カメラと棒付きアメと   作:クロウズ

28 / 50
〈3年生編〉
I話目


 時が経つのは早いもので、ついこの間まで2月だったのにいつの間にかもう4月になってる。………って、2月頃にも同じようなこと思った気がするな。

 始業式・入学式の時は、今年は春ちゃんが入学してきたから去年の鈴ちゃんの時みたいに何枚も撮らせて貰った。ニコニコしながらこっちに何度も手を振ってくれたから、いつも以上に気合いを入れて撮った。春ちゃんほんと可愛い。マジ天使。ちなみに、俺のクラスはA組で、担任は安定の佐藤先生だった。

 それから数日後に授業開始となったけど、俺は序盤から風邪を引いて欠席する羽目になってた。今はもう快復したんだけどさ。どうも風邪で欠席してようがサボり疑惑があるんだよなぁ。1年の時サボりまくったツケか。

 

 

「はぁ……今日も入部希望者はゼロか」

「うーん、何がいけないのかしらぁ?」

 

 

 今は部室で、写真部への入部希望者を待っている所だった。一応去年も写真コンテストで入賞したし、エレナに対する苦情とかの悪評もなかったから、問題ないと思うんだけどなぁ。それとも、エレナの悪評はその程度じゃ拭いきれないものだとでも言いたいんだろうか。

 

 

「もしこのままだと、部から同好会に格下げかしらぁ?」

「かもなぁ。ところでエレナ」

「ん?なにかしら?」

「俺はいつまでこうしてればいいんだ?」

 

 

 ソファに座る俺の膝上にエレナを乗せて、そのまま後ろから抱き締める形だ。いや、ね?確かに付き合ってるし、俺としても役得なんだけどさ、場所が部室だからなぁ。先生や生徒会、風紀委員にでも見付かったら面倒なことになりかねない。

 

 

「もうちょっとだけぇ。霞黒くんも、私と密着出来て嬉しいでしょ?」

「ある意味生殺しなんだけどな、これ……」

 

 

 こっちは精神的に死にそうになってるっていうのに、こいつは構わずもたれかかってきて更に密着してくる。あ、いい匂いする。

 どうせ今日は誰も来ないだろう、そう思ってた俺はエレナの相手をして油断していた所為で、部室に近付いてくる足音に気付けずにいた。その結果、

 

 

「すんません、ここに黒先輩がいるって聞いたんスけど」

 

 

 ドアをバンッと開けて入ってきた一昔前の不良みたいな女子生徒と目が合って、互いにフリーズ。エレナは気付いてないのか、いまだ俺にもたれかかってくつろいでる。

 

 

「はっ……あまりの光景に頭ん中真っ白になってました!あのっ、黒先輩っスよね!?」

「お、おう……えっと………」

「ま、まさかアタシのこと忘れたんスか!?」

「ん?どうしたの霞黒く――――もしかして新入部員かしらぁ?」

 

 

 くわっと迫る後輩に気圧され、やっと気付いたエレナをとりあえず下ろす。

 

 

「あ、アタシは1年の竜ヶ崎(りゅうがさき)珠里椏(じゅりあ)って言います」

「そうなんだ。私は望月エレナよ。それで、こっちが」

「ああエレナ。そいつ、俺の事知ってるみたいだぞ」

「まあ、黒先輩の事ならいっぱい知ってるっスから」

 

 

 なんかストーカーみたいな発言だな、今の。どっかで会ったっけ?って、あ………あー……。思い出した。

 

 

「……あー、久しぶりだな竜ヶ崎。入学式にいなかったみたいだけど」

「っ!お久しぶりっス黒先輩!!あ、それは途中めんどくさい奴らに絡まれて」

 

 

 俺が思い出して名前を呼ぶと、飼い犬みたいに嬉しそうにする竜ヶ崎。パタパタと揺れる尻尾が見えるな。頭を撫でてやるとさらに嬉しそうにしてる。というかこいつ入学式の日に何してんだよ。時間と場所にもよるけど、間に合うように潰してから来いよ。

 

 

「ところで先輩、こっちの先輩とさっきくっついてたっスけど」

「あぁ、それは私が霞黒くんの彼女だからで~す」

「へ~、そうなんスか。……って、彼女っスか!?黒先輩パネェっス!」

「なんでだよ………」

「で、霞黒くんはこの子とはどういう関係?」

「怖いから首元に手を添えるな」

 

 

 若干棘のある声だし、死んだような目でのこれは絞められそうで怖い。昔不良に刃物突き付けられたことあるけど、その時より怖いのはなんでだろう。彼女だからか、彼女だからなのか!?

 

 

「中学ん時喧嘩ばっかしてたって話しただろ?」

「あー、確か黒狗って呼ばれてたんだっけ」

「それは止めろ。で、こいつが集団に絡まれてたから全員薙ぎ倒して、始末してたら懐かれた」

「いやぁ、あの時の先輩はほんとカッコ良かったっスからねぇ」

「止めろ。それで竜ヶ崎、わざわざ部室に来てどうした?入部希望か?」

「あ、いえ、先輩と同じシマに来たんで、挨拶に」

 

 

 なんだ、入部希望じゃないのか。1人増えると思ったのに。あと、シマ言うな。縄張りじゃないっての。

 下校時刻も近付いてきて、今日は他に誰も来ないだろうということなので、さっさと閉めて帰ることにした。今日は鈴ちゃんも春ちゃんも家の用事で早めに帰ってるから、華道部には寄らない。一緒に帰りたかった。

 

 

「前も3年の階に行ったんスけど、そん時は先輩風邪だったみたいでしたし」

「あー、あの時ね。てかわざわざ教室まで来たのか」

「舎弟として当然っスよ」

「お前を舎弟にした覚えないんだけど」

 

 

 とりあえず、喧嘩とかはもうやるつもりはないって後で言っておくか。でないと巻き込まれる可能性高いし、桐崎に知られたらまた面倒だし。

 

 

「じゃあ、アタシこっちなんで」

「気を付けて帰れよー」

「またねぇ~」

 

 

 学校から少し離れた所で竜ヶ崎とは別れる。知ってる後輩が入ってくれるのはいいんだけど、あの事を知ってるからなぁ、あいつ。知ってるどころか間近にいたレベルだもんなぁ。まあ、なんとかなるか。

 

 

 

 

 

 喧嘩はやるつもりない、そう思っておきながら、駅前でチンピラ数人がぶつかってきてエレナに手を出そうとしたから全員まとめて潰してしまった。一応、みぞおちと顎に蹴り入れた程度に済ませたつもりだけど、これ正当防衛になるかなぁ。周りに人がまったくいなかったから、逃げるようにチンピラをそこに残して急いで電車に乗った。




 \(`д´)ゝデュエッ!クロウズです。最近寒いっぽいですね。
 今回から3年生編、つまり最終編です。どれくらいかかるかは解りませんが、完結させたいですね。



 高校最後の年となり、進路のことですれ違い、少しばかり距離が開く2人。いつものように甘い雰囲気がない分クラスは平和なものだが、クラスメイト達はそんな2人を見ていられず元通りにしようとあの手この手を尽くす。次回、『隣にいる君』。あの子の笑顔に、シャッターチャンス!!(嘘です)



 それではこの辺で。俺達の満足はこれからだっ!




 人物紹介に〈竜ヶ崎珠里椏〉が追加されます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。