ISS 聖空の固有結界   作:HYUGA

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 仮初人さん。


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第0‐3章『虚空のレッドブレッド』
第一話『さまよえる紅い弾丸』


 □さまよえる紅い弾丸

 

 

 俺には親友がいた。

 

 世界が変わり、女尊男卑の世の中。

 そうなる前、俺たちはまだ乳臭いガキの頃からの幼馴染…。……親友だった。

 『御手洗数馬』みんなには数馬と呼ばれていたあいつは、人懐っこく明るい三枚目、俺と同じく非モテで、鈴といつも一緒にいた一夏をいつも妬ましげに睨みつけているわりに、結局は一夏とは親友の仲。

 そんな、気のいい男だった。

 

 …。……いつが始まりかなんて分からない。

 

 もしかしたら、俺と数馬。二人が出会ったあの瞬間にはもう始まっていたのかもしれない。

 俺たちの悲劇。そして、俺の復讐劇の幕は…。……。

 

 

 そのときすでに、上がっていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

        *

 

 

 

 

 

 

「おいっ。おい弾!見てみろよ!あのお姉さま集団…」

「うおっ!?すっげー…あんなの小学校時代しゃ考えられねーよ…」

「あぁ…デカいな」

「ホント…デカいよ」

 

 

 

 月がまたがったばかりの四月上旬。

 無論、日本では入学シーズンまっただ中である。

 桜舞い散る…、……とは言い難い葉桜の桜の木々に萎えつつも、真新しい学生服を身に纏い、入学する中学の校門を初めてくぐった新入生達。

 それは俺、『五反田弾』。そして隣で目を輝かせながらそう呟いた『御手洗数馬』もまた、例外なく同じであった。

 小学生時代、ISの開発という大事件もあり、聞けば、俺たちの近所に住んでいたという人が開発したという話なのだから、驚きはしたものの、結局は俺たちにとってみれば遠い遠い話。無論、そんなこと俺たちには一切関係なく、俺たちは今日、無事に中学生となった。

 

 ISとかそんなことは正直、俺たちにはどうでもいい話である。

 目下、俺たちの目標はあれだった。

 あたりを見渡せば、きゃっきゃっ、うふふと楽しげな集団の姿が見える。

 そう、それはまさしく今日、入学式のためにやってきた『女子中学生』の先輩方のお姿だった。そのおっぱ…ゲフンっゲフンっ。もとい、上半身のある一点の部位の膨らみは今まで俺たちの周りにいた女連中と比べると雲泥の差。

 胸躍るとはまさにこのこと。いい加減、小学生の断崖絶壁や、まな板なんか見飽きてきた俺たちは、中学生という一つ上の高見へとついにやってきたのだ。

 これを胸躍ると言わずしてなんという。俺たちは、この世の春をしっかりと謳歌していた。

 

 

 

「あぁ…弾さん。いいですなぁ…」

「だな、数馬君。いいよなぁ…」

「あのおっぱい!!」「あのお尻!!」

『ん?』

 

 

 

 …。……まぁ、とにもかくにも、俺たちは中学生になったのであった。

 俺はこの日、生まれて初めて数馬と取っ組み合いの喧嘩をすることになる。理由は…、……男にとって大事なことについての意見の食い違いとだけ言っておこう。

 クスクスと笑いが聞こえる。見れば、俺たちがさっきまで眺めていた、お姉さま集団が微笑ましげに笑いながら俺と数馬の横を通りすぎて行った。

 その笑みには、お姉さま方の余裕がひしひしと伝わってくる。

 なぜかすごく、悲しくなった。

 

 

 

「…。はぁ…俺たち全然相手にされてねーなー」

「…。みたいだな。…、……まぁ、元気出せよ数馬!俺たちの春はまだはじまったばっかりだぜ?」

「…。弾?」

「おいおい数馬さんよ~よく考えてみろよ~。この学校にはいったい何人のお姉さまがいると思うんだ~?さっきのは一部。他にもいろんな女の人がより取り見取りだぜ?」

「おぉ~!!」

「そ・れ・に!同級生のやつらも別の学校から来たやつらとかたくさんいるぜ?今のうちに将来有望な美少女を捕まえておけば…」

「はっ!なるほど…。今はちんちくりんでも将来はグラマーボディー!これこそ、まさしく発想の転換!?弾!お前天才か!?」

「そうだ!!美少女は将来美女になる!!これ鉄則!!今、彼女を手に入れれば将来は確実にリア充になれる!そうだろ?数馬!!」

「あぁ、そうだな!目指せ!リア充!これからも楽しく行こうぜ!」

「おう!!目指せリア充!!だな!!」

『あははははははははははははははははははははははは!!!!』

 

 

 

 めげない俺たち。だってこんなの慣れてるんだから。

 お互いガシッと抱き合い笑いあう。そんな俺たちを辺りにいたやつらがドン引きしていたのを俺たちはこのとき、知らなかった。

 そして、一部のお姉さま達が顔を赤らめながら、ぶつぶつ何かを呟いていることもまた、俺たちはこのとき、知らなかったのであった…。……。

 余談だが半年後の文化祭にて、『五反田弾』×『御手洗数馬』本が出ることになるのだが…。……今は関係ないのでこの話はなかったことにしていただきたい。…、……切実に。

 

 数馬と抱き合い、友情を確かめ合う。

 この行為が俺たちの三枚目キャラを確定させた瞬間だった。

 

 

 

「うあぁ…何あれ、気持ちわる。ちょっと一夏、一夏。見て、あれ。男同士で抱き合ってるわよ?…、……あれがBL。ボーイズラブってやつなのかしら?」

「…。どーでもいい」

「どうでもいいって…あーもうっ。あんた、少しはあたしと千冬さん以外のことにも興味持ちなさいよ。じゃないとあたしの『織斑一夏更生計画』がちっとも進まないじゃない?」

「…。なんだよ、そのばっちぃ計画…。できれば今すぐ辞めていただきたいんだが?」

 

 

 

 …なぜ、彼らに目が行ったのかは分からない。

 正直、抱き合ったときの目線がたまたま重なっただけかもしれない。

 でも、それでもその二人は特別目が惹きつけられる二人組だった。

 

 

 

「…。そもそも、なんでお前がそんなことやってんだよ?」

「千冬さんから頼まれたのよ。家を空けがちな自分に変わって、一夏をまともな人間に変えてほしいって…。そりゃ心配にもなるでしょ?あんたってば目を離すとすぐ何かやっちゃうやつなんだから?」

「…。人を犬か猫みたいに言うな。というか、猫はおまえだろ?」

「どーいう意味よ、それ?」

「…。やんちゃで身軽。気まぐれな気分屋。…どう見ても猫だろ?」

「あーはいはい。そんなこと言っても流さなれないわよ。あんたのその手にはもう慣れっこよ。…ほら行くわよ。結局、小学校じゃあたし以外に友達作らなかったんだから、中学こそは友達つくりなさいよ?」

「…。別に、お前だけでいいし」

「…。あんたって、ときどき狙わないでそんなことを言うから怖いのよね…」

 

 

 

 じゃ、行くわよ。そう言って、少女の方が少年の右手をガッチリと掴み引っ張っていく。

 本当に、変わった二人組だった。

 絵に描いたような活発そうなツインテールの美少女。将来は美人になる可能性がかなり高い、可愛らしい容姿をした少女だった。

 その彼女に引っ張られていったのは、これまた変わった少年。

 活発な雰囲気の少女とは対照的に、物静か。もっと言えば根暗なイメージ。

 表情…、……といえるものは一切ない。

 でも、存在感があった。決して影が薄いわけではない。すごい存在感がそいつにはあったのだ。

 

 

 

「あーくそっ。みせつけやがって!リア充死ね!」

 

 

 

 隣で叫ぶ数馬。その言葉には賛成だが、それとは別にして、折れはあいつらのことが気になった。

 しかも、少女のほうではない。一夏と呼ばれたあいつのほうをだ。

 あいつの後ろに見える影。真っ暗で恐怖心を煽る。そんな壁。

 俺にはそれがはっきりと見えた。

 

 …。……きっと、俺はあの少年と関わる機会はないと思う。

 いや、違う。俺はあの少年とかかわってはいけないのだ。こう…、あんともいえない。本能というか、そういったものが俺に告げていた。

 あいつには…、……関わってはいけないのだと。

 

 

 

「…。なぁ、数馬」

「あ?なんだよ?」

「もし…さ。もしだぜ?…俺が間違った方向へ走って行ったら…殴ってでも俺を止めてくれないか?」

「はぁ?何言ってんだ…気持ち悪ぃ…。だいたい殴るって…お前、それどこの青春ドラマだよ?」

「…そう、だな。わりー忘れてくれ」

 

 

 

 自分でも何言ってんのか分からなかった。

 けど、確信はある。

 数馬なら、もし俺が間違ったミチに走ったとき…、間違いなく俺を殴ってでも止める。

 その確信が…。……。

 

 

 

「ん~それよりさ~弾。帰りにどっか寄っていくか?」

「おう。じゃあさ、駅前のゲーセン行かねーか?この間のリベンジだ」

「へっ。ほざくなよ弾。今回も俺がぶっとばしてやるから!」

「上等だ!!」

 

 

 

 にぃっと笑って肩を組んでくる数馬。

 正直、うざかった。でも、これが永遠に続けばいいとも思った。

 俺たちは幼馴染で親友。

 『五反田弾』と『御手洗数馬』はこの先もきっと…一緒にいると思う。

 

 そう思って。俺は疑わなかった…。……。

 

 

 

 

 

 




 弾編のプロローグ的な話です。

 この時点では弾君はまだ、どこにでもいるような男の子のせっていです。
 数馬君に『厨二病(笑)』なんて呼ばれたりしています。

 果たして彼に待っている運命は? 次回のお楽しみに~




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