トレンチコートと白銀鎧   作:キョウさん。

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最後の投稿:2016年06月07日(火) 01:30


(´ω`┌)へへへようやく帰ってきたぜ…再開しますます



7852字、ちょっとバッサリ切ったので予告より短め


第四章 妖精郷と再臨の氷魔 14話 『侵せない領域』

 

 

「―――ハロルドじゃよ」

 

 有り体に言って”ミュータント”、そうとしか呼べない存在がにこりと・・・きっとにっこりって笑ったんだと、そう思った。彼はそう表情を変えると、手近なソファに腰を掛けて手頃な椅子に座るように自分たちを促す。

 

 彼らはハロルドの爺さんの勧める通り手頃な椅子に座るなり、床に座るなりすると、ドル札をポケットにねじ込んだハロルドの話を待った。

 

「いやはやまあ、このハロルド爺の愚痴を聞いてくれる人が来るなんぞ嬉しくてなあ」

「一応は役に立つ情報だけ聞きたいんだが・・・まあいい夜は長い、続けてくれ爺さん」

「何でもいいんだ、”スーパーミュータント”に関して知ってることがあったらお願い、ハロルド」

 

「礼儀もなっとる、ますます気に入ったぞ若いの、ではどこから話したことかな―――」

 

 

 ハロルドは腕を組み目を閉じ、しばし考えた素振りをする。

 ちょっとの間のあと、ハロルドはううん、と唸るとぱっちりとその片目だけの目を開き、ゆっくりと、楽しむように話し始めた。

 

「わしらはちょっと前・・・一年、いや半年もたっとらんと思う、リチャード・グレイという医者がいてな、Vault Cityから来たっていうことじゃったんだがほどなくして友人になって、それからしばらくした時、リチャードからある依頼を頼まれたんじゃよ」

「Vault Cityの話は聞いたことがあるなー、あそこだけ戦前なんだろ?俺もあそこに行きゃ一儲けできっかなぁ」

「あそこは一部の選ばれた奴しか入れないって評判だぜイアン、まあ周囲に集落があるらしいから仕事には困らないかもな・・・俺も一段落ついたら行ってみるか」

 

 荒野の果て、砂漠のオアシスのように輝かしいビル群が今なお立ち並んでいるであろう姿に想い馳せ、彼らは続く話を聞く。

 

「北西から来る”ミュータント”、その発生源を探りたい、とな。正直リスクはあまりにも大きかったが、他でもない友人の頼みじゃったから他の友人達と共に彼と遠征に出向いた」

「あの砂漠をか?」

「わしらは強くてな、向かうところ敵なしじゃった・・・だが、その傲慢さがこの結果を招いたのかもしれんなぁ」

 

 目をつむり、顔を上げてまゆをひそめる。

 後悔が目に見えていた、ハロルドはまた、ゆっくりと語りだした。

 

「その・・・なんじゃ、”スーパーミュータント”ってお前さんらは呼んでるのか?じゃあそう呼ぶこととしよう、スーパーミュータント達とは散発的な戦闘があって、その方向を探るうちにわしらはある施設にたどり着いた・・・軍事基地じゃった、戦後放棄されたな」

「・・・かなり危ない臭いがしてきたぞティコ・・・」

「おうとも!ミニガンに重機関銃、ロケットランチャーは・・・閉所だったから使われなかったが、エナジー・ウェポンまで持ちだしてきおった!弾丸と光線のオーケストラ、ミュータントのバーゲンセールですってか!お客さん、1ダース12個の方が安いですよって!かっかっかっ!」

 

 ハロルドが大笑いする、だが笑い話でもない、そんな話を笑ってされてしまったことには彼らもやや何を返せばいいか理解及ばず、という顔をする。しかしただわかるのは、それが心底”懐かしんで”、きっとそれが今醜く変貌した自分と相対し全盛期を歩んでいたころの記憶なのだろうということで、イアンとティコはさらになんとも返せないように口元をもごもごとさせた。

 

 ハロルドは手近なテーブルに置かれた、カボチャとも判別つかない植物のタネを口に放り投げると、バリバリと咀嚼して飲み込んだあと、続けていった。

 

「それでな、仲間が一人、二人とやられた時、奇跡的に武器庫を見つけてな、ミサイルで各所を手当たり次第爆破して道を塞いで、また塞がれたら道を塞いで・・・結局それがわしらを奥へと進ませる結果になったんじゃが、そこで見つけたんじゃよ、それをな」

「それ?」

 

 Vaultの住人が目を少しだけ大きく開いて、興味を持った、とやや前のめりになる。

 ハロルドはそれに対し”焦らなくてもいい”とばかりのジェスチャーで応えたあと、軽く咳で喉を整え話し始めた。

 

「緑の溶液、それもひとつやふたつじゃない、何十と保管されたアオミドリプールのビュッフェ、見ててこれほど気持ち悪くなったこともない場所じゃった。空気がよどみ、臭いは最悪で更に後ろからはミュータント共が迫っていたから、そこを抜けるほかなくてな」

「緑、たぁ・・・もしかすると、それが連中の生産拠点だったりして」

「イアンは怖いこと言うな、見つけたらイアンを放り込んでみるか、俺らの最高戦力が相棒からイアンにグレードアップするかもしれない」

「まさか本気じゃないよな・・・?」

 

「ともあれ、それがわしらの運命を変えた瞬間じゃった、わしはそう信じたいと思っておる」

 

 軽口を叩き合うイアンとティコを無視するかのように、あるいは制すように、グラスで喉を潤し流していたハロルドが口を再び開く。

 

「あれは不幸な事故だった、グレイの真横から作業用のクレーンが飛んできてぶつかり・・・あっというまだった、グレイは溶液の中に沈み、そしてわしらは見捨てた、助けられなかった、ロックした扉を解除したミュータント共がわんさか迫ってきたからのぉ・・・グレイが飛び込んだしぶきを拭くまもなく、走ったよ、最後に残ったレッドと二人でな」

「尋常じゃねぇ」

「尋常であるものか、あと一秒も自動扉を締めるのを遅れていたらわしらはきっと蜂の巣で・・・ああグレイ、痛ましい。結局わしらはあのあとのことは・・・少なくともわしは覚えとらん、逃げるのにきっと夢中じゃったんじゃろう」

 

 深く目を閉ざすハロルドの顔には、懐かしみと同時に若干の後悔がにじむ。

 なまじ人一倍人に気を遣う性格だからこそ、Vaultの青年はただじっと、彼が言葉を続けるのを待ち、そして聞いた。

 

「その後は自分でもわからん、ただひたすらに砂漠を逃げて、レッドとは別れて――― B.O.Sのところに行くキャラバンに救助されなかったら、きっとわしゃ砂漠の砂になって消えてたじゃろうさ」

「運の実力のうちたぁ言うもんだ。んなとこから逃げ切れるったぁハロルドの爺さんは相当な実力者だったって誇っていいぜ、少なくとも俺だったら・・・まあ、まずんなとこにゃ行かない」

「バカにしとるのか褒めてるのかわからん男じゃな・・・とかく、話はこんなとこじゃよ、してなんでこんな話を聞きに来た?まさか行く気か?止めはせんがそれなら金は預かっとくぞー帰ってきたら返そう」

 

「したたかだなぁ」

「がめつい、とも言えるぜ」

 

 やれやれ、といった素振りを見せつつも、確実な進展を喜ぶ笑みがティコの口元に浮かんでいる。

 

 壮絶な過去を話してなお、今を強かに生きるその姿への敬意か呆れ半分か、だが確かに、今という世界を生きるものとして彼は、死線を抜け続けやがて衰えてもなお、生にしがみつき続ける彼、ハロルドという男に対する一種の礼儀がそこにあった。

 

「それで?行ってみるのか相棒?」

「・・・正面からはムリだと思うから、一度偵察だけでも」

「斥候を送るのは戦術の基本だよな・・・っと」

 

「どちらにせよ、その話の真偽を確かめに行くってのが筋だろ」

「なんじゃぁ、わしの話を信じないと?かなしいのぉ」

 

 イアンの一声に、よよよ、と鳴きマネをするハロルド。

 イアンはその額に軽くデコピンをかまそうとして、ハロルドの顔が粘液に濡れていることに気づいて止めた。

 

「まあ、どちらにせよ今後の展開は決まったな、現地を見に行って、とりあえず敵の現有戦力の確認だけでもだ、場所はまだ記憶してるんだろう、じいさん?」

「忘れもしない、北西の砂漠の果てじゃ、地図に書き記しておこう」

「助かるじいさん。相棒、イアン、準備を整えたら出発だ。出来る限り最高の装備を身に着けておいたほうがいい」

 

 ティコが『助かった』とハロルドに言い、ハロルドは軽く手を振って彼を送り出す。

 後にイアンとVaultの住人が続くと、かくして、一行は砂漠への道筋を進むことにしたのであった。

 

 

「ああ、もしもグレイが・・・いや、なんでもないさ」

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 カリフォルニアの砂漠は広く、この2161年においてコミュニティというものはその間にぽつぽつと点在すると言ったほうが正しい。

 

 ゆえに道中は常に野生動物、レイダー、あらゆる脅威に命がけであり、街から街へは地図がなければ見知った地形の連続に遭難するのがオチである。ハロルドに示されたポイントへとできるだけ少ない荷物で、されど可能な限りの重武装をして急行したVaultの住人たちは、岩陰に潜みながら遠方を見ていた、”目的地”が見えていたからだ。

 

「・・・わかっちゃいたが、要塞だな、いやまあ軍事基地なんだが」

「周辺にパトロールがいる・・・突破は無理そう」

 

 太陽が後ろに来るのを待ち双眼鏡を覗き、遥か遠方の”軍事基地”を見る。

 切り開いた山に大きな扉が設けられ、その手前に要塞化された広い駐車場をもって建造されていたその軍事基地は、ひと目に旧世界が作り上げた突破困難な砦であることを彼らに感じさせた。

 

「突破は無理だろーよ?とっととズラかろうぜ、軍隊でもなんでも呼んでくればいい」

 

 イアンはレンズ越しの景色に早々に諦めを見出し、岩陰で水を口にしている。

 

 軍隊、そう軍隊だ。

 あの規模のスーパーミュータント、まさしく軍隊と言うに等しい。対抗するには内部工作か、それともそれ以上の規模の人間をぶつけて押しつぶすか、その必要があるだろうが、この開けた砂漠からあの内部に侵入するには骨が折れるしこの規模の軍隊というとジャンクタウンのガード、ハブの警察、ボーンヤードの自警組織、すべてを合わせても足りるだろうか・・・足りても、個の能力に限度が見えている。

 

「うう~・・・時間がないのに」

「ったってな・・・今は撤退するしか・・・いや、待て」

 

 考えれば考えるほど考えは湧いてこない。

 Vaultの住民は頭をかかえ座り込み、それを見やるティコもなんと声を掛けたらいいか頭を掻く。

 

 だがなんだろう、引っかかる、軍隊、対抗者。

 この規模の災害に対処できそうな者たちが、確か―――

 

 

「・・・B.O.S」

 

 そうだ、テクノロジーを集めるだけの偏屈者の集団だと思っていたが、思えばその軍事力はこのウェイストランドでも屈指のもの、下手をすれば現時点で最強もありうる、白銀の騎士団だ。

 

 幸いにもテクノロジーを欲しがる彼らなら、スーパーミュータント達が保有するプラズマウェポン、軍事基地、その内部の技術資料・・・宝の山だろう。彼らがそれらのために犠牲を惜しまない偏屈者ならば、少し耳を貸してくれるかもしれない。

 

「相棒、ちょっとお友達を増やす気は?」

「え?」

 

 

 賭け事も酔狂も、嫌いじゃない。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「―――それでな、そしたら”グロウ”へ・・・」

「長い」

「これからがいいとこなんだよ相棒ゥ?」

「ここまでで一時間経ってるじゃねーかよ!!あとどれくらいだってんだ!?」

 

「B.O.S、グロウ、ボーンヤードにカテドラル、マリポーサにVault13で・・・」

「長いからできるだけまとめろ!」

「へいへい、叫ぶと血管切れるぞ相棒、バーボンはどうだ?血管が広がる」

 

 言いながら、コップにワインを注いでぐいっと自分で飲むティコ。

 ロイズはわしゃわしゃと髪を掻いた。

 

「それで、今までの話のどこに”ザ・マスター”がいたんだよ」

「どんな話にも導入はある、前菜がしっかりしてこそ料理は際立つってもんさ相棒、これは若いやつには中々わからん・・・ああ、シェイディ・サンズのバラモンステーキ屋はこれがな・・・」

「長い」

「わーかったわかった、最近の若モンはこらえ性がない・・・じゃあボーンヤードとVaultは端折ろう」

 

 ごほん、と咳をひとつ、ティコはまた椅子に座って前のめりになると、ふふっと笑って一言加えた。

 

「まあ、ここからの話、相棒なら大好きだと思うがね」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 ”軍事基地”マリポーサから数日南下すると、そこにはひとつ奇妙な建築物がある。

 

 金網に囲まれ、地面からせり出した扉。だが”ドア”と言うには不釣り合いに大きく、”搬入口”と言うにはちょっと小さい。入り口を白銀の重装パワーアーマー兵が守り固め、タレットが周囲360°に睨みを効かせている。それがこの地下バンカーでありB.O.S本拠地、”ロストヒルズ・バンカー”の入り口である。

 

 Brotherhood of Steel、その2161年時点での本拠地であり、この時代におけるテクノロジーのすべてが集約された地下要塞がそれであった。

 

 

 キャボットは、ロストヒルズ・バンカーのゲートを警護する役割を担っているイニシエイトで、今日も何もない地平線を臨むのが仕事であり人生だ。砂漠のど真ん中に位置するこのロストヒルズはふらっと訪れてもキャラバンか野生動物、間違ってもレイダーや組織だった悪党が襲うことはないのである。

 視界で動くものは飛びすさぶ砂のカーテンかタンブル・ウィードの散歩道だけ、開けに開けたこの場所は、絶好のディフェンス・ポイントなのだ。

 

 ウェイストランド屈指の奇特な集団と噂される変わり者の集まりは、ウェイストランド屈指の軍事力を持つ軍事組織でもある、そこを襲うのはバカかビョーキか、旧世界ではよくいたらしい、神を信ずる狂信者だろう。

 

 だが今日は彼も少しばかり違った、ちょっとした来客があり、用件があるから通して欲しいとせがんできたのだ。こういったことはまれにあり、テクノロジー、特に彼らの強さの最大の利点たる”パワーアーマー”を目当てで来ることが多い、特に『B.O.Sに入れてほしい』が最多だ。

 

 もちろん彼らも物を食べ、身体を洗い、娯楽に勤しむくらいのことはする、定期的に来る商人の輸送キャラバンは通すものであるし、その護送も彼らB.O.Sの役目だ。それに彼らが入り口でこっそりと流してくれる品々の買い付けは門兵の彼らにとっては最大の楽しみであると言っていいだろう。

 

 だが今回は少々とばかり事情が違った。

 

 ウェイストランドの危機だと言う一団、Vaultスーツの、少年期をようやく過ぎた頃の青年にデザート・レンジャー、キャラバンガードに犬、曲芸か何かで飯を食らっているのではとも首をかしげるような組み合わせの一団は、しきりにB.O.Sに話を通したいと喚くのだ。

 

「だから、何者もこのバンカーの内部に入れるわけにはいかないと何度言えばわかるのかな?」

「でも、事態は火急で!!」

「B.O.Sの人員でもないなら通すことはできない・・・用件だけでも伺っておこう」

「ですから・・・」

 

 この手の手合いを捌くのも慣れてきたものだが、やはり無駄に頭を使って脳に回る糖分を失うのは気持ちのいいものではない、だが表向きの態度というものがある、足でカツカツと床を叩きながら、話が早く終わらないかと耳を傾けるのだ。

 

 その”Vaultの住人”が言うにはスーパーミュータントの軍事基地が発見されたとかで、早急に支援を仰ぎたいということだった。だがキャボットは考えた、信憑性に欠ける上にこの奇妙な”いでたち”の一団だ・・・なにより、いちイニシエイトである彼がもしデマを上に報告するなどしたら何が待っているか。

 

 こういう”厄介者”を追い払うのも門番である彼の役割なのだ、特に最近のハイエルダー、B.O.Sのトップは人員の出入りと情報の制限に関して厳しい、一部では戦争が起こるとまで言われているほど。

 このピリピリした時だからこそ、降りかかる火の粉は払うに限る。キャボットは頭を軽く掻くと、”いつもの調子”で彼らに言い放った。

 

「あー、それならB.O.Sの人員になってそこから上に通せばいい、そうすればー、えー、えーと・・・まあ少し待ってくれ、条件を聞いてくる」

 

 別の兵士に視線で合図を送り、キャボットは一人バンカー内に入っていく。

 扉を閉めると彼が向かうのは休憩室だ、適度に時間を潰し、そしてまた戻る。

 

 もちろん、そこに”ハイエルダー”はいない。

 

 それから20分程度だろうか、早くも遅くも、どちらともとれない退屈ではない程度の時間が経過した後、バンカーの扉を開き帰ってきたキャボットは彼らを呼び、気の良さそうな顔を貼り付けて話し始めた。

 

「ああ、ハイエルダーに聞いてきた、なんでも”聖域”に赴きそこにたどり着いたという証を持ち帰ってくれば話も信用するし、君達を正式にB.O.Sの人員として認めるということらしい、まあ腕っ節を見せろということだ」

「“聖域”?」

「遥か南東の地にある、先端技術の塊でできた場所さ、まあデータディスクや何かのテクノロジーでも持って帰ってくればいいと思う」

「なるほど相棒、出かける準備だ、一儲けのチャンスってもんだな」

「ああ、気をつけていけよ、なんなら諦めてもいい・・・なんたって」

 

 期待を抱いただろう、彼らをキャボットは一瞥する。

 

 彼はいつもこの瞬間に笑うのだ、それも楽しそうに。

 なぜなら次の一言を聞いた瞬間、誰もが尻尾を巻いて帰るからであった。

 

 

“聖域”(グロウ)は深刻な放射能汚染区域だ、しっかり準備していけよ」

 

 一行は凍りつく、放射能、それがこの世界にあってどういう意味を持つか、それをわからないほど短い旅路をしてはいない。キャボットが言いたいことの”意味”を理解するとティコは舌打ちをして踵を返し去ろうとし、イアンもため息をつくと続こうとした。

 

 

 ―――だが。

 

「・・・そうすれば、聞いてくれるんですね?」

「―――は?」

 

 意表を突かれたような声を出したのはティコだっただろう、自分の相棒が何を言い出したかなど、理解するのに数瞬の間を必要とした。あっけにとられたのは彼だけではない、イアンも、キャボットも、数名いた門兵達もすべてだ、一様に彼を見る目は共通して”正気を疑う”といったものであった。

 

 放射線に汚染された領域で活動するということが、このウェイストランドにおいてどれほどのリスクを孕むかは子供でも知っている。それを安々と引き受ける人間がいるとしたら、追い詰められた貧者か、命のかかった弱者か、もしくは命知らずだろう。

 

 視線の中心に立つのは年の瀬青年になったばかりの、少年の面影を残す青年。

 身体をぴっちりと覆うVaultスーツがその鍛えられているが華奢な骨格を映し出す。

 

 しかし錯覚か、彼らはその身体から立ち昇るものを見た。

 『覇気』だ。

 

 決意を示すかのような覇気が彼らを気押し、キャボットが声を出すまでにどれくらいの間がかかったか。はっとして咳払いをすると、キャボットはひきつった声で彼に声を掛けた。

 

「確かに、それだけの偉業をこなせばえーと・・・ああ、十分だろう、だが無理強いはしない、いいか言うぞ、無理強いはしない」

「わかりました、グロウへ行ってきます、約束を反故にするのはなしですからね」

「あ、ああ・・・」

 

 そしてティコ、イアンに続き”最後に”踵を返し去ろうとする彼を、誰も引き止めない、引き止められるか。

 

 ぐいぐいと、強情で、決意に満ちて、人の言うことを聞かない青年が歩いて行く。

 その背を追うのは二人の男に一人の犬、珍妙奇天烈曲芸団、白銀の騎士は目で追うだけで、心ここに既にあらず。

 

「な、なあティコ、止め―――」

「言われんでもわかってる!相棒、これはブラフだ!騙されてんだ!いやだから止ま―――」

 

 ”聖域”(グロウ)への道のりを、歩むもの。

 ”聖域”(Vault13)を守るその背は、重く飢えている。

 

 




・ロストヒルズ・バンカー

 B.O.S本拠地、2161年時点では砂漠のど真ん中に建造されたあけっぴろげな核シェルターであるが、四層に区切られた内部はかなり快適で広く作られており、少なくとも資料室やレクリエーションルーム、運動場などがあるあたりVaultなんぞより遥かに快適に生活できる様相を呈している。初代においてパワーアーマーを入手する場所であるが、2のように盗んでいくのはできないため強くてニューゲームは不可能、無念。


 現在は周囲の街ごとNCR領内に取り込まれているらしい。

・バーボン
 (´・ω・`)やあ、ようこそバーボンハウスへ、うん、「また」なんだ。済まない。仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。

 バーボンはウイスキーの一種で、ティコ曰く男らしい尖った味だよ、彼は平時は割るが酔いたい時はロックでぶっとばすよ、飲みすぎないで酔える有名な方法だね。
 原料の51%以上がとうもろこしでかつ、、アルコール度数80未満で蒸留しオーク樽で熟成させたものがバーボンを名乗る資格があるよ。スコッチやブランデーとよく間違われるが明確な種別があるのでご注意だよ。

 Falloutでは主に+1 END , +1 STR , -1 INTの効果があるよ。

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