カメラと棒付きアメと   作:クロウズ

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10話目

 夏休み。学生が部活で盛り上がったり青春を謳歌したりという時期の中、俺は逆立ちをしたイヌとウニのイラストと『INUNI』の文字がプリントされたTシャツに短パンという格好でうちわ片手にネト麻に勤しんでる。

 

 

「………暑い………打ち筋が乱れる…………」

 

 

 エアコンを付けたいところだけど、あいにくとそのエアコンは故障中。扇風機も死んでしまってる所為でうちわを使うしかない。業者いつ来るんだっけか。しかも窓を開けても風は一向に吹かないから暑さがまったく和らがない。

 この暑さで打ち筋が適当になりながらも、オーラスで緑一色(リューイーソー)を和了って1位で終局。今日はこの辺で落ちるか。

 

 

「あー……無理だ………暑い………」

 

 

 しかし、これだけ暑いとやる気がなくなる。………水風呂、用意するか。汗かいて気持ち悪いし。

 

 

 

 

 

「っ、はぁあああ……さっぱりした……」

 

 

 やっぱり汗だくは気持ち悪い。無理。しかも服が結構汗吸っててやばかった。

 あれからすぐに水風呂を用意して浸かってたら、途中で寝て死にかけたけど。思いっきり水飲んだし。

 

 

「さて、ちょっくら図書館にでも行ってくるか」

 

 

 家にいたままだと、せっかく水風呂でさっぱりしてもまたすぐに暑さにやられるし宿題が一向に進まないし。

 

 

 

 

 制服に着替えて日差しの強い中歩いて、電車に揺られてまた歩いて、夏休みでも部活やら補習やらで開放されてる聖櫻学園に到着。バイクで来れば良かったかもしれないけど、まあいっか。そもそもバイクは父さんが使ってて家にないし。早く自分用が欲しい。

 まあそんなことは後に回して、図書館に入る。

 

 

「あ、火野さん。おはようございます」

「おっす、村上」

 

 

 図書館には案の定、村上が図書委員の仕事をしていた。本棚の方には朝田もいるみたいだ。

 

 

「珍しいですね、火野さんが図書館に来るなんて」

「エアコンが故障中でな……」

「そうだったんですか。それは大変ですね」

 

 

 俺の話を聞いて苦笑するしかない村上。実際ほんと大変なんだよな、こうも暑いのにエアコン使えないってのは。しかも今日みたいに風が全然だと何もやる気が起きなくなる。

 

 

「まあそういうことだから、こっち来て宿題することにしたんだ。一番近くて涼しそうな場所ここだったし」

「なるほど」

「村上さーん、こっち作業終ったよって、火野君が図書館にいるなんて珍しい」

 

 

 本棚の整理でも終ったであろう朝田も来て、村上と同じことを言う。そんなに俺が来るのが珍しいのか。去年もちょくちょく来てたっての。

 

 

「エアコンが故障したらしくて、今日はこちらに来たみたいですよ」

「うわ、ご愁傷様だね。ところで、今日は1人っぽいけど望月さんは?」

「さあ?今日は会ってないし何も約束とかしてないけど」

「へぇ……いつもべったりなのに珍しい」

「今日の火野さんは珍しいことが多いですね」

 

 

 なんか珍獣扱いされた気がした。

 2人は図書委員としてやる事がまだあるらしいから、話もそこそこにして俺は空いてる席に座って宿題を始める。しかし英語の冊子、分厚くないだろうか。辞書くらいの厚さはあるし、ここの英文なんてまるで意味が解らんぞ……。

 

 

 

 

 

「……あー、もう無理だ」

 

 

 英語に取り組んでから数時間程経って、ついにギブアップ。これ以上は頭が熱暴走を起こしそうだ。

 

 

「でもまだ3分の1も終ってねぇんだよな……」

 

 

 突っ伏して冊子をぱらぱらとめくっていく。まだまだ残ってる問題の英文と空白の解答欄。もうやだ英語したくない。これが数学だったら余裕なのに。まあその数学はとっくに終らせたけど。あと少し休憩したら続きをするか。

 

 

 

 

 

「も……無………理……………」

 

 

 燃え尽きたよ、真っ白に……。もうこれ以上出来ない、頭痛い。あれだけ粘っても半分もいかなかった。はじめは結構いた他の生徒も、今いるのは俺くらい、というか、閉館間際だったから俺しかいなかった。長居しすぎたな。

 戸締りもしないといけないらしい図書委員の2人に軽く挨拶をして図書館を後にする。夕方にもなると、昼間の暑さはなくなって風も出てきたお陰で、少しばかり涼しくなってくる。今日はバイトもないし、このまま帰るか。エアコン使えないままだけど。

 

 

「まあ、何とかなるか」

 

 

そんな楽観視して家に帰り、冷房の効いてない部屋の暑さにやられたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで数日経ったある日。今日は朝からバイトの為『雪月花』にて接客中。今日も今日とて暑いからか、中高生が店内で寛いでたり勉強してたりでそこそこ忙しい。その上俺は頻繁に代打ちをさせられるもんだから休む暇もない。

 

 

「すんませーん、黒さん会計お願いしまーす」

「せんぱーい、注文お願ーい」

「おい、決闘(デュエル)しろよ」

「なんで俺ばっか名指しするかなお前らは!?」

 

 

 あと最後の何だ!麻雀で決闘なんて言葉ないぞ!?

 

 

「あはは……。会計と代打ちはやっときますんで、先輩は注文行ってください」

「おう。今度は跳ばされるなよ」

 

 

新人バイトに任せて、注文を聞きに行く。確かこっちの―――なんだ、戸村と小野寺か。

 

 

「せんぱーい、そんな露骨に嫌そうな顔しないでくださいよー」

「してない。てか、お前ら知り合いだったのか?」

「まあね〜。そういう火野くんも美知留ちゃんと仲良いっぽいけど、浮気?」

「注文取らねぇぞ」

「冗談だって冗談」

 

 

 馬鹿なことを小野寺が言うもんだから別のテーブルに向かおうとしたところで引き留められたから仕方なく聞いてやることにする。

 

 

「で、何にするんだ?」

「そんな急かすとエレナにも愛想つかされ――痛っ」

「あたしは先輩のお勧めで~」

「だったらこれになるぞ?」

 

 

 懲りない小野寺に凸ピンをかまして、メニューの中から『チョコクリームパフェ宇治抹茶とイチゴのダブルソフトのせDX』を指差す。大きめのグラスに、下からスポンジケーキ、フレーク、プリンの三層に隙間を埋めるかのようにチョコクリームを加え、抹茶とイチゴのソフトクリームを乗せた、甘いものが好きだという女性客でも、1人で完食した人はまだ見てないほど量が多く、胸焼けを起こすものだ。俺も食べたことはあるけど、そこまできついものじゃなかった。その時代理にはドン引きされたけど。

 ちなみにこのメニュー、例の如く店長がどこかで見付けたものを改良したものらしいんだけど、その改良が、元よりマシになったのか元より酷くなったのかは解らない。出来れば前者であってほしい。

 

 

「うっわ、写真だけで胸焼け起こしそう……」

「あはは、さすがにこれはちょっと……」

「そうか?まあ、高いしな」

 

 

 一つ1,500円で食べ切れる量でもないから、1人で挑むのは無謀だろう。

 結局2人はそれぞれチーズケーキとチョコケーキのバニラ付きを頼み、来るまでの間俺を話し相手にしようとしてきたけど跳ばされた後輩の代わりに打つことになったから卓に着いて相手をしたり他の客の注文を聞きに行ったりと、無駄に忙しい1日になった。




 あてーんしょーん、はろはろ~。ドーモ、クロウズデス。きみと過ごす夏休みをプレイして真っ先にエレナ攻略に向かいました。可愛すぎて悶えました。
 今回は夏休みということで、霞黒くんが勉強したりバイトしたりのお話でした。そして、まさかのヒロイン未登場回になりました。たまたまですよ、たまたま。次回はちゃんと出る、はず。



 夏は祭りに花火、海にキャンプファイヤー等イベント事が目白押し。それらの喧騒の中で場の雰囲気に酔った霞黒とエレナは、2人きりになるとその興奮冷め遣らぬまま、ついに一線を越えてしまう!?2人の夏は、一体どっちか!次回、『一夏の過ち』。あの子の笑顔に、シャッターチャンス!!(嘘です)




 それではこの辺で。はらたま~きよたま~。

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