クロスアンジュ 天使と竜の輪舞~デバステイター~   作:Mr.エメト

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黒き破壊者

ココを救出したその矢先に、ドラゴンの群が出現する。

ピンク色の小型ドラゴンが20匹、青黒い巨大なドラゴンが2体が出現した。

 

『スクーナー級が20匹、ガレオン級が2匹』

 

「ガレオン級が2匹!?」

 

「1匹でも厄介なのに、2匹もくるものか・・・」

 

驚くロザリー、悪態するヒルダ

 

『総員聞け!新兵教育は中止。

 まずはカトンボを殲滅し、退路を確保する!

 全機、駆逐形態!陣形空間方陣!』

 

「イェス!マム!」

 

パラメイルの基本形態であるフライトモードから人型のデストロイヤーモードへと変形し応戦を開始する。

 

「命令違反の処分は?」

 

『後にしろ』

 

「・・・イェスマム・・・」

 

サリアは銃をしまい、ゾーラたちと合流する。

 

「・・・ゾーラ隊長、俺たちはどうすればいい?」

 

『なんとか、逃げ切り生き延びろ!!私たちがドラゴンを引き付けておく!!』

 

「了解」

 

とにかく、逃げて生き延びるしかない

 

「アンジュ!!ミランダ!!とにかく、逃げるぞ!!」

 

だが、アンジュだけは命令を拒否していた。

 

「いやです!!私はミスルギ皇国に帰ります!!」

 

「いい加減にしろ!!

 パラメイルだって出撃1回分の燃料しかない!!皇国もどこにあるのかも解らない!!

 お前の身勝手な理由でココが死んでしまう所だったんだぞ!!」

 

「それでも構いません。行ける所まで行って・・・あそこに戻らずに済むのであれば・・・!!」

 

リュガは叱責しようとしたその時、小型のドラゴンたちがアンジュに狙いを定め襲ってくる。

 

「ひぃっ!?いやあああああああああああっ!!」

 

恐怖に駆られたアンジュは半狂乱し、その場を離れたのだった。

滅茶苦茶な軌道だが、それでもドラゴンから逃げているようだ。

 

『ガレオン級の一体が、リュガ機を追ってます!!』

 

「なにっ!?」

 

オペレーターから最悪な事を言われたその時、猛獣のような雄叫びが後方から響く。

ガレオン級ドラゴンが俺を追いかけている。

リュガは上手く減速し、ガレオン級ドラゴンの下を掻い潜り、逃げる。

だが、いつまでも逃げ切れるわけではない、やられてしまうのも時間の問題だ。

 

「ミランダ!!こっちに来てくれ!!」

 

ミランダを呼び寄せて、ココを抱きかかえて移す。

 

「リュガさん、何を・・・?」

 

「俺が囮になる。お前たちは、アルゼナルまで退避しろ」

 

「そ、そんなの駄目です!!」

 

「急げ、時間がない!!」

 

リュガはそう言ってガレオン級ドラゴンへと向かう。

 

「ガレオン級は凍結バレットで心臓などの体組織を完全凍結させて殺すんだよな。

 だが、倒せるのか・・・?」

 

逃げてもいずれは、食われてしまう。

生き延びるには・・・倒すしか方法がない。

回避しつつ、見計らって、変形しようとするがドラゴンの尾が左の翼に当たり破壊された。

 

「しまっ・・・!!」

 

機体が不安定になり、スピードが出ない。

このままでは、喰われてしまうという絶体絶命のその時だ。

突然、夜を切り裂くように漆黒のパラメイルがリュガの前に現れたのだ。

 

「なんだ!?一体どこから!?」

 

驚くことに、操縦席には誰もいない。

考えるのは後にして、今の機体を捨てて漆黒のパラメイルに乗り込む。

操縦桿を握ると鼓動がし、脳内にフラッシュバックする記憶。

断片的だが、幼い時の記憶だった。

 

――煙草を咥えている父親。

 

――優しく微笑む母親。

 

――地下倉庫で見た、黒い巨人。

 

頭を振るい、状況を再確認する。

ガレオン級ドラゴンの体から、無数の光弾を撃つが全て回避する。

操縦桿を操作し、フライトモードからデストロイヤーモードへと変わる。

その姿は全身が黒く、騎士あるいは闘士、頭部には二本の角がある。

まるで、遠く切り離された半身が戻ってきたかのような気分だ。

 

「・・・征くぞ!!」

 

エンジンをフルスロットルし、ドラゴンへと向かう。

ドラゴンが口を開けて、噛み砕かんとするが、リュガは掻い潜る

 

「ああああああああああああああっ!!」

 

右手が杭打機パイルバンカーとなりドラゴンの腹部に連続で撃ち貫く。

武器を換装し、今度はチェーンソーとなり突き刺す。

エンジン音が入りドラゴンの肉と骨を削る音が響き下まで一気に振り下ろし切断する。

 

【ギャオオオオオオオオオオオオオオオンッ!?】

 

右半身が切り落とされ、堕ちるドラゴン。

リュガは止めを刺しに、追撃する。

 

「砕けろぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

武器を換装し、油圧クラッシャーとなり、手首部分が回転しドラゴンの心臓を穿つ。

完全に生命が停止したドラゴンは海へと落下した。

リュガの機体はドラゴンの返り血を浴びていたか血に塗れていた。

目に入ったのは小型ドラゴンたちに追いかけられているミランダとココの姿だ。

 

「もう・・・ダメ!!」

 

ミランダとココは絶望しかけ、死を覚悟する。

ドラゴンは急降下し襲い掛かろうとしたが、リュガ機がドラゴンの首を掴み圧し折る。

死体を後続のドラゴン目掛けて投げ、左手を換装しダイヤモンドカッターを射出し首を撥ね飛ばす。

ココとミランダが無事なのを確認した後、もう一匹のガレオン級ドラゴンを倒しに向かう。

 

 

◇◇◇◇

 

 

一方のゾーラ隊。

小型のドラゴンの群を片付けて、最後に残ったガレオン級ドラゴンを仕留めに入る

 

「後はお前だけだよデカブツ、コイツでトドメだ!」

 

最後のガレオン級ドラゴン一体となった所でゾーラは油断していた。

 

「いやああああー!」

 

錯乱したアンジュがゾーラの機体に取り憑き身動きを封じてしまってたのだ。

 

「アンジュ、何をやってるのよ!?」

 

「何しやがる!?アンジュ離れろ!」

 

この隙にガレオン級ドラゴンは翼でゾーラとアンジュを両方を叩き落す。

叩き落された二機は今にも地上に墜落しそうになった。

 

「ゾーラァァァァァァッ!!」

 

ヒルダが悲痛な叫びをあげる。

最早、助からないと誰もが思ったその時だ。

 

―――ガキンッ!!

 

墜落しそうになった二機に、チェーンフックが巻き付いて阻止したのだ。

後ろを見ると、左手がクローラークレーンとなっている黒い機体――リュガが二人を助けたのだ。

 

「・・・なんとか、間に合ったか・・・」

 

「その声はリュガ!?貴方の機体なの!?」

 

「おお、いつの間に乗り換えたの?かっこいいジャン!!」

 

ヴィヴィアンは興奮しているが、リュガは全く聞いてない。

もう一匹のガレオン級ドラゴンはいなくなっている。

何処かへと逃げたのだろう。

 

「・・・みんな、基地まで引き返すわよ。追撃するのも無理ね」

 

サリアが命令し、基地へと帰還する。




ミランダとゾーラは生存せる方向ですが、ゾーラはしばらく戦闘に参加させないことにします。
遂に主人公機が登場、無人機で助けた理由は後ほど明かします。

◇登場した工具・重機◇

パイルバンカー(巨大な金属製の杭を高速射出し、装甲を破壊する)

チェーンソー(対象物を切り裂く電動ノコギリ)

油圧クラッシャー(破砕機とも呼ばれる。固い装甲を破砕・粉砕する武器)

ダイヤモンドカッター(ダイヤモンドでコーティングされた丸ノコ。射撃にも使える)

クローラークレーン(先端がフックとなっている。釣りの要領で捕縛したり絡め取って叩きつけたりに使う)

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