クロスアンジュ 天使と竜の輪舞~デバステイター~ 作:Mr.エメト
アンジュは目を覚まし、目の前の光景に驚いていた。
「ごめん。一応、両手を縛っておいたから・・・」
男はそう言うが、アンジュはなにかされると思い、暴れる。
男は抑えようとするが、滑りアンジュの股に突っ込んでしまった。
目の前の光景には女性の大事な神秘があるのだ。
アンジュは男を横蹴りして、腹に足を乗せてから投げ飛ばす。
縄を切り、自分の服を持って洞窟から出る。
海岸の方まで走るとヴィルキスがあった。直ぐに発進しようとするが何も起きない。
調べると、焦げている部分があり、調べると下着が詰め込まれていた。
直ぐにあのヒルダの仕業だと知ると、下着を破り捨てる。
「酷いじゃないか、命の恩人になんてことを・・・」
蹴り投げた男がアンジュに近づくが、銃をとり足元を狙い撃つ。
男は後方に飛び退いて、手を上げる。
「それ以上、近づいたら・・・撃つわ」
「お、お、落ち着け!!俺は君に危害を加えるわけじゃない!!」
「縛って脱がせて抱き付いておいて、もっと卑猥で破廉恥なことをするつもりだったんでしょう」
顔を赤くし、銃口を男に向けるアンジュ。
男は弁明しようとしたが、足元にカニが近づいており、男の足を挟む。
「痛ぁぁぁぁぁぁ!!?」
突然の痛さに、驚きアンジュに倒れ込み、股を埋めるような感じになった。
「ご、ごめん!!」
男は直ぐに離れるが、アンジュは顔を赤くして男に発砲する
しばらくして・・・
「変態!ケダモノ!発情期!!」
男を蔓でグルグルに縛り付けて、ズカズカと歩く。
◆◆◆◆
その頃のアルゼナル―――。
アンジュとヴィルキスが行方不明となり、司令室で今後の話をしていた。
「機体の調子はよかったのに、どうして・・・」
メイはあの時、もっと強くアンジュを止めていればこんな事にはならなかったと思っていた。
「アンジュとヴィルキスを回収するんだ。最悪、アンジュが死体になってもだ」
死体になっても回収・・・。
ジルがそこまで、アンジュが必要である事にサリアは驚いていた。
回収班はメイとサリア、整備兵が輸送機に乗り込もうとするが、ヴィヴィアンとエルシャがこっちに向かってきた。
「アンジュ、まだ生きてる!わかるもん」
「早く見つけてあげないとね、きっとお腹空かしてるわ」
ヴィヴィアンとエルシャはアンジュが生きていると信じている。
エルシャはサンドウィッチを入れるバスケットを持って準備万端だ。
メイが反論する前に二人は乗り込んだ。
顔は見合わせるメイとサリア、兎にも角にもアンジュとヴィルキスを捜索する。
◆◆◆◆
非常食を探しているが見つからない。
不意にサリアやジャスミンの言葉を思い出す。
「ノーマの棺桶か・・・」
すると、海水が増している。
どうやら満潮し、アンジュは急いでその場を離れる。
空が曇りだし、雨が降りだし雷鳴がとどろく。
大木の穴を見つけて雨宿りするが、飢えと雨の寒さで体が震えるが何か痛みを感じる。
蛇が噛みついており、急いで振り払い、その場から走り出す。
どのくらい歩いたのか体力が低下してきた。
先程の蛇に毒があったのか、体もだるく雨による体温低下により、アンジュは倒れてしまう。
「だれか・・・誰も・・・助けてくれない・・・」
これが、自分の最期になるのかと思うと涙を流し、目を瞑る。
「あの・・・大丈夫?」
声の方を振り向くと、先ほど縛り上げた男がいた。
どうやら同じ場所に辿り着いてしまったようだ。
男はアンジュの苦しい表情を見て、何かあったと悟る。
急いで蔦を切り、アンジュを抱きかかえて容体を調べる。
蛇にかまれたことを知り、傷口から毒を吸い出して処置をする。
◇◇◇◇
男は秘密の隠れ家で泥だらけになったアンジュの体を拭く。
アンジュが指に着けてる指輪を見て、幼い時の事を思い出す。
――――紅蓮の炎が街を燃やす。
――――両親は息絶えて、幼い自分は泣いている。
――――片腕を無くした黒髪の女性と女神のオブジェがついていた白い機体。
「・・・ヴィルキス」
男はもう一度、アンジュを見る。
何故、この女性がヴィルキスに乗っていたのだろうか?
「・・・んっ」
気が付くと、最初に目覚めた洞窟だ。
「動かない方がいいよ。毒は吸い出したけど痺れは残っている。
それに、動けない女の子にエッチな事はしてないからね」
男はそういいながら、スープを盛り付ける。
「これに懲りたら、あんな格好して森に入ったらダメだよ」
「・・・余計なお世話よ」
「食べる?」
「いらないわよ」
そう言うが、腹が鳴っている。身体が正直なのが恨めしくなってきた
渋々と口を開けて、食す。
「・・・不味い」
そう言いながらも口をアーンッとあけるアンジュ。
男はクスリッと笑う
「気に入ってもらえてよかったよ、ウミヘビのスープ」
ウミヘビという言葉にギョッとし、飲みこむアンジュ。
するとある言葉を思い出す。確か、蛇にかまれた部分は―――。
「さっき、毒を吸ったと言ったわよね」
「うん、そうだけど・・・ハッ!?」
男は気が付き弁明するが・・・
ガブッ!!
「痛あああああああああああ!!?」
鼻を噛まれたようだ・・・。
◆◆◆◆
結局、見つからず基地に帰還した回収班。
エルシャは飲み物を飲んでいた時に、ヒルダが待っていた。
「エルシャのお得意のお節介かしら?」
「アンジュちゃんとリュガくんを誰かが受け入れてくれないと二人とも孤独になるわ。
そんなの寂しいじゃない、同じノーマだからね」
エルシャの言葉に、納得ができないヒルダ。
「それにアンジュちゃんとリュガくん似ているじゃない。
昔のヒルダちゃんに。だから放っておけないの」
「似ている?あのクソ女と殺人鬼と?・・・殺しちゃうよ、あんたも」
ヒルダが脅して言うと、その場を去る。
入れ違いにリュガはヒルダを見て、結果報告を聞く。
「アンジュは・・・見つからないようだな。その様子だと」
「心配していたの?」
「あいつがいないとドラゴン狩りに張り合うのがヒルダしかいないからな」
「あらあら」
「・・・それに、あいつにはまだ帰る場所はある。俺には帰る場所は無い」
ここに来る前に人を殺してしまい、殺人鬼という烙印が押されている。
だから、戻る場所も待ってくれる人だっていない。
「やっぱり、優しいわね」
「気のせいだろ」
「じゃあ、ゾーラ隊長に花を飾っているのも?」
「・・・見たのか?」
エルシャは舌をペロッと出していた。
ブラフに引っかかってしまったようだ。
隠しても仕方ないので、告白する。
「・・・まぁ、花ぐらい飾ってもバチが当たらんだろうと思ってな。
それに、ミランダとココが少しでも生き延びやすいように、パーツ用の資金を与えているんだよ」
「溜めていたお金をあの二人に使っていたの?」
「まぁな・・・。ところで、俺も捜索隊に加わってもいいか?」
「リュガくんも?」
「ああ、ジル司令にプルートの出撃許可をもらってくる。
分散して、捜索した方がはやいだろ?異論は認めないからな」
そう言って、ジル司令から捜索許可を貰いに行こうとする。
なんだかんだで、情を捨てきれないような気がしてきたリュガだった。