クロスアンジュ 天使と竜の輪舞~デバステイター~   作:Mr.エメト

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まつろわぬ魂・後編

◆アルゼナル 食堂◆

 

ここは食堂。

兵士と言えど腹が減っては戦はできぬ。

新人のココとミランダは今日の献立を貰っている。

 

「わあー!」

 

ココはデザートのプリンを貰って大喜びだ。

 

「またとっとくの?たかがプリンでお子様だなあ~」

 

「もうお姉さんぶらないでよ。あ、リュガさんにアンジュさんじゃないですか!」

 

リュガとアンジュが座っている席を見つけたココとミランダ。

向かおうとするが―――。

 

「おや?これはこれは痛姫さま。あんなに何でも出来ちゃうお方が好き嫌い~?」

 

「しっかり食べないといざっていう時に戦えないよぉ?」

 

ヒルダとクリスが嫌味を言う

 

「・・・よく食べられますわよね」

 

「あらあら、痛姫さまのお口には合いませんでしたかあ?」

 

ロザリーがアンジュの食事を奪い空になった食器を返す。

新人いびりというやつか・・・。

 

「・・・あんた、そんなに食ったら太るぞ」

 

リュガの発言にロザリーは食を止め、キッと睨む。

 

「フフフ、言われたわねロザリー」

 

ヒルダがくくくっと笑う。

 

「う、ウルサイ!!生意気なんだよ!!」

 

ロザリーが水をぶっかけようとしたが、リュガはすかさずコップを奪いそのまま握りつぶした。

掌を広げると、コップの破片が落ち、血がポタポタと落ちる。

 

「これがあんたの手だったら、骨が粉々になっていたかもな」

 

ゾッとするロザリーとクリス。

 

「あんた、イタ姫様の味方するつもり?殺人鬼さん」

 

「五月蝿いやつを脅しただけだ。友人なら、躾けぐらいはしておけ」

 

リュガはそう吐き捨てて、席を立ち離れる。

 

「イタ姫さま、一つ忠告しておくわ。

 此処はもうアンタのいた世界じゃない。

 早く順応しないと・・・死ぬわよ」

 

ヒルダはアンジュにキツイ一言を言うが、それでもアンジュは完全に無視し席を離れた。

二人の前に、同じ新人の女の子が現れ、ココはアンジュにプリンをあげている。

 

「あ、私はミランダ。こっちの子はココですよろしく!」

 

「新人同士これからよろしくお願いします!」

 

緑髪の子ミランダ、藍色の髪の子ココが自己紹介する。

 

「・・・リュガだ、今後ともヨロシク」

 

「は、はい!」

 

「さっき、アンジュに何を渡したんだ?」

 

「私の大好物のプリンを是非アンジュ様には食べてもらいたくて!」

 

「・・・プリン?」

 

「この子、アンジュにベタ惚れのようでさ」

 

「ああ・・・そういうこと」

 

この子の精一杯の気持ちを今のアンジュは微塵も理解できんだろう。

楽しそうに話すココ達の様子を見てふと思い出す。

ミスルギ皇国にいる友人たちは元気にしているのだろうか?

 

「どうしたんですか?」

 

「・・・ああ、向こうの友人の事を思い出してたんだ」

 

「お友達の事を思い出していたんですか?

 私達は物心付く前から此処にいたからお母さんやお父さんの顔を全然知らないし」

 

ココやミランダの様な年端もいかぬ少女達は赤ん坊の頃から此処に連れてこられ兵士として育てられてきた。

残酷すぎるルールを作ったもんだな。

 

「あの、もしよろしければ・・・私達と友達になってくれませんか?」

 

「・・・なぜだ?」

 

「リュガさんが寂しくないように、友達になりたいんです。

 もっと、外の世界のことについて知りたいです」

 

リュガは微笑んでココとミランダの頭を撫でる。

 

「ありがとうな。ココ、ミランダ」

 

 

◆アルゼナル ジャスミンモール◆

 

 

アンジュは紙とペンを購入したようだ。

だが、何に使うつもりなのだろうか?

 

「そういえばアンジュさんとリュガさんは外の世界ではどうやってお買物とかしてたんですか?」

 

「・・・望めば何だって手に入りました。

 望んだ物が手に入る、望んだ自分がある。

 かつての暴力や差別が無い。困った事は何一つ無くマナの光に満ちていました」

 

反吐が出そうな気分だが、何も言わずにしておく。

 

「リュガさんも同じような生活を?」

 

「俺とアンジュの生活は全然違うな。

 ただ、普通に生活して友達とバカ騒ぎして楽しく暮らしていたぐらいだ」

 

「本当にあったんだ・・・魔法の国!」

 

一方のココはアンジュの話に関心しているようだ。

 

「ありがとうございました」

 

「あ、あの!」

 

それぞれの部屋に戻ろうとしたがココに呼び止められる。

 

「ま、また明日アンジュ様!リュガさん!」

 

「アンジュリーゼです」

 

「またな」

 

アンジュは本名で呼ぶように訂正し、リュガは手を振って別れる

 

~数時間後~

 

シャワーを浴び終えて、自室に帰ろうとした時、アンジュの声が聞こえた。

覗いてみると、そこは司令室のようだ。

アンジュはジルに他国の上層部に解放するよう働きかけをと明記した嘆願書を出してくれるようにと頼み込んでいた。

なるほど、昼間買った紙とペンはこの時に使おうとしたのか。

 

「まだ分かっていないの貴方は・・・」

 

エマも流石に呆れている。

 

「いやはや困ったものですよ。そいつの頭の固さには」

 

そこに、ゾーラが現れ、アンジュの頑固な態度にやれやれとしている。

 

「教育がなってないぞゾーラ」

 

「申し訳ありません指令。だけど男の方は良い順応性じゃないか」

 

「・・・それはどうも」

 

「では、皇女殿下をお借りします」

 

「キャ!?ちょ、ちょっと!?」

 

ゾーラは嫌がるアンジュを強引に何処かに連れて行った。

 

「はい・・・なんですって!?司令!」

 

「きたか!」

 

「「エマージェンシー!第一種攻勢警報発令!」」

 

エマにジルは冷静に警報を流すようオペレーターに言うように促した。

 

「リュガ、お前も早く準備しろ!」

 

「・・・了解」

 

 

◆アルゼナル 格納庫◆

 

 

「全電源接続!各機、ブレードエンジン始動!弾薬装填を急げ!」

 

格納庫にメカニックらしい少女の慌ただしい声が響く。

 

「アンジュ貴方は後列一番左の、リュガは一番右のに搭乗するのよ」

 

サリアがこれからの作戦を指示する。

リュガに充てられたのは量産機の機体だ。

 

『第一中隊は各自準備完了次第対応せよ!』

 

「準備完了!いくぞ!」

 

エマの指示にゾーラ隊長が返答を告げる。

 

「生娘共、少年、初陣だ!訓練通りにやれば死なずに済む。

 お前達は最後列から援護隊列を乱さぬよう落ち着いて状況に対処せよ!」

 

「いぇ、イェス!マム!」

 

「了解!」

 

「・・・これって・・・」

 

ゾーラ隊長の指示にアンジュ以外の皆が了解の意を返した。

 

『全機発進準備完了!誘導員が発進デッキより離脱次第発進どうぞ!』

 

「よし!ゾーラ隊出撃!」

 

オペレーターの発令により誘導員達が離れたのを確認した直後、ゾーラ隊長が号令しベテランパイロット達が一足先に出撃した。

 

「大丈夫、落ち着いて行動しろ」

 

「う、うん、いきます!」

 

初の実戦で不安がるココとミランダに一声かけ少しでも不安を和らげてあげた。

ココ達が出撃したのを確認しリュガも出撃した。

 

『モノホンのパラメイルはどうだ?振り落とされるんじゃないよ!』

 

「「は、はい!」」

 

「了解」

 

ゾーラの通信に俺達も返す。

 

『目標視認距離まで後一万!』

 

『よーし!各機、戦闘態勢!フォーメーションを組め!』

 

『イェス!マム!』

 

「了解!」

 

オペレーターからの計算結果を見たゾーラは各機に指示を出す。

 

「位置についてアンジュ、リュガ」

 

「了解」

 

サリアの指示にリュガは即座に従ったがアンジュは―――。

 

『アンジュ機、離脱!』

 

「・・・チッ!」

 

「・・・あの女」

 

サリアとリュガはアンジュを追いかける

 

「アンジュ戻って!もうすぐ戦闘区域なのよ!?」

 

「私の名前はアンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギです。

 私は私のいるべき世界、ミスルギ皇国へと帰るのです!」

 

「お前は、今の状況を解っているのか!?」

 

「持場に早く戻りなさい!でないと貴方を命令違反により今此処で処罰するわよ!」

 

サリアは銃を取り出し、アンジュを脅しにかけるのだが―――。

 

「アンジュリーゼ様、私も、私もミスルギ皇国へと連れて行って下さい!」

 

なんと、ココがアンジュに近づいて、連れて行ってほしいと頼みに入る。

 

「え!?な、何を言ってるの、ココ!?」

 

「私も魔法の国に!」

 

「ココ、今はそんなことをしている場合じゃない!!」

 

「そうよ!ココ考え直して!」

 

『真理が開きます!』

 

そこでオペレーターからの通告が入り、空に赤い稲妻が突如走る。

空を見上げると、何かが光る。

言葉を発するよりも、リュガはココに近づいて、強引に引っ張り、その場から離れる。

 

「リュガさん!?」

 

その直後、レーザーのようなものが、ココのパラメイルを破壊し水柱が上がる。

今のがドラゴンの攻撃だろう、一歩遅かったらココが餌食になるところだった。

そんな中空間に歪みが生じドラゴンの群が出現する。

 

『ドラゴン・コンタクト!』

 

「・・・あれが、ドラゴン・・・」

 

「・・・な、なんなの?・・・これ・・・」

 

アンジュも酷く混乱していたが、ドラゴンは雄たけびを上げて、睨んでいた




ココの死亡フラグは回避させました。
やっぱ、殺すのは可哀そうですので・・・。
ミランダとゾーラがどうなるのかはお楽しみに~。

アンジュの覚醒は墓地のイベントの時に。

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