クロスアンジュ 天使と竜の輪舞~デバステイター~   作:Mr.エメト

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まつろわぬ魂・中編

急遽配給された男性用のパイロットスーツをサリアから受け取り着替えて訓練場へ向かう途中・・・。

 

「・・・んっ?」

 

どういうことか、アンジュが一糸纏わぬ姿をしておりドアを叩いていた。

 

「・・・何してんだ?」

 

「キャッ!?み、見ないでください!!」

 

しゃがんで、なんとか裸体を隠すアンジュ。

何が何だかさっぱりだが、ドアを軽く叩く。

 

「サリア副長、リュガだ」

 

ドア越しに声をかけると、扉が開きサリアが顔を覗く。

 

「あら、終わったのね」

 

「なんで、アンジュが真っ裸になって追い出されているんだ?」

 

「その子が、『そんな服を着るくらいなら、裸になった方がマシです!!』っと言ったから要望に応えただけよ」

 

アンジュのパイロットスーツを見ると血痕がある。

前の持ち主のか、女性だったら着たくもないし呪われそうだ。

結局、独りで着替えたことの無いアンジュはサリアの手伝いで着ることができた

 

 

◆アルゼナル 医務室◆

 

 

「はーあ~。こんなに真っ赤に腫れ上がっちゃってぇ~。ジュクジュクになってるじゃない~」

 

「ぐ・・・痛っ!?」

 

「痛い?痛い?痛いよねえ!」

 

人が痛がっている様子を見て危なく興奮している女医。

 

「酒臭いよ、マギー!」

 

「あいたっ!?ゴメンねえ~」

 

自身の腕を治療しているアルゼナル軍医マギーのおふざけにジルは鉄拳する。

 

「ジャスミン、そっちはどうなの?」

 

「外側のボルトが全部イカレちまってる。ミスルギ皇国製の奴に替えとくからちょっと値が張るがね」

 

アルゼナルの唯一の市場"ジャスミン・モール"の店主ジャスミンがジルの義手の修理して結果を伝える

 

「指令部にツケとくよ」

 

「毎度あり、だけどもうちょいデリケートに使って欲しいものだねえ。

 そいつはアンタ程頑丈に出来ちゃあいないんだ」

 

「いつも悪いね。じゃじゃ馬が暴れてさ」

 

ジャスミンの注意に申し訳なさそうにジルは言う。

 

「ああ、例の皇女殿下かい?」

 

「いいのかねぇ?皇女殿下と殺人鬼の男性を第一中隊なんかにブッ込んじゃってさ」

 

「・・・それでも駄目なら死ぬだけだよ」

 

ジルは不敵に笑いそう言い放つだけだった。

 

 

◆アルゼナル 訓練場◆

 

 

「パラメイルデストロイヤーモード起動!シュミレーター起動!フリーダムチャンバー、チャージ完了!」

 

「フリーダムチャンバーチャージコンプリート!」

 

「アレスティングギアリリース!」

 

「あ・・アレスティングギアリリースコンプリート!」

 

訓練場に着くと既に訓練は開始されていた。

リュガとアンジュはマシンに座り、サリアが説明をする。

 

「これに乗り込んでドラゴンと戦うのか・・・」

 

「そう、パラメイル。私達ノーマの棺桶よ」

 

「・・・棺桶ね」

 

「何をさせようというのですか?この私に・・・」

 

アンジュもサリアの棺桶発言を気に出来ない程混乱しているようだった。

 

「最初から出来るなんて思ってない。後は飛ぶ感覚を体に叩き込んで」

 

「・・・まぁ、善処する」

 

バタンッと閉めて、サリアは操作する

 

「リクエストリフト・オフ!アンジュ機、リュガ機、ゴーフォールド!ミッション07スタート!」

 

サリアの号令で景色が一変する。

 

「ぐっ!!」

 

「うきゃああー!?」

 

次の瞬間、凄まじいGが二人に襲い掛かってきた。

 

「シュミレーターでこれだけのGがかかるのか・・・!」

 

「な、何なのですかコレは!?」

 

たかがシュミレーターと侮りGの負荷に驚き、手を離しそうになったが耐える。

一方のアンジュは悲痛の声を上げ、操縦桿を手離してしまう。

 

「アンジュ、操縦桿から手を離さない!上昇!そして旋回!

 リュガ、ちゃんと前を見て!実践はこんなもんじゃないわよ!」

 

サリアの更なる号令により機体の動きが変わる。

必死についていこうと踏ん張る。

 

「最後に急降下訓練に移る!降下開始!」

 

「急降下!?うおおおっ!?」

 

「ひゃああああー!?」

 

「急いで!地面に激突してしまうわよ!機器を上げて!」

 

サリアは万が一の時の為に緊急停止ボタンに手を伸ばしておいたが―――

 

(でも、なんだ?初めて乗るのに、知っている―――?)

 

リュガの目つきが変わり、操縦桿を握り、地面に激突する前に上昇し、停止する。

 

「この感覚は・・・エアリア!!」

 

一方のアンジュもスポーツのやり方に似てすぐに機体を立て直し、遥か上空で停止したのを確認した。

 

「何なの・・・この子達は・・・」

 

サリアは初めてのはずの二人のシュミレーション結果に驚愕の意を隠せない。

 

「ほう・・・中々に良い筋をしているようじゃないか」

 

「隊長!」

 

訓練を終えたと同時に丁度、遠距離砲撃演習も終わったゾーラ隊長。

 

 

◆アルゼナル 浴室◆

 

 

「いやあー、大したもんだな皇女殿下とリュガは。

 初めてのシュミレーターで漏らさないなんてなあ!

 なあ、ロザリー?」

 

「い、いえ私の初めてはそのですね・・・」

 

ゾーラの質問に目が泳ぎつつ見当違いの返答をするロザリー。

 

「気に入ったみたいね、あの子と彼」

 

ロザリーのかわりに返答するヒルダ。

 

「ああ、悪くない」

 

「ねえねえ、サリア~。アンジュとリュガって何?超面白いんだけど~!」

 

ヴィヴィアンにそう質問され一番端側でシャワーを浴びているアンジュと今はこの場にはいないリュガの能力を見て感想を言う

 

「・・・今は、凄いの一言しか言えないわね」

 

 

~数日後~

 

 

エマがここ数日間で行ったアンジュとリュガの各技能テストの結果をジルに報告していた。

 

「例の新人達ですが基礎体力、反射神経、近接対応能力、更に戦術論のリタイヤ全てにおいて平均値を上回っております。

 特にリュガは、恐ろしいほどの伸びを見せています」

 

「優秀じゃないか」

 

「ノーマの中では、ですね」

 

エマの皮肉にジルは苦笑いを返し、エマは敬礼し別れた。

一方のジルは格納庫に足を運んでいた。

 

「パラメイルの操縦敵性・・・特筆すべきものがある・・ならば・・・」

 

そういう彼女の前には二機のパラメイルがあった。

一つは白、もう一つは黒のだった。


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