一話 発明の国
青空がどこまでも広がり太陽がまだ登りきっておらず、まだ昼前の時。大きく鉄で作られた国の門の前で一人の老人が一人の旅人とモトラドに向かい話しをしていた。
いかかがでしたか旅人さん? 我が国の発明品は?」
何かを期待しているかのように目を輝かせる髭を生やした老人。どうやら、この老人が国の長らしく、彼の後ろには黒服の付き人達が複数控えていた。
「はい、とても素晴らしい物ばかりでした、ねエルメス?」
「右におなじ~~今までキノと旅をして来たけど、簡単に空を飛べる物なんて滅多にないよ」
キノと呼ばれた旅人は、エルメスの言葉にうなずき国長は満面の笑を浮かべる。
「おお!! そうですか~~そう言ってもらえると嬉しい限りです!! 何しろ、あれらの発明は何代か前の国長が突如作られた事がきっかけでして...」
国長は興奮しながら国の歴史を語り始め、エルメスが「もう、知ってるのにね」と小声でキノに話しますが、キノは黙ってエルメスのタンクを軽く蹴り話しに耳を傾ける。
「発明がまだ生まれてない頃は、この国はまだ貧しく...」
国長の話しが五分程続いた時。一人の付き人の男が声をかけ国長に何かを話し始める、そして話しを聞いた国長は笑を浮かべ再びキノとエルメスの方を向き一度咳払いをする。
「ごほん。いや~~すみませな、こんな老いぼれの話しに付き合わせて...実は旅人さんに記念として持ってもらいたい物があって」
別の付き人がキノに近づき、その手に持っていた木箱を開けると中には拳台ほどの白い宝石がありキノとエルメスに見せる。
「宝石ですか?」
「へ~~太っ腹だね!! 良かったねキノ? これで、暫らくはお金に困らないよ」
エルメスの言葉にキノが注意し、国長は特に気にした様子はない。
付き人が箱から宝石を出し、キノに丁寧に渡す。キノは渡された宝石を見るが一見何もおかしなところは見当たらない。
「その宝石も我が国の発明品なのですよ。それを使えば、はるか遠くまで行くことができ、旅人さんにとっては役に立つ物ではないかと...」
「え~~そんなのあったら、モトラドなんて必要なくなっちゃうじゃんか~~」
「...えっと、ありがたいのですがボクにはエルメスがいますので...」
キノは丁重に断り宝石を箱に戻そうとするが、突如宝石が光を放つ。
「!!っ」
「キノ!?」
宝石から発生られた光が強くなりキノは目を閉じながら腰に手を伸ばし、一丁のパースエイダーを抜き取る。
「くっ!!」
光が収まり目を開けたキノの前には夕陽の光で輝く海が広がっていた。心地の良い風がふき、後ろには密林があった。
「キノ、大丈夫?」
隣りにいたエルメスが声をかけ、パースエイダーをホルスターに収めるキノ。
「エルメス、これは一体...?」
「うん、どうやら国長さんに渡された発明品が原因だね、確かにどこかに飛んだ見たいだね? ただ、ここが別の大陸なのかどうかは分から無いけどね」
「そうなんだ、あ、宝石は?」
「どうやら、消えちゃった見たいだね。キノが目をつぶった時、あの石が光った後消えて行くのが見えたから。つまり使い捨てだね」
「一体、何のためにボクに宝石を渡したんだろうね? ...!!」
キノがパースエイダーを抜き、密林から飛んで出て来た物に銃口を向ける。その物体は何故かニンジンの形をしており、ニンジンはキノ達から数歩程の距離で着地し、ニンジンが割れてーー
「きーくん!!」
女性がニンジンから飛び出し、キノに抱きつくのであった。