キノの旅×IS リメイク   作:un

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十一話 依頼

 一夏と鈴の喧嘩から翌日の朝、キノは食堂にいた。

 

「さて、どうしたものか…」

 

 朝日を受けながら背伸びするキノ。

 

「一夏さんの方は様子見を続けるとして、他にボクにやる事ってあるのかな?」

 

 束からの依頼で、エルメスをISに改造して一夏の護衛のためこの学園に来たのだが正直あまりやる事がない。世界中から生徒が集められたこの学園では警備もそうだが、学生も何かしらの訓練を受けており普通に「敵」はいなかった。

 

「いいんじゃない? せっかくの学校なんだし、もっと楽しめばいいよ」

 

「確かに、ここだと弾薬は使い放題で練習はできるけど…」

 

「もしかして、いつもの「一つの国には三日だけ」 ってルールが気になるの? 

 まぁ、確かに元の世界に帰るのが三年後かもしれないし。最悪、この世界で暮らしていかないといけない事も考えないとだし」

 

「それは…そうだね」

 

 エルメスの言葉にうなずき、コーヒーを一口飲み考えこむキノ。

 

 発明の国で注意を怠りこんなことになった自分も悪いが。知らない世界に来れたのもいい機会かな とつぶやくと誰かが近づいてきた。

 

「あ、キノ」

 

「おはようございます、鈴さん」

 

 昨日の屋上の一件から仲良くなった鈴にあいさつした。

 エルメスは黙り、鈴がキノの隣に座る。二人は朝食を食べ、今日の授業や昼食を一緒に食べる事を話していると、簪が食堂に入ってくる。

 

 キノの隣に座る鈴に簪はどうしたらいいのか と目をそらすと鈴が声をかけ彼女を席に座らせた。

 

「あんた四組の候補生よね…?」

 

「う、うん…」

 

 そこで、鈴と簪の二人は互いに自己紹介し朝食が少し和やかに過ごすことができた。

 

 午前中は座学を受け、時折会う一夏や鈴達と少し会話し昼食もキノ、簪、鈴の三人で過ごすが。

 

 そこで、鈴から明日。一夏と試合をすると聞き食事をする二人の手が止まった。

 

「えと…いきなりですね。ちなみに、一夏さんの方は了承されたのですか?」

 

「あたり前よ!! 明日、絶対に勝ってやるんだから!!」

 

 一夏の名前を聞き眉を動かす簪と、明日の試合に向けて意気込みを話す鈴。

 

 旅の中であまり話す機会がなかった同性で同い年との会話にキノは笑みを浮かべながら鈴に「頑張ってください」と伝える。

 

「ちなみにキノ。もしアイツがあんたに教えをこいてきたら…」

 

「やめておいた方がいいですか?」

 

「別構わないわよ。今日一日の付け焼刃程度で私は負けないし」

 

 鈴の自身にあふれた表情に「そうですか」と答えキノが横を見ると不機嫌になった簪と目が合う。

 

「あの、簪さん?」

 

「…ふん」

 

 自分には関係ない と雰囲気を出し食器を持ち席から離れてしまった。

 

 さすがにこの話はダメだったか とキノが思っていると、突然端末にメールが入り鈴に一言告げ食堂から離れトイレの個室でメールを開く。

 

「束さんからだ…明日の試合で、エルメスを使う?」

 

 送られたメールを見てキノがつぶやき、「あ、やっと動ける」とエルメスが声を出した。

 

 

 放課後、アリーナにて白式を装着した一夏は箒とセシリアの二人を相手に苦戦していた。

 

「ちょ!! 待て!!」

 

「何をしている!!」

 

「明日まで時間がないのですよ!!」

 

 箒とセシリアは無理やり一夏をアリーナに連れ込み「鍛えてやる」とやる気に満ちていた。最も、一夏は箒達の「キノや鈴に取られたくない」思惑には気づいておらずひたすら二人の攻撃を回避し、剣で受け止めるなど「実践」を受け翌日――

 

 

 放課後のアリーナでは肩に大きなパーツを装備した甲龍(シェンロン)をまとう鈴と

白式を操縦する一夏が対峙していた。

 

「一夏!! 覚悟しなさい!!」

 

「だから、なんで怒ってんだよ!?」

 

 鈴の気持ちが分からないまま二人の試合が始まる。観客席にいる箒とセシリア達と離れた場所でキノは観戦していた。甲龍(シェンロン)から放たれる空気の弾丸を受け、ダメージを受ける白式。

 

「あの武器って一体なんだろうエルメス…って、そうだった」

 

 キノは思い出したかのように自分の手を見る。いつもつけている指輪は今はなく、キノはアリーナから離れた。

 

「当たれ!!」

 

 一夏がカノンの引き金を引くが、弾丸は甲龍に当たらない。経験値の差が明らかに出ていることに、鈴は感じこのまま勝てると獲物である双剣を器用に回し止めを刺そうとした時だった。

 

 突然、上空から黒い物が落下し。アリーナ中に警告が流れる。

 

「な、なんだ!?」

 

「ISなの?」

 

 黒い物体は、不気味な目を光らせ二人を見つめる。

 

(ごめんねお兄さん、これは依頼だから)

 

 黒いISことゴーレムが、いやエルメスが誰にも聞こえない声でつぶやき一夏達に向け攻撃を始めたーー

 


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