転生者の打算的日常   作:名無しの読み専

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#38 騒恋二重奏

 唐突だが、私は祭りがあまり好きではない。人混みは苦手だし、屋台は値段の割に美味い物が少ないし、花火は開いた方向で見栄えが変わるしで、正直楽しいと思えないのだ。だから−−

「だから、篠ノ之神社の例祭に行かなかったのか?」

「ああ」

 篠ノ之神社で祭りがあった翌日、私の部屋にやって来た一夏と弾から祭りに行かなかった理由を訊かれて答えたのが上記のものだ。それに不思議そうな顔で答えを返してくる一夏。

「人混みなんて『怖い笑顔』で一発回避だろ?」

「常に笑顔を浮かべていろと言うのか?顔面がつるわ」

 それ以前に人の誠心誠意を混雑回避の手段にするな。と言いたい。

「これまで九十九が選んだ屋台にハズレってあったか?弾」

「いや?無えな」

 話を振られた弾が過去を思い返して口にする。たしかに、二人からすればどれも当たりなのだろうが……。

「私にとってはハズレの屋台が多い。という事だ」

「「ハードル高くね?」」

 そんな事はない……はずだ。

「花火、いいじゃねえか。夜に打ち上げられて、パッと咲いてシュンと散ってよ」

「お前の恋花火はいつお前ともう一人を照らしながら広がるんだ?弾」

「グハッ……」

 どこかで聞いた歌のフレーズで花火の良さを訴える弾に、同じ歌のフレーズで切り返す。心にダメージを受けたのか、床に両手両膝をついて項垂れる弾。この男の春はどこにあるのだろうな。あ、ごく近くだった。

 そんな馬鹿話をしながらも、その日は穏やかに過ぎていった。が、嵐というのはやって来る前が最も静かなもので……。

 

 

 翌日、とある家の前に二人の女の子が立っていた。

「ここ……だよね?」

 モスグリーンのタンクトップと黒のサマージャケット、デニムのショートパンツでめかし込んだシャルロットと。

「うん。『村雲』って表札に書いてあるし〜」

 マリンブルーのカットソーとサンライトイエローのロングスカートを身に着けた本音だった。

 現在二人がいるのは、とある住宅街の路上。二人の想い人である村雲九十九の実家の前だ。

「急に来ちゃったけど……大丈夫かな?」

「つくもんなら迷惑がったりしないよ~。……たぶん」

 いまいち確信を持っているとは言い難い本音の言葉。シャルロットもそう思っているのか、『村雲』の表札とその下のインターホンとのにらめっこは、開始から既に10分が経過していた。

「本音、どうぞどうぞ」

「いえいえ、しゃるるんがどうぞ~」

 お互いにインターホンを押す権利を譲り(押し付け)合う二人。このやり取りももう10回目だ。

 そうして譲り合いが11回目に突入しようとした時、後ろからいきなり声をかけられた。

「おや?シャルと本音じゃないか。どうしたんだ?」

「「ひゃあっ!?」」

 驚きのあまり、二人して小さく跳躍。後ろを振り返ると、そこには九十九が荷物を抱えて立っていた。

「あ、あの、えっと……」

「あうあう……」

 九十九との思わぬ遭遇に頭が真っ白になり、言おうとしていた事が綺麗に吹き飛ぶ二人。必死に言葉を探した二人がようやく口にしたのは、単純明快なものだった。

「「えっと……来ちゃった♪」」

 

 

「「えっと……来ちゃった♪」」

 頬を赤らめて「テヘッ」という感じの表情をするシャルと本音。

「いや、そんな『彼氏の家に押しかけた彼女』みたいな……あ、実際そうだった」

 私とこの二人は彼氏彼女(仮)の関係。そう考えれば二人が『来ちゃった♪』をしてもおかしくない。

「まあいい。予定が無いから来たのだろう?上がっていくといい。歓迎しよう、盛大にとはいかんがね」

「「うん!」」

 

 ドアを開けて玄関に入る。二人を伴って居間に入ると、そこには母さんがいた。

「お帰りなさい、九十九」

「ただいま。買物を終わらせてきたよ。冷蔵庫に入れておくな」

 言いながら冷蔵庫に向かい、買って来た物を放り込む。

「うん、ありがとう。あら?お友達?」

「あ、お邪魔します」

「お邪魔しま〜す」

 母さんがいた事に気後れしたのか、居間の入口近くで足を止めた二人。二人と母さんは初対面なので紹介する事にする。

「ああ、紹介するよ。シャルロット・デュノアと布仏本音。私の……あ~、恋人……が一番近いか」

「まあ!そうなの!?で、どっちが?」

「……どっちも」

 私のこの言葉にポカンとする母さん。

「どっちも?」

「あ、ああ」

 頷いた瞬間、母さんの笑みが深くなるとともに強烈なプレッシャーが私を襲う。背中が脂汗で濡れてきた。

「……九十九」

「は、はいっ!!なんでしょうっ!?母さん!」

 名を呼ばれ、思わず気を付けの姿勢をとってしまう。母さんの放つプレッシャーは更に強く重いものになっていく。

「「えっ!?お母さん!?」」と驚く二人に対応する余裕が、今の私には無かった。

「最後にどんな道を選ぶにしても、ちゃんと幸せにしなきゃダメよ?(ニッコリ)」

「アッ、ハイ」

 母さんの笑顔に、私はカクカクと頷く事しかできなかった。

 

「ごめんなさいね、自己紹介もせずに。はじめまして。私は村雲八雲(むらくも やくも)、九十九の母です」

 二人に向かい、微笑みを浮かべて自己紹介をする八雲。そこには先程までのプレッシャーは欠片もなかった。

「えっと……はじめまして。シャルロット・デュノアです」

「布仏本音です」

 それに返礼とお辞儀を返す二人。頭を上げると、九十九の方に目を向ける。

「どうした?」

「あの、九十九。この人、本当に九十九のお母さん?」

「お姉さんじゃないの~?」

 二人が訝しむのも無理はない。「九十九の母です」と言った目の前の女性は、どう見ても高校生の息子がいるようには見えない程に若々しい。いっそ姉だと言ってくれた方が納得できる。

「信じられないと思うが、本当に母さんだ。ちなみに年は「永遠の17歳です♪」……」

 九十九の言葉を遮って、とんでもない事を言う八雲。それにポカンとする二人。

「えっと……」

「つくもん?」

「母さんのいつもの冗談だ。実際は「17歳です♪」……」

「「…………」」

 もう一度同じ言葉を放つ八雲。二度目ともなると、流石に沈黙するしかなかった。

「17歳です♪(ニッコリ)」

「「「アッ、ハイ」」」

 笑顔とともに再び放たれるプレッシャー。今度は三人揃ってカクカクと頷く事しかできなかった。

((九十九(つくもん)の『怖い笑顔』ってお母さん譲りだったんだ。))

 シャルロットと本音は二人して同じ感想を持った。

 

 

 折角だから、という事で四人で昼食をとる事に。本日のメニューは冷やしうどん(季節の精進揚げ付き)だ。

「いただきます」

「「いただきます」」

「どうぞ、召し上がれ」

 せいろからうどんを一口分つまみ上げて猪口のつゆにつけて啜る。

「おいしい〜」

「うん。天ぷらもサクサクだし、何よりつゆが違う。ねえ、九十九。このつゆひょっとして……」

 流石、料理上手。違いが分かるとはね。

「その通り。自慢の自家製麺つゆさ。母さんは、料理について妥協を許さないからな」

「他にもお味噌にお醤油、お漬物も自家製よ」

「「わ~〜!」」

 感嘆の声を漏らすシャルと本音。母さんはそれに大喜びだった。なお、昔出汁材まで自分で作ろうとしたが敢え無く失敗した事は、母さんの名誉のために言わないでおいた。

 食後、本音の持ってきたケーキをデザートとしていただく事に。飲み物はアイスティーだ。

「この箱のエンブレム……まさかストーンフォレスト!」

「しってるの〜?つくもん」

「知ってるもなにも、ストーンフォレストと言えば……」

 

 パティスリー『ストーンフォレスト』

 天才パティシエ『ショーン・タロウ・ストーンフォレスト』がオーナーを務める超人気ケーキ店。

 弟子の新作は頻繁に出てくるが、ショーン氏は何故か毎年9月〜10月頃にだけ新作ケーキを作る事で有名。本人の拘りらしい。

 

「つい最近、新作を出すと告知があったばかりだからな。気にはなっていた」

「次はどんなのかな~?」

 今度新作が出たタイミングで行ってみるかな。

 

 

「さあ、ここが私の部屋だ」

「「お邪魔しま〜す」」

 ドアを開けて二人を招き入れる。そう言えば、私の部屋に入った事のある女の子って鈴以外ではこの二人が初めてだな。

「あ、意外と片付いてる」

「ホントだ~。もっとゴチャっとしてるかなって思ってたんだけど〜……」

「掃除をしないと母さんがうるさくてね。それに部屋を綺麗にしておけば……」

 言いながら押し入れに近づいて、その戸を開ける。

「これの整備をする時に、パーツが飛んでもすぐ探し出せるしな」

 そこに現れたのは大量の−−

「「猫グッズ?」」

「へ?」

 振り返ると、猫の縫いぐるみ、猫柄マグカップ、猫型枕など、数年に渡って集めた猫グッズの数々。

「ああっ!?開ける戸間違えた!こっちだこっち!」

 慌てて反対の戸を開ける。そこには数多くのモデルガンが入っていた。

「わ、私の趣味はサバゲーとモデルガン収集でね」

「あと猫グッズ集めも。でしょ~?」

「九十九が猫派なのは知ってるよ。だから幻滅なんてしないから安心して」

「ああ、ありがとう……でいいのかね?取り敢えず茶と茶菓子を持ってくる。適当に寛いでくれ」

「「うん」」

 二人にそう言い残して、一旦部屋を出る。

「茶は麦茶で良いか。茶菓子は何があったかな?」

 呟きながら一階へ降りると、そこに母さんの姿はなかった。あれ?どこ行った?

 

 部屋に残されたシャルロットと本音は取り敢えず座ろうとしたものの、椅子が一つしか無かったため、どうするかと思案していた。

「ど~しよ〜か〜?しゃるるん」

「うーん……九十九には悪いけど、ベッドに座らせてもらおっか」

 そう言って、二人で九十九のベッドに腰掛ける。その瞬間、僅かに跳ねたベッドから『九十九の匂い』が舞い上がった。

「「あっ……」」

 鼻腔を擽ったその『匂い』に意識を持って行かれる二人。けれどそれは一瞬の事で、ハッと我に返った時には『匂い』はもう消えていた。それが二人にはなんとも名残惜しく感じられた。

(つくもんの匂い……)

(も、もうちょっとだけ……)

 フラフラと巡らせた視線を、シャルロットは枕、本音はタオルケットに固定する。

「「ゴクリ……」」

 九十九に悪い。そう思いながらも、二人はもはや止まれない。枕に、タオルケットに顔を埋めようとして−−

「おっじゃまっしまーす♡」

「「うわひゃあああっ!?」」

 ノック無しに入ってきた九十九の母、八雲によって強制的に正気を取り戻させられた。

((ぼ、僕(わたし)は今何を……))

「あら、本当にお邪魔だったかしら?」

「い、いいいいえ、そんな」

「だ、だだだ、大丈夫ですよ~?」

 慌てて取り繕う二人。だが、八雲にしてみればバレバレな反応な訳で、ニコニコからニヤニヤに変わった笑みで二人を見ていた。

 なんとなく居心地の悪くなった二人が話題転換のためのネタを探して視線を彷徨わせると、八雲の手に何冊かの古いアルバムが収まっているのを見つけた。

「あの、九十九のお母さん……」

「あら、八雲って呼んでくれていいのよ?」

「えっと……じゃあ、八雲さん。そのアルバムは?」

「んふふー。よくぞ聞いてくれました!これは……じゃじゃーん!」

「「そ、それはあぁっ!」」

 見せられたページにあったのは何枚かの写真。写っていたのは十数年前の九十九だ。ただ、その恰好が−−

 

「うわ~、かわいい〜!」

「うん、すっごく可愛い!」

「うふふ、でしょ~?」

 私の部屋から聞こえてくる嬌声。そこには母さんの声も混じっている。……何か、嫌な予感がする。

「おまたせ。茶を持ってきたよ。……で?母さん、何してんの?」

 テーブルに広がっているのは、数冊のアルバム。って!?それは!

「ちょっ!?母さん!?何見せてんの!?」

 それは、私の子供の頃の写真が入ったアルバムだった。しかも−−

「つくもんって女の子の恰好してた頃があったんだね~」

「悔しいくらい似合ってたよ?」

「ああっ!それは私の黒歴史!頼む!見ないでくれ!そして見せるな!」

 慌ててアルバムを閉じ、母さんに渡す。母さんはどこか不満そうだ。

「ええー?こんなに可愛いのに……」

「母さんにとっては、だろ!私からすればいい迷惑だったよ!もういいから出てってくれ!」

 口を尖らせる母さんを部屋から追い出す。この人は本当に余計な事を!

「あ、そうそう。二人とも、夕食はごちそうにするから食べて行って」

「「えっ!?」」

「母さん!?」

 私は驚いてしまった。母さんが「夕食を食べて行って」と言うのはよほど気に入った相手か、付き合いの長い相手くらいだ。初対面で「食べて行って」と母さんが言ったのは、私が知る限り一夏と鈴しかいない。つまり……。

「九十九。母さん、この二人の事すっごく気に入ったわ。逃がしちゃダメよ?いい?」

「あ、ああ」

 真剣な目つきでそういう母さんが少し怖くて、頷く事しかできなかった。なんかさっきもあったなこんな事。

 

 

 二人が「食べて行って」と言われたため、夕飯の時間まで私の部屋でのんびりする事に。

「と言っても、遊びに使えそうなゲームが少なくてな。これくらいか?」

 取り出したのはとある童話の主人公の名を冠したスゴロクゲーム。私が唯一持っているパーティゲームだ。

「あ、これやった事ある〜」

「僕はないなー」

「そうなのか?ではやってみるか?」

「「うん!」」

 という訳で、夕飯の準備が整うまでの間スゴロクゲームをして過ごした。

「なぜ私の所でばかりパワーアップするんだ……おのれボンビー!」

「つくもん、ドンマ〜イ。あ、ゴール!」

「すごいね本音。これで十連続だ」

 麦茶と茶菓子を飲み食いしながらワイワイと楽しむ私達に母さんが声をかけたのは、ゲーム開始から5時間ほど後だった。

 

「これはまた……随分と気合を入れたな。母さん」

 母さんに「夕飯が出来た」と呼ばれ、居間に行ってまた驚いた。テーブルの上に数多くの料理が並んでいたからだ。しかも……。

「ハンバーグ、シーザーサラダ、エビフライに……」

「肉じゃがとおみそ汁……あっ、ひょっとして~……」

 そのラインナップに何かを感じてハッとするシャルと本音。

「気付いた?これはね……」

「……私の好物だ。それも『特に』がつく……な」

 実際、寮食堂でもその日のメニューに迷うとよく頼むものが、今目の前にあるこれらの料理だ。

「さ、召し上がれ」

 母さんに促されて席に着き、手を合わせて一言。

「「「いただきます」」」

 まずハンバーグに手をつけたシャルが驚きの声を上げた。

「このハンバーグ、肉汁が溢れてくる!デミグラスソースと相性抜群だよ!」

「挽肉にする所から完全手作りの、母さん自慢の一品だ」

 シーザーサラダを口にした本音に衝撃走る……みたいな顔をしていた。

「このシーザードレッシングって、もしかして~……?」

「もしかしなくても自家製だ。毎回必要量だけ作っているぞ」

 自慢気味に説明しつつエビフライを口に運ぶ。サクサクの衣とプリプリのエビ、特製タルタルソースがハーモニーを奏でる。

「うん、美味い」

 肉じゃがも煮崩れはなく、出汁と肉の旨みを吸ったホクホクのじゃが芋はもはや官能の域。

「こんなおいしい肉じゃが、初めてだよ~!」

 輝かんばかりの笑顔を浮かべて「美味しい美味しい」と次々と料理に箸を伸ばす本音。

「このお味噌汁すごいよ!お味噌もだけど、何よりダシが全然違う!」

 普段飲んでいる物と香りも味も違うだろう味噌汁に、シャルは感動していた。

「長崎の煮干しと利尻の昆布から取った出汁を使ったのよ。やっぱりお味噌汁には煮干し出汁よね」

 ちなみに何の関係も無いが、母さんが使っている煮干しは長崎の『九十九島』産の物。個人的に妙な因縁を感じている。

「はーい。デザートもあるわよー」

 そう言って母さんが取り出してきたのはコーヒーゼリー。苦味と甘味のバランスが絶妙で、口の中をサッパリさせてくれた。

「ごちそうさま」

「「ごちそうさまでした」」

「はい、お粗末さま」

 最後までしっかりと堪能し、満足そうにする私達を、母さんは終始笑顔で眺めていた。

 

 

 夕食後、食休みを取ってから二人を駅まで送って行く事に。二人は「大丈夫だから」と言ったが、母さんの「夜道の女二人歩きなんてさせられない」という意見と私自身の希望でこうなった。

「二人とも、また来てちょうだいね。歓迎するわ、盛大に!」

「「はい!」」

「いや、盛大にはしなくていいから……」

 母さんが『盛大に歓迎する』と言ったら本当に盛大な歓迎になる。昔、同じ事を言われた鈴が二度目に家に来た時、母さんは『プチ満漢全席』を披露して、一緒にやって来た一夏と弾を唖然とさせた事がある。

「次はフランス料理のフルコース?それとも会席料理かしら?腕が鳴るわね……」

 母さんは完全に自分の世界に入っていた。「一からコンソメを作るならあれが必要ね……季節の食材とも相談しないと……」とブツブツ言っていて、既に次に向けた準備をする気になっている。

「あ、駄目だ。聞いてない。……まあいい、行こうか」

「「うん!」」

 頷いて腕に抱き着く二人。この状態で歩く事にももう慣れた。駅はここから歩いて10分ほどの距離にある。次の発車時刻を考えれば余裕があるので、あえてゆっくり歩いた。

「いいお母さんだったね」

「そう言ってもらえると嬉しいよ」

「ごはんもおいしかったし〜」

「そこなのか?まあ、君らしいが」

 夜道を歩きながら三人で他愛も無い話をする。そんななんでもない時間もこの二人といると実に楽しい。それだけに……。

「いずれどちらかと別れなければならない……か。それは……嫌だな」

「え?」

「なにか言った?つくもん?」

 口の中で小さく呟いた声は二人には届かなかったらしく、私は「なんでもないよ」と言って誤魔化した。ふと気づけば駅はもうすぐそこで、二人は名残惜しそうな顔をしていた。

「そんな顔をするな、二人とも。私も明日には寮に帰るから、学園でいつでも会える」

「うん」

「じゃあ、また明日ね~?」

「ああ、また明日」

 手を振りながら駅の構内へ消えていく二人を、姿が見えなくなるまで見送ってから駅を後にする。一人の帰り道が、なんだかひどく寂しかった。

 

 

 来週から二学期が始まる。

 この先、『文化祭』『キャノンボール・ファスト』『専用機限定タッグマッチ』『一年生限定体育祭』と、イベントが目白押しだ。

 自称知恵と悪戯の神(ロキ)が『ここからだぞ、我の見込んだ者よ。潰れてくれるなよ?』と言った気がした。

 久しぶりに出てきたと思ったら不安になるような事言うなよ!?




次回予告

再び始まる学園生活。そして迎える文化祭。
姿を現した生徒の長の一言が、学園を興奮のるつぼへと誘う。
その一言とは……。

次回「転生者の打算的日常」
#39 文化祭(企画)

各部対抗織斑・村雲争奪戦を行います!
えええぇぇーっ!?

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