。

 

「……」

 

そのさらに奥に少女が立っていた。

 

そして少女の顔には鳥の頭を模した仮面を被り、両手に短剣を握っていた。

 

「………っ!」

 

集は息を飲んだ。

 

少女は背丈から推察すると、六・七才くらいにしか見えなかったが、集は本能的に悟った。

 

一番危険なのは集に距離をつめるブレイドではなく、あの少女だと。

 

ふと少女の身体がわずかに沈むのが見えた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

『侵入者は目の前だ、χ≪カイ≫……』

 

少女の周りにいた傷付いた悪魔達を、声の主は下がらせた。

 

『いよいよだ。お前の力を見せてみろ…』

 

少女は黙って声からの命令を待つ。

 

 

『 侵入者を殺せχ≪カイ≫… 』

 

 

少女に逆らう" 理由 "も" 意思 "も無かった。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「っ!!」

 

少女が身体を沈めた直後、爆発的に前方へ飛び出し、地面を二度蹴っただけで数十メートルは離れていた集に、一瞬で接近した。

 

「っおお!!」

 

集は腰のベルトからナイフを抜くと、飛びかかる少女に何も考えず振り下ろした。

 

 

少女の短剣と集のナイフは空中でぶつかり合い、周囲を眩い火花で覆い尽くした。




本当はフロストやアサルトも、出そうと思ったんですけど。

今の集達では無理ゲーになるのでやめました。

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