クロスアンジュ 天使と竜の輪舞~デバステイター~   作:Mr.エメト

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故郷を無くした者たち

◆アルゼナル 医務室◆

 

 

誰も死ぬこともなく、帰投した翌日。

だが、ドラゴンの攻撃が堪えたのかゾーラは重傷を負い意識不明の状態だった。

いつ目を覚ますのか、解らない・・・。

 

「ゾーラ・・・」

 

「パラメイル4機大破、内メイルライダーが一名が意識不明。

 ドラゴンは撃ち漏らしたか。

 ・・・アンジュ、これがお前の敵前逃亡がもたらした戦果だ」

 

「・・・なんとか言えよ!おい!」

 

「手出すなよ。一応は負傷者だからな」

 

ロザリーは手を出そうとしたがマギーに止められ、渋々下がる

 

「私は、私は故国に帰ろうとしただけで何も悪い事をしていません・・・」

 

「お前のせいでお姉様が大怪我したんだ!」

 

「・・・ノーマは、ノーマは人間ではありません」

 

アンジュは反省の色も見せず、ヒルダは蹴りを入れようとしたが―――。

 

―――パシンッ!!

 

リュガはアンジュの頬を叩いたのだ。

 

「・・・まだ解らないのか?

 お前の身勝手な理由で、ココ、ミランダは死ぬところだった。

 ゾーラだって、目を覚まさない状態だ。

 それなのに、お前は・・・否定するというのか」

 

「私は、ただ・・・皇国に帰りたいだけです・・・」

 

「身勝手な・・・!!」

 

「落ち着け馬鹿者、その怒りはドラゴンにぶつけておけ」

 

「・・・了解」

 

「サリア、ゾーラが動けない以上、お前が隊長だ。ヒルダは副長だ。いいな?」

 

「「はい!」」

 

「撃ち漏らしたドラゴンが発見され次第、行動に移れ」

 

「イェス、マム!」

 

皆が部屋を出ていくが―――。

 

「リュガ、お前は残れ。大事な話がある」

 

ジルに呼び止められた。

ジルが懐から出したのはアンジュが書いた嘆願書だが、どれも受け取り拒否の印が押されていた。

 

「ミスルギ皇国は滅んだ。お前がノーマだと知り民衆たちはブチ切れたんだろう」

 

ジルの言葉を聞いて、アンジュとリュガは驚愕する。

いや、よく考えてみればそうだ。

宮廷クーデターによる皇室への信頼失墜、皇太子のジュリオだって人望があるとは思えない。

結果的に、ジュリオは権力が欲しいがあまりその結果、ミスルギ皇国は破滅した。

シュージ、テンゲン、ゼノンは無事なのか・・・?

 

「・・・これで、本当に故郷を失ったというわけか」

 

俯いて頭を振るリュガ。

それ以上にショックを受けていたのはアンジュだ。

 

「そんな・・・私の国が無くなるなんて。・・・お母様は?お父様は?お兄様は?シルヴィアは?」

 

「・・・お前たちに見せいたものがある」

 

 

◆アルゼナル 墓地◆

 

 

雨が降っており、其処には傘をしたジャスミンとゴーグルをつけている犬と一緒にいた。

ジルに案内されると其処には墓が並んでいたのだった。

 

「まさか、この墓は・・・」

 

「ドラゴンと戦い散っていたノーマたちだよ」

 

予想はしていたが、やはり戦いで亡くなった者たちの墓か・・・。

 

「ほんの少しマナが使えないだけではないですか!それだけでこんな地獄に!」

 

「お前達の作ったルールで此処にいる」

 

その言葉を聞いて、アンジュはミスルギ皇国で自分が行ったことを思い出す。

 

――人類の進化の果てに手にしたマナの光それを否定するノーマは本能のままに生きる。

 

――反社会的な化物・・今すぐにでも世界から隔離しなけれなりません。

 

「わ、私は決してノーマなどでは・・・」

 

「では、貴様は一体なんだ?ココをミランダを死に追いやろうとし、

 ゾーラを意識不明に追い込んだ貴様は一体なんだ!?」

 

「・・・私は・・・」

 

リュガはアンジュに叱責するが、アンジュは俯いて涙を流す。

 

「・・・その顔はなんだ?その眼は!?その涙はなんだ!?

 泣いていればマナが戻ってくるのか!?ドラゴンが来なくなるのか!?

 現実を認めて、逃げずに戦え!!」

 

「あなたに・・・あなたに何が解るんです!?

 母を目の前で奪われ、兄にも裏切られ、すべてを失った私の気持ちが!!」

 

殴ろうとするが、アンジュの拳を受け止めて話を続けるリュガ

 

「本当に失うというのは、生きる意志を無くした者だ。

 お前はまだ、生きる意志を持っている」

 

アンジュはリュガの瞳を見る、真っ直ぐで強い意志がヒシヒシと伝わる。

サリアが現れて、ドラゴンが出現したと報告をする。

 

「アンジュ、お前にうってつけの機体がある」

 

 

◆アルゼナル 格納庫◆

 

 

案内されると、埃かぶっているパラメイルが鎮座していた。

 

「コイツがお前の機体だ。名はヴィルキスかなり古い機体だ

 まともに動かせる奴がいないのだがお前にコイツを任せよう。

 死にたいのならばうってつけだろ?」

 

「ヴィルキス・・・」

 

「もっとも、もう一つの黒いパラメイルはリュガが選んだようだけどな」

 

「ちょっと待て、あの黒いパラメイルはいったい何なんだ?何か知っているようだが?」

 

「・・・あの機体はお前の父親が造ったものだ」

 

「親父が!?」

 

「5年前、エルド・黒鋼・ホクトがこの基地に現れて、あの機体を渡したのだ

 "こいつを乗りこなす奴は現れるはずだ。その時は渡してやってくれ"っと。

 それから、彼は行方知れずとなった」

 

5年前と言えば、両親は大きな仕事があると言って、出ていった時期だ。

それ以来から、帰ってこなかった。

 

「その時、俺の母さん・・・。いや、ミリル・黒鋼・ホクトと一緒じゃなかったのか?」

 

「いや、その時はお前の父親だけだった」

 

ジルの説明を聴きリュガは黒い機体に触れる。

 

(親父が残した機体だとすれば、俺がノーマになる事を最初から知っていたのか?)

 

果たして両親はいま、何処にいるのだろうか?

 

「名前とかあるのか?」

 

「無名だな。お前の父が息子につけろとな」

 

無名の機体というわけか。全く、親父も面倒な事をしてくれるもんだ。

 

「よし、お前の名はプルートだ」

 

黒い機体―――プルートと名付けるリュガ。

いざ、ガレオン級ドラゴンを討伐へ向かうとしよう。

其処に、ミランダがいた。

 

「・・・ココは?」

 

「部屋で落ち込んでいるわ・・・」

 

「なら、傍にいてやれ。親友のお前とならココも安心する」

 

そう言ってプルートに乗り込むリュガ。

 

「リュガさん!!どうか・・・死なないで」

 

リュガは親指をグッと立てている。

必ず、帰ってくるということだろう。

いざ、戦場の空へ――――。


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