クロスアンジュ 天使と竜の輪舞~デバステイター~ 作:Mr.エメト
見知らぬ土地の廃墟でアンジュたちが集まっていた。
全員、気絶していたがリュガにある舌が伸びて来て、頬を舐める。
それに目を覚ましたリュガはその方を見ると、ドラゴンが見ていた。
「うお!?」
リュガはそれに驚くが、そのドラゴンは自分に指を指しながらジェスチャーする。
『アタシアタシ!』
「……あっ!?お前ヴィヴィアンなのか?」
『そうそう!』
再びドラゴン態へとなっているヴィヴィアンは「キュ~イ!」と吠えた。
『あれれれ?そういえば、リュガはこの姿を見るの初めてだよね?なんで声が解るの?』
「……まぁ、半分はドラゴンの血が流れているから声とか解ったんだろうな。とにかくアンジュを起こしてくれ」
リュガは気絶しているタスクとシュレディンガーを起こす
「おい、タスク。シュレディンガー。起きろ」
「う、う~ん………あ、あれ、リュガ?」
タスクとシュレディンガーは目を覚ました。
「確か、我々は海にいたはずだか……」
「けど、廃墟の場所に居る。どうなっているんだ?」
ヴィヴィアンに起こされたアンジュは辺りを見渡す。
「え?此処、何処!?」
全員は通信機でアルゼナルに通信を入れていた。
「こちらアンジュ、アルゼナル応答せよ」
しかし……何度も通信を試みるも誰も出ない。
「どうなってるのよ!」
「しかし、大昔に栄えた文明って感じだが……俺たち未知の世界に飛ばされたのか?
それに原因があるとすれば……ヴィルキスが蒼くなったところだよな」
「ヴィルキスやプルートは特別だ。君たちも戦闘でそれを経験したはずだ」
シュレディンガーの言葉に先程の戦闘を思い出す。
あの時のプルートとヴィルキスは戦艦相手に叩き壊した。
アンジュは居ても立っても居られないのか、ヴィヴィアンと共に偵察へ向かう。
空を飛んで、いるとどこもかしこも廃墟が広がるが、ある建物が目に入る。
「アケノミハシラ……!?」
◆◆◆◆
「ここがミスルギ皇国!?」
「ええ、宮殿も街も綺麗さっぱり無くたっていたけど。あれはアケノミハシラだった、見間違えるはずがないわ」
アンジュは此処がミスルギだと言う証言にタスクとリュガはただ唖然とする。
「でもおかしいの、アケノミハシラも街もずっとずっと大昔の前に壊れたって感じだった」
「俺たちは未来世界に飛ばされたということか?」
何が何だかわからない状況だ。
小型ロボットがある放送を流しながら横を通り過ぎて行く。
『こちらは首都防衛機構です。生存者の方はいらっしゃいますか?
首都第3シェルターは今でも稼働中、避難民の方を収容───』
その言葉を聞いて、一行は第3シェルターに向かう。
シェルターに入ったが中の人々達が白骨化した死体ばかりだった。
「……餓死したのかひでぇな」
シュレディンガーはゴム手袋を両手に付けて死体を調べる。
「……信じられんことだが、数百年以上の遺体のようだ」
衝撃の真実に言葉を失う。
すると、モニター画面が開かれる
『管理コンピューターひまわりです。ご質問をどうぞ』
「一体どうなってるの!?生きている者はいないの!? 一体何があったの!?」
『ご質問を受け付けました、回答シークレンスに入ります』
辺りが暗くなり、何かの映像が映し出される。
あたりが戦争している映像だった。
『実際の記録映像です。統合経済連合と汎大陸同盟機構による大規模国家間戦争――――。
"第七次大戦"、"ラグナレク"、"D-War"などと呼ばれる戦争により地球の人口を11%まで減少』
その事にリュガ達は思わず息を飲む、すると目の前にある機体が目に映る。
『その状態を打破すべく、連合側は絶対兵器―ラグナメイル―を投入』
それはエンブリヲが操っていた機体だった。
しかもそれだけじゃない。リュガ達の目にアンジュが乗っている"黒いヴィルキス"が6機も映し出された。
「あれは……ヴィルキス!?」
黒いヴィルキス達は光学兵器を発射し、アケノミハシラを壊す映像が映し出される。
『こうして戦争は終結、ラグナメイルの次元共鳴兵器により地球上の全ドラグニウム反応炉が共鳴爆発。
地球は全域に渡って生存困難な汚染環境となり全ての文明は崩壊しました。以上です、他にご質問は?』
「世界が……滅んだ?」
アンジュとタスクは目の前の光景に驚きを隠せなかった。
そして、リュガはその当時崩壊した時期を問う。
「……それは何時の出来事だ?」
『538年193日前です。
世界各地2万976ヶ所のシェルターに、熱、動体、生命反応なし。
現在地球上に生存する人間はあなた方4人だけです』
コンピューターはそう答え、リュガはモニター画面に向けて殴打し割れた音が響く。
「ふざけやがって……」
◆◆◆◆
辺りは夜になり、シェルターに残っていた食べ物を集めて食事をとるリュガたち
「……しかし、どうしたもんかねぇ」
「ふざけないでよ!! 私はこの目で見た物しか信じない!!」
「……てめぇはそういう性格だったの忘れてたな。少し現実を受け入れろよ、ワガママ娘!!」
お互いイライラが募っていたのか、口でゲンカになる。
タスクはアンジュを、シュレディンガーはリュガをなだめに入る。
「こんな時にケンカしてもなにもならん。落ち着け二人とも。アンジュ、君もだ」
「貴方に関係ないでしょう?それにジルの作戦。
目的の為なら何人犠牲しても良い考えなんて潰れても良かったのよ。
あんな最低最悪のゴミ作戦、笑えるわ」
それを言った途端にタスクが……。
「じゃあ、俺の両親もゴミに参加して無駄死にした………そう言う事か」
「えっ?」
タスクが突如言いだした事にアンジュも振り向く。
「俺達、古の民は、エンブリヲとカノープスから世界を解放する為にずっと戦って来た。
父さんも母さんもマナが使えない俺達やノーマが生きて行ける世界を作ろうとして戦い……死んだ!
死んでいった仲間も…両親の思いも…全部ゴミだと言うんだな!!君は!!」
タスクは今まで見せた事のない静かな怒りの表情にアンジュは戸惑い、リュガは黙っていた。
アンジュは謝ろうとしたが、タスクはそのままどこかに行ってしまった。
しかし、タスクが言ってた奇妙な言葉があった。エンブリヲとカノープス。
「なぁ、シュレディンガー。タスクが言ってたエンブリヲとカノープスってなんだ?」
「エンブリヲはヴィルキスと同じラグナメイル-ヒステリカを使う男。
カノープスはエンブリヲと共に行動していた右半分仮面をつけた男。
10年前、私やパブロフ、ヘンペル、ラプラス、カルネアデス、君の母であるミリルは二人の元で働いてた」
「なんだと…!?」
「だが、二人の所業を知り、タスクくんたち古の民と秘密裏に計画を練った。
ヘンペルは私やラプラス、カルネアデスに肉体改造を行い常人とはかけ離れた肉体強化に成功した。
リュガ、君が20歳に向かえてマナが枯渇する技術はヘンペルのおかげでもあるからね」
「そのヘンペルは……?」
「……ヴィルキスを強奪し設計図を奪う事に成功したが、その犠牲になってしまった。
彼の死を無駄にしないためにもエンブリヲとカノープスはなんとして倒さなければならない」
シュレディンガーの言葉をただ、聞くリュガとアンジュ。
アンジュは命をかけたその計画にタスクの両親が関わり、命を落とした。
あんな暴言を言って後悔をした。
◆◆◆◆
翌日――――。
(……タスクにどう言えば……)
どうにかタスクに謝りたいが償う方法がない。
アンジュは地下の店にある物を見つけ、それを見て何かを思いついた。
一方、機体の修理をしているリュガとタスク。
シュレディンガーはヴィヴィアンをなんとか戻せないか色々と診断していた。
「……タスク、これ」
アンジュが戻ってきて手には金色に輝くネックレスだ。
「あの、に…似合うかなと思って……それだけ……」
「……ありがとう、アンジュ」
タスクはアンジュが持ってきてくれたネックレスを首にかける
リュガはフッと笑う。
「タスク、アンジュの事を許してくれないか?生意気で融通が効かないが、真っ直ぐなんだよ」
「うん、解っている」
「それにさ、お前らは人どうしだから、いいんじゃねぇか?俺みたいな半端な奴と違うしさ」
「どういうこと?」
「……親父に会って、真実を知ったんだよ。
俺はドラゴンとノーマの間に生まれて、プルートの中にさ母さんの魂が入っているって……
SFとかファンタジーみたいな話じゃねぇか」
リュガの出生とプルートの秘密を知り驚愕するアンジュとタスク
「怒りが爆発して、グチャグチャになって何もかも消え去りたいと思ったさ……。
けどさ、昨日のタスクとシュレディンガーの話を聞いて、生きようかなと思ったんだよ。
命をかけて死んでいった連中のためにも、エンブリヲとカノープスを倒さないといけないからさ」
過去は変えることも戻すこともできない。
例え、自分の正体が何であれ、生きていくことを決めたリュガ。
もうリュガには迷いは無くなったようだ。
「……さてと、飯の準備でもしますかな。二人は休んでなよ。飯ができるまで愛でも語らってな~」
リュガのぶっきらぼうな言葉に顔を赤くするアンジュとタスク。
シュレディンガーとヴィヴィアンも空気を読んだのか、リュガの後に続く。
「私ってホント駄目ね、何をやってもすぐに頭に血が上って…」
「君は元皇女。俺達とは考え方が違うんだからさ…」
二人はつまらない事に思わず笑いだす。
目線が近い事にタスクとアンジュは少しばかり頬を赤くする。
「ねえ…もっとくっ付いたら?」
「えっ!?い、いや……!?」
アンジュの誘いにタスクは真っ赤な顔で慌ててしまい、戸惑いながら言う。
「お、俺はヴィルキスの騎士だ!!君に手を出すなんてそんな!!」
「無人島の件やミスルギ皇国の件で散々、私の股に突っ込んだのに?」
痛い所を突かれて、タスクは黙り込んでしまう。
「もしかして、私の事…嫌い?」
「そ、そんな事ある訳ないだろう!!」
「それじゃあ何で……?」
「そ、それは……恐れ多くて……」
アンジュはタスクに意外な言葉に思わず振り向く。
「10年前…いや、正確には538年前か。
リベルタスが失敗して右腕を失くしたアレクトラは二度とヴィルキスには乗れなくなり、
俺の両親も仲間も死んだ。俺にはヴィルキスの騎士の使命だけが残された」
タスクの話す事にアンジュはただ黙って聞いていた。
「でも……俺は怖かった、見た事も会った事もない誰かの為に戦って死ぬ使命が。
俺は……逃げた、あの深い森に戦う理由生きる理由も見当たらず、ただ逃げた。
そんな時に君と出会った」
「えっ?」
「君は……戦っていた、抗っていた」
アンジュが必死に戦っている姿にタスクはどうやら気づかされた様なのだ。
それを聞いたアンジュは顔を上げた。
「あれで目が覚めたんだ。俺……何やってんだろうって。
あの時やっと騎士である意味を見つけたんだ。俺は歩き出せたんだ。
押し付けられた使命じゃない、自分の意思で……だから俺は君を護れればそれで良いと──」
「ヘタレ」
アンジュの言葉にタスクは彼女の方を見て、アンジュは微笑みながら言う。
「でも純粋」
アンジュはタスクの手を握って、それにタスクは顔を赤くするがアンジュは突如暗い顔になる。
「私は血塗れ。人間を殺し…ドラゴンを殺し…血の繋がりのある私の兄ですら死に追いやった。
私は血と罪と死に塗れてる…貴方に守ってもらう資格なんて」
「そんな事ない!アンジュ!君は綺麗だ!!」
タスクの言葉にアンジュは一瞬目を大きく開き、タスクはアンジュの両肩を掴む。
「君がどれだけ血に塗れても、俺だけは君のそばにいる!」
「……暴力的で気まぐれで好き嫌い激しいけど……それでも?」
アンジュはその事をタスクに言うと、タスクは笑みを浮かばせて言う。
「ああ、それでも」
その事を聞いたアンジュはタスクの信頼する事にようやく素直となり、そっと目を閉じて口を上げる。
タスクは答えるかの様にアンジュとキスをした……。
(全く、やっとか……)
(若いっていいものだな……)
(きゃあ~~~)
物陰に隠れていたリュガ、シュレディンガー、ヴィヴィアンはアンジュとタスクを見て喜んでいた
すると……急に暗くなり上を見るとガレオン級ドラゴンがこちらに降りようとしていた。
「アンジュ!!タスク!!全力で逃げろ!!」
リュガの言葉に反応した二人だが、逃げそびれてしまう。
機体は動けないし、逃げるのも無理だ。
「……襲ってこない?」
ガレオン級ドラゴンが首を垂れると二人の女性が乗っていた
「ようこそ、偽りの民達よ。我らの世界……"本当の地球"へ」