やはり俺の幼馴染と後輩がいる日常は退屈しない。 作:あべかわもち
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『高校生になって変わったこと』
2-F 比企谷八幡
まず高校生について定義しておこう。
高校生とはなにか?
高校生とは、中学生3年生の次の学年であり、大学生になっていない状態だ。
そして教育機関の一つということを考えればその環境は中学校とさほど変わらないだろう。
ということは、結局のところ、中学生との違いはその名称だけ。
そう、中学生が一つ歳をとっただけで高校生になれるということだ。
もちろん、受験という篩いにかかっているので、全く何も変わらないとは言わない。ただそれでも高校生になったからといって変わることなど、本質的には何もないはずなのだ。
高校生ということで世間の見る目も変わる。
もう高校生なんだからしっかりしなさい。
高校生なんだから・・・
おわかりだろうか。
このように、「高校生なんだから」という言葉によって、世間は何かしらのイメージを押しつけている。
某高校生の言葉を借りれば、高校生だからって誰もがバラ色の高校生活を送るわけではないのだ。
つまり、十人十色、隣の芝生は青いということ、つまりみんな違ってみんないいのだ。
それは先ほどの中学生と本質的に変わらないということから考えると、中学生の時の生活と変わらなくても良いのだ。
中学校でリア充だった者は、高校生でもリア充に。ボッチだった者はボッチになるのが自然だろう。
もちろん俺はボッチであることに誇りを持っているので、進んでボッチになった。決してボッチになってしまったわけではない。
リア充であることは人間強度が下がることであると俺は思う。人間強度とは某変態ロリシスコン吸血鬼ヒーローの言葉を借りれば、自分らしさと同義である。
そのため、他人と過ごす時間が増えることで、他人の影響を受けて「自分らしさ」が揺らいでしまうことが考えられる。
これは非常に由々しき問題である。
自我の崩壊とも言えよう。
一方で、ボッチであることは人間強度を高めることになる。俺のような筆頭ボッチになると、「自分らしさ」で溢れていっぱいになるだろう。
むしろ爆発するまである。
そう考えていくと、ボッチであることが正義であることは明白であり、ボッチである俺の生き方は肯定されるべきである。
むしろ孤高の存在ですらある。
つまり、中学生でボッチであった俺が高校生でもボッチであることは自然なことであり、高校生になってなにも変わっていないことも自然なことである。
つまり正義と言っても過言ではない。
最も大切なのは、さっき話した通り、リア充であることによる問題をどうにかすることが問題ではないだろうか。
決してこれはリア充に対する嫉妬などではない。
リア充が世間的に推奨される高校生において、ボッチは肩身が狭い状態になっている。
だからボッチ代表であるこの俺が宣言するのだ。
リア充爆発しろ!
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「さて、思い残すことはないか?」
「開口一番生徒を沈める気満々の発言はどうかと思います!」
「あのな、比企谷。私が出した国語の課題はなんだ?」
「えっと、たしか『高校生になって変わったこと』だった気が」
「なぜその課題で、この作文になるのか、10文字以内で説明しろ」
「リア充爆発しろ!」
「ふん!」
「ぐはぁ!!?」
結論を端的に、かつ10文字と言う制限に収めた俺の国語センスをほめることなく、一瞬で俺を職員室のカベに叩きつけてきた。手加減一切なしとかありえんぞ。あー背中マジいてーよ。
先生・・・勘弁してくださいよ。
さっきの昼飯が遡上しようとしてるんですけど。
俺を教室まで運べるくらいだから、腕力がすげーのは知ってましたけど、ここまでだったとは・・・この人ならデンプシ―ロールも再現できるんじゃねぇか?
これだから結婚相手が(以下略)
「全く。君はなんでそうもリア充を目の敵にするのかね」
「ボッチにとってリア充は最も注意すべき危険な存在なんですよ」
「見ようによっては君も十分リア充だと思うが」
「そう感じるなら、先生は今すぐ眼科に行かれた方がいいと思いますよ。そして俺を解放してくれませんか?」
「君の腐った眼よりはマシだと自負しているのだがね。まぁいい。時に比企谷、君はなにか部活をしていたかね?」
「無視かよ(いえ特には)」
「本音と建前が逆だぞ。では、三浦を除いて友達はいるのか?」
「ボッチは、世界はみんな平等という信念に基づいているので、特定の親しい友人を持つことは出来ないんです。ていうか、三浦も俺のオブザーバー的な存在で「もういいわかった・・・三浦も難儀な奴だ」?」
「つまり、いないということだな」
「・・・まぁ」
「そうか!それはよかった!」
よくねーよ。
「私の見立ては間違ってなかったようだ。さすがは目が腐っているだけのことはある」
「先生も同じ眼科に行くべきですね。あれ?俺が行くの前提じゃね?」
「ごちゃごちゃ言ってないで、少しついてきたまえ」
「どこへ行くんすか?」
「君へ罰を与えるのさ」
「罰?」
「楽しみにしたまえ。悪いようにはしないさ」
正直、不安でいっぱいです。帰っていいですかね・・・
「構わんが、逃げたら平面ガエルと同じ気持ちを味わうことができるぞ?」
そう言ってポキポキと手を鳴らしている。
それを見て俺は気づいてしまった。そのネタが古いことは置いといても、学校でも俺には自由はないようだと。はぁ。
諦めにも似た溜息をつきながら、平塚先生の後をついていく俺。
これは、これから待ち受ける、苦しくも甘美な戦慄に似た青春群像へ至る、プロローグにも満たないような最初の一幕なのかもしれない。
この青春群像劇のラストで、俺は自分が奏でた旋律を、どう思うのか。
今の俺に知る由もないが、今の俺がこのまま年をとっただけの大学生になったとしたら、きっとこう言うのだろう。
やはり俺はボッチでリア充ではなかった、と。
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