カメラと棒付きアメと   作:クロウズ

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五話目

 写真部に入部してから約1ヶ月。部活内での唯一の男子部員という空気にもようやく慣れてきた。クラスメイトの望月は勿論、部長と日比野先輩とはすぐに打ち解けることが出来たし、高町先輩も最初は目を合わせてくれなかったけど今はそういったことも少なくなってきてる。一度ずっと見てたら涙目+真っ赤で逸らされたけど。あれは俺が悪かったから、反省してるけど。ただ、副部長のからかいだけは慣れない。からかいというか、セクハラに近いものもあるし………。

 

 

「ワン?」

「ん、ごめんシロ」

「ワンッ」

 

 

 散歩の途中だったの忘れてた。寂れた公園の砂場で遊んでいた愛犬のシロ(豆柴)が嬉しそうに尻尾を振って、全身に砂を付けて戻ってきたからその砂を軽く払ってやってからリードを付ける。

 シロは元々野良犬で、俺が小3の時に父さんに拾われた。曰く、「小さいし危険じゃなさそうだったから拾った」らしい。理由はあほらしかったけど、その頃は父さんも母さんも家にいないことが多かったから素直に嬉しかった。

 他の人や犬に吠えたりしない良い子だけど、どうしてか伏せとお座りが出来ない。いや、出来ないというより、伏せと言ったらお座り、お座りと言ったら伏せと逆になる。何とかならないかな…………。

 

 

「ま、とりあえず帰ろっか」

「ワンッ」

 

 

 と、シロは満足してるみたいだから公園を出て帰るだけなんだけど、

 

 

「帰ったら何しようかな…」

 

 

 世間ではゴールデンウィーク(最終日)だけど、連休中何かした記憶全然ないな。朝田をはじめ、男子とは予定つかなかったし、部活もなかったし。チャットで部長に聞いても、「ゴールデンウィークくらいは休みでいいだろう」って言うし。むしろこういう連休だから部活するんじゃないのか?それでモヤモヤしてたら倍満に振り込むし。

 初日は初日で、小野寺の漫画のスケッチ要員として漫研の部室に行けば、いきなり取り押さえられるし。「ちょうど火野君のような背格好をした子が主人公の漫画なんだよ~」とか言ってたから、スケッチされるくらいは別に良かった。でも、執事服を無理やりに着せるのはどうなんだよ、おい。写真を撮られたけど、すぐに奪い取ってデータは消し―――。

 

 

「きゃっ」

「っと?」

 

 

 曲がり角で人とぶつかってしまった。とっさに手を掴んだけど、俺も倒れそうな状態だったからか、俺が下敷きになる形で倒れる。………結構痛い。シロー、大丈夫かー?

 

 

「ワンッ」

 

 

 大丈夫そうだな、よかった。

 

 

「いたた…ありがとうござ―――――あら、火野くん?」

「え?………あ、も、望月?」

 

 

 ぶつかった相手は、まさかの望月だった。なんか、初めて会った時に似てるなこれ。いや、あの時は倒れなかったけど。

 それにしてもこの状況、非常に良くない。主に俺の理性に良くない。俺が下敷きになっているからだし、俺は仰向け、望月はうつ伏せ。これは良くない。こら、シロ。寝転んでるわけじゃないから顔を舐めに来るな。

 

 

「あー、望月。そろそろ退いてくれないか………?重くはないけど、色々と……」

「え?あぁ、そうねぇ」

 

 

 先に起き上った望月に手を引っ張られて俺も起き上る。

 

 

「大丈夫だったぁ?」

「まあ、一応な。望月は、怪我なかったか?」

「えぇ。火野くんのお陰でねぇ。………んー」

「?」

 

 

 急にどうしたんだ、望月?

 

 

「火野くんって、服の趣味変わってるわねぇ」

「…そうか?」

 

 

 今の格好は、シロの散歩用に着てるジャージの上下とTシャツくらいなんだけどな。

 

 

「そうよぉ。高校男子がワンちゃんTシャツなんて、変わってるわよぉ」

「……あー、これか。でもこれ、私服じゃなくて散歩用だからな?」

「そうなの?」

「さすがに私服で着る勇気はないよ。それより、朝からどこに行くんだ?」

 

 

 しかもこの辺通って。さっきの公園くらいしかないぞ。あ、でも望月なら被写体探しとか言いそうだな。でもまだ朝の8時なんだけどな。

 

 

「実はねぇ、火野くんのお家を探してたの」

「………………はい?」

 

 

 俺の家?何故に?

 

 

「ほらぁ、ゴールデンウィーク明けにテストがあるでしょ?その勉強会をしようかなって」

「へ?休み明けテスト?聞いてないぞそんなの」

 

 

 いつ連絡があったんだ?というか佐藤先生の連絡忘れじゃないのか?

 

 

「えー、ちゃんと言ってたわよぉ。もしかして火野くん、屋上に出てたんじゃない?」

「………否定できない」

「ね?それでぇ、どうかな?」

「家に来ることか……」

 

 

 別に見られて困るようなものはないし、断る理由もないんだけど。でもなぁ……母さんいるし、話聞かずに勘違いしそうなんだよなぁ、雀荘に行ってきてくれないかな。

 

 

「火野くん?」

「いや、俺ん家は……」

「…………だめ?」

「だめ…………じゃないです、はい」

 

 

 駄目だ、押しに弱すぎるだろ俺。押しというか上目遣いに。写真部の時もこうだったけど、まさか流されやすい奴なのか、俺は?確か父さんも頼まれたら基本断らない性格だとか言ってたっけ……。

 どうにしろ、望月が来ることを承諾したからには諦めるしかないか……………はぁ。どうにでもなれ。




一ヶ月以上かかった……どうもクロウズです。
バイト・学校・自動車教習所の三種に襲われてなかなか更新できませんでした、ごめんなさい。次回はそこまで間を空けないようにしたいです。


じゃまた!

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