キノの旅×IS リメイク   作:un

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六話 一夏とキノ

 

「これが、ISの戦いか…」

 

 キノと簪の試合を観客席からみていた一夏がつぶやいた。なぜ彼がここにいるのかというとアリーナで試合があると聞き、一週間後に控えたクラス代表を決める試合に向けて何かの参考になるだろうと足を運んだのが理由だった。

 

 対戦しているのは日本の代表候補生である青髪の少女と、もう一人は名前も知らない黒髪をした生徒――キノだった。さらに、周りにいる観客の生徒達の話に耳を傾けると、キノはどこの代表候補でもなく、一般で入学した生徒らしくだれもがキノが叩きのめされると予想をしていた。しかし、実際に試合が始まり誰もが二人の戦いに夢中になる。

 

(…俺、銃とか使った事ないけど、大丈夫なのか?)

 

 キノと簪の射撃を見て、一夏が不安になる中。簪が落ちたブレードを拾い爆発が起こり、そこでアナウンスが流れーー

 

 

「両者エネルギー切れで引き分けだってさ、キノ。お疲れさん」

 

「あぁ、おつかれエルメス」

 

 控え室でISスーツを着たままのキノがベンチに横になり、エルメスに返事を返した。ISの操作に集中力と体力を使い疲れたのか、額から汗が流れ大きく息を吐き出した。

 

「…操縦はどう? 慣れた? 」

少しはね。けど、実践となると避けたり逃げたりして動き回るからかなり疲れる」

 

「まぁ、そこは何度もやって慣れるしかないね。ほら、上手ムシより、上手ならないって言うじゃない?」

 

 キノは、エルメスの言葉を聞き、数秒して口を開く。

 

「…上手昔より上手ならず?」

 

「そう、それ!! 」

 

「まぁ、これから練習していくしかないよね…ん?」

 

 扉がノックされ、キノはベンチから起き上がりドアを開けると、そこにはまだISスーツを着たままでうつむいている簪がいた。

 

「あの、キノさん…」

 

「こっちもいるよ~~」

 

 と首に下げているエルメスが軽く挨拶するが、すぐにキノから注意され黙ってしまう。簪はそんなキノ達を見て少しだけ笑を見せた。

 

「すみません、こいつはいつもうるさいので…ところで何か用ですか?」

 

「あ、その…約束の事なんだけど…」

 

 約束と言うのは、キノが試合で勝ったら簪は無理せず、周りの人に協力してもらい専用ISを作って行く事を。簪が勝てば、未知の技術で作られたエルメスを調べる事を掛けにしていたのだが、結果が引き分けになってしまい。どうしようか、二人が悩んでいるとーー

 

「じゃあさ、こういうのはどう?」

 

 エルメスの一声を聞き、その後二人は納得したような表情になる。

 

 その日の夜。整備室ではいくつもの機材が床に置かれ、整備科の生徒達が忙しく作業をしていた。部屋の奥に置かれた簪の専用機「打鉄二式」が簪やキノの目の前で着実と作成されていき、やがて消灯時間になり皆が寮に戻ると。

 

「すごい!! この子、とても人工智能とは思えない…」

 

「あのさ~~あんまりいじらないでね? あくまでも、見るのは一部だけなんだから」

 

 キノの指輪を熱心に見つめる簪。後ろではキノが苦笑し、まるで珍しいおもちゃを見ている目をした簪が次次と質問責めをしてきた。

 

「ねえ? これどこで作られたの? 制作者はあなた? こんなもの開発している企業なんて聞いたこのないわ、もしかして試作品か何か?」

 

「えっと、その…」

 

 迫り来る簪にキノは、答えきれる所だけ答え。そんな二人を見てエルメスが

 

「結局二つの約束は叶えたけど、試合した意味あったのかな?」

 

 と他人ごとのようにつぶやくのであったーー

 

 

 

 翌日。簪とキノが教室に入ると、昨日の試合を見ていたクラスメイト達から好評の声をかけられた。

 

「昨日の試合すごかったよ!! キノさんって、どこか所属していたの?」

 

「簪さんも、さすが候補生だね。今度操縦教えてよ!!」

 

 多くの人に声をかけられるのが苦手だった簪は顔を赤くしながら何度も頷いて返事をし、キノもクラスメイト達に混ざり、休み時間のたびに二人はクラスの輪に溶け込んでいた。

 

 そして、午前の授業が終わり。キノが一人で食堂に向かおうとしたところで背後から声をかけられた。

 

「あ、あの!!」

 

「? はい?」

 

 キノが振り向くと、そこには。真剣な表情をした一夏がいて、彼は頭を下げ

 

「頼む!! 俺にISの事を教えてくれ!!」

 

「…はい?」

 

 と言い、キノは首をひねるのだった。

 

 

 

「――つまり、クラス代表を決める試合があるため、操縦を教わりたいと?」

 

 食堂の席にて、キノがお茶を片手に真剣な目をした一夏と話していた。一夏によると、同級生で、外国からの代表候補生と言い合いになりその結果。試合で白黒つける事となり、一夏は幼馴染みの特訓を受け準備をしていたのだがーー

 

「箒のやつ、一度も操縦を教えてくれなくて…それどころか毎日剣道だけで…」

 

「なるほど…でも、教わるなら他のクラスの候補生の人に教わった方がいいのでは?」

 

「ま、まぁ…一人には声かけたんだけど、無視されて…」

 

 苦い顔をして視線をそらす一夏。と、小声でエルメスの声が聞こえる。

 

(キノ、多分、お兄さん。簪に声をかけて無視されたんだと思うよ)

 

 キノは小さく頷く。もともと簪の専用機の開発が遅れたのは、突如現れた目の前にいる男の操縦者が原因だが、本人は事情が分かっていないようだった。 

 

(どうする? 手伝の?)

 

 エルメスの次の質問にキノは首を動かさず、一夏を見て。

 

「分かりました。ボクでできる事であれば協力します」

 

「!! 本当か!? ありがとう!!」

 

 キノの返事を受け、一夏は喜び。二人は席から離れる。

そしてこの時、一夏だけが殺気を纏った少女が尾行しているのに気づいていない。

 

「あの女…一夏と一緒に…」

 

 長髪を一つにまとめた少女。箒が目を尖らせ二人の後を追いかける。

 

「えと、確か訓練機を使うには申請書が必要でしたね…」

 

「そ、そうだった…確か書類って…」

 

 二人が会話しながら廊下を歩いていると、簪が足を止めどこかに行くキノとその隣りにいる一夏を睨み物陰に隠れ、何故か胸に不安を覚えつつ二人の後を追う。

 

(キノさん…一体、何を話しているの?)

 

 学園で始めてできた友達が、敵とも思える男と仲よく歩いているのを見て、気持ちが焦り、周りが見えてないせいで、物陰から出てきた箒とぶつかってしまう。

 

「うぁ!?」

 

「きゃ!?」

 

 二人は廊下で尻もちをつき、慌てて立ちあがる。

 

「な、貴様、一体何を…」

 

 自分と同じ、一夏を追っている(実際はキノを)存在に気づき、箒が問いただそうとするが。簪が慌てて指指し、キノと一夏の姿が消えていた。

 

「しまった!! くぅ!! 一夏、どこだ!?」

 

「キノさん…」

 

 二人の追跡者は、それぞれの探す目的を口にし廊下を走りだすのであったーー

 

 

「え? 訓練機の申請が通るのって一ヶ月も先になるんですか?」 

 

「ISに乗れないなんて…」

 

 事務員から練習用の機体が予約が一杯なのを聞き、トボトボと歩く一夏。

 キノがどう声をかければいいのか悩んでいると、二人分の足音が聞こえ

 

「一夏!!」

 

「キノさん」

 

 

 息を切らし、目的の人間を見つけた二人の追跡者。

 

 箒はキノを睨んで一夏に迫り

 

「一夏、貴様何をやっている!! そいつは誰だ!?」

 

「ほ、箒? その、キノさんに、ISの事教えてもらおうと思って…」

 

「な、なんだと!?」

 

 簪は一夏を睨んでキノに近づく。

 

「キノさん、どうしてその人と一緒にいるの?」

 

「か、簪さん?」 

 

 

 何故か怒りに満ちている二人を見て、キノ達は説明したが

 

「その必要はない!! 一夏は、私が鍛えるんだ!!」

 

「キノさんが、そんな人を手伝う必要はない」

 

 と、即答されてしまう。

 

「ちょ、ちょと待てよ!! 俺、まだ一度も乗った事ないんだぞ、このままじゃセシリアに…」

 

「とにかく、私に任せればいいのだ!!」

 

 と、無理やり一夏の手を引っ張り連れ去ろうとする箒。そこに、キノが

 

「あの、結局申請はどうします?」

 

「貴様は黙ってろ!!」

 

 どこからか取り出した木刀をつかみキノを襲う箒。キノは、木刀の一撃を避け箒の胸ぐらをつかみ背負投げをし箒を廊下の床に叩きつけた。

 

「ぐぅ!!」

 

「…こんなところで振り回したら危ないですよ?」

 

「クソ!!」

 

「ちょ!! 箒やめろって!!」

 

 頭に血が上った箒を押さえる一夏。簪と一夏がどうしたらいいのか困っていると

 

「そこで何をしている、馬鹿どもが」

 

 耳にすき通る、冷感を持った声がし。四人が向いた先には一体の鬼がいた。

 

「事務所が騒がしいと報告を受けてきたが、これはどういうことだ?」

 

 威圧を発した女傑。世界最強の称号を持つ織斑千冬を前にして四人は身を震わせるのであったーー

 


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