ギルティクラウン~The Devil's Hearts~   作:すぱーだ

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ハッピーエンドを目指したいと思っております。
集といのりのイチャイチャ(死語)を見たいという方は、お楽しみに!

もちろんダンテやDMCお馴染みのキャラも、後あと登場させ集と一緒にヒャーハーさせる気でいるのでそれもお楽しみに!


それと短くなると言ったな……

あれは嘘だ。


第十二話


#12浮動~faith~

兵士は先ほどから巻き起こる、常軌を逸した光景を目の当たりにしても一切恐る事無く、テロリストの排除に尽力を注いでいた。

 

兵士の近くをスケアクロウとバジリスクが、先ほどまで走り回っていたが、新しい生物兵器が投下されたという報告を受けていた兵士はたいして慌てる事無く、自分の任務に集中している。

気味が悪い奴等だ と兵士はその生物兵器に不快感を抱く。兵士は味方のはずのもの達が視界に入るたびに、吐き気にも似た嫌悪感が胸の内側を支配する。

人間の血に刻まれた本能から来る認識を、兵士は雑念だと切り捨て。 兵士は広場を上階から覗き込む。

先ほどから兵士は自分の目を疑う光景ばかりだ。

広場の中央に位置する、噴水の周辺のものは軒並み空中に弄ばれている。

 

しかし兵士はそのさらに上空の二人の人影に目を奪われている。

その人影を中心に赤と銀の混ざった色をした光が、嵐の様に吹き荒れていた。

 

兵士はなぜか、その光に不思議な安心感を感じた。兵士は慌てて頭を振り、狙撃銃を光の中心に向けた。

スコープを覗き込んだ兵士の目には、光の中で銀髪と真紅の瞳の少年が、右手の剣を天に掲げて左手に少女を抱えている光景が写った。

あれがなんなのか分からないが、明らかに自分達にいい影響を与えるものでは無い。

 

兵士は少年のこめかみに狙いを定め、引き金に力を込める。

 

その時、兵士の背後から カチリッと撃鉄を持ち上げる音が聞こえ、兵士は慌てて背後に目を向けた。

背後には兵士の上官にあたる人物が立っており、兵士から思わず安堵の息が漏れる。

しかしその直後、彼の持っている銃の銃口が自分に向いていることに気が付いた。

 

「 邪魔をしないでいただきたい……。」

 

兵士が声を出す前に、嘘界は引き金を引いた。

 

嘘界は引き金を引く直前も兵士が床に崩れ落ちても、一切視線を送ること無く、上空の光に目を奪われている。

 

「 うつくしいイイイーーーー!!! 」

 

虚界は狂気じみた笑みで顔中を歪め、新しいオモチャを見つけた子供の様に歓声を上げた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

『 ホホハハハーーー!』

 

剣を上空に掲げた集に向け、さっそく一体のスケアクロウが踊りかかって来た。

 

集はスケアクロウが振り上げた刃ごと、真っ二つに胴を薙ぎ払った。黒い霧となって消えるスケアクロウから視線を外すと丁度その鼻先を、炎の砲弾が掠めていく。

集がそちらに目を向けると、バジリスク四体が無重力の中で集に狙いを定め、燃える頭部を撃ち出している。

 

バジリスクが続いて二発、三発と放った砲弾を集は身体をひねってかわす。集は剣を逆手に持ち替えると、刀身にチカラを込め始める。

 

バジリスク達が同時に四発の砲弾を撃ち出すのに、合わせて集も刀身を一気に解放し刃の様に鋭い衝撃波を放った。

赤いオーラの様な光を纏った、銀色の斬撃は四発の砲弾を飲み込み、バジリスクも斬撃の嵐に飲まれ木っ端微塵に吹き飛んだ。

 

集が足下を見下ろすと、悪魔達が集のところに集まりつつあり、エンドレイヴも集に銃口を向けていた。

エンドレイヴが放ったミサイルを、集は足下にある銀色の幾何学的な模様を空中と共に蹴り地面に向って急速に降下して避けると、剣を思いっきり振りかぶるり、集の元に群がる悪魔達に向けて投擲した。

 

剣は回転しながら悪魔達に吸い込まれる様に飛んでいき、次々と悪魔達を切り刻んでいった。

剣を放ち、素手になった集に、一体のスケアクロウが剣をすり抜け嬉々として集に襲いかかった。

集はスケアクロウを見ながら、黙って右手を月を掴もうとしているかの様に上に掲げ、手のひらを広げると…その手にブーメランの様に戻ってきた剣が収まった。

集は剣を強く握りしめて、上から下に振り下ろし兜割りでスケアクロウを縦真っ二つに斬り裂く。

『 ひょ…? 』

 

スケアクロウは何が起こったか分からない内に、黒い霧となって跡形も無く消滅した。

集はさらに紋様を蹴り、エンドレイヴもすれ違いざまに斬り裂いていく。広場の上空は真っ赤な爆炎で、覆い尽くされていく。

 

集は爆発の中を急降下で抜け出し、横で一列に重なるスケアクロウに向け再び剣を投擲した。

今度は剣は回転せず槍の様に、真っ直ぐスケアクロウに飛んで行き五体を壁に縫い止めた。

 

スケアクロウ達の動きを止めた集は、空中にジタバタ浮かぶ兵士のホルスターから銃を引き抜くと、弾丸に魔力を込める。

 

通常火器でこの距離から普通に撃っても、スケアクロウの表面で弾かれてしまい有効なダメージを与えられない。

もし普通の武器で悪魔を殺したかったら、グレネードランチャーの様な火力か、銃身の長いライフルくらいの貫通力が無ければ、まともに太刀打ちできない。

 

そこで集は弾と銃器の火力と貫通力を、魔力で無理矢理底上げする。何発もつか分からないし、どのくらいの威力かも分からないが、この場はやってみるしかない。

銃口から内部に赤い光が、収束する様に流れ入っていく。集はスケアクロウ達に向けて銃を撃った。

すまじい衝撃と共に放たれた銃弾は、彗星の様に赤い尾を引きながらスケアクロウの頭部に命中する。

弾丸はスケアクロウの頭部を貫通し、後ろでもがく二体目の頭部に着弾、さらに貫通して三体目の頭部に、四体五体と貫き、ついには五体目の背後の壁に大穴を空けた。

 

集は同じ様に銃弾に魔力を貯め、三発銃を撃った時に銃がメキメキ音を立て、四発目でついに銃はバラバラに破損してしまった。

集が撃った魔力の篭った銃弾は全てスケアクロウに命中して、スケアクロウ達の腕や頭部を吹き飛ばした。

集は目の前の熱で真っ赤に変色する銃の部品には、一切目をくれず、その中を通り抜けスケアクロウ達を縫い止める剣の柄を握り思いっきり引き抜き、その勢いを殺さずにその場で一回転して遠心力を乗せスケアクロウ達を横薙ぎで薙ぎ払う。

 

真っ二つになったスケアクロウ達は、たまらず黒い霧となって完全に消滅した。

 

「 っと!」

 

その時重力操作の効力が切れ、空中のあらゆるものが地面に吸い寄せられた。

集もエンドレイヴの残骸と共に地面に落下、周りでやかましく地面を打ち鳴らす残骸の中で、集はなんとか上手い具合に着地出来た。

 

「 終わった……のか…? ……ふう………。」

 

呟く集は地面に剣を突き立てると、先日と同様に剣は糸の様にほどけ、腕の中のいのりの中に戻っていく。ボンヤリとそれを眺めていた集は、胸を襲った強烈な痛みで顔を歪めた。

 

「 づうっ!なんだ…? 」

胸を抑えた集の手に、なにか当たる物があった。

なにかが胸から突き出ている…。見てみると胸にスケアクロウの刃物の破片の一部が突き出ていた。

 

魔力を解放した時、胸に突き刺さった刃が砕け散りその一部が集の身体に残ったのだ。

「 ……。」

 

集はしばらく考えた…普通ならこの傷は致命傷であるが……、今の自分からはダンテと同じ魔力を感じる…だったら…。

集は意を決して胸から突き出る果物ナイフほどのサイズになった刃を握りしめた。

刃を真っ赤に染める血が、ベットリと手を汚す。集はチカラを込めて引き抜こうとした。

 

その時、背後から気配と同時に殺気を感じた。今手元に武器は無い…この胸に潜り込む刃以外は。

 

『 危ない!! 』

 

集が刃を引き抜く直前、綾瀬の声が広場に響く。

綾瀬の機体は銃を構えるが射線上に集といのりがいるため撃つことが出来ない。

 

集の背後に忍び寄ったスケアクロウは、そこそこ距離がある集にジャンプして飛び掛かる。

集は引き抜いた刃を、床に叩きつける様に振り下ろし思いっきり手を返した。

刃は地面には落ちず、真後ろから飛びかかるスケアクロウの頭に突き刺さった。

スケアクロウは空中から地面に崩れ落ちる。

 

「 君のだろ?返しとくから大事にしなよ…。」

 

集は飛びかかって来たスケアクロウの刃が砕け、小刀ほどのサイズになっているのを見て集はそう言葉をかけた。

集はいのりをしっかり抱き上げようとして、血まみれの手を見て、その手を自分の服のまだ白い部分で拭き取ると、改めていのりを抱き上げ施設から出るため歩き出す。

 

途中拘束衣で包まれた城戸研二を見つけ、一緒に縛り付けられたキャスター付きのベッドを引きながら歩き出した。

 

ふと足下の水たまりに目が止まる。おそらく噴水から浮かび上がり、無重力が切れた時にここに落ちたのだろう。

 

その水たまりに写る自分の姿は、銀髪と真紅の瞳をしていた…しかしそれが幻だったかの様に、すぐに本来の自分の髪と瞳の色に戻る。

 

「………」

 

集はしばらくの間、水たまりを眺めると、視線を施設からの出口へ移しいのりを抱き上げ、ベッドを引きながら再び歩き出した。

 

 

ーーーーーーーーー

 

ダ ン テ エ エ エ

 

『 えっ?なに? 』

 

綾瀬は突然聞こえてきた声に驚き、辺りを見渡すがなにも無い。

 

『 どうしたの綾ねえ? 』

 

ツグミが綾瀬の様子に気付き、声を掛ける。

 

( ツグミには聞こえてない…どういう事?)

 

ダ ン テ エ エ エ

 

声は確かに蚊の鳴くような声ではあるが、胸の奥まで凍りそうな程恐ろしげな声だった。

綾瀬はエンドレイヴ越しでも、確かにその存在を感じ取る事が出来た。

 

全身から氷水に浸かったかの様に寒気が立つ。

 

( 怖い…なんなの…?)

 

綾瀬はわけもわからず両肩を抱え、震えた。

 

『 あっ綾ねえどうしたの!?』

 

ド コ だ ・・・

 

綾瀬の耳にツグミの声は届かない。

見られている…声の主は誰かを探している。

 

イ ナ イ 、 奴 は コ コ に は イ ナ イ ・・・

 

何処かから見ていた、なにかの気配が遠ざかっていく。

それでも、綾瀬の心臓を掴まれたかの様な寒気と震えはしばらく止まらなかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

集は何処からともなく現れたふゅーねるの先導に従い、進むとそこは港だった。

 

港の船の上から照らされたライトに集は目を細め、そちらに目を向けると、涯がいた。

 

「 城戸ならここにいるよ…。」

 

集は背後のベッドを示しながら言った。

「 そうか、綾瀬回収しろ。」

 

『 ……はっはい…。』

 

「 ………っ?」

 

涯の通信機から漏れた綾瀬の声に、集は違和感をおぼえた。さっきまでエンドレイヴ越しで話していた彼女はもっと強気で、初めて交戦したはずの悪魔にも冷静に対処していたはずだった。しかし今の彼女の声は、なにかに怯えている様な気がした。

 

しかし涯と綾瀬の会話はそれだけで終わってしまい、集にはそれ以上詳細を伺い知ることは出来なかった。

 

「でっ?これもまた全部あなたの思惑通りなんでしょ?」

 

集の言葉に涯は笑みを浮かべる。

 

「ふっ、さてどれの事を言っているんだ?」

 

「わざわざ言わせるの?あんた相当性格歪んでるよ?」

 

「なに自覚はあるさ…」

 

涯はまるでこの会話を楽しんでいる様に、集には感じた。それがますます集の苛立ちを募らせる。

 

「………まあいいか、第一に僕は今回の件でテロリストの一員として登録されたのはほぼ確定的……、その結果君らの仲間に入りざるおえなくなった」

 

「自分の立場は理解できているのか…、好都合だわざわざ脅す手間が省ける」

 

涯の言葉を無視して集は話を続ける。

集は昔から、こういう人を喰った様な態度をとる人種がどうも好きになれない。

 

「……別に、後のは僕のこじつけだよ…。…君は僕に学校の生徒のヴォイドをあらかた確認させることに成功した……後々の作戦に利用する気で居るんだろ…? 」

 

「……まさか、お前がさっきから怒っているのは、その結論に考えが至ったからか? 」

 

「……………」

 

集は涯を睨んだまま答えない。

 

「……まあ、俺の言動や行動をどう解釈するかはお前の自由だ。しかし俺はまだお前の口から重要な事を確認できていない…」

 

集と涯はお互いに、睨む様な鋭い目つきで視線を交差させる。

 

「君が俺達のところへ来るか、それとも戻るか…。はっきり言葉にして言ってもらおう。」

 

「……君を信じていいの? 」

 

「 信じろ 、すべて俺に預け 俺の命令に従え 。 」

 

集は涯を見ながら、ポケットの中にあるボールペンに手を触れた。

 

嘘界から渡されたボールペン…あの時はいのりの名を出され思わず受け取ってしまったが、今頭が冷めた集は今後の事を考える。

 

( スカイタワー爆破の事件の犯人が城戸研二だという、嘘界の言葉が本当かどうかは分からない。だけど、全てが嘘とも思えない……。)

 

集の脳裏に事件当時、親戚や友人が死んだ又は行方不明だと泣く同級生やクラスメイトを何人も見た。

巻き込まれた生徒自体いなかったものの、当時集はこんな身近で久方ぶりに何人もの人の死に遭遇したのはかなりショックだった。

( またあの時と同じ事が起こるのなら、僕は……。)

 

集はポケットの中で、ボールペンを強く握った。

 

嘘界はこのボールペンは発信機だと言っていたが、もしそれが本当でもボールペンを押して飛んでくるのは、兵隊だけでは済まない事くらい確信出来る。

 

おそらくこれを押した時には、涯だけで無く集もいのりも無事では済まないのは想像に難くない。

 

だがそれでも集は、もし同じ様に普通の一般市民が作戦に巻き込まれる事や……もしくは自分の近しい人間が死ぬ様な事があれば…躊躇い無くボタンを押すだろうという事が自分でもよく分かる。

 

たとえその結果、今よりひどい仕打ちが国民に待ち受けているとしても、集はその場その場で冷静に思考出来るほど物分りは良くない…そしてその自覚もある。

 

集は見極める必要がある、涯の目的を…この先の未来を…。

 

「 分かったよ……。」

 

だからもし…その時が来たら……。

 

「 一緒に行くよ。」

 

腕の中の少女だけは、何処か遠くにいて欲しい…。

 

集の頭の中では、そんな身勝手な思考が渦巻いていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「うわ…、広……ここが葬儀社のアジト…」

 

集の言葉に涯は そうだ と短く返すと、扉を開け作戦会議室に入っていく。

集は慌ててその後を追い、いのりもその後を着いて行く。

会議室の中は図書館の様に本棚で埋め尽くされ、そこが三つのフロアに分かれており、中央のモニターを囲んでいた。

各フロアにいるメンバー達から、全身血まみれの集を怪訝と好奇の視線を送ってくる。

集はその視線を受け、落ち着かない気分になって来る。

 

「城戸は? 」

 

集がモジモジしている横で、涯が四分儀に声をかける。

 

「まだ眠っています。ヴォイドを使用されたショックか目覚める気配はありません。」

 

「 …そうか。」

 

涯が フラ と足取りが乱れる。

 

「 …!」

 

「 ……。」

 

いのりと四分儀だけが、涯の額から大量の汗が流れている事に気付く。

集はメンバーの中に、小学生ほどの少年も混ざっているのに気付き驚いていた。

 

「改めて紹介しよう…、“桜満集 ”ヴォイドゲノムの持ち主だ」

 

涯の言葉に集は慌てて、メンバーに向かって頭を下げる。

「今後は集を作戦の中核に据えていく。分からない事があるようなら色々教えてもらえ」

 

涯がメンバーから集に視線を移して言う。

 

「桜満集の加入と城戸研二の奪還により、" ルーカサイト " の攻略が可能になった。いよいよ実行に移す」

 

( ルーカサイト…? )

 

集の頭の中の疑問に涯が答えるはずは無く、涯はメンバーに" 各自の端末に作戦案を送るから、三日で全て頭に叩き込め。" とだけ伝えた。

 

「綾瀬」

 

涯は扉の近くにいる、猫ミミ少女の横にいる車椅子の少女に声をかけた。

 

「は はい!」

 

( ?…この声って……。)

 

集は返事をする綾瀬の声に聞き覚えがあった。

 

( そうか、この人があのエンドレイヴの…!)

 

車椅子のタイヤを漕ぎ、涯の元にやって来る綾瀬を見ながら集は心当たりに思い至った。

 

「こいつは一般人上がりだ。お前が基礎訓練を施してやれ」

 

「私が…ですか?」

 

「お前がいいと思うまで鍛えてやれ」

 

涯はそう言うと階段を上がり、通路へ消えて行った。

 

「……あの…」

 

まだなにか言いたそうに、涯の消えて行った通路を見る綾瀬に集は申し訳なさそうに声をかけた。

 

「あのエンドレイヴのパイロットの方ですよね…あの時は本当にありがとうございます」

 

ポカン とこっちを見る綾瀬に集は深々と頭を下げた。それを見た綾瀬は顔を緩めた。

 

「 あら?よく分かったじゃない。」

 

「 ええ、まさか車椅子に乗っている事までは予想出来ませんでしたけど…。」

 

あまり気を使うと逆に失礼かな? そう考えた集はできるだけ無遠慮に接してみる事にしたのだが…。

集の言葉に一瞬、綾瀬の目に剣呑な光が宿る。

 

( あれ…もしかして地雷踏んだ?)

 

綾瀬はすぐ元の表情に戻り、笑顔を見せたが剣呑な光は今だ目の奥に宿っているように集には見えた。

 

「篠宮綾瀬よ、よろしくね」

 

綾瀬は笑顔のまま集に手を差し出した。

周りからクスクスと含み笑いが聞こえてくる。集にはその手が何かの起爆装置に見えた。

 

綾瀬が笑顔のまま集に自分の手を近付ける。早く手を取れと言っている様にも見えた。

 

「えーと、桜満集です…よろしく……」

 

集は意を決して、綾瀬の差し出す手を取ろうとした。その瞬間綾瀬は集の手首を掴み、車椅子を巧みに操り、集を空中に放り投げた。

 

「 っ…うおお!? 」

 

嫌な予感はしていた集も、完全に不意をつかれ慌てて受け身を取ろうとした。

 

( ……あれ? )

 

何故か身体が動かず、集は背中から床に放り投げられ咳き込んだ。集が不思議に思いながら、身体を起こそうとしたが身体が鉛でも入っているかの様に重く、全く思い通りに動かせない。

 

「ーーー車椅子は私の個性みたいなものよ、甘く見ないで。」

 

集を放り投げた綾瀬が、フンッ とそっぽを向く。

しかし集には綾瀬の言葉を聞いている余裕は全く無かった。

 

「 シュウ、 立てる? 」

 

いのりが集に手を差し伸べて来る。

 

集がお礼を言って、その手を取ろうとしたが…、手も口も全く動かせなく、声も出ない。

 

「…ちょっと?変なフリはやめなさいちゃんと手加減したんだから…」

 

綾瀬もさすがに心配になって、集に声をかける。

その間、集の視界は全て虹色に歪む。色を脳がしっかり認識出来ていないかのようで、三半規管の挙動が不自然に歪む。

集の天と地がグニャグニャに歪み、方向感覚まで狂い出す。

「 っ!!シュウ!? 」

 

集がいのりに顔を向けようとした時、鼻の中からなにかがポタポタ溢れ出てきた。

嗅覚も味覚も狂い始めた集が、それが血だと認識出来るまでかなりの時間を要した。

辺りが騒然となるのが分かったのを最後に、集の意識は暗闇へ落ちていった。

 

 




戦闘シーンもっとスタイリッシュに書けるようになりたい!切実に!!



さて便利屋時代でもまともに魔力を使え無かった集…。

しかし集にとって、魔力を操るイコール魔剣士のチカラを使うわけですから。
人の身でそんな事をして、なにも無いわけ無いわけで……

って いうかアーカムみたいにならなくて、
良かったね集君……

……いや良くは無いか……。


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