4月も下旬、というか月末。24日に春ちゃんは15歳の誕生日を迎えた。これで春ちゃんも大人の仲間入りになった。
「大人の仲間入りって……成人は20歳からだよね?」
「ですネー。ですが、ゲップ食うと言って、昔は15歳で大人だったんですヨー」
「元服な。もう少し頑張ろうか」
「おー、そうでしタ」
日本の知識はあるのに、間違えて覚えてばかりなのか?ルメールは。
「面目なイ……」
「まぁまぁ。それより、そろそろ出たほうがよくない?次の授業体育だし」
「いいわよねぇ、体育。弾ける汗、飛び交う掛け声、そして、女の子の弾むm「はいストップ」――むぐ」
「お前は相変わらずだなほんと……」
「ま、今日は体力測定だけどね」
「な……なんだと…………」
体力測定だと…?なんでそんな、とても面倒なやつなんだよ……強制されるやつじゃんか。サボれないし……。
「サボろうとしない」
「ダメですヨー?」
「むしろサボった方が大変じゃない?1人居残りでやらされるわよぉ?」
「だよなぁ……」
はぁ………仕方ない、行くしかないか。
「用紙、全員に渡ったなー?それじゃ、男子はハンドボール投げからいくぞー」
男女分かれて整列した後、ハンドボール投げのため移動する。このハンドボール、投げ辛いと思うのは俺だけかな。
「出席番号順に行くからなー。朝田から投げろ」
「は、はい」
先生に言われて、朝田の第1投。思い切り投げたけど、記録は16メートルと微妙な位置。朝田、ガタイはいい方なのになぁ。本ばっかりで体動かさないからだぞ?
「極端に低いわけじゃないからいいだろ別に。というか、体動かしてないことには君に言われたくない。その上サボり癖あるし」
「まぁ、確かに俺も筋トレとかしてないけどさ。サボりは関係ないだろ、多分」
「これで君に負けたらちょっとへこむよ……」
失礼な奴だな、おい。んー、今が中村だから……もうすぐ俺か。……やっぱり男子の人数少ないなここ。一学年で100:300だっけか。
「次、浜風」
「っしゃあ!」
クラス一ガタイのいい男子の浜風、その第1投は…………遠い。後ろに。前じゃなく、後ろに遠かった。あんなにガタイいいのに、まさかのノーコンだった。
「…………先生、あれは」
「0だな。次は後ろ向いて投げろ。次、火野……はいないだろうから日村」
「いやいますから!さっき目合ったでしょうが!」
それどころか始まる時にも目合ったじゃん!
「ははは、お前如きが私と目が合ったくらいで射止めれたとでも?よし、今夜家に来い」
「いきなり何ですか!?」
もうやだこの体育教師(女)。生徒を家に連れ込もうと考えてるとか、よく教師になれたなおい。
早くこの先生から離れたいこともあり、さっさとボールを投げる。本当は軽く投げて終らせたいけど、そんなことしたら確実に何かされるから思い切り。
「36メートルー」
あれ、去年と同じか。まぁいいけど。
で、列に戻ったら案の定朝田がへこんでた。俺に負けたのがそんなにショックか。
「なんであんなに投げれるんだよ……細いくせに」
「いや、浜風には負けるから。投擲スキル高いんだよ多分」
「あいつノーコンだから無視。ネトゲか何かの話?」
浜風の扱い酷いな。確かにあれは南以上の脳筋体力バカだけど。あと誰が廃人ネトゲーマーだって?
「誰もそこまで言ってない。まったく、ほんとなんであんなに投げれるんだか」
「まぁ、色々あるんだよ。色々」
そのまま、もう一度順番が来るまで適当に待ち、二投目もさっさと投げる。一投目よりは短かったけどそれでも30は飛んだ。ちなみに朝田はまた16メートルだった。投げた後睨まれた。何故だ。
それから残りの種目も済ませていき、体力測定は何とか終る。最後の50メートル走で、走り切った直後に何回も横転して膝と肘が酷いことになったけど。……去年もこんなことあった気がするな………。
「あー、あったねぇ。ざまぁ」
「……覚えてろよ朝田」
「もう。喧嘩しないでください。はい、これでいいですよ」
「……っ、叩くなよ………」
保健室で、手当てをしてくれた後輩の佐伯に傷口をガーゼの上から叩かれる。曲げても多少痛みはなくなっても、叩かれたら痛いんだぞ……?
「すぐ治るから大丈夫ですよ」
「そういう問題じゃ…………ところで、神崎先生は?」
「先生ですか?それなら」
佐伯は1つのベッドを指差す。あぁ、二日酔いで寝てるのか。
「はい」
「え、それ先生としてどうなのさ」
「よくあるらしいから」
「えー……」
信じられないと言いたげな朝田に諦めろと伝える。普段は真面目な人だから。酒さえ飲ませなかったら大丈夫だから。
「ま、いいや。俺は先に戻るね。火野君はどうせ購買部だろ?」
「どうせとか言うな。そうだけど」
購買の水野さんに頼んでメロンパンをいつもより多く仕入れてもらったから楽しみだ。ついでにいちごミルクも買おっと。
「やっぱりメロンパン先輩ですね」
「メロンパン先輩て……くくっ」
「え、何その呼称。俺のこと?」
「椎名さんが言ってた、メロンパンをくれたって人の特徴が、先輩みたいだったので」
いや、確かにそんなことあったけどさ。あの時名乗ったわけでもないしそれ以降まったく会ってないから椎名は名前知らないわけだけどさ。でもそれだいぶ前の話だろ。てか言い始めたの誰だ。
「あ、それは鈴河さん」
「あの猫娘か……」
どうせいつもの場所で昼寝してるだろうからパン渡そうと思ったけど止めた。今日は屋上で鈴ちゃんと食べよっと。ついでに望月辺りも誘うか。
「あ、火野くんお帰りー」
「遅いぞ、黒兄」
財布忘れてたから教室に取りに戻ってみれば、既に鈴ちゃんがいた。何でも、今日は弁当作り忘れてたのを知ってたからわざわざ俺の分を持ってきてくれたとのこと。鈴ちゃん、いい子すぎる……。
「……で、なんで戸村もいるんだ?」
「まーまー、固いこと言わないでよせんぱーい」
「勝手に着いてきたんだ……」
野良犬かよお前は。
「私は大歓迎だけどねー」
「ああうん、だろうな……戸村も一応美少女だし」
「やだなぁ先輩美少女なんて…………一応?」
「黒兄、そんなことより早く座って座って」
「え、いっちゃん今そんなことよりって言った?」
「あ、ごめんごめん」
ねぇねぇと言ってくる戸村をスルーして鈴ちゃんの隣に座る。本当ならパンを買いに行くつもりだったけど、今日は鈴ちゃんお手製の弁当を頂こう。でもこれ、もし俺が弁当作ってたりパンを買ってたらどうするつもりだったんだろ?出されたら食べるけど。
「黒兄が昨日夜更かししてたの知ってたからな。その場合絶対寝坊するし」
「だから授業寝てたの?早めに寝なきゃ駄目よぉ?」
「私と春瑚も、何度も言ってるんだがな……はぁ」
「まー、気が付いたら夜更かしってしちゃいますからねー」
「女の子の夜更かしは特に駄目よぉ〜?お肌にも良くないし」
「その辺はばっちりですからー」
「授業中は寝てばかりだからとでも言うつもりなのか……?」
「や、やだなーいっちゃん。あたしが居眠りばっかりだなんて」
「してるじゃないか」
…………何でだろう、会話に入っていけない。そのせいで1人だけ弁当が空になりそうだ。春菊うまー。
「うぅ、いやそれはですね、バイトを幾つか掛け持ちしてるからでして……。それに数学って眠くなりやすいじゃん」
「居眠りしてることに変わりないだろうに」
「火野くんも数学はよく寝てるわよねぇ。佐藤先生嘆いてるし」
「数学くらいなら寝ててもいいかなって」
「じゃあ他の授業サボるのは何でかしら?」
「うぐっ……」
さ、最近はサボってないし……。去年よりは頻度減ってるから…………。それに体育とか家庭科とかは基本サボってないし……。
「他はともかく、黒兄数学だけは満点だからな」
「せんぱーい、今度勉強教えてくださーい2人っきりで」
確かにその通りだけどだけって言うな。悲しくなる。
数学ならお前のレベルに合わせてミスがなくなるまで徹底的に説明してやるけど生物と英語は他をあたってくれ。あの二教科は全然だから。特に英語。望月、テスト前はまた勉強会頼む。
「いいわよぉ〜。でも火野くん、物覚え良いのになんで英語だけ駄目なのかしら?」
「それは俺にも解らん……」
そんなこんなで、今日も過ぎていく。……って、もうすぐゴールデンウィークとその休み明けテストじゃね?あの連休からのテストは苦痛以外のなんでもないと思う。
あてーんしょーん、はろはろ~。2週間以上空きましたが生きてます、クロウズです。
今回ちょびっとだけ授業風景入れましたが、微妙でしたかね?霞黒が意外と腕力あること知ってほしかったといいますか。
次回は修学旅行でも書こうかと思ってます。というか書きます。前編後編に分かれるでしょうね。
それではこの辺で。はらたま~きよたま~。