クロスアンジュ 天使と竜の輪舞~デバステイター~   作:Mr.エメト

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自分は人と違う生まれ方をしても、自分らしくいれますか?

リュガの秘密が明らかに――――。


誕生と真相

誕生と真相

 

 

ドラゴン達の襲撃があったその数日後…。

 

無数の島が浮いていて、その場所に社交場の様な丸くて大きなテーブルが置いてあった。

その場所に各国の首相達が集まっていた、その中にジュリオもいた。

彼らの回りにはアルゼナルを襲撃しているドラゴンの映像が映し出されていた。

 

「ドラゴンが自ら攻めて来るとは……」

 

「それにこのパラメイル、まさかドラゴンを引き連れて?」

 

一人の首相の目に映る映像にはあの不明機が映し出されていた。

 

「シンギュラーの管理はミスルギ皇家のお役目、ジュリオ・・・いえ陛下。ご説明を」

 

女性の首相がジュリオにシンギュラーの発生に付いて聞いてきた。

しかしジュリオは頭を傾げながら言う。

 

「それが、"アケノミハシラ"には起動した形跡が全くないのです」

 

「馬鹿な!あり得ん!」

 

肥満な首相がジュリオの説明に納得が行かない事に拳をテーブルに叩き付ける。

 

「直ちにアルゼナルを再建し、力を増強せねば」

 

「だが、そうも行かんのだ」

 

年老いた首相がマナで次の映像を映し出す。

すると光学兵器を発射するヴィルキスの映像が映し出された。

 

「この機体、まさか!」

 

「ヴィルキスだ」

 

それにはジュリオを含め各国の首相達は言葉を詰まらせていた。

 

「前の反乱の時に破壊された筈では?」

 

「アルゼナルの管理はローゼンブルム王家の役目。何故放置していた?」

 

それにはローゼンブルム王家の首相は表情を歪めながら黙る。

 

「監察官からは異常なしと報告を受けていた」

 

「まんまとノーマにあしらわれていたと言う事か、無能め」

 

「その襲撃の最中、こんな物を見つけたのだ」

 

一人の首相がマナで新たな映像を映し出す。それはリュガだ。

アンジュを処刑しようとした時に現れ、多くの被害を出した。

 

「うわっ!!こ、こいつは!!」

 

ジュリオは思わず椅子から落ちて、怯えながらリュガに指をさす。

 

「こ、こいつが私の脚を傷つけた奴だ!!」

 

「こいつは……パブロフの息子ではないか?」

 

「5年前、行方不明となったあの天才の一人のか?まさかノーマに」

 

各首相たちが驚き戸惑いを隠せなかった。

 

「落ち着きなさい、今はどう世界を守って行くかを話し合うべきです」

 

女性の首相が皆にそう言い聞かせ、一人の首相が言う。

 

「……ノーマが使えない以上、私達人類が戦うしかないのでしょうか?」

 

その事に各国の首相達は思わず戸惑いの声が上がる。

木の裏で聞いていた一人の男性が立ち上がる。

 

「え、エンブリヲ様!?」

 

一人の首相が思わず言う。世界最高指導者であるエンブリヲは皆の所に行く。

 

「本当にどうしようもないな」

 

「し、しかし、ヴィルキスや天才たちが造った兵器がある以上、アルゼナルを再建させるには……」

 

「ならば、選択権は幾つかある」

 

それに皆はエンブリヲに目線が行く。

 

「一、ドラゴンに全面降伏する」

 

それには思わず息を飲む首相達、エンブリヲは構わず言う。

 

「二、ドラゴンを全滅させる」

 

「そ、そんな!」

 

「三、世界を作り直す」

 

最後の選択肢にそれにはジュリオが反応する。

 

「全部壊してリセットする、害虫を殺し土を入れ替える。正常な世界に」

 

エンブリヲは肩にのって来た小鳥をなでながら言う。

 

「壊して作り直す、そんな事が可能なのですか?」

 

それにエンブリヲは笑みを浮かばせながら言う。

 

「すべての"ラグナメイル"とメイルライダーが揃えば、共に作り直すのだろう?期待しているよ」

 

「は、はっ!!お任せ下さい!エンブリヲ様!!」

 

ジュリオはそう言い、エンブリヲと他の首相達は消える。

残ったのエンブリヲだけとなったが、背後に黒と白の髪、右半分は道化師の仮面をつけた男性が立っていた。

 

「聞きましたよ。世界を創り直すのかい?」

 

「……ああ、上手くいかないものだね」

 

「なら、満足いくまで再創-リメイク-すればいいさ」

 

右手に赤、青、緑の玉を出してスッと握ると黄色の玉になった。

 

 

◇◇◇◇

 

 

アルゼナルでは損害が大きく外壁はどうにもならず、そのままの状態だった。

ジャスミンとシュージはドラゴンの死体を大きな穴に落としていく。

格納庫ではゼノン、メイ、ラプラスがパラメイルの修理、医務室ではマギーとテンゲンが負傷者の手当てをしていた。

サリアは反省房の中に居る、ヴィルキスに乗りこなせなかった事とジルの事でショックを受けていた。

墓場で黄昏れているリュガはゼランディアが気になっていた、プルートと黄龍號を知っていた素振り。

 

「問題が多すぎるなぁ、親父達の計画といい、ゼランディアといい…解らないことだらけだ」

 

はぁーとため息つく中、後ろからカルネアデスがリュガを抱きしめる

 

「ふふふ~こんな所で黄昏れているのかね少年?」

 

「……そういう、あんたはサボりか?」

 

「残念~、君に会いたい人がいるんだピョン♪」

 

カルネアデスの言葉に、タバコを咥えた男性が立っていた。

リュガはその男性を見て、驚く

 

「親父……!?」

 

「五年ぶりだな、リュガ」

 

天才が一人であるパブロフにしてリュガの父、エルド・黒鋼・ホクトだ

 

「5年もいなくなって……突然、帰ってくるなんて勝手すぎるぜ……ところで、母さんは?」

 

「そのことで話がある。ミリルは……別世界の人間、いやこっちの世界ではドラゴンと呼ばれている」

 

今、信じられない単語を耳にした。

ドラゴンといえば、襲ってくる生物のはず。

その母が‥‥‥‥ドラゴン?

 

「母さんが……ドラゴン?」

 

「この間、ドラゴンと共に襲ってきたあの連中はミリルとは同族なんだ。

 お前は人間とドラゴンの間に生まれた、人間離れした技を体験しているだろ?」

 

思い返してみれば――――。

ニックを貫いた時も、装甲車を持ち上げた時も、銃弾を回避できたもの、ノーマでは到底不可能だ。

リュガの脳内が整理がつかない状況、追い討ちをかけるようにエルドは口を開く。

 

「……そして、お前の機体プルートには、ミリルの魂が宿っている」

 

衝撃の言葉にリュガの頭が真っ白になりそうだった。

 

「うそ……だろ……」

 

「……あれは、機体が完成した日だ」

 

 

◆◆回想開始◆◆

 

 

――5年前、秘密研究室

 

「ミリル。ようやく完成したぜ」

 

「まだよ。この機体の本当の完成は魂を入れることで完成するわ

 マナ国家は思っている以上に恐ろしい存在だわ。それ以上の対抗をしなければいけないの。

 私が、この子に魂を吹き込むことによって……」

 

「本気で言ってんのかミリル!!そんな事をしたら……」

 

「私たちはリュガに酷い事をしたのよ。

 本当ならマナがいつまでも使えて争いの無い世界にいられたもの。

 でも、私たちがそうはさせなかった」

 

写真を取り出すミリル。

幼いリュガと一緒に写っている家族の写真だ。

 

「……あんな箱庭の世界にいても、本当に幸せなのかと言ったら違う、な」

 

「遺伝子操作、肉体強化、20歳を迎えた時にマナを減衰。

 全ては世界を破壊するための兵器として造った。

 リュガには苦しい思いはさせない、私はそれ以上を背負うわ」

 

親として何より母親として最低な事をした。

地獄に落ちて、苦しみを罪を全て受けていてもいいぐらいだ。

そして、機体を完全にするために母は自ら生贄となったのだ。

 

 

◆◆回想終了◆◆

 

 

「そして、ミリルはプルートに魂を入れて、完成したというわけだ」

 

「……肉体強化?マナを減衰?マナ国家を倒すための兵器?ドラゴンと人間の間に生まれた?」

 

リュガは頭を抱えて、首を横に振る。

普通に生まれたというわけではなく、SFやファンタジーによく話に出てくる生まれ方をした。

今の自分は人間でもない。ましてやドラゴンでもノーマでもない存在だ。

そして、プルートに母の魂が入っている―――。最初の出撃の時に無人操縦してきたのも。

リュガの心は怒りと憎悪の炎が燃えたぎり、エルドの胸ぐらを掴む。

 

「俺を兵器に仕立て上げ!!母さんの魂を機体に閉じ込めた!!

 あんたは…あんたらは人間が冒してはいけない事をやったんだ!!」

 

カルネアデスは辛い顔をして背けていた。

つまりラプラスもシュレディンガーも、この件を知っていた。

 

「……恨まれたっていい、怒りを俺にぶつけて殺しても構わない」

 

エルドはリュガの両肩を掴む

 

「俺は妻と息子を残酷なことをしたくなかった。

 あの神を倒せるためとはいえ、夫として父親として人間として最低な事をした。

 家族をバラバラにしたクズ野郎として受け入れるさ」

 

この話が本当だとすれば、今まで襲ってきたドラゴンは人間、つまり人間を殺してきた。

"同族殺し"-----、それが頭に過り罪悪感が襲う。

 

「……俺に今後、どうしろというんだ?教えてくれよ」

 

身体を震わし、涙を流し、天に向けて咆哮をする。

 

「俺は……俺はーーーーーーーー!!!!」

 

リュガの心と頭がグチャグチャで整理がつかない状況だ。

そんな時、放送が鳴り響く。

 

『こちらはノーマ管理委員会直属、国際救助艦隊です。ノーマの皆さんドラゴンとの戦闘を──」




リュガの設定としては原作のクロスアンジュでもあったように遺伝子組み換えによってドラゴンになった人間、機動戦士ガンダムSEEDの遺伝子操作に関することを参考につくりました。

機体に魂を入れる―――。最も頭が良いDr.メビウスことミリルは独自の理論や方法により成功、人造兵器という見方もできる。

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