「ねぇ、キノ? どうするの、あの子? また、整備室にこもってる見たいだよ?」
入学して二日目の昼。人気のない屋上で会話するキノとエルメスがいた。
「うん、そうみたいだね。ところで、エルメス。簪さん一人でIS作るってって言ってたみたいだけ、そんなのできるの?」
「無理だね。それに見せてもらった設計図を見る限りまだまだ課題が一杯あるし、完成するまで何年かかる事か」
「そうなんだ...ねぇ、エルメス。ボクにできることってあるかな?」
「キノ? キノがここにいる理由忘れてないよね? 下手してこっちの正体バレると面倒だよ?」
「まぁ、そうなんだけどさ...ほら、既にエルメスの事バレちゃってるし、それにこれから同じ部屋にいるんだからさ、何か手伝おうかなって...」
太陽の光に眩しく目を細め海を眺めるキノ。エルメスは「仕方ない」と言った感じで
「じゃあさ、強引な方法だけど...」
その日の授業が終わり、キノと同じ部屋で端末を操作する簪。そこに、キノが部屋に入り簪は画面から目を離す。
「お疲れさまです、簪さん」
「お疲れ」
少しだが柔らかい笑を浮かべ挨拶を返す簪。そして、彼女の目線はキノの指にある黒い指輪に注目していた。
「お疲れさま、今日も専用機の開発?」
小さく頷く簪。キノは彼女に手伝える事はあるか と伝えるが首を横に振られる。
「あのさ、悪く言っちゃうと思うけど。今のままじゃ、その機体は完成できないよ。やっぱりいろんな人と協力して...」
「っ!! 貴方には関係ない!!」
大声をあげ部屋から出て行く簪。その後をキノが追いかけ寮から出る。
(? あれ、簪ちゃん?)
学生寮の近くを通っていた楯無が涙を流し走り去る妹の姿を見かけ、その後を走るキノを見かけ、目つきが鋭くなる。
「...」
楯無は無言で走り去る二人を見つめながら、扇子を広げると何を勘違いしたのか「撲滅決定」と書かれていた。
「はぁ、はぁ...」
走りつかれた簪は校庭にあるベンチに座り涙を流していた。
「あの...」
と、そこに気まずそうに目線を下にして近づくキノ。さっきのエルメスの事を謝罪し、目を拭いキノを見つめつ簪。
「ううん、ごめんなさい...私の方こそ...」
「すみませんでした。ボクの方こそ手伝うなんて余計な事を言ってしまい」
「違うの...その...」
二人はベンチに座り。落ち着きを取り戻した彼女が、キノにポツポツと話を続ける。
自分には優秀な姉がいていつも比べられており、その姉が一人でISを完成させた事
そして、自分のISの開発がとある人物のせいで後回しになっていた事が話された。
「そうだったんですか...」
「ん、もしかして、その後回しになっちゃった原因って...一組のあの、世界で一人だけの人?」
「そう」
「ありゃりゃ。これは、たたり目により目だめ」
「...は?」
エルメスの意味が分から無いことわざに困惑する二人。だが、キノは何かに気づいた様子でエルメスを見て
「もしかして...弱り目に祟り目?」
「そう!! それ!!」
こっちの世界に来ても相変わらずの相棒にため息をつくキノ。一方で簪は口元を押さえ笑いを抑えていた。
「ふふふ...ごめんなさい、つい」
「良かったねキノ? 元気でた見たいだよ。ところでさ、物は相談だけど...」
エルメスが簪に何かを話し、簪は驚いた表情を浮かべるが
「うん、分かった」
と何かを承諾したのだったーー
翌日。昼食を食堂で摂っていたキノだが
「一年四組の✖✖✖キノさん。至急、生徒会室までお願いします」
と呼び出される。早めに食事を終えてキノは今、生徒会室まで歩いていた。
(キノ? 何かしたの?)
(いや、特に身に覚えはないんだけど...)
(もしかして、正体がバレたのかな? どうする? 無視する?)
(無視したら無理やり連行されるかも。まぁ、何か起こったらエルメスお願いね?)
生徒会室の前まで来たキノは、ポケットに入っているナイフを確認し扉をノックする。中から入っていいと声が聞こえ扉を開く。
「始めまして、✖✖✖さん?」
中にいたのは、簪と同じ青髪をした少女がいた。手に持つ扇子には「歓迎」と書かれて
おり、キノが何のようかと彼女に聞くと
「そうね、貴方、私の妹の簪ちゃんと同じ部屋でしょ? それでね、特別にあなたに訓練してあげようかなって♪ ちょうど、生徒会権限でアリーナ使用できるしね」
機嫌の良い笑を浮かべる楯無だが、キノはその笑顔の裏にある殺気に気づき。警戒を強める。
「訓練って...一体何をする気? 姉さん?」
と、そこにドスが聞いた声がして、生徒会室に簪が入って来た。簪は楯無を睨みつけながらキノに近づく。
「か、簪ちゃん...」
「ねぇ? キノさんに何しようとしたの? もしかして、私の事でも聞こうとしたの?」
「そ、それは!? 」
さっきまでの様子が変わり慌て出す楯無。キノは口を挟まずそのまま様子を見る。
「そういえば、さっきアリーナが使えるって聞いたけど?」
「う、うん...」
視線をキノに向ける簪。
「キノさん、昨日の話すぐできそう」
「は、話?」
楯無は何の事か知らずをおいてきぼりにされて、キノと簪は互に頷くのだったーー
数分後。
アリーナにて、リブァイブに乗るキノと打鉄に乗る簪の姿があった。
「キノさん」
簪がキノを見て話をかける。
「私が勝ったら、あの子...エルメスの中身を見せて」
「はい、でもボクが勝ったら...」
「うん、わかってる。開発を誰かに手伝ってもらう」
二人は事前に決めていた勝負の賭けについて話をし。それ以上何も語らなかった。
審判役の楯無は納得行かない表情をするが、試合開始のカウントダウンを告げ、数字が零になった時。二体のISが銃を取り出し引き金を引くのであったーー