「…結局一度もIS操縦できなかったな…」
選手控え室にて、一夏がつぶやき。隣で箒がにらむ。
一夏は箒から剣道を、キノから銃器の扱いを学びくたくたになりながらも、身を引き締め今はただ自身の専用機が到着するのを待つばかりだった。
(できる箏はやったんだ…負けたら二人に申し訳ない…)
一夏がそんな箏を思っていた時、麻耶が部屋にやってくる。一夏の機体が届いたとの箏で三人は控え室からでて、アリーナに置かれた一体の機体が置かれていた。
「これが、俺の機体…」
白式。文字どうり白色の機体は太陽の光に当たり光輝いているように見えた。
試合開始までまもなくとなり、一夏は基本設定をする暇もなくいきなり本番で戦うこととなった。
(えっと、武器は…剣と、銃…これだけか…)
白式に搭載された武器は二つ。
一つは、接近戦用のブレード「雪片弐型(ゆきひらにがた)」もう一つは、
六発式のリボルバー銃「カノン」だった。
「一夏…行ってこい!!」
「応!! 行ってくる、箒!!」
箒の短い応援を受け一夏が気合を入れた後、ついに試合が始まろうとしていたーー
「キノ~~遅いよ!! 試合もう始まってるよ 」
「エルメス、人のいるところで声を出さない」
周りの生徒に混じり、指輪のエルメスを伴ってキノも観客席に座る。
ちなみに簪はここにはおらず、理由はいまだに一夏を苦手としているからだった。
試合は始まったばかりらしく、二人のISのエネルギーはまだかなり残っていた。
(おにいさんと相手の金髪のお姉さん。どっちが勝つと思う? )
今度は小声で質問し、キノは小さく負けるかもとつぶやく。
エルメスはさらに、どっちの方がと聞き、キノは一夏の名をあげた。
(え~~あれだけ剣と銃の練習したのに?)
キノはエルメスの質問にそれ以上答えず、試合の方に目を向けた。
一夏が対戦相手であるセシリアのIS「ブルー・ティアーズ」から放たれる
BT(ビッド)攻撃をかわすのに精いっぱいだった。
上や後ろからくるレーザー攻撃をよけるが、機体のあちこちにかすりエネルギーが減って一夏の方が不利になっていく。
一夏も反撃しようと、カノンでBTを打ち落とそうとするが、なかなか狙いが定まらず何発か外してしまう。
しかも、カノンには予備の弾丸がなく、搭載されている六発だけが頼りだったが、残っている弾は二発のみだった。
残りの残数が心もとなく雪片を握りして振り落とし動きが止まっているBTを一つ破壊した。
(もしかして!!)
一夏は何かに気づき、レーザーを回避し二つ目のBTを破壊した。
動きが変わった一夏を見てセシリアは動揺し始めた。
「な、なぜです!? なぜ、こうも簡単に…」
「行くぞ!!」
一夏が気づいたのはセシリアがBTを操作している時彼女の動きが止まり、逆に彼女が動いて攻撃している時はBTが動いていない箏だった。
とにかくセシリアをかく乱させれば勝機がある。
一夏は、再びBTを操作するセシリアに向けカノンを向け撃ち、偶然なのか弾丸がブルー・ティアーズに当たりエネルギーを大きく減らす箏ができた。
「なっ!!」
一夏の攻撃が当たり、セシリアが動揺しその隙に一夏はBTを一つ、二つと切り捨て破壊した。
「そ、そんな馬鹿な!!」
試合の流れがいつの間にか変わり、セシリアの周りにあったBTは破壊され、エネルギーもわずかだが一夏が優勢だった。
「行ける…箒やキノさんに教えてもらったことは無駄じゃなかった」
心の中で、自分に力を貸してくれた二人に感謝し手を開いて閉じて剣を再び握りしめた。だが、管制室にいた千冬は舌打ちをした。
「あの馬鹿、浮かれてるな」
姉である彼女は、弟の癖を見抜いていた。余裕のできたときにする手の動きを見て、
一夏自身が完全に油断している箏に気づいていなかった。
そして、勝つためにセシリアに向けとどめの一撃を下そうと急接近したところで
「かかりましたわね!!」
セシリアが叫び、二つの新たなるBTが出現しミサイルが白式を襲うのであったーー
(あ~~あ、お兄さん負けちゃったかな)
ミサイルの直撃を受け、煙の中から白式が出てこない。誰もが一夏の負けだと思う中、キノは何も言わずずっと煙の中にいるであろう一夏を見続けて、変化が起こる。
「あれは…」
煙から出てきた白式は、光を放ち前と少し違う形をしていた。
この時観客達は知らなかったが、一夏の機体はまだ基本設定ができていなかったのだが。ついに設定が完了しこれで白式は完全に一夏の物になった。
「俺は、勝たないといけないんだ…」
一夏は右手に雪片、左手にカノンを握り再びセシリアに特攻する。
ミサイル搭載型のBTには弾がなくすぐに破壊され、彼女は残された射撃武器で一夏を狙うが一夏がカノンの引き金を引き、最後の弾丸がセシリアの手持ち武器スターライトブレイカーMKⅡの銃口に入り爆発を起こした。
「きゃぁぁ!!」
「うおぉぉぉぉ!!!!」
爆発が起こる中、一夏はカノンを捨て一気に雪平に全てのエネルギーを注ぎで大きな光が生まれた。
「これで終わりだ!!」
一夏が叫びブルー・ティアーズの装甲を切りつけようとし、観客達が息をのんで見守る中ーー
「勝者、セシリア・オルコット」
と、コールが鳴り響いたーー