ギルティクラウン~The Devil's Hearts~   作:すぱーだ

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お気に入り登録数60到達するとは思って無くてビックリしました。

需要あるかな?って思いながら始めたのにこんなに見てくれる方がいて、本当に嬉しいです。

がんばって完結までもって行くのでこれからも応援よろしくお願いします。


第十一話です


#11宿敵~devil~

 

 

「 …ああっもう、走りづらい!!」

 

集はそう叫ぶと走りながら顔面の絆創膏や包帯を剥ぎ取った。

集はそれを廊下に投げ捨てると、左腕を吊るす布も首から外し放り投げた。

 

集は自分が幽閉されていた独房を目指していた。

 

涯の代わりに、ツグミがいのりは自分のいた独房の場所をダウンロードしていると言ったのだ。

それを聞いた集は、入って来た警備員を突き飛ばしここまで走って来た。

 

集は両手を大きく振り全力で走っていた。

左腕から響くような痛みが頭を襲うが、走ること自体にたいして支障は無い。

 

走りづらいこの施設の靴はとっくに脱ぎ捨て、集は裸足で冷たい廊下の床を蹴っていた。

 

途中で出くわした兵隊は、蹴りと体当たりで気絶させた。

 

「ーーよしっ、ここを登れば……。」

 

自分のいた独房まであと少し、そこまで行ければいのりと合流出来る。

集は、はやる気持ちを抑えることが出来なかった。

 

集の向かう階段のすぐ横の通路から、突然飛び出してきたエンドレイヴに集は反応が遅れた。

 

「 なっ!くそこんなところで……。」

 

集はここをどう抜けるか考えていた時……。

 

『ーーあんたっ!いのりに何したの!! 』

 

エンドレイヴの外部音声から少女の怒りに満ちた声が響いた。

 

( …っ!この声って葬儀社の……。)

 

集は聞き覚えのある声に安堵し声をかけた。

 

「 丁度良かった!もし時間があれば僕をいのりのとこまで運んでもらえますか!! 」

 

「 っ!!……ああもう作戦メチャクチャにしてくれちゃって…こっちは初めっからあんたを連れに来たのよ! 」

 

集はそれを聞くと、集を摘み上げようと手を伸ばす機体の手を足場にして機体の肩に飛び移った。

 

「 っで、さっきのいのりがどうのってどういう事?」

 

集の問いに機体の少女は、さらに大きな声で怒鳴り散らす。

 

『 じゃなきゃ、あの子が命令に逆らうわけ無いでしょ!!しかもよりによって涯の命令を……!!』

言いながら機体は走り出す。

 

敵の機体からの砲撃をかわしながら猛スピードで目的地周辺を目指す…。

 

「 …………っ?」

 

集が彼女の言っている事を整理しようとした時…、機体の進行方向に何か妙な影が見えた。

 

黒い影のようなものが、進行途中にある扉の閉まった部屋に入り込んでいた……。

 

まるで地面に撒かれた墨のような影は、扉の隙間に際限無く湧き、入り込んでいた。

 

「 ……あれって…。」

 

あそこには確かシーツや毛布や布団などが置いてある、リネン室だったはず……、っと集は自分の記憶を参考に部屋の詳細を確認した。

 

集にはその影に見覚えがあった。

 

あの異形の右手を持つ心優しい銀髪の青年と出会った、フォルトゥナという都市でも………。

 

「ーーーっ!!だめだ止まれ!! 」

 

集は頭の中にある、生きるための生存本能からの警告に従い機体の少女に叫んだ。

 

『ーーはあっ!? 』

 

彼女は集の突然の警告に驚きはしたが、すでに機体はリネン室の真横に到達していた。

 

その時リネン室の扉周辺の壁が、まるでなにかがとんでもない怪力で壁を押しているかの様に不自然に歪んだ。

 

綾瀬はヒビが入る間も無く、崩壊した壁に驚いたが……その中から飛び出してきたもの達に声も上げるのも忘れた。

 

大量の布で身体を覆った奇妙な人間が、腕と同化している刃物を振り上げ襲いかかって来たのだ。

 

しかし機体の速さには追い付かず、刃物は空を切る。

 

床に突き刺さった刃物を抜こうとする奇妙な人間の後ろから、同じ風貌をしたもの達が押し寄せる様に廊下に殺到した。

『 ……なによあれ…。』

 

人の形をしていたが…集団の一体一体が人間とは思えないほど気味の悪い動きをしながら、綾瀬の機体に追いすがる。

その光景に綾瀬は血の気が引くのを感じた。

 

「 ………悪魔だよ…。」

 

『 はっ?あくま…?あんた何言ってんの……。』

 

一瞬っ真剣な声で言う集の言葉を笑い飛ばそうとした綾瀬だったが、後ろの連中を親の仇の様に見る眼に、綾瀬は冗談を言っている様に見えなかった。

 

 

『 ほーーひゃははははは!』

 

機体に追い付いた一体が、飛び掛かってきた。

 

五年ぶりに集の前に姿を現した " 宿敵 " は楽しそうな笑い声を上げながらその凶刃を集に突き立てんと振り下ろした…………。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

夜空の風を浴びながら、建物の上を駆け抜ける…。

 

「 まってて…、シュウ…。」

 

いのりはもう何度目かわからない、集への言葉を呟いた…。

 

いのりの周囲を無数の弾丸が飛び交う。

それを気にも止めず走り続けた。

 

少年が待つはずの場所へ……。

 

集の笑顔がいのりの頭から離れなかった。

 

(……もうすぐ会える…。)

 

さっきまで感じていた、胸の痛みと寒さはいつのまにか消えていた…。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

飛び掛かってきた悪魔 スケアクロウ を綾瀬は殴り飛ばした。

 

『にょげっ!?』

 

そんな声を上げながらスケアクロウは一、床を跳ね壁に激突して黒いものを噴き出しながら、まるで空気が抜けたかの様にしぼんでいった。

 

『 なによ、あいつら不気味な奴ら!』

 

綾瀬はあまりにも手応えが軽く、まるで風船の様に吹き飛びしぼんでいくスケアクロウを見てそう言った。

 

「 あいつらは" スケアクロウ "っていって、布の中にホコリとか小さい物に乗り憑った悪魔とか魔界の蟲とかが大量に入り込んで産まれる悪魔なんだよ!」

 

そう言う集の視線の先で、先程綾瀬が吹き飛ばしたスケアクロウに再び大量の黒いシミのようなものが入り込み、何事もなかったかの様に笑い声を上げながらヒョコヒョコと酔っ払いの様に立ち上がる姿があった。

 

『だからっ!悪魔とかなに言ってんのよあんた!! 』

 

綾瀬はまるで出来の悪い悪夢の中にいる気分がした。

 

『綾ねえっ!敵の追撃来るよ!』

 

ツグミの叫びと同時に機体の真横で爆炎が砂塵を撒き散らしながら立ち昇った。

『っく!』

 

綾瀬はさらにスピードを上げ、それをかいくぐった。

 

『 ちゃんと掴まってなさいよ!』

 

「今さら言わないでよ!」

 

綾瀬にそう返した集がもう一度後方を見て、また綾瀬に声を上げた。

 

「まずい!そこ早く曲がって!!」

 

『どっちに!?』

 

「いいから曲がって!!」

 

綾瀬が右側の通路に抜けたほぼ同時に、先程までいた通路が今までとは比べ物にならないほど巨大な炎に包まれた。

「 くそっ、あいつらまで!」

 

そう呻く集の視線の先で、蹄の様な足音が聞こえた時…その足音の主達が姿を現した。

 

『 なに今度は…犬?』

綾瀬の言う通りそのシルエットは犬としか表現のしようがなかった。

しかし犬とは決定的に違う…。

 

燃えているのだ。

 頭と手足が炎に包まれ、胴体を鉄の筒に覆われており、剥き出しになり炎に包まれた頭や手足と尾は骨だけになっており、それでも生物感のある動きで集達に迫るその姿は、地獄で罪人を追い回す猟犬の様だった。

 

『あんたっ、あれの事も知ってるとか言わないよね!』

 

「気を付けて!あいつらは" 頭を撃ってくる " !!」

 

集が言い終わる頃に、炎の犬の悪魔" バジリスク "は炎に包まれた頭部を集達目掛け砲撃して来た。

 

『っ!!』

 

綾瀬はその"弾丸"を紙一重でかわし、その猟犬達に視線を向け再び驚愕した。

 

撃ち出し弾丸となった頭部が、ボンッという激しい炎と共に再度首の先に生えてきたのだ。

 

『 冗談でしょ…。』

 

「バジリスクっていう悪魔だ…ああやって無限に頭を発射してくる気を付けて!」

 

(ーーだけどあれは人の手で作られた、" 人工悪魔 "だ。スケアクロウはともかく…決して自然に現れる様な悪魔じゃない…。)

集がバジリスクの名称を知ったのも、"製造者"の資料に目を通したからだ。

 

見るとバジリスクの後ろから、無数のGHQの機体が後に続いて来た…。

 

「 ーーーーっ!」

 

何故ここに人造悪魔がいるかなど分かりきっていた…。

 

ーー造り…。

自分達を狩る兵器としてここに放った者がいるのだ。

 

集は奥歯から音が出る程、食いしばった。

集もこの日が来る事を覚悟していた。

しかし、その後ろに立つ強大過ぎる影に…、自然と集の手に力がこもり握り拳を作った。

 

『もうっ厄日だわ!』

 

綾瀬はそう叫ぶと、走行しながら背後を振り向き銃を発砲した。

GHQの機体は銃弾を受け爆発したが、三体のバジリスクは床と壁と天井を蹴り、器用に銃弾を避け逆に撃ち返して来る。

 

『ちょっと無茶するからもっとしっかり掴まってなさいよ!』

 

言うが早いか機体は通路の手すりを破壊して下の広場に落下した。

 

ビルの様にそびえ立つ、この建造物のほぼ中央に位置する広場から上を見上げれば各階が吹き抜けになっており…。

ガラス張りの天井から空を見ることが出来る。

 

しかし機体の肩から飛び降り、上を見上げた集の視界に天井は入らなかった。

 

「くそっ……袋の鼠か…。」

 

吹き抜けになった各階から、GHQの機体にバジリスクそれにスケアクロウが飛び降りて来た。

もちろん集達が立つこの階からも悪魔と機体が入り乱れ殺到する。

 

『ーーくっ! 』

 

綾瀬が向かって来た機体と組み合った。

ガリガリと足元の床を砕く。

 

『 ねえあんたあの変な奴らの事、どうしてそんなに詳しいの!? 』

 

「 その話…今じゃなくちゃダメ?」

 

綾瀬の問いに集は皮肉たっぷりに返す…。

集は自分に向かって来たスケアクロウの刃を手すりの破片で受け流す。

 

『…ああ、もう倒し方だけでいいから教えなさい!』

 

綾瀬は機体の胴体に銃口を押し付け撃つ…。

エンドレイヴの胴体は二つに離れ、床に崩れ落ちる。

 

集はガラ空きになったスケアクロウの胴体に蹴りを入れる。

 

「 撃って!!大きな損傷を与えれば殺せる。」

 

集の蹴りはスケアクロウにはたいして効き目は無く、若干フラつかせただけだった。

 

『 じゃあどいてなさい !!』

 

「うわっ、ちょっと!」

 

集が慌ててその場を飛び退くと、床とスケアクロウの身体のあちこちに巨大な穴が空いた。当然、集が先ほどまで立っていた場所にも銃弾がいくつもの大穴を作り出した。

 

「 ………。」

 

集が綾瀬を恨めしそうに睨んだ。

 

『ほらっ!次来るわよボケっとしない!!』

 

綾瀬はそんな集に構わず叱咤をかます。

 

周りを見れば数体のエンドレイヴに混じり、大量の悪魔の姿があった。

今はまだ…スケアクロウとバジリスクしか見当たらないが、このままだと次に何が投下されるか分かったものでは無い。

 

その時集達の頭上にある連絡用通路が爆発した。

 

「 っ!!」

 

集が驚いて上を見上げると…。

誰かが呻き声を上げながら噴水に落ちて来た。

噴水から水飛沫が上がる。

 

「 んーんー!!」

 

噴水から顔を上げたのは猿轡を付けている、集とほぼ同年齢の少年が集を見て呻き声を上げた。

集は少し上の階を見上げる…。涯が集を見下ろしていた。

分かっているだろう? 集にはそう言っている様に見えた。

 

噴水にいる少年の目を見る…。

 

( あれが木戸研二…? )

 

集の足元から光が浮かび上がる。ここまで何度も感じたあの感覚だった。

 

「 …っ!」

 

集は駆け出し、研二の胸元に右手を突き出した。いつも通り集の右手は光を発しながら、身体の中に潜り込んで行く…。

 

「 っうう!」

 

研二はくぐもった声を上げる…。集が腕を引き抜くと銀色の結晶が弾け、形を造り出した。

 

「 ……銃…なのか…? 」

 

作り出された物体は、確かに引き金と銃口が付いていたが銃口が妙に広く、銃身が短い無骨な造形だった。

引き抜いた銃を眺めていた集は、突如背後からの殺気に振り向いた。

 

スケアクロウが飛びかかって来るのを見た集は、研二を噴水から引きずり出しながら転がる様に刃を避けた。

集は振り返りざまスケアクロウに銃口を向け、引き金を抜いた。

 

「 あれ……? 」

 

何も起こらなかった。銃口は沈黙したまま光も音も無かった…と思いきや銃口からかすかに緩やかに光が漏れ始めた。

 

「 ーーっだ!?」

 

突然衝撃が襲い集は後ろにつんのめった。衝撃と共に銃口から放たれた弾は、再び向き直ったスケアクロウの腹の真ん中に命中し、スケアクロウをシャボン玉の様なもの中に閉じ込めた。

スケアクロウを閉じ込めたシャボン玉は、そのままフワフワと宙を舞いさらに上へ昇って行った。

 

「 そうか!この銃の能力って……。」

 

集は綾瀬に襲いかかっていたGHQの機体に狙いを付け、引き金を引いた。

銃から小さい光弾が放たれ、機体に命中するとその機体もシャボン玉の様なもので包まれ…空中に浮かんでいった。撃つ度に左腕に激痛が走るが、気にしていられなかった…。

 

集は立て続けに周囲の悪魔と機体を次々と空中に拘束する。

 

この" 銃 "のヴォイドの能力は、重力操作。

一撃でエンドレイヴを撃退出来る手段の無い集にはちょうどいい武器だ。

 

…しかし、

 

『 くっ…数が……。』

 

「 さばき切れない…多すぎる…」

 

集と綾瀬はお互いに背中を合わせ、周囲の敵と対峙する…。

悪魔とGHQの機体はジリジリと、まるで獲物を追い詰める狩人の様に距離を詰めて来る。集がスケアクロウとバジリスクが数体かたまっているところに纏めて浮かそうと銃を向けるが、中断せざるおえなかった。

 

『武器を捨て投降しろ…』

 

集が引き金を引く前にGHQの機体が、集に銃口を向け警告した。

集は歯を食いしばった…。

 

( くそっ、ここまでか…? )

 

集が諦めて銃から手を離そうとした時…。

 

「 シュウーーーー!! 」

 

集達の頭上から、少女の声が聞こえた…。

 

「 いのりっ!? 」

 

紛れもなくいのりの声だった。集が頭上を見上げると…。

いのりがガラス張りの天井から落下するところだった。赤い服が風を受けて上に向かってたなびく…。

 

『「 なっ!? 」』

 

集と綾瀬が同時に声を上げる。いくらいのりが並外れた身体能力を持っていても、高層ビルとたいして変わらないあの高さから落ちればまず助からない。

 

集はそこまで頭が回る前に、噴水に向かって駆け出した。

 

『 おい待て!』

 

GHQの機体は集に発砲しようとしたが、綾瀬が腕を掴みそれを阻止した。

 

集はそれには目もくれず…銃を足元に向けた。

 

「 まにあえええええ!! 」

 

銃口から…今までとは比べ物にならないほど巨大なシャボン玉が、集も綾瀬の機体も、周囲のGHQの兵隊やエンドレイヴ、悪魔達をも包み込み、広場の噴水の水も巨大な水滴となり全ての物を空中に持ち上げた。

 

集は水滴と噴水を蹴って、空中に飛び上がった。

 

いのりはシャボン玉の中に入った途端に、重力操作の恩恵を受けて減速し、風船の様に空中にとどまった。

 

「 いのりっ! 」

 

「 シュウ……。」

 

集といのりはお互いの顔を見ると、百年来の再会のような気分に胸が熱くなり、破顔し微笑み合った。

 

「 ……いのり…僕は…ーー 」

 

集がいのりに何かを言ようとした瞬間…。

 

ーー ボキッという音が集の身体から鳴ったと思った瞬間、集の胸から心臓を貫き巨大な刃が突き出した。

 

集が激痛に耐えながら背後を見ると、スケアクロウが集の背中から心臓を貫いていた。

 

「 ……え………? 」

 

前方にいるいのりから声が漏れる。

 

集は喉に溜まった液体を、息苦しさに耐え切れず吐き出した。

 

「 …っか…は…。」

 

喉に溜まった液体が血であった事に、集は吐き出して初めて気が付いた。考えてみれば当然だ。刃は心臓を貫き、背骨を砕くだけではなく、肺も一緒に切り裂いているのだから。

 

集は冷静にそんな事を考えていた。

 

ふと、いのりに視線を戻すと、いのりの背後からさらに二体のスケアクロウが迫っているのが見えた。

スケアクロウが集ではなく、いのりを狙っているのは明白だった…。

( そんなのダメだ!)

 

いのりが自分を助けに来て、犠牲になるなんて耐えられ無い……。

 

集の視界が、真っ赤に染まる……。

 

六本木で撃たれた片足が、一瞬で完治した時と同じ様に、集は身体からチカラが湧き上がるのを感じた。

 

その時、何体ものスケアクロウが集の周りから襲いかかり、集をいくつもの刃で串刺しにした。

 

飛び散った血の雫が、いのりの頬を赤く染める…。

いのりは集の胸から突き出る、血で真っ赤に染まった刃と胸と口から血を吹き出す集に何度も目を動かした。いのりはようやく状況が理解できた。

 

「 ……シュウ…うそ………。」

 

理解してもなお、いのりは目の前の光景が信じられなかった。背後から迫るスケアクロウに、いのりはまだ気が付かない。

 

「 いのりっ!後ろだ!!」

 

 涯の警告はいのりの耳に届かない。

 

「 シュウーーーーー!!! 」

 

涙が溢れさせるいのりの背後で、スケアクロウが腕と同化した刃をいのりに振り下ろした。

 

その瞬間、集を中心に莫大な圧力となったエネルギーが解放され、空間に嵐と見間違う程凄まじいチカラの奔流が空間を支配した…。

 

集を周りから貫いていたスケアクロウ達も、爆発的な圧力に耐え切れず投げ出される。

 

「 ーーきゃあっ! 」

 

いのりもそれに巻き込まれ、押し流されそうになった瞬間、いのりは左腕を掴まれて驚きいのりは眼を開けると、集が吹き飛ばされそうになったいのりの腕を、左手で掴んでいた…。

 しかしいのりは自分の腕を掴んだのが、集だと一瞬気が付かなかった。

 

集の髪の色が、ほぼ全て白銀に染まっていたのだ。

 

「 ……いのり…」

 

目を見開いて呆然と集を見つめるいのりに、集が声をかけ顔を上げた。

集の瞳の色が、血の様に赤い真紅に変わっていた。集は血まみれの身体で言葉を続けた。

 

「 ……君と…、ずっと一緒にいて…いいかな……? 」

 

集は自分が出した衝撃波で、飛ばされるいのりに引っ張られる形でいのりと一緒にさらに高く宙を舞っている。

まるで妖精が手を繋ぎくるくる回って踊る様に、集といのりは空中をゆっくり回っていた。

「 ……うん…」

 

いのりは笑顔を浮かべると、小さく頷いた。

 

「…ありがとう…。」

 

集も笑顔を浮かべると、二人の周囲が輝き出す。

集は右手をいのりの体内に差し込む…。

 

「ああっ……! 」

 

いのりが切なげな声を上げる。

 

集がいのりの剣を抜いた瞬間、周囲の空間を赤い光を纏った銀色の光が弾け飛んだ。

 

 

 

 




どこで切ろうか迷ってたけど、戦闘シーンに集中したかったので恒例行事が出たところで今回は終わりにさせていただきます。

おめでとう集っ!

これで君も立派なスパーダの血族の一員だ!

次回、たぶん今回より短かくなると思う。

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