やはり俺の幼馴染と後輩がいる日常は退屈しない。   作:あべかわもち

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第5話 どうやら俺のカーストもボッチのようだ

ボッチにとって初対面の相手とのやり取りほど煩わしいものはない。

 

もし俺が、我が2-Fのキングたる葉山と同じくらいに立ちまわれたとすれば、きっと俺はボッチではないはずだ。

 

だが逆に言えば、俺が俺であることで、俺はボッチであることができるのだろう。詰まる所、俺は俺であって、葉山ではないということだ。

 

 

葉山隼人。

 

イケメン、成績優秀、そしてサッカー部のエース、さらには誰にでも優しい。

 

 

なんだよこのスペック。

 

神様のパラメタ配分は間違ってるだろ。

 

俺に一つでもくれよ。

 

あれ?サッカー以外、俺もイケてね?

 

 

閑話休題

 

 

このクラスのカーストで言えば、最上位に該当する(八幡調べ)。

 

ちなみに俺の幼馴染である三浦は、歯に衣着せぬ物言いやその見た目の派手さもあって、女子の中心的ポジションを確立している。

 

もちろん最上位カーストで間違いない。

 

ただ、どういうわけか、葉山達のグループに居るにも関わらず、葉山達男子とは距離があるように見える(海老名さんともう一人の女子とつるんでいる感じ)。

 

まぁ俺の主観だけどな。

 

 

「隼人君、マジパネェよ」

 

「いやたまたまだよ」

 

「謙遜するところもマジパネェっしょ」

 

 

お前も相当パネェよ。

 

あれ、誰だったっけ? たしか戸毛?。

 

 

昼休みになり、クラスではそれぞれのカーストに従ったグループに分かれて集まっている。

 

もちろん、ボッチの俺は一人教室の隅で息をひそめ、いざという時に備えているのだ。

 

そんな俺にも、すぐ近くで固まっている最上位カーストの会話は嫌でも耳に入ってくる。なぜ近くかというと、三浦の席は俺の右斜め前だから。

 

 

「でも葉山君がゴール決めたから、その試合勝てたんでしょ?やっぱりすごいんだね。優美子もそう思わない?」

 

「隼人がたまたまって言うなら、そうなんじゃない?」

 

「もう、優美子ったら。素直にほめてあげればいいじゃない」

 

「いやでもさぁ」

 

「海老名さん、いいって、本当たいしたことじゃないんだから」

 

「さすが隼人君!やっさしい!」

 

 

うーん。

 

なにがさすがなんですかね?

 

あいつが優しいキングなことはボッチの俺でもわかるけどよ。

 

それにしても、やっぱり三浦のやつ葉山に対して態度が他と違うな。同じクラスになった時には嬉しそうだった気がするんだが。

 

まぁあいつのことだし、自分でなんとかするか。

 

 

てかなんで俺も聞き耳を立てているんだろ。

 

これがカーストの強制力か。

 

ここのところ、ただでさえ寝不足なんだし、さっきは時間を浪費してしまったから、バカ言ってないでさっさと睡眠をとらなければ。

 

そして俺は自分の机に突っ伏したまま、心を無にし、すぐにでも寝られる態勢をとったところで

 

 

「せんぱーい!」

 

 

うん。

 

よし寝よう。おやすみなさい。

 

 

「あれ?聞こえてないのかな・・・」

 

「比企谷先輩!あなたのいろはですよ!起きてくださいよー」

 

 

誰だか知らないが俺をゆすっている気がする。

 

なんとなく声に聞き覚えがあるが、ここで反応してしまうと後々面倒になるから、ここは意地でも寝たふりを

 

 

「たしか眠っている人を起こすのには、キ、キスをすればいいんだよね・・・恥ずかしいけど、先輩のためなら「あー良く寝た!お、どうした一色。いつのまにそこにいたんだ?俺はこの後行くところがあるから、じゃ!」え?待っ・・・」

 

 

そう言い残し、俺は全力で駆け出し教室を後にする。

 

あいつのおかげで教室中の視線が集まっていた。

 

なぜか三浦の方から視線を感じた気もするが。

 

はぁ、まったく。あいつは自分の行動をわかっているのだろうか。

 

 

「とりあえずここなら大丈夫だろう・・・」

 

 

残りの昼休みを過ごすため、俺は今マイベストプレイスにいる。

 

心地よい風が吹いていて、うたた寝には最高のシチュエーションだが、さっきの光景がチラついているからか、睡魔が昼寝しているためか、眠くならない。

 

仕方なく、さっきのことを考えてみる。

 

 

一色いろは。

俺の幼馴染で後輩。

派手さは三浦ほどでないが、清楚っぽさも併せ持つハイブリッドモデル的な見た目のためか、猫を被っているあのあざとい性格が受けているのか知らないが、男子から圧倒的な人気なようで(先週三浦と小町が話していたのを聞いただけだが)、まだ入学して間もないのにファンクラブ設立の話もあるらしい(ファンクラブって現実にあるのだろうか?)。

 

そんなあいつは、入学してからほぼ毎日のようにこの2-Fにやって来る。

 

それも初めは三浦と会うだけだったから良いものの、最近は俺にも声をかけるようになった(さっきみたいに目立つように俺を呼ぶから基本無視だが)。

 

俺がやめるよう本人に言っても素知らぬ顔で「あぁそうですね。でも私が好きでしたことなので、問題ないです!」とか言ってる。

 

いやいや、俺が気になるんですけど。

 

俺のことはどうでもいんですかね。そうですか。

 

三浦といい、一色といい、一体どういうつもりなのか。

 

そんなに俺のカーストを下げたいのだろうか。いやカーストを考えてるのは俺だけなんだろうけど。

 

 

「あっ、やっと見つけました!」

 

「いっ一色!?どうしてここが?」

 

 

マジで驚く俺を尻目に、すぐ横に一色も座る。

 

なんでピッタリくっついてくるのかは、聞いても答えてくれないんだろうな。

 

 

「三浦先輩に聞いたら、たぶんここだろうって」

 

「あいつ・・・」

 

「あの、迷惑でしたか?」

 

「いや、別に迷惑じゃねぇけどよ。ただ、教室であんな風にされると、困るっつーか」

 

「私を心配してくれたんですよね」

 

「あっあれは俺のボッチとしての存在を守るためであって、別にお前のためなんかじゃねぇよ」

 

「わたし、知ってます」

 

 

そういって頭を俺の方に寄せてくる。

 

 

「先輩が誰よりも優しいこと」

 

「・・・優しくなんかねぇよ」

 

「ふふ、そう言うと思ってました。でも、先輩がどう考えていようが、先輩はあの時もさっきもこれからも、私にとってはただ一人の、とっても優しい、王子様です!」

 

 

一色が、ぎゅっと横から抱きついてきた。

 

今朝とは違って、顔の横に顔、胸の横に胸がある。

 

これはやばい。

 

どれくらいやばいかというと、マジやばい。

 

 

「お、おい!」

 

「しばらくこうしていていいですか」

 

「・・・やっぱりあざといな。お前」

 

「そうですよ。あざとくないと、こんなことできませんよ」

 

 

そういう一色の顔は真っ赤だった。

 

反射的に慌てて眼をそらしてしまう。きっと俺も赤いんだろうが、なにも言ってこないからバレてはいないはずだ。そうだよな?

 

 

「せんぱい?」

 

「い、いやさっき寝違えたようで、悪いがそっち向けない病が」

 

「だったら、こうすれば問題ないですね」

 

 

一色は俺の真正面に体をずらして、俺の顔を下から覗きこんできた。

 

その上目づかいは反則だろ・・・ちょっとドキッとしたじゃねぇか。ちょっとだけ。

 

 

「お、おい、一色!?」

 

 

なんで目を閉じて、徐々に近づいてくるんだ。

 

俺も早く動かないと、ヤバいと頭ではわかっているのだが、体が動こうとしない。

 

くっ、あいつの上目遣いには相手を石にする特殊スキルが。

 

えっ、もう鼻が当たって・・・

 

 

「せんぱい・・・」

 

 

キーンコーンカーンコーン

(予鈴A:ヤラセネェヨ)

 

 

キーンコーンカーンコーン

(予鈴B:ヤッテヤリマシタネアニキ!デモオソカッタヨウナキガ・・・)

 

 

「あーあ残念。今度は先輩からお願いしますね?」

 

いつの間にか立ちあがってた一色は、ウィンクとともにそう言い残して、さっさと教室に戻っていった。こころなしか、彼女の足取りはスキップしているようだった。

 

俺は対照的に茫然としてしまい、しばらくそこから動くことができず、結局授業をさぼることになってしまった。

 




おかしいな。

プロットでは、ここで雪ノ下(雪乃)さんの登場だったのに。しかも前より長いし。。。

これが「あざとい」の力か。

いろはすさんパネェ。


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