キノの旅×IS リメイク   作:un

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 一応、報告でセシリアと一夏の試合結果を変えました。

 後、この話は優しい国を見た後で思いついた物です。


番外編 3 優しい国の種

 日曜の朝。キノはエルメスに粒子化していた荷物を出し、整理していた。

 

 「本当に便利だ。旅の荷物まで入るなんて。元の世界に戻っても、エルメスはそのままでいいじゃないかな?」

 

 「やめてよキノ。モトラドは走ってこそだよ」

 

 冗談だよ、とキノは答え衣類や火薬など異常がないか見ているとカバンの端に封筒があるのに気づく。

 

 キノは封筒を開け、中には数枚の紙と小さな種があった。

 

 「...」

 

 「そういえば、それまだ持ってたね」

 

 キノは種を見て、大きな息を吐き出し天気の良い窓の外を見た。

 

 「エルメス」

 

 「ん?」

 

 「ボクが今考えている事、当てようか...もしも。あの時。さくらちゃんをお預けされて、旅をして、この世界についてたら、さくらちゃんをこの世界に住ませようと考えていた」

 

 「そうだね、けど。もうどうすることもできない」

 

 「エゴだ、何もかもエゴだ...」

 

 キノが短くつぶやくと、部屋の扉が開き、簪が帰ってきた。さらに、後ろには鈴とシャル。ラウラ。そして簪の姉である楯無も部屋に入る

 

 「ん、荷物なんて広げてどうしたの?」

 

 鈴が聞くが、そこで五人はキノの悲しそうな目に気づき、四人の目線はキノの持つ種に集まる。

 

 「ん? どうした?」

 

 「キノ、さん?」

 

 「えと、何かあったの?」

 

 ラウラだけでなく簪とシャルが聞き、キノは「旅をしていた時の事を思いだしました」と答える。

 既に、一人と一台が別の惑星から来た旅人だと一夏含め何人かは知っており、キノの話す旅の話は楽しみにしていた(ある女教師も)

 

「ふ~ん、で。それってどんな話?」

 

「そうですね...」

 

 キノは一度、言葉を切り

 

「今まで訪れた国の中で、一番だった。他の旅人たちの分まで優しさを持った国です」

 

 この世界で出会った五人の友人たちに語り始める。

 

 旅人たちの間で、評判がとても悪い国があった。

 

 キノは興味本位で、その国に行くが何故か噂と違い国の人々はキノを優しく迎え入れた。

 そこで、ある一人の少女と出会い、三日間。その国を案内してもらい最高の思い出を作ることができた。キノは、居心地のよいその国に滞在延長を希望したが受け入れられず、出国した。

 

 そして、国を出た翌日。

 

 その国を火砕流が襲い、国を一瞬で滅ぼしてしまった。

 

 キノは、国を案内してくれた少女の母親からもらった手紙を読み、この国の人々が迫害された歴史を持ち、それゆえよそ者を嫌っていた事。

 

 そして、火砕流が起きる事をしり国中の人間は国と共に運命を共にすることを選び、誰かの記憶に残りたいと強く願うがこれまでのよそ者を嫌う風習のせいで誰も国に来ず、

諦めかけた時にキノが来たことに大きく感謝したことが手紙にあった。

 

 そして、母親の手紙と一緒に。案内をしてくれた少女から、結婚式でキノが拾ってあげた種を手紙と共にあり旅の成功と、自分達を忘れないで と願いが書かれていた。

 

 キノの話を聞き四人は黙っていた。そして、いつしか五人の目から涙が流れ、話が終る頃には昼になっていた。

 

 「そんな...」

 

 「なんでよ、なんで...その子、死ぬのが分かってたのに...」

 

 国の人々が選んだ道と、キノに種を渡した少女の選択に五人は胸をえぐられる気持ちで一杯だった。

 

 「仕方ないさ、どのみちキノと共に二人で旅なんて無理だったんだ」

 

 エルメスが言うが、誰も答えない。

 

 だが、楯無は何も言わず。キノを抱きしめる。

 

 「あ、あの...」

 

 「今はこうさせて」

 

 楯無の言葉にキノは小さく頷く。

 

 「お前は...」

 

 ラウラが、キノと、キノの持つ種を見て口を開く

 

 「そんな思いをしてまで、どうしてそこまで旅をやめない? 何故、おまえはそこまで強いんだ?」

 

 ラウラの質問に、キノは首を横に振り

 

 「いいえ、ボクは強くなんてないです。ただの一人の汚く矮小な人間です。ですが、

それでもボクは世界の美しい物と、そうでない物全てが愛おしいから。だから、ボクは旅を続けていると思います」

 

 「キノ...」

 

 自分達と同じくらいのはずのキノが別の惑星から迷いこんでも、これまでつらい思いをしても、なんで旅をやめないか。恐らく、自分達が一人の人間に恋をしここにいるのと同じくらい、またはそれ以上に強い物だと感じた。

 

 「あの、キノさん...」

 

 簪が手をあげ、彼女の提案を受け六人は学園の花壇にいた。

 

 「よし」

 

 花壇の日当たりのいい場所に種を植えたキノが立ち上がる。

 

 「いいの? その種って大切なんじゃ?」

 

 「えぇ、ですけどここでなら安心して育てることができますので」

 

 キノが言い、シャルが納得した。

 

 「さて、もうお昼でしたね」

 

 食堂に とキノが言いかけた所で、どこからかサッカーボールが飛んできて、キノが今植えた花壇に落下する前に、鈴が腕部分を一部展開しボールを握りつぶした。

 

 「うわぁーすげ飛んだな...」

 

 と、サッカー部の助っ人で体操服を着た一夏が姿を現す。一夏はキノ達を見てボールがどこに飛んだか聞くが

 

 「あんた、ここ荒らしたら殺すわよ」

 

 「え?」

 

 キノを除いた、五人の殺気に一夏が後ろに下がる。さらに、テニスボールまで来て、簪がライフルを構えボールが粉々になる。

 

 「ちょ!! 何をなさるのですか!?」

 

 ラケットを持ったセシリアが抗議するが、四人の殺気により黙ってしまう。

 

 「どうした一夏? 早く戻らないと、部員たちが...」

 

 と、一夏の手伝いでいた箒も出てくるが殺気だった空気に困惑し何も言えなくなった。

 

 その後、一夏達(箒除く)はシャル達に説教を食らい、キノは彼女達を見て笑みを浮かべた。

 

 「エルメス」

 

 「ん? どうしたの?」

 

 「確かにつらいことは、たくさんあったけど。ここでの思い出はボクは一生忘れないと思う」

 

 違う惑星に飛ばされ、そこで束に出会いこの学園にきた。最初は問題や戦うことばかりだったが、この学園で出会った仲間や恩師の思い出を大切にすると口にし一人の旅人は空を見上げたーー

  

 


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