ギルティクラウン~The Devil's Hearts~ 作:すぱーだ
ああ上手く書けるかドキドキする
自分の中にある一番古い記憶は、血をぶちまけた様に赤い炎に囲まれている光景・・・それだけだ。
その次に記憶に見えるのは赤錆に覆われた壁と天井、横を見れば赤茶けたベッドのシーツいずれもごていねいに血にでも浸したかと思えるほど全面真っ赤だ。
「・・・・もう、イヤだもうこの色は見たくない」
そう思ったことをハッキリ覚えている。
なんの繋がりも脈絡もない断片的な記憶の羅列、それでもこの後のことは自分自身笑いたくなるほどハッキリ覚えている。
息が痛いほど喉に刺さる中、ようやく目が暗闇に慣れて初めてこの空間にいるのは自分一人ではないことに気づくことが出来た。
一人や二人ではない間違いなく数十人近くいるなぜ今まで気付かかったのだろう。
ベットから体を起こしもっと周りの様子を伺う。
よく見ればここにいる全員煤と血に汚れひどい有様だ。
全員あの炎の中、あの場所からここに居るのだ。
炎・・・そうだ僕はーーに会いたいーーに謝りたい
今はもう思い出せない誰かを想い泣いた。
ただ悲しくて泣いていた。
胸に穴が空いているかのように辛かった。
目が覚めて何時間たっただろう。
すでに空腹も体力も幼い自分達には限界だった。
この場所の唯一の"音"であった子供達の啜り泣く声も今やなりを潜め、気が滅入る程の沈黙が空間を支配していた。
自分は妙に冷静な頭で周りの状況を確認した。
周りの子供達は全員自分と同じくらいか少し上か下かくらいの年齢が近い子供ばかりだ。
自分達が居る空間は四方が赤く錆びた鉄の板、その一部に重い存在感を持つ巨大な扉がはめ込んでおり、天井も壁も距離がある、しかし光が電球ひとつに、錆びた鉄の臭いは血の臭いを連想させられ。
広い空間であるにもかかわらず強い閉塞感を感じざるをえない。この場所にいるだけで吐き気をもよおす。
吐き気よりも空腹感が勝りもう考える事さえ苦痛になった頃・・・突如重く甲高い音たて巨大な扉が開いた。
それまでなに一つ変化の無かった世界に初めての動き。
自分をはじめとする、全ての子供の注目が扉に集まるのは無理からぬことだった。
期待と不安が入り混じった視線を向けた、直後困惑と恐怖で凍り付いた。
入って来た者達の姿は異様その物だった。
頭から真っ黒なローブをかぶり手には包帯わずかな肌も晒すことはなかった。
さらに同じ格好の者達が計6人、その光景は悪夢の具現化した物だと言われればすんなり信じてしまえそうなほど狂気じみたものだった。
硬直している子供達をよそにローブ姿の者達はそれぞれ子供の前に立ち手に持ったトレーをベッドの近くのテーブルに置き少し離れた位置で立ち止まった。
『食え』
男と女の声をパイプを通じて聞いているかの様なエコーがかった奇妙な声でそれは話かけてきた。
有無を言わさぬ迫力に一人また一人とトレーに乗せられた物を食べた。
自分もトレーに乗った白くゲル状の物を悪臭に耐えながらやっとのこと口に押し込んだ。
見れば他の子供達も似たようなものだった、全員吐く欲求をなんとか抑え恐怖耐えながらもローブの物達の機嫌を損ねないよう気を配った。
変化はすぐ現れた。
まず一人目が苦悶の声を上げながら全身から血を吹き出しながら倒れこと切れ、それから一人二人と同じように血を吹き出し死んだ。
そこから阿鼻叫喚の地獄だった。
ローブの物達は口に入れた物を出そうと吐き出した子供の嘔吐した物を無理矢理口に押し込み、トレーの上の物を掴むとそれも口に押し込んだ。
少年の近くの子供も苦悶の声を上げながらローブの一人に飛び掛かり揉み合いになったがそれも数秒のことすぐにローブは子供を引き剥がしベッドに叩きつけた、しかし子供がローブを掴んでいたためローブも一緒に引き剥がされ初めて、ローブの者の顔が晒された。
「「「「「!!!!!!!???」」」」」
子供達は再び際限無き恐怖に襲われた。
その顔は人間と呼ぶには余りに醜悪であった。
ザラザラとしたウロコがヌルヌルの粘液に濡れそれが顔一面に広がり膜が張ったヒレが顔の側面につき鼻は無く、双眸の目は一方は極端に大きく、一方は極端に小さいという大きさもばらばら眼球・・・耳にまで達する大きく裂けた口には顎だけにでなく喉の奥まで鋭く尖ったステーキナイフのような歯が何本も並んでいた。
「お前ら俺達に何食わせやがった!!」
そう叫んだ子供も苦悶の声を上げるとみるみる体の形が変わり始める。
歯は抜け落ちて、鋭いサメの歯のような歯が生えてきた。
爪も剥がれ指の中から獣のような爪が姿を現した。
全身には鱗、顔の側面からは膜の張ったヒレ、両目は2倍近く膨れ上がり、まるで今しがた彼が目にしたローブの者の素顔に近い姿に変わりつつあった。
しかし、完全に同じ姿になる前に彼は床に倒れ落ち絶命した。
そこまで見て自分と子供達は、初めてのローブの者達は仮装では無く本物の怪物なのだと理解した。
「あ、悪魔・・・」
誰かが言ったのが聞こえた。
怪物達はトレーの上の物をあらかた子供に詰め込むと、死んだ子を引きずり部屋から去っていった。
重い音を立て扉が、閉まった。
今まで、これから先の不安だったのが明確な死への恐怖へとと変わり、子供達の上に覆い被さっていた。
そこから、光も時計も無いその部屋で子供達の泣き声、悲鳴、血の流れる音、噴き出す音、肉を裂き骨をへし折りそして皮膚を削りながら怪物へと姿を変えていく音、それらが自分に時の流れを告げる物となっていた。
『どうせ僕が消えるのなら、
奴らの仲間にはなりたくない
神様どうか殺して下さい。』
いつしかそう願うようになっていた。
それから、自分は何度も体に走る痛みと吐血を繰り返し、いつしか大切な人達ーーーーとーーのことまで記憶から消え、一切思い出す事が出来なくなった。
残ったのは大切なものがあったという記憶の輪郭だけだった。
深く失望した、死ぬ寸前に見るという過去の記憶を想起するという話を自分は信じ、最期の瞬間鮮やかで楽しかった思い出を見ることを期待していたのだ。
久々に死ぬことに恐怖した瞬間、意識が落ち思考することが出来なくなっていた。
「ーーーーーー。ーーーー?」
「ーーーーーーーーー。ーーーーーー。」
話し声が聞こえ、暗い意識の底から戻された。
ほとんど開かない目は、光とそれを背負う二人の人影を確かに捉えた。
「ーーの"血"を?大丈ーか、そんなこーーーて。」
「ええ、この子ーーろしかけてるのは、
奴のーであって、"血"そのものーーー因ではなー の、ーーーーあなたー"血"でその後押しをすーー」
二人の男女が何かを話し合っている。
会話は不明瞭で殆ど理解出無い。
自分を迎えに来たのかと僅かな嬉しさと僅かな淋しさを感じながら、どんなに絞り出しても声の出ない口を動かした。必死に声を出そうとしてるせいで自分が笑っていることに気付くのが遅れた。
「よう、まだ生きてるか?」
声をかけられ、閉じていた目を薄く開けた。
「よく頑張った、後は俺達に任せな坊や。」
そこで、初めての男の顔を認識することが出来た。
銀髪に鮮やかな真紅の眼、自分を抱く腕から力強さと暖かさを感じた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
守られている気がし、いつぶりかゆったりと息をはいた。
そして再び眠りに着いた。
今度は先程と違い安らかな眠りだった。
これが、少年
桜満 集と、
" 最強の悪魔狩人<デビルハンター>"
ダンテとの、
最初の出会いだった。
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