クロスアンジュ 天使と竜の輪舞~デバステイター~   作:Mr.エメト

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決別の世界

決別の世界

 

 

全てはジュリオが仕組んだ罠だった。

アンジュが死なないという事から、シルヴィアを使ってミスルギ皇国で処刑させようという計画だった。

幽閉された父はあの後、処刑された。

アンジュはその中で泥沼に落ちているミスルギを完全に断ち切る事を決意する。

 

(ようやく目が覚めた、こんな世界……こっちから否定してやる!!)

 

そう決意したアンジュは歌い始めて、その場にいた者達は突然の事に静まり返る。

 

兵がアンジュを強引に絞首台に送り、首に輪を掛ける。

それをジュリオが笑みを浮かばせる。

 

「さらばだ、アンジュリーゼ」

 

ジュリオが手を上げようとした時に――――

 

―――ドオオオオオオオオオオオオン!!!!

 

大きな音が響き渡り、一斉に見るとそこには異様な光景だった。

装甲車を持ち上げるリュガの姿だ。それは人間でもノーマでも到底あり得ない業だ。

そんな異質で異形の光景を誰もが驚く

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

装甲車を国民たちに向けてブン投げた。

逃げ遅れた国民たちは悲鳴を上げて逃げるが何人かは巻き込まれて潰れていった。

 

「あ、あれは……殺人鬼ノーマだ!!」

 

国民たちは我先にと騒いで逃げるがリュガはそんな事に目もくれず息を深く吸い込み。

 

――ガァァァオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォン!!

 

猛獣、いや地獄に住む怪物の雄たけびをあげる。

誰もが足を止めて怯み、尻餅をつき怯えだす。

リュガは囚われているアンジュとモモカの所へ駆け出す。

 

「な、な、何をしている!!あのノーマを撃ち殺せ!!」

 

ジュリオの言葉に兵士たちは銃を構えて撃つが、リュガは右へ、左へと避けながら走る。

飛び掛かって兵士を殴り、蹴り飛ばす。

更に、兵士を盾にして襲いくる銃弾を防ぎ、死体を投げる。

 

「こ、この!!」

 

シルヴィアは鞭を振りかざすが、リュガは受け止めて鞭を取り上げる。

鞭を地面に叩き付け、兵士たちを鞭でしばく。

 

「はやく、アンジュを殺せ!!」

 

絞首は間に合わないだろうとジュリオは兵士たちに命じて銃殺しようとするが、閃光が奔る。

ジュリオの横を通り、搭乗している人物からナイフが投げ込まれ、アンジュを吊していたロープを切る。

その者は落ちて行くアンジュをキャッチするのだが……。

 

「うわっ!」

 

思わずバランスを崩してしまい落ちた。

 

「アンジュ!!大丈夫…か…」

 

駆け寄るのだが、大変な光景だった。

何とアンジュの股間に頭を突っ込んいて、アンジュは真っ赤な顔になる。

そいつはもがいていて、アンジュはさらに真っ赤にある。

 

「こ、こっの~~!!」

 

「ぐあっ!!」

 

アンジュはその人物の腹を蹴り飛ばし、壁に激突した瞬間、タスクの顔が現れる。

 

「た、タスク!?」

 

「無人島でアンジュと一緒にいた男か……」

 

「や、やぁ…久々だね。アンジュ、リュガ」

 

「護衛兵!何をしている!早く取り押さえろ!!」

 

くらんだ目から回復したリィザは、兵にアンジュを捕獲を命令する。

それに気づいたリュガはタクスに言う。

 

「タスク、アンジュとモモカを連れて逃げろ!!」

 

「解った!!」

 

タスクはアンジュとモモカを連れて、黒い空中バイクに乗り込む。

逃がすまいと追いかける兵士だが――――。

 

「悪いが……通行止めだ!!」

 

絞首台の柱の一部をもぎ取ったリュガは兵士たちを力任せに叩きのめす。

兵士が銃剣をリュガの腕に刺すが―――。

 

「……やったら、やられる覚悟はできてんだろう、な!?」

 

相手の頭を掴みアイアンクローをする。

メキメキとし、ゴシャリと頭蓋骨陥没させて、放り投げる。

刺さった銃剣を抜いて、叩き壊す。

 

「感謝してるわお兄様、私の正体を暴いてくれて。ありがとうシルヴィア、薄汚い人間の本性を見せてくれて

 

その事にシルヴィアは思わず引いて、アンジュはそのまま叫ぶ。

 

「さようなら、腐った家畜の故郷よ!!」

 

「なにをしている!!追ええええ!!」

 

リュガはナイフを取り出しジュリオ、目掛けて投擲する。

弧を描いたナイフはジュリオの右足に刺さる。

 

「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

「権力を貪るゴミクズが」

 

リュガはジュリオに吐き捨てて、アンジュたちの後を追いかけてミスルギ皇国から脱出する。

その光景を遠くから見ていた二人の人物がいる、シュレディンガーと黒髪の煙草をくわえた男だ

 

「あれが、貴方の切り札ですか」

 

「ああ、ここまで覚醒するとは思わなかったが、あいつは見事それを使いこなせたというわけだ」

 

「だが、自分の息子にこの世界の運命を託すことになるんだぞ?」

 

「俺たちはこんな腐った世界を変えなければならねぇ、利用する物はなんだってするさ。息子であろうともな」

 

新しい、タバコに火をつけて咥える。

 

「俺がアルゼナルに行く、息子に真実を告げないといけないからな」

 

 

◇◇◇◇

 

 

タスクが用意した輸送機に乗り込んだ四人。

 

「ごめんなさい、アンジュリーゼ様……」

 

モモカはジュリオに自分が利用されていた事に気付かず、主であるアンジュを危険な目に合わさせて仕舞った事に罪悪感を感じており、必死に頭を下げながら謝っていた。

しかし、アンジュは頭を横に振り、モモカの頭を撫でる。

 

「何言ってるのモモカ、お蔭でスッキリしたんだから」

 

「え?」

 

アンジュの意外な言葉にモモカは顔を上げる。

 

「私には、家族も仲間の故郷も何にもないって分かったんだから」

 

「……ああ、まさか。あそこまで酷いとは思わなかったぜ。あれが人間の本性か」

 

リュガも故郷の人間たちの本性を見て、救いようがないと見切りをつけたようだ。

アンジュは次にタスクの方を見て、頭をグリグリとする

 

「どうして股間に顔を埋める必要がある訳~?意地なの?癖なの?それとも病気なの!?」

 

鬼気迫る顔でタスクを問い詰めるアンジュ。

今なら小型ドラゴンが逃げ出しそうな気迫だ。

 

「まぁ、そいつは置いといてだ。タスクはどうしてあそこにいたんだ?」

 

「連絡が来たんだ。カルネアデスという人からアンジュがピンチだってね」

 

「カルネアデス?」

 

「……親父の仲間の一人か」

 

「知っているの?それにリュガもどうしてここに?」

 

「まぁ、順を追って説明するよ」

 

リュガはミスルギ皇国に来た理由、シュレディンガーの事、父親の計画の事、そしてヴィルキスとプルートの秘密の事。

 

「……あなたのお父さんにそんな計画が」

 

「ああ、親父と母さんに直接会って話を聞かないと解らん」

 

なにはともあれ、無事に皇国から脱出できた。

後はアルゼナルへ帰還するだけだ。

タスクはアンジュが身に着けていた皇国の指輪を渡す

 

「ありがとう」

 

「アンジュの髪、綺麗な金色だよね」

 

「え・・・?それが何よ・・・」

 

タスクの言葉に顔を赤めるアンジュ、照れている表情だ

 

「下も金色なんだね」

 

「死ね!!!!この変態騎士!!!!」

 

最低な発言をしてアンジュの怒りが頂点に達し、タスクをボコボコにした

 

 

◇◇◇◇

 

 

無事、アルゼナルに着艦。

 

「ここでお別れだね、アンジュ」

 

「行くの?」

 

「俺にはまだやるべきことがあるからね」

 

タスクはそう言うが―――

 

「その必要はないピョン♪」

 

声がする方を見ると、ジルともう一人の女性がいた。

もう一人の女性はなんというかウサギのような感じだ。

 

「タスクくん、お姫様の救出ありがとー♪お姉さん、とても嬉しいよ♪

 でも、このまま単独行動すると危険だからここにいてもいいよ♪

 ジル司令には話はつけさせてもらったし」

 

「じゃあ、あんたがカルネアデスか?」

 

「そのとーり♪君がリュガくんか。なるなるパブロフとメビウスの子というわけかー」

 

「パブロフって…親父の仇名だろ?メビウスというのは?」

 

「ありゃりゃ?シュレちゃん、話していなかったのかー。

 まぁ、積もる話は後にしてゆっくり休むといいよ♪

 プルートは私とラプラスとで修理するから~♪」

 

リュガはいまいちカルネアデスの性格がよく解らない。

アンジュは脱走した罪により独房へと連行された。

独房へ入ると、其処にはヒルダがいた。

 

「どうしたのよ・・・?」

 

「故郷に帰ったのはいいけどさ、ママは私を受け入れてくれなかった。

 ノーマだから、こんな仕打ちにされたのよ。

 それから、検察官に捕まったけど女性二人が私を庇ってここに連れ戻されたのよ」

 

「・・・ようやく、解ったのよ。世界を壊しちゃおうか、全部ね。

 虐げ、辱め、陥れる世界なんて、そんな世界なんか私から拒否するわ」

 

アンジュの言葉にヒルダはクスリッと笑う

 

「いいねぇ、協力してやってもいいわよ?」

 

ケンカしていた仲だが、ようやく和解できた二人。

 

 

◇◇◇◇

 

 

その夜。

リュガはカルネアデスが話があるという事で部屋に入る。

茶髪の女性が座っており、立ち上がる

 

「貴方がパブロフの息子という訳ね。私はラプラス。

 シュレディンガーから聞いているけど貴方のお父さんとお母さんとは研究仲間ね」

 

「じゃあ、あんたらがヒルダを助けてアルゼナルに運んだというわけか」

 

ラプラスは肯定の頷きをする。

 

「しかし、親父がパブロフ、シュレディンガー、ラプラス、カルネアデスっと会ったが、メビウスという人は何処にいるんだ?」

 

メビウスに会ってないという言葉に驚くラプラス。

 

「まさか、お父さんから何も聞いてなかったの?」

 

「なんで、そこで親父が?」

 

「……メビウスというのは君のお母さんのミリル・黒鋼・ホクトの事だピョン」

 

カルネアデスの言葉にリュガは驚く。

まさか、自分の母親が天才の一人だなんて。

 

「親父はそんな事、喋ってくれなかったな」

 

「当然ね。私たちの存在は身内でも明かさないようにしているわ。

 かえって危険だし、巻き込まれる可能性だってあるから」

 

本当にそうなのかと思いたいリュガ。けど、不安が消えそうにもない。

すると、歌が聞こえ始めた。

 

「綺麗な歌ね」

 

「お姫様の歌か」

 

独房にいるアンジュは月を見始め【永遠語り】を歌い出した。

アルゼナルに響く歌はこの時だけ、癒されそうになった。

 

そして、新たな戦いと真実が迫っていた―――。




少しずつですが、リュガの秘密が明らかになりかけています。

次回は、サラたち率いるドラゴン軍団、襲来!!

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