カメラと棒付きアメと   作:クロウズ

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七話目

キーンコーンカーンコーン

「はい、テストはこれでおしまいですね。お疲れ様」

 

 

 終業のチャイムが鳴って、休み明けテストが無事終った。問題は難しかったわけじゃないけど、あの時の望月との勉強会がなかったら苦戦してただろうな。

 

 

「ふー、終った………」

「よぉ、だいぶ疲れてるな」

「……あー?なんだ南か」

 

 

 机に突っ伏してたらいつものように南がやってきて、その後に朝田がやってくる。これはいつものこと。2人とも弁当(南はパン)を持ってきて広げる。テストだけだから午前で終りだけど、部活のある生徒は弁当持参が多い。ただ、この2人は帰宅部のはずだよな。

 

 

「なんだってなんだよ。今日テストがあること教えてやっただろ?」

「今朝な。しかもふざけた画像付きでな」

「何やってるのさ雅人……」

 

 

 昨日望月に教えてもらってたからほんと良かったよ。あまり勉強してなかった気もするけど。まあいいか。いただきま「火野くーん」………今度は誰ぞ。

 

 

「君にお客さん来てんよ、お客さん」

 

 

 クラスメイトに呼ばれて席を立って向かう。はて、俺に用事のある物好きな他クラスの知り合いなんていただろうか。それとも母さんか?なんだ、俺は忘れ物はしてないはずだし。

 そう思っていたら、現在知ってる中で一番敵に回したくない月見原先輩だった。俺何かしたっけ?

 

 

「えっと、おはようございます先輩……」

 

 

 警戒しながら話しかけると、先輩は笑顔を見せて

 

 

「えぇ、おはよう。カ・グ・さん♪」

 

 

 教室にいる残り少ないクラスメイトに聞こえる声量で、密着しながら言ってきた。教室は凍り付いた。テロリストに爆弾を投げ込まれた気分だ。

 

 

「………あの、先輩?」

「ん?何かしら?」

 

 

 震え声になりながら先輩を見ると、わざとらしく笑顔で首を傾げる。一瞬でも可愛いと思った自分をとりあえず殴りたい。いや、それよりもと教室を見回す。変な誤解されたら困るっつーか辛い。

 

 

「お前、いつの間にそんな美人さんと」

「部活の先輩だ」

「先輩と部活を通して芽生える恋。いつかのネタに使えるかな」

「止めろ小野寺っ」

「ひどいわ火野くん!私というものがありながら、カスミン先輩にも手を出してるなんて!」

「お前は何を言ってるんだ望月!」

 

 

 変な悪ノリするな!周りの視線が辛いから!

 

 

「あら、カグさん。わたしだけじゃなくてエレナちゃんにまで手を出したの?」

「もう止めてください先輩!!」

 

 

 とっくに俺のライフはゼロです!くそっ、今日は厄日か!

 

 

「……で、何の用ですか先輩」

 

 

 周りはこの際無視して、わざわざ1年の教室に来た理由を聞くことにする。でも本当に何の用だろう。部活の連絡ならメールとかで十分だろうに。

 

 

「カグさんは、お昼もう食べた?」

「いえ、まだですけど」

 

 

 食べようとしたら先輩が来たからまだ手つかずだ。ていうか、俺のあだ名ってクロチャーじゃなかったか?いや、カグさんでも良かったって言ったけどさ。

 

 

「なら良かったわ。今日は部員のみんなで食べないかってレナちゃんがね」

「あぁ、そうでしたか」

「で、どうせならカグさんをからかおうと思ってエレナちゃんに言ったらさっきのように」

「あれお前の所為か望月!」

 

 

 頭を抱えたくなった。というか抱えた。頭が痛ぇ。

 どうして昼食を摂ろうとしただけでここまで疲弊しないといけなかったのか解らない。ともあれ、俺は先輩と望月と一緒に部室へ向かう。南と朝田には悪いけど、昼はまた明日以降になるかな。

 

 

「ごめんねぇ、火野くん」

「謝るなら明日誤解解くの手伝えよ?というか謝るならやるな」

 

 

 幸い、クラスにいたのは少数だし朝田辺りは理解してるだろうからまだマシだと思う。月見原先輩が何もしないのが一番だけど。無理だろうけど。

 

 

「わたしも謝らなきゃね。ごめんなさいカグさん。お詫びに何でも言うこと一つ聞くわ」

「後が怖いんでいいです」

「胸を触るくらいなら、許してあげるわよ?」

「やめてください死んでしまいます」

 

 

 社会的に。廊下で厄介なこと口走るこの人どうにかしてほしい。

 と、(俺の精神を削っていく)会話をしながら部室に着き、早いとこ入る。部長か日比野先輩がいれば、少なくともこの2人しかいない時よりは落ち着ける。高町先輩?あの人は俺以上にいじられるから駄目だろ。というかあの人いまだ俺と目を合わせて会話してくれないし。人見知りでも、もうすぐ1ヶ月経つんだから慣れてほしいもんだ。

 

 

「お疲れ様でーす」

「お、クロチャーおつかれー」

「お…おつかれさま………」

「ただいま。セイちゃん、先に食べ始めたりしてない?」

「してないから」

 

 

 部長の姿は見えないけど、2人の先輩は既にいた。

 

 

「あら、レナちゃんは?」

「ん?レナなら、もう来ると思うぞ」

「おや、もう来てたのか」

 

 

 すぐに、手にカップ焼きそばを持った部長もやってきた。しかしカップ焼きそばですか。学校へ持ってくる人初めて見ましたよ。

 

 

「それじゃあ、食べようか。あ、セイはちゃんと待ってたよな?」

「あたしは犬かなんかか」

 

 

 部長にも言われてるよ………信用ないな、日比野先輩。

 

 

「はは、すまない。それじゃあ、いただきます」

「「「「いただきます」」」」

 

 

 

 

 

 

 

「クロチャーたまごやき貰うなー」

「あ゛!?ちょ、先輩!たまごやきだけは取らないでください!」

「いーじゃん一個くらい。…お、結構甘いな」

「スズちゃん、それだけで足りるのぉ?よかったら私の唐揚げいかが?」

「じゃあ…一つだけ……」

「カグさん、カグさんの大きなソーセージもらっていい?」

「これウインナーです」

「火野君。キャベツいるかい?」

「芯の部分が美味しくないからって俺に押し付けないで下さ――日比野先輩またたまごやき取りましたね!?」

 

 

 食べ始めてから数分で騒がしくなった。あいつらと食べてるときでもここまで騒がしくないのに。

 しかも俺の弁当からたまごやきが奪われていく。程いい甘さのたまごやきが。日比野先輩に。おかず交換ならいいけど、先輩のは『特盛!スタミナ弁当DX』とかいう、胃にダメージが大きそうな弁当で交換のしようがなかった。どこのスーパーで買ったんだろうか。

 月見原先輩はウインナーを取る代わりにサンドイッチをくれたけど、何故か食べさせようとする。やめてください死んでしまいます。望月、笑ってないで助けてくれ。

 

 

「あぁそうだ。今度の休日、ちょっと遠出しないかい?写真部らしく、春を連想させるものを撮りに」

「いいんじゃない?わたしは賛成よ」

「いいですけど、写真部らしくって………」

 

 

 この昼食会?は、その休日のことを決めるためでもあったらしい。普段の活動が活動だから、確かにたまには写真部らしい活動しないとな。たまにじゃない、普段からするべきだろ。

 最初は、部長の知り合いが経営してる宿に一泊する予定だったらしいけど、いくらなんでも男の俺もいるし、万が一問題が起きたら(そんな気はないけど)迷惑がかかるからと説得して日帰りにしてもらった。ただでさえ月見原先輩はからってくるし、望月と部長はガード緩いし。とにかく日帰りにしてもらうのは確定で、あとはそれぞれの親御さんが許してくれるかどうかで話は一度区切り、食べ終ってからは、いつも通りの部活動をした。

 春を連想させるものか。良さそうなのが撮れたら、鈴ちゃんと春ちゃんにも送ろうかな。




 1ヶ月も間をあけてしまいました、クロウズですごめんなさい。
 最近、なかなかうまくいかず書いては消し書いては消しを繰り返し、ここまで伸びてしまいました。その間、ガールフレンドのDVDを買って何度も観たり特典CDを何度も聴いたりしてました。
 次回はもう少し早く更新したいです。


じゃまた

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