カメラと棒付きアメと   作:クロウズ

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十二話目

「………3月かぁ」

 

 

 

 色々とごちゃごちゃしたことがあったから、あっという間だったな。というかここ、1年間での行事多すぎだろ。写真部じゃなかったら大半はサボってるぞ。

 写真部といえば、先輩達はもう卒業したから今は俺と望月だけになった。日比野先輩なんかは、暇なときに顔出しに来るって言ってたけど、それはいいんだろうか?もし新入部員と会っても、先輩が写真部員だと信じるのは何人くらいなのか。

 

 

「あまりそんなこと言ったら、ヒーノ先輩に悪いわよ火野くん?それとも、部長って呼んだ方がいいかしら?」

「止めてくれ」

 

 

 しばらく使わなくなるからと、部室の掃除をしていた望月に勘弁してくれの意味を込めて手を振る。そう、望月が言った通り、俺は部長になった。元部長こと間宮先輩いわく、望月を部長にしたらどうなるか解ったものじゃない、というのは建前で、本音は俺のサボり癖を直すためらしい。この場合って、本音の方は本人に言ったら駄目なんじゃないか?

 何にしろ、俺は部長職に就くことになってしまったんだが。

 

 

「正直、俺に部長なんて合ってないと思うんだけどな」

「決まったんだから、文句言っても仕方ないわよぉ?それに、運動系の部長と違ってそこまで忙しくないと思うわよ?」

「まぁ、確かに……」

 

 

 というか普段の活動は活動とは言えないくらいにゆるかったし。その分行事では駆り出されてばっかだけど。

 

 

「さて、掃除も終ったし、そろそろ帰る?」

「ん、そうだな」

 

 

 望月の言葉に、端に寄せておいた鞄を持って部室を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、もうすぐで1年経つのよねぇ」

「そうだな。明後日の終業式が済めば、4月まであまり会うことないんだよな」

 

 

 夕暮れ時で人の少ない電車の中、望月のくれたアメを舐めながら他愛のない話をしていた。

 

 

「予定がなかったら、そうなるわねぇ。なぁに火野くん、私と会えなくなるのが寂しいの?」

「そんなわけあるか。お前の世話しなくて済むからむしろ心休まる」

「そこは、嘘でも寂しいって言ってほしかったわ……」

「お前相手に嘘ついてもな………」

「それは喜んでいいのかしら…?」

 

 

 まぁ、微妙だよな。

 その後駅に着いて電車から降りても、いつものコンビニまではまだ一緒に歩く。

 

 

「……ま、火野くんにそういうの期待しても駄目よね」

「おいこらどういう意味だそれ」

「そのままの意味って言っておくわ。ところで火野くんは、入学式どうするの?私は新入生(女の子)をいっぱい撮って……………でゅふふ」

「そりゃ、鈴ちゃんいるから行くけど」

「相変わらず、あの2人には甘いというか何というか。シスコンね火野くんは」

 

 

 シスコン言うな。それに写真部としての活動は、そういう時にしっかりやらないと。ただでさえ部員2人だけなんだし。

 そうこう話してると、いつものコンビニに近付いてきた。放課後からずっと話してたから、何か名残惜しく思う。一応明後日まであるけども。

 

 

「それもそうね~。…あ、もうここまで来ちゃったわねぇ」

「いつの間にかな。それじゃ、また明日」

「えぇ、また明日~」

 

 

 会話も切り上げ、いつも通りここで望月と別れる。それにしても、もう1年か……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   4月某日。

 

「今日から1年、みんなの担任を務める佐藤千尋です。って、去年とあまり変わらないねー。いいけど」

 

 

 始業式が終り、移動した教室で簡単な自己紹介を済ませる。クラスは去年同様A組、担任はまた佐藤先生。さらに先生の言う通り、半分近くは去年も同じクラスだったやつら。もちろん、南がいないのと、フランスからの留学生クロエ・ルメールという女子がいることなど、去年と違うところは色々ある。

 

 

「今日はこの後入学式があるから、見ていきたい人は見てっていいよ。ただし、新入生に変なことしないようにねー、特に望月」

「名指しなんて酷いわ~……」

 

 

 いやいや。お前の場合当然だから、と頭を軽く小突く。今年は席が隣だからできるけど、相手が望月とはいえ女子に手を上げるのは気が引ける。ツッコミだからセーフとか、そんな解釈はない。

 そう思っていると、小突かれた頭を押さえた望月は恨めしそうに見上げてくる。………くそ、かわいいなおい。

 

 

「う~………何も叩かなくてもいいじゃない」

「……ごめん。だからその目は止めてくれ」

「はいそこのお2人さーん、イチャつくなら出ていってね見せつけんじゃねーよ」

「「イチャついてません!」」

 

 

 思わずハモったけど、先生の笑顔が無駄に怖かったから口をつぐむ。やっぱり独身なの気にしてたのか…………。

 

 

 

 

 

 

 先生をなだめた後、解散して大半が帰る中俺達は入学式を見に体育館へ到着。名目は写真部としてだけど、俺の本音はもちろん、鈴ちゃんの晴れ姿を見るためだ。シスコン?聞こえない聞こえない。

 

 

「嬉しそうね、火野くん」

「そりゃ、鈴ちゃんが入学するからな」

「学園内ではよそよそしい態度取られそうだけどね」

「それを言うな………」

 

 

 やっぱり今みたいな態度取られるのか…?………いや、なるべく考えないようにしよう。泣けてくる。

 

 

「やっぱりシスコンね………」

「もういいよそれで!……って、なんか機嫌悪そうだな?」

「別に、何でもないわよぉ……」

「??」

 

 

 どうしたんだろうか、こいつは。急に不機嫌になって。

 

 

「じゃあ、私は向こうの方から撮るから。…………ぐふふ、いいわいいわぁ~。今年の新入生はかわいい子ばかりだわぁ~!」

「………やれやれ」

 

 

 いつも通りっぽいな。さて、鈴ちゃんは………っと、いた、けど周りの生徒より小さい所為でメインとして撮りづらいな。おじさんとおばさんにも頼まれてるから、せめてこっちに気付いてくれないものか。

 

 

「…………?…………っ」

 

 

 お、一瞬こっち見た気がしたけど、気付いたか?カメラを構えてもう一度待ってみると、今度ははっきりこっちを向いて小さく手を振ってくれる。即激写!とまではいかないけど何枚も撮っていく。嫌そうな顔してなくてよかった。

 

 

「……」

「……………!?……っ」

 

 

 あ、そっぽ向かれた。………まぁ、一先ずはいいか。後でまた撮らせてもらおう。

 女子の方は望月に任せて、男子をメインに撮るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、いい画がいっぱい撮れたわぁ………ぐふふふふ」

「……望月、よだれ出てるぞ」

「あ、いけないいけない」

「まったく…………。あ、俺は鈴ちゃん来るまで待つけど、お前はどうする?」

 

 

 入学式も終って、1年生たちは教室に向かっていったから望月と合流。しかしこいつ、よく注意されなかったな。

 

 

「んー、せっかくだし私も待つわ。久しぶりにお話ししたいし」

「お前鈴ちゃんと仲良かったっけ?」

「あら、失礼ね。仲悪そうに見えた?」

「いや、お前の話したら拗ねるか「せーん、ぱいっ!」ノヴァマス!!?」

 

 

 いきなり、背後から誰かに跳びつかれる。その際にした、鼻孔をくすぐるような匂いと声からして女子。でも俺に鈴ちゃん以外の1年女子に知り合いは………。

 

 

「お前、戸村かっ?」

「当ったりー。いやー、先輩ってばあたしに気付いてたのか知らないけど、全然見てくれないんだもん」

「あーはいはい、それは俺が悪かったからいきなり跳びかかるな。あとちょっと離れろ」

「火野くん、だらしない顔してる………」

「ひへないはら……ほおおひっはるにゃほお」

 

 

 あーもう、春とはいえまだ暑いんだから離れろ2人とも!

 

 

「む、ここにいたのか火野……………」

「あれ、いっちゃんじゃん。先輩と知り合い?」

 

 

 鈴ちゃんタイミング悪いよ!?今来られても収拾つかなくなるだけ……!ていうか戸村、お前鈴ちゃんと知り合いなの?あ、同じクラスかなるほど。

 

 

「貴様ら……何をしている…………」

「ほぇ?」

「す、鈴ちゃん………?」

「どうしたのかしら…?」

 

 

 鈴ちゃんは鬼気迫るようなオーラをまとってゆっくり近付いてくる。正直怖いです。だから早く離れろ2人とも。

 

 

「………離れろ………………」

「ん?いっちゃんなんて?」

「黒兄から離れろー!!」

「え、ちょ、鈴ちゃ………うぼあっ!?」

 

 

 怒った鈴ちゃんが思い切り飛び込んでく……………ぐはっ!鈴ちゃん……動けない状態にタックルは……一瞬呼吸止まったぜ……。

 

 

「うっわー、綺麗なタックルだったわねー………」

「先輩大丈夫?」

「直前で逃げといて……よく言う………。で、鈴ちゃん……さっきのは…」

「黒兄が悪いんだぞ…春瑚はともかく、高校生になってからは色んな女性とばっかりで………」

 

 

 え、俺そんな女子とばっかいるか?………あ、そういえば望月と勉強会したり写真部の先輩達と海行ったりばかりだ。朝田と南とも遊んではいるけど、多分女子といる方が多い。少なくとも鈴ちゃんはそう思ってる。

 

 

「黒兄は私のだ!誰にも渡さないんだ!!」

 

 

 ガルルル、と鈴ちゃんは俺の後ろにいる2人に対して敵意をあらわにして威嚇している。ていうか、え、これどういう状況なんだ?とりあえず、落ち着いて鈴ちゃん。

 

 

「うー……!」

「あらら、嫌われちゃったかしら……?」

「どうだろ…。とりあえず、今日は鈴ちゃんと帰るよ」

「ああ、うん。気を付けて」

 

 

 ここまでくると、さすがに一緒にしたら大変そうだからな……。

 拗ねてまったく離れる様子のない鈴ちゃんを抱えて帰らせてもらう。明日、いや、今日の夜にでも望月には謝っておかないとな。それにしても、鈴ちゃんが急にあんな風に怒るなんてな………。なんか、中等部の時にも似た感じの事あったような………。鈴ちゃんでも春ちゃんでもなく。誰かに聞くか?………いや、止めよう。あんな黒歴史時代は掘り起こされたら死ねる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「は~ぁ、疲れた………」

 

 

 あの後、正気?に戻った鈴ちゃんは解りやすいくらいにうろたえ始めてなだめるのに時間が掛かった。顔は真っ赤だし思い切り頭振った所為で髪の毛ぼさぼさだし、恥ずかしさのあまりクッションに顔うずめて喋るから何言ってるか解らなかったし。今日はもう大丈夫だけど、明日からはどうだろ。戸村とは同じクラスっぽいし。

 ま、明日の事は明日考えるか。今日はもう寝よう。




 あてーんしょーん、はろはろ~。どうも、クロウズです。
 さて、今回から2年生編に突入することになりました。1年生編も混じってる?細かいことはいいんですよ。よって、次回からは章管理も伴い話数が1話目からになります。次いつ投稿するか知らんけど。
 今回、幼馴染その1兼妹1号の鈴ちゃんを出しましたが、意地っ張りな子をあんな風に拗ねさせるのっていいですよね。ちなみにあの醜態(本人談)は大勢の生徒にばっちり見られてます。やったね2人とも、1週間は話題の中心人物だよ。



 さ、今日はこの辺で。はらたま~きよたま~

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