目的の喫茶店に着くと、他の6人はとっくに集まってた。
「文緒ちゃ〜ん、麻衣ちゃ〜ん。お待たせ〜」
「あ、望月さん。良かった、心配したんですよ?」
「ごめんねぇ。でも、何もなかったわよぉ」
一応、正岡と村上には(望月が)連絡入れておいたけど、2人共やっぱり心配してたみたいだ。何もなくはなかったけどな、言ったら面倒だから言わないけど。と、店の前で8人も集まって駄弁ってたりしたら迷惑だから、早くに入る。
休日の昼間にも関わらず、店内はそこまで埋まってはなかった。これなら、8人なら大丈夫だろうな。予約されてたりしたらアレだけど。
「いらっしゃいませ。何名様で……おや、火野君にエレナじゃないか」
「あら、部長?」
「え、間宮先輩?」
たまたま入った喫茶店の店員に、まさか先輩がいたとは。そういえば去年、奈良の大学に行くとか何とか言ってた気がするけど、まさかバイト先で遭遇するとか考慮しとらんよ。オカルトかこれ?あと望月、部長は俺だ。
「あ、そうだったわねぇ」
「それにしても随分と大所帯だな。とりあえず、席に案内しよう」
まあ修学旅行ですからね。
席に案内してもらったけど、当然8人掛けの席はないわけで4人掛けの席2つを使わせてもらう。その際に雀卓を見つけ、注文さえすれば打たせてくれるようだ。といっても、こいつら誰も麻雀出来ないんだけど。
「ははっ、まあ打ちたくなったら呼んでくれ。私達が相手するよ。こちら、メニューになりますので」
「ありがとうございます」
先輩にお礼を言い、メニューを見る。喫茶店だから軽食ばかりかなと思ったら、がっつり系も色々あった。ただ、この『特盛り!激辛ジャンボカレー』は場違いな気がする。写真からして量が多すぎるし、肉もサイズが大きい。これはあれか、30分内に食べ切れればとかの類か。
「うっわ、何だその胃に大ダメージ与えそうなやつ」
「火野はそのカレーでいいのか?」
「甘党の火野くんには過酷じゃないかしら?」
「むしろ普段甘い物ばかりだからここで辛い物食べるんじゃないかな?」
食べないぞ。いや、食べないぞ。辛い物は基本無理だからな?あとブラックも飲めないぞ。
「火野サンは、意外と子供舌ですネー」
「ほっとけ」
「まあまあ……」
その後さっさと決めるとそれぞれ注文して、俺は卓の方に行く。打てるならそりゃ打たせてもらうに決まってる。
先輩に頼むと、先輩の他に2人の店員、鷹宮さんと霧雨さんに入ってもらう。初めての相手だけど、手加減はいらないよな。
「こうして火野君と打つのは久しぶりだね」
「ですね。最近はネト麻の方も出来ませんでしたし」
「それは、すまない。ちょっと立て込んでてね…」
「あぁ、レナちゃんのよく話してた好k――「鷹宮さん!!」――おっとっと。それ、ポンね」
「先輩、声大きいです。あとそれ、ロン。跳ね満です」
何か誤魔化すように大声を出してやや乱暴に牌を捨てた先輩に
先輩は鷹宮さんを睨むけど、当人はどこ吹く風。この人、振り込ませる為にわざと言ったんじゃないだろうか。だとしたらだいぶえげつないぞ。
「ふふん。じゃあ、あたしの親ね」
(絶対に直撃取る……!)
(……なんか、先輩からオーラが)
空回りしてまた振り込まなきゃいいんだけど。
「で、スワローはなんでだんまりなの?」
「その呼び方は止めろ。カン」
「霧雨さん、なんでスワローなんです?」
「彼は、名前が燕だからね。ただ英訳しただけなんだが」
「中学に入ってから呼び始めたのよねー。ポン」
「え、幼馴染なんですか?それ、チーで」
「ええ。幼稚園からの付き合いよ」
「ちなみに大学の方は学部も一緒のようだよ」
腐れ縁のレベル遥かに超えてません?霧雨さんものすごいしかめっ面してますし……。縁の太さ、出雲大社の注連縄並ですかそれ?
「もしそうなら俺は縁の神を呪う。ツモ」
「ドラ6っすか………」
「カンドラが仕事しすぎたね」
「親っ被り……」
染め手でも上手い具合に迷彩掛かってたし。さて、さすがに焼き鳥で終る気はないし、本気出す「火野くーん、お料理とどいたわよー?」まじかよ!タイミング悪いな!?
「あ、だったら止めるかい?」
「いや、最後までやります。それに、ここで止めたら先輩じゃなくて俺がラスになりますし」
「……ほう?なら、結果は変わらないと思い知らせてあげようか」
「あはは、盛り上がってるわね」
「……だな」
親の霧雨さんからスタートして、牌を切っていく。ここは、多少低くても早和了りを狙うか。順調に行けば2位、運が良かったらトップで終れる。
「ありがとうございましたー」
「ふぅ。さて、次はどうしようか」
「時間はまだあるとはいえ、ねぇ」
「誰かさんの所為でな」
「うぐっ……」
喫茶店を出た後、望月と男共に非難じみた目を向けられる。結局あの後は霧雨さんが連荘して俺と先輩が仲良くトビ終了。その時は諦めて料理を食べに戻ったけど、トバされたまま帰るのは雀士として情けない、というかそんな事が母さんの耳に入ったら、また1週間近くの徹麻とかやらされるから同じ面子で何度も打った。最後の最後でトップに立てたけど、霧雨さん強すぎる………。
とまぁ、そうやって他の7人を放ったらかして何度も打ってた所為で今の俺は居心地悪い。喫茶店での会計は全部俺持ちだったし……。
「ま、これくらいはな」
「火野サンは太っ腹ですネー」
「あの、やっぱり私の分は……」
「いいんだよ正岡さん。火野君が払うって言ったんだし」
「……………後で覚えてろよ朝田」
恨みを込めた目を向けても、朝田は笑っている。くそ、ムカつく。
で、この後時間いっぱいまで全員にあちこち振り回された。途中で正岡の体力が尽きたから俺が背負うことになった。しかも望月の俺を見る目がなんか怖い。何故だ、俺が何をした……。
「あー、疲れた………。体がきしむ…………」
布団を敷いてそこに突っ伏す。うぁー……何もやる気が起きない…。明日筋肉痛になる…………。
「だらしねぇな、火野は。そんなんで筋肉痛かよ」
「…るせぇお前と一緒にすんな筋肉バカ……プロテインでも摂取してろ達磨野郎…」
「しねぇよ!?」
「うるさいそこ。火野君、ご飯は?」
「寝る……いらない………」
今は一刻も早く体を休ませたいから下まで歩きたくない。そんな屍間近みないな俺を置いて部屋を出ていく3人に、顔は向けず手だけ振って見送る。…あー……鍛えるか………今日はしないけど…。このまま寝―――ん?電話か…誰だよこんな時に。
「ぁい、もしもし……」
『あ、すまない。もしかして寝てたかな?』
「……。……………先輩?どうしたんでー…?」
一体何の用だろ。とりあえず眠い…。
「まあ、寝ようとはしてましたけど…何か用ですか……?」
『ああうん、用って程じゃないんだけど、その…』
「……?」
なんだろか。次のネト麻のことかな。
『ちょっと、君の声が聞きたくて……ダメかな?』
乙女か。あ、乙女だ。正直さっさと寝てしまいたいっていうのもあるけど、せっかくだしいいか。腹減った場合は、確かチョコるんバーが余ってたはずだし。
「大丈夫ですよ。こうして話すの、久し振りですし」
『よ、良かった。そういえば、この前にな』
それから数分程、お互い最近どんな事があったかを話し合った。ただ、先輩の声がだいぶエコー掛かってたような気がするのはなんだったのか。水の音も聞こえたりしたし……。ま、いっか。さて、今日はもう寝るか。
「火野、起きろ」
「……む、うぅ……ん………」
眠い……今何時だ…?
「7時前だね。さっさと起きて、荷物片付けなよ?」
「……ん…」
のそのそと布団から這い出て、欠伸を噛み殺す。えーっと、確か寝ようとしたら先輩から電話がかかってきて、それが終ってからは……あー……すぐに寝たのか。
今日はこの後ここを出て、半日は京都観光して帰るんだっけ。うーん、せっかくだし京都でも何かお土産買っていこうかなぁ。やっぱり、奈良だけじゃダメだよな。何がいいかなぁ。
「はいはい。そういうのは後にして、朝ご飯食べに行くよ」
「ん、あぁ、解った」
「食いたいモン食えなかったらお前の所為だからな」
桐崎を除いた2人に急かされて、布団を綺麗に畳んで部屋を出る。
その後京都ではルメールに忍者探しを手伝わされて東奔西走させられまくったり、朝田の悪ふざけでお化け屋敷に連れ込まれて、ガチ泣きして小動物みたいにしがみついて離れない望月を慰めてやったり、ガラの悪い不良に絡まれてる他クラスの生徒を助けた後で桐崎と一緒になって不良共をぶっ潰して病院送り手前にしてしまったりなんやかんやあることを、俺はまだ知らなかった。
あてーんしょーん、はろはろ~。最近診断メーカーで女体化モノ作ったクロウズです(姑息なステマ)。
修学旅行ってなんでしたっけ(本末転倒)?こ、小ネタの方で補完するので許してくださいお願いします(五体投地)!久々に部長を出したかったんです(ぶっちゃけ)!
次の話は内容も更新日も相変わらず未定、小ネタに走る可能性大です。というか走ります。1年編とかで分けるべきかな。
それじゃあこの辺で。はらたま~きよたま~。